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久遠の神話

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第八十八話 強くなる水その五

「そうよね」
「うん、そうだよ」
「それならあと少しよね」
 樹里は楽観的に述べた。
「戦いが終わるのは」
「いや、どうかな」
「どうかなって?」
「確かにもう五人の人が降りたよ」
 広瀬、高代、スペンサー、王、それに権藤だ。彼等は皆剣を置きそのうえで戦いから永遠に降りているのだ。
 戦いを止めようという剣士は外してまだ戦おうという剣士は三人、確かに数字を見れば終わりに近い。だがそれでもだというのだ。
「それでもね」
「残った人達は」
「どうかわからないから」 
 だからだというのだ。
「終わりに近いかというとね」
「断定出来ないのね」
「うん、少なくとも油断は出来ないよ」
 もうすぐ終わると思えないというのだ。
「そのことはね」
「そうなのね」
「そう、だからね」
 それでだというのだ。
「僕は油断していないから」
「最後の最後までなのね」
「その三人の人の最後の人が降りるまでね」
 まさにそれまでだというのだ。
「僕は油断出来ないよ」
「わかったわ、じゃあ」
「最後の最後まで強くなって」
 そしてだというのだ。
「戦いを終わらせるよ」
「今で、よね」
「うん、今でね」
 まさにこの時でだというのだ。
「終わらせてね」
「剣士の戦い自体を」
「そう、神話の頃から続いているけれど」
 果てしなくだ、だがその戦いをだというのだ。
「今ここでね」
「終わらせて」
「皆が解放されるべきだよ」
「確かに好きな人を想う気持ちはわかるけれど」
 樹里はここでセレネーのことを言った、エンディミオンを想い彼と共に永遠にいたいという彼女の気持ちはというのだ。
「けれどね」
「間違ってるよ、自分の幸せの為に誰かを犠牲にするのは」
「そうよね」
「だからね」
 それ故にだというのだ。
「僕はこの戦いでもうこれ以上誰かが犠牲にならない、殺し合わない為に」
「最後まで残って」
「終わらせることを願うよ」
 そうするというのだ。
「そうしないとまた続くかも知れないから」
「頑張ってね、本当に」
「強くなるよ、その為に」
 是非にだというのだ。
「剣士としてね」
「ええ。ところでいつも剣を振ってるけれど」
 ここで樹里は話を変えてきた、今度の話は剣士と剣の話であるがそれだけではなかった。その他のことでもあった。
「その腕が剣道にも影響してるわよね」
「何かね」
 実際にだとだ、上城も答えた。
「最近竹刀の振りがよくなったし動きもね」
「よくなったのね」
「体育の授業でもね」
 その時もだというのだ。 
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