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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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六章
  礼法×足利将軍

庭より一段高くなっているため、室内の様子を事細かに観察する事は出来ない。御簾が掛かっていたり装飾品は見窄らしかったりするのは、何とか見えてる。そんな部屋で、御簾よりも10m以上離れたところに久遠が座っていた。

「(あの御簾の奥に公方が来るんだろう?・・・・久遠はその御簾からだいぶ離れた所に座られているが、あんなもんなのか?)」

「見る、という行為は、貴人に対して慎むのが礼法、とされていますからね~。御目見得という言葉も、その礼法から来ているんですよ」

「見るという行為を礼法に組み入れる事によって、見る事の出来る人間を特別視する、または特別視されたと思わせるのが目的なのです」

「ほわー・・・・何だか難しいですねぇ、礼法って」

俺は小さく言ってからまた様子見をした。まだ来ないらしいな、公方は。

「今の我らにはあまり必要は無いでしょうが・・・・久遠様のこれからを考えると、他人事ではありませんからね」

「私達も礼法の勉強をしないといけなくなるのかな」

「ひえー!・・・・面倒そう」

礼法ねえ、まあ俺には必要ないだろうな。いくら身分が低いとはいえ実際は創造神。神仏の中でも一番上というべきなのかな?あれだけ離れて座ってると聞こえないのではと思った俺。

「貴人とは声を惜しむものだそうですよ。・・・・まぁ正直、馬鹿らしいですけど、お偉方とお付き合いするには我慢して付き合っておかないと」

「(あら聞こえてたか。まあそう何だが効率悪いな)」

「一真様にとっては変かもしれませんが、我らにはそれが普通ですから。あと聞こえてましたよ、小さい声で」

「ええっ!私にとっては普通じゃないよ!・・・・礼法とか、どうやって勉強すれば良いのか分かんないもん」

「大丈夫大丈夫。私だって、別に勉強した訳じゃないし、見よう見真似でやってるだけだから」

と話しているようだが、公方はまだ来ないのかよ。正直時間の無駄だと思うが、これについてはどうなんだと聞いてみた。

「待たせる、という事も、上下の区別をつける重要な要素なんだそうです。・・・・時間の無駄も甚だしいですが」

「(確かにな、それに久遠の不機嫌な感じが伝わってくるよ)」

「久遠様のご気性じゃ、当然でしょうね」

イライラした久遠が、やらかすのではないかという心配をしながら見ていた。すると気配で分かるが来たけど、影武者だろうと思うし、公方本人はそこにいる。詩乃は来たと言って平伏を促すようにひよところに言った。俺?俺は普通に立っている。透明の聖剣で見えてないし気配も消している。

「・・・・足利参議従三位左近衛中将源朝臣義輝様、御出座ぁー!」

名前が長いが、説明すると、あしかが さんぎ じゅさんみ さこんえの ちゅうじょう みなもとあそん よしてる と言う。先導の小姓らしき人物が名前を呼び上げると同時に、皆が一斉に頭を下げた。御簾のすぐ側に腰を下ろし、目を瞑っている小姓の顔、あれはあの時ゴロツキ共に追っかけられた人物だな。考えていると幽の声が部屋全体に響き渡った。

「下座に控えまするは、尾張国長田庄がご当主、長田上総介と申す者。幕府へと献上品として、銅銭三千貫、鎧一領、刀剣三振り、絹百疋。こちらに実物がございます」

「殊勝なり」

「公方様よりのお褒めの言葉でござる。恐れ入り奉り、今後も謹んでご忠勤めされぃ」

「忠勤?」

「これ。問答は差し許さず。平伏なされ」

「・・・・・・・・・・・阿呆らしい」

おいおいマジかよ!いくら影武者とはいえあの口はないだろう。

「(ああ!久遠様の悪癖がぁ)」

「(やっちゃったー!)」

「(・・・・やれやれ)」

と平伏している三人はそう思ったと後々に聞いた。

「お、長田殿!御前であるぞ!頭が高い!お控えなさい!」

「公方でも無い者に頭を下げられるか」

「・・・・っ!!」

「な、何を言うか!ここにおわすは正真正銘、足利将軍に他ならん!長田上総介、無礼千万であるぞ!」

「当代の公方は剣の達人という話を聞いていたが、御簾に入る時の足音などは、まるで手弱女のように弱々しかったぞ。そんな者が公方であるはずがあるまい。・・・・のぉ、そこの小姓よ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・ふっ」

やはり、あいつが正真正銘の公方か。先程小さい声で言っていた。

『まぁでも毎日毎日、町を練り歩いて悪漢どもから銭を巻き上げているらしいですが』

とはこの事。つまり、ここに来る前に会った者が足利将軍って訳だろうさ。

「一度、そこの小姓と話がしたい」

と言って近づこうとした時に、何か来ると思い透明の聖剣と天閃の聖剣で、久遠の元に行き弾を弾き飛ばしてから元の場所に戻ったけどね。

「・・・・ふむ。お仲間がいるようだが、残念だったな。こちらには鉄砲の専門家がおる。さすがの専門家でも弾き飛ばすとは中々だろう?」

「今の弾き飛ばしたのは、誰だか知らないが。気付かなかったら、貴様の頭に穴が開いていただろうに」

「それぐらいは用心しているが、それよりも用心している人物がいるからこちらとしては安心していられる。・・・・で?」

「良いだろう。なかなか面白き奴だ。話をしてやろう」

「偉そうな言い様だな。・・・・小姓の分際で」

「白々しい事だ。貴様も同じであろうに」

「ふむ。・・・・お互い様という事か」

「・・・・藤孝、御簾をあげぃ!」

「は、し、しかし!」

「良い」

「・・・・御意」

「お姉様・・・・」

「双葉、代役大義である。・・・・後ほど呼ぶ。今は下がっていなさい」

「はい。・・・・」

「長田の。場所を変えるぞ。良いな?」

「デアルカ」

と言って二人はどこかへ行ってしまったが、三人はパニックしていた。もういいだろうと思って、透明の聖剣を解除した俺は姿を現した。  
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