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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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六章
  本物の公方×神の御姿×現状

「姿を見ても、牙と爪が主な攻撃で接近戦が主だから、銃を使っているが、たまに剣を使って倒す時もある。攻撃の仕方もどれも同じような仕方だからすぐに分かる」

「ああ!主よ!この国を祝福して下さり、感謝致します!」

なぜか知らんが、いきなり俺の頭を胸に抱き着いてきた。これを見た三人は驚愕したまま固まっていたけど、すぐに復活した。

「ちょ、ちょっとエーリカさん!はしたないですよ!っていうか、お頭から離れてくださーい!」

「そうですよエーリカさん!お頭を抱きしめる何てズルいですズルいですズルいですズルいですズルいですー!」

「むぅ。満更でも無い一真様の顔に、思わずふつふつと殺意が湧いてきます」

おいおい。三人からいらん事が聞こえてくる。いくら、ころ達が引き剥がそうとしても、強い力で俺にしがみつくエーリカ。

「とりあえず嬉しい事は、分かったから離してくれると助かるんだが・・・・」

「これは失礼いたしました。つい嬉しくて」

まあいいんだけどね、離れてくれた後に小さく胸に十字を切った所で久遠が来た。

「あれ?久遠・・・・公方とは話が終わったのか?」

「うむ。・・・・一葉、我の恋人を紹介しよう」

「恋人か。・・・・」

「やはり俺の推測は当たったか。確かゴロツキに追われていたのもお前だったな」

「その節は世話になったな」

「いえいえ、久々に腕が鈍ったか心配はした。で、君が本物の将軍だろう?」

「うむ。改めて名乗ろう。我が名は義輝。足利幕府十三代将軍である」

と言ったら、俺を見た三人は納得した。あまり驚かないのだなと言った将軍は、四人共俺を指差して「一真様が言った通りでした」と言っていた。あの時からだけどね、でも俺の勘ってよく当たるな。まるで雪蓮みたいだ。

「ほう。推測と勘とは恐れ入る。さすが天人様かな」

「ところで、御簾にいた御嬢さんは誰かな?」

「あれは我の妹だ。名は双葉と言う。今、幽に呼びに行かせておるから、おいおいここに来るだろう。その時に改めて紹介してやる」

「そうなんだ。で、久遠。外でエーリカの話を聞いていたな?」

「うむ。部屋に入ろうとしたら、室内の雰囲気が変わっていたのでな」

「まあそうだな。二度手間になるから聞いていたと?」

「そうだ。二度手間は勘弁したいだろうと思ってな」

「エーリカとやら。まずは謝ろう。・・・・力無き将軍で誠に済まぬ」

と言って、足利将軍はエーリカに謝った。エーリカは恐れが多いと、頭上げろと言っていた。しかし将軍が無力なのは事実であり、征夷大将軍として先頭を立つべき存在でもある。あと先程の話を聞いていた久遠は、あの鬼こそがザビエルと関係があったとはな。エーリカによればザビエルは天守教の司祭という皮を被り、布教と称して民を騙していると。民達はザビエルに騙されて、鬼にされている事も。

「昨今、五山の悪行が世に知られた事もあるが、畿内の巷では天守教を信仰する者が増えているらしい。その信仰する者が、良い天守教なのかザビエルとやらが布教している悪い天守教であるかは定かではないが、京でも鬼の話を聞く事が増えているのは確かだ。被害と言っても、洛中に被害は少なく、殆どが洛外での被害なのだが」

「そういえば壬月が言ってたな。鬼は畿内からやってきているようだと。最近は尾張や美濃にも被害が出始めている、とは言っても恐らく鬼の数は増えているだろうな。エーリカの言う、悪魔の楽園を作るため、鬼を使って日の本の人達を根絶やしにしようとしている。ザビエルという奴がしているのはそんな所だろう」

「うむ。だがそれが分かったとしても、今の我らには何もできないだろう」

まあ、そうなんだろうけど。鬼がいつ出現するか分からない状態だからな。

「今のままでは、情報が分からんという事か。まあこちらでも情報は集めるさ」

「うむ。とりあえず鬼の事はひとまずおけ。今は一葉と情報交換するのが先決だ。一真、名乗れと言いたい所だがまだ何だろう?」

「どういう事だ?我はこやつの事を天人しか知らぬ」

「まだ役者が足りないって事だよ。将軍さんよ」

と、幽が妹を連れてきたな。これで役者は揃った。

「双葉、挨拶せい。余の新たな友人達である」

「ご友人、ですか?」

「そうだ。・・・・大丈夫。こやつらは信用できる」

と言って、双葉と名乗った者は柔らかな笑顔を浮かべた少女が、俺達に向くと深々と頭を下げた。まるで社長令嬢のような感じだな。

「私の名は足利義秋。通称は双葉と申します。姉、一葉のご友人の皆様に、謹んで御礼申し上げまする」

「お礼とはどういう事だ?」

「はい。皆様がご存じかは分かりませんが、我ら足利の姉妹は、幕府の中で危うき立場におりまする」

「危うき立場とはどういう事か?説明を求める」

「その答えは余が答えよう。我ら足利を排し、畿内の覇権を握ろうとしている、三好、松永の党がおってな」

「最近では幕府内にも通じる者が出る始末。・・・・我ら姉妹が心を許せるのは、幽を筆頭とした畿人かの幕臣のみなのです。だからこそ・・・・姉が友人であると認めた皆様に、言葉を尽くしてもなお、お伝えしきれない程の感謝を、私は今、心の奥底より思うております。本当に・・・・ありがとうございます」

