戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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五章
契約
「・・・・こんにちは。皆様もお祈りですか?」
「あらま、日本語ペラペラだな。お祈りはまた今度と言う事で何だが、この教会の司祭はいるかな?」
「そうですか。この礼拝所の司祭様は、今、お出かけでございます。私も司祭の身でありますので、御用は私がお聞き致しましょう。それにしても・・・・ふふっ」
「そうか。なら君に聞こうがなぜ笑う?何か可笑しな事でも言ったかな?御嬢さん」
「いえ。私が日本語を話したのに、驚かないのだなと思いまして」
「なるほど。確かに普通は驚くが俺は驚かない。部下も君と同じようなところからだから」
「そうですか。あなたの部下に、・・・・でもこちらの司祭様は、日本語がまだまだ片言しか話せませんから」
ふむそうか。まあそうだろうな、実際日本に来たら片言もいるし全く喋れない奴もいる。あとはどこかで、日本語を学んできてから日本に来たという事もある。
「君はスラスラと日本語を話すが、誰から学んだんだ。それとも独学か?」
「子供の頃から教わっているのです。・・・・なかなか上手なものでしょう」
「という事は、日本人とハーフってこと事か?」
「はい。父はポルトゥス・カレの武人。そして母は日本の名家出身だと聞いております」
「ポルトゥス・カレ。という事はポルトガルか。母は日本人?」
「はい。ポルトガルとはよくお知りで。日本の武士の出だ、と聞かされております」
「ふむ。武士で名家出身という事だが・・・・ご母堂の名は何と言う?」
「母の名は槇。家の名は分かりませんが、母の持ち物にはカンパニュラの花がたくさん描かれていたのを、よく覚えております」
「・・・・かんぱにゅらとは何だ一真?」
「えーと、確かキキョウ科の花だったな」
「キキョウというからには、恐らく桔梗紋ですね。桔梗紋と言えば美濃を治めた土岐氏とその一族の家紋が主となるでしょう。分家や枝分かれした家の数を考えると・・・・桔梗紋を使っているのは数十件程度。さすがにどこまでかは、今は分かりませんが、美濃の同朋でありましょう」
この御嬢さんは詩乃が言ってる事が分かってなかったので、とりあえずフォロー入れときますか。
「御嬢さんの母親の故郷が、この子の故郷と同じと思っていいだろう。だから同郷人かも?ってね」
「おお、それは・・・・。異邦に来て早速、母と縁がある方に出会うとは。この奇跡を神に感謝します」
胸の前で小さく十字を切った。まあ神は目の前にいるんだけどね、天守教の神であるデウスにも会ったけど。そしてこの御嬢さんは姿勢を正しくして言った。
「我が名はルイス・エーリカ・フロイス。母が与えてくれた日本式の名前は、ジュウベエ・アケツと申します」
アケツ、もしかしたらと思って俺は言った。
「アケツではなく、明智だな。だよな、詩乃」
「アケチ?」
「はい。一真様の仰る通りです。明るいに智恵と書いて明智と読みます。清和源氏土岐氏の支流で、明智庄の住人。美濃では名流の家ですね」
また分からなそうな顔をしていたエーリカ。
「つまり、高名な家の人って事だよ」
「なるほど。母のファミリーネームは明智というのですか。・・・・ふふっ。何だか自分のルーツがこのような形で判明するのは、とても嬉しいですね」
「日本なら明智十兵衛って事になるが・・・・」
「(隊長、明智十兵衛って事は、この子はあの本能寺の変で有名な明智光秀ですよね)」
「(ああ、そうだろうな。しかし、ここは外史だから何が起きるか分からないから、まだこの事実は心の中に入れておこう。発現したらこの外史はまた変わる可能性がある)」
「(了解です隊長)」
「二人ともどうした?」
「いや、何でもない。俺達の知っている明智について話してたところだ。今は言わない、時が来れば話す事だろう」
何とか隠せたが、さてさて本当にこの子が明智光秀なら、今ここにいる久遠、織田信長を討伐する者。一応マークはしとくか、何が起こるか分からないからな外史は・・・・。
「とりあえず、エーリカの日本式での名前を漢字で書くとこう書く。明智で名乗ると色々と役に立つかもしれないな」
俺はメモ用紙を出してから、ボールペンで書いてからエーリカに渡した。
「なるほど。これが日本での私の名前ですね。御助言感謝します」
そう言いながらエーリカは頭を下げた。仕草が何かどこかの王候貴族のような感じで、優雅で気品があった。
「やけに礼法に通じておるな。それもご母堂から教えられたのか?」
「はい。日本のサムライは武に通じ、書に通じ、何より典雅に通じる必要がある、と教育されましたから」
「ふむ・・・・まさに武家の考え方だな。素晴らしいご母堂をお持ちのようだ」
そういうと、エーリカは礼を言った。
「ところで、何しに日本に来たんだ?」
「それは、その・・・・」
「無理にとは聞かないが、何か目的があってきたのだろう」
「はい。私はとあるお方にお会いするため、この日の本を訪れたのです」
「とあるお方とは?」
「母に聞いた、日本のサムライのトップに立つ、アシカガショーグンに会いに・・・・」
アシカガショーグン?ああ、足利将軍の事か。という事は足利義輝に会いに来たと言うことか。
「足利将軍に会いに来たのか。・・・・ならば貴様、我と一緒に来い」
「え・・・・あなたと、ですか?」
「うむ。我は五日後に堺を発って京に向かい、将軍に拝謁するつもりだ。我についてくれば、将軍に拝謁する事も可能やもしれんぞ」
「そうですね。南蛮人のあなたが、将軍や畏き所に拝謁を賜う事はまず不可能でしょう。強いツテがあるのならば話は別ですが・・・・」
畏き所・・・・日の本の中心に在す尊き存在の事。尊すぎて直接呼ぶ事を憚り、色んな呼び方をする。禁中、御門、天子などなど。
「そういったものは、残念ながら・・・・」
「ならば我と共に来れば良い」
「しかし、出会ったばかりの