久遠の神話

「そんな気もする」
「そういえば銀月さん達は神様だから俺達より生きている時間は長いね」
「永遠と言えるまでに」
　聡美はその命の長さを人間の基準から見た場合にそう思えることを話した。
「それだけの長さです」
「そうだよね、じゃあ今の戦いが終わっても」
「また先があるからですね」
「うん、この戦いの後もね」
「終わらせたことに慢心してはならないのですね」
「そうなるんじゃないかな」
　高橋は智子と工藤の言葉を己の頭の中で反芻させながら聡美に話した。無論豊香に対してもそうしている。
「やっぱり」
「そうですか」
「うん、またあの女神さン達と揉めるかどうかはわからないけれど」
「セレネー姉様と」
「けれど生きていればまた戦いがあるだろうから」
　それが今の様に終わらせようとする戦いであってもだ、戦いは戦いでありそれがある可能性は否定出来ないというのだ。
「だからね」
「それで、ですか」
「うん、この戦いで油断しないでね」
　終わらせてもだというのだ。
「先があるから」
「わかりました」
　聡美は高橋のその言葉に頷いた、豊香もだ。
　智子は夜の闇駅の周りの灯りに照らされている権藤が自身の車を動かし去っていく姿を見ながらそのうえで一同に言った。
「そうね、忘れてはね」
「ならないですね」
「絶対に」
「この戦いが終わっても」
　智子は妹達にも言う。
「油断してはならないわね」
「そうですね、慢心しては」
「なりませんね」
　とてもだというのだ。
「では」
「ええ、お姉様を止めることは」
「油断してはならず、ですね」
「そしてそれが終わっても」
　慢心してはならない、智子は妹達にこう言うのだった。
　そうしてだった、智子はあらためて一同に告げた。
「今日はこれまでとして」
「そしてですね」
「次の剣士をですね」
「戦いから降りてもらう様にするわ」
　権藤のことは終わってもそれで安心もせず落ち着かない、智子は既に勝って兜の緒をという考えに至っている。
　その彼女の言葉を受けてだ、工藤も高橋に述べた。
「ではな」
「はい、俺達もですね」
「これで今日は帰ろう」
「次ですね」
「残るは三人だ」
　工藤もまた戦いのことを念頭に置いていた、そのうえでの言葉だ。
「最後の最後まで手を緩めないでいこう」
「そうしていきますか」
「あの人もどうなるかだな」
　権藤のこともだ、工藤は話した。
「これから」
「運がどう導いてくれるかですね」
「それを見るか、そういえば今補欠選が行われていたな」
「あの人が出てましたね」
　八条町の選挙区でのことだ、権藤はその選挙に立候補していて選挙活動も行っているのだ。
「与党から」
「そうだな」
「八条町の選挙区の議員さんが急死して」　
　野党の大物の一人だった、弁護士あがりで人権派と鳴らしていたがその実はテロ支援国家との関係を常に噂され汚職でも有名な人物だった。
　その彼がだ、急死してだったのだ。
「それで、でしたね」
「そこで運が向けばな」
「確実に、ですね」
「議員になれる、それもだ」
「圧勝ですかね」
「相手の立候補者は野党の人間だったな」
「ええ、タレント候補でした」
　野党があるタレントを担ぎ出して立候補させたのだ。議員の候補者を選ぶにあたってはよくあるパターンの一つだ。