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久遠の神話

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第八十五話 消える闇その一

                    久遠の神話
                第八十五話  消える闇
 権藤は夜にだ、屋敷ではいつも彼の傍にいる老執事にこう告げた。
「少し行く場所がある」
「外にですか」
「少し留守を頼む」
 こう告げるのだった。
「今はな」
「わかりました、それでは」
「妻達はもう寝ているな」
「はい」
 執事は彼のその問いにも静かに答えた。
「ゆっくりと」
「ではだ」
「何処に行かれますか?」
「運転は私がする」
 場所は言わずにこう答えただけだった。
「だから君もだ」
「休めと」
「戸締りもしておいてくれ」
 これは鍵は自分も持っているからだ。
「ではな」
「それでは」
「すぐに帰る、そして寝る」
「わかりました、それでは」
 こうしてだった、執事も彼の言葉を受けてだった。
 権藤を送り出した、彼はすぐに自分で車を運転して新神戸駅に向かった。
 駅に着くとそこにだ、まず彼等がいた。
 工藤と高橋だ、権藤は彼等を見て言った。
「君達が立会人か」
「女神達に呼ばれたが」
「そうみたいだね」
「そうか、わかった」
 その話を聞いてだ、こう答える権藤だった。既に車から出ており車は近くの駐車場に停めてそのうえでのやり取りだ。
「では見ておくといい」
「ああ、それではな」
「貴方が戦いを降りるのを見させてもらうね」
「そうしてくれ、そしてだ」
「そして?」
「そしてというと」
「君達の仕事がまた一つ減ることになるな」
 権藤は二人ににこりともせずに話すのだった。
「そうなるな」
「そうなるな、では」
「では?」
「俺達は今は剣士同士として向かい合っているが」
 工藤はここで権藤に言うのだった。
「それも変わるな」
「私は剣士ではなくなる」
 今日を境にというのだ。
「ようやくな」
「戦いは嫌いだったか」
「戦いは最後の最後の手段だ」
 権藤は工藤にもこの考えを話すのだった。
「避けられる、そして避けて後に憂いがないのならだ」
「避けるべきか」
「一時の逃げは後でより大きな事態を招きかねない」
 その場凌ぎでは、というのだ。
「しかし戦わずとも利益になるのならだ」
「避けるべきか」
「戦いはリクスが大きい」
 起業家、そして政治家の考えからの判断に他ならない。
「私はそれは避ける」
「そういう考えだからか」
「戦いは避ける」
「わかった、ではな」
「しかし工藤さん」
 工藤と権藤のやり取りが終わってからだ、そのうえでだった。
 高橋は駆動にだ、横からこう言って来たのだった。
「何か俺達今言葉が堅いですね」
「この人にか」
「はい、やっぱり年上の人ですから」
「そうだな、警戒し過ぎだな」
「何か気配が普段異常に強いですからね」
「言葉遣いがな」
「もっと柔らかくしましょう」
 高橋はこう工藤に言った。
「そうしましょう」
「わかった、それではな」
 こう二人で話してだった、そして。 
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