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久遠の神話

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第八十五話 消える闇その九

「何かあまり噂のよくない奴でしたね」
「嶌田信祐だったな」 
 それがそのタレント候補者の名前だ、尚本名である。
「確かな」
「酒癖に女癖が悪くてですね」
「上にへつらい権力に媚びる奴だったな」
「はい」
 それがその候補者だというのだ。
「後輩いびりも多いらしいな」
「とんでもない奴らしいですね」
「ヤクザとの交際も噂されている」
「よくそんなの選んできましたね」
「あくまで全て噂だからな」
 噂は事実ではない、例えそれが真実であっても。
「それが」
「ええ、残念なことに」
「あいつは駄目だ」
 人間失格だというのだ、つまりは。
「しかしそれでもだ」
「当選には運が影響しますね」
「運が悪いと何かが起こって落選する」
 それが選挙というものだ、選挙は多分に水ものなのだ。当選する時はどんな無能でも当選するが落選する時はどれだけ資質に恵まれた人物でも落ちるのだ。
 工藤もそのことがわかっている、だから言うのだ。
「だからあの人にとってもな」
「運ですね」
「それが関わる」
「運があればな」
 そうなると話してだった、工藤と高橋は。 
 二人でだ、女神達にこう言った。
「今日はこれでだ」
「帰らせてもらうね」
「しかしあの人のことは見せてもらう」
「どうなるかね」
「間違いなくです」
 ここでだ、豊香が二人に笑顔で述べた。
「あの人は願いを手に入れ果たしますので」
「運を手に入れたからか」
「はい、ですから」
 それでだというのだ。
「後は見てもらうだけです」
「では、か」
「今は」
「はい、落ち着いてそうして下さい」
 見ていればいいというのだ、そう話してだった。
 二人は女神達に別れを告げた。剣の力で飛び駅を後にした。 
 駅には女神達だけが残った、しかしそこにある気配は三人のものだけだった。聡美はそのことを確かめてからだった。
 智子と豊香にだ、こう言ったのだった。
「お姉様はもうおられません」
「猪が倒されたところで帰ったのね」
「そうされましたか」
「その様です」
 こう話したのだった。
「ですから私達も」
「もう帰ってなのね」
「そうして」
「次ですね」
 次の剣士に向かうというのだ。
「一人ずつそうしていくのですね」
「焦らないことよ」
 智子は微笑んで聡美に答えた。
「決してね」
「焦らず、油断せずですね」
「心を乱さないことよ」
「そうですね、それでは」
「次に向けてね」
 手を打っていくと話してだ、そしてだった。
 女神達は今は駅を後にした、それからすぐに次の手を打つ用意に油断することなく入ることを決意したうえで。 
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