と頭を下げた双葉に対して、ころ達は頭を上げろと言った。さてと、まだ自己紹介していなかったから、するとしようか。

「さてと、・・・・役者が全員揃ったんだ。俺も正体を明かせねばならないな」

「一真、良いのか?」

「ああ。ひよ達、身分が低い者に対して頭を下げるなど偉い身分ではないが、俺にはあるのでな。その前にと・・・・」

俺は指パッチンをした。一応防音結界を張ったのだ。もしその三好と松永の者らに聞かれると面倒なのでな。俺は立ち上がってから、全員いる事を確認してから、ひよ達を久遠の所に行かせた。久々に大天使化をした。目を瞑り、背中には6対12枚の金色の翼に金髪に金色の衣。そして目を開けると黒から緑色になった。

「こ、これは一体どういう事だ!?」

「我の名は創造神黒鐵、この姿になると神の姿になる」

「そ、創造神!神が目の前におるだと!」

「神様が目の前に!するとデウス様にも会った事はあるのですか?」

「ああ、あるな。二回程会ったが、姿とかはそちらのご想像にお任せする」

と言って、全員頭を下げた。悪くはないが、これではまたこの姿になってもこのような状態になると思った。

「全員、表を上げよ。我は堅苦しいのは好きではない」

「ひよさん、一真様が神様である事は知っていましたが創造神って言うのは?」

「ごめんね詩乃ちゃん。一真様がどうしても秘密にしておいてくれと言われたからね」

「それよりもこの世に生きていて、神仏の類を見れるとは生きていて損はなかったという事か」

「我はこの姿を見せるのは、鬼と戦う時と信頼できる者とだけ見せられる姿。そろそろ元に戻る」

翼以外は元に戻った。たまに翼を動かしては、これは本物だぞ?と言っているようなものだった。

「改めてだが、俺の名は織斑一真。気軽に名前で呼んでくれると助かる。あとこの姿は人間としての姿だから恐れ多くな扱いはやめてくれ。そうすると周辺一帯が感づかれてしまうと後々面倒になる」

「なるほど。ある意味ではあるが、久遠が気に入ったのも分かるような気がする。よろしく頼む一真様」

「よ、よろしくお願いします。一真様」

様付かよ、まあいいんだけどね。防音結界を解除した。それと俺には妻がいると言ったら一葉は納得したようだった。夫ではなく愛妾だという事も。

「で、話を戻そう。三好と松永というのはどんな奴だ?」

「三好というのは、三好修理太夫長慶殿率いる、阿波の三好党の事でしょう。足利幕府の摂津守護代、相伴衆、管領代を兼ねた名門中の名門です」

相伴衆・・・・君主の側に居て、話し相手になったり相談事に答えたりする人達の事。側近。

「ほお。良く知っておるな」

「あははっ、私、野武士時代が長かったですからね。各勢力の家格やら役職何かは、戦の勝敗を占う意味で、結構重要な判断材料でしたから」

「なるほど。では少し訂正してやろう。長慶は既に耄碌(もうろく)している故、今は三好長逸、三好政康、岩成友通の三人衆によって合議制がしかれておる」

ほう、三好というのはそいつらのようだ。ころの情報とは少し違うようだが、権力闘争でコロコロと変わるそうだ。

「で、松永というのは、恐らく松永弾正殿の事だと思うのですが」

「然り。主君・長慶よりも力を持つとまで言われておる、稀代の梟雄だ。三好三人衆をうまく操縦しながら、自らは前面に出ない・・・・やりにくい相手と言えよう」

詩乃は唸りだしたので、どうした?と聞いた。過去に道三より聞いた松永の情報だったが、その時に聞いていた松永は三好家の家宰程度だと。その昔、京で数度か会っていたそうだが、何でも京の梟雄はずるがしこいが通す所は筋を通す、中々の難物であったと。一家宰が、いつの間にか幕府を脅かす程の力を持っていたというのは、戦国の世の不思議だそうだ。

「梟雄という評判も、今の松永殿の立ち位置を考えれば、正しくもってその通りという事になるのでしょうね」

「うむ。久秀は、三好の下働きをしている内に、三好の娘共が次々と死んで出世して行ったという、稀代の幸運の持ち主だ」

「ふむ。その話を聞く限り胡散臭いな。死んだというより暗殺でもしたのではないのか」

「胡散臭くとも、暗殺したとあれば証拠もあるはず。が、証拠が無ければ稀代の出世頭となるのがこの世の常であろうよ。そしてその出世頭は今、三好党を影で動かす実力者であると共に、禁裏より弾正小弼を拝命し、幕府の相伴衆にも名を連ねておる」

「・・・・獅子身中の虫だな」

「はい。三好三人衆と弾正小弼殿に張り付かれては、いささかも気を許すことが出来ず・・・・」

「だからこそ、織田殿と分かりし折りも、それを露と出さず、織田三郎として扱わせて頂き申した。・・・・ご無礼の段、平にご容赦を」

さっきまでのらりくらりしてた様子ではあったが、今は素直に久遠に頭を下げた。久遠はおけぃというから大丈夫だろう。一葉はこれが幕府の内情としてはこんなところ所だと言ったけど。 
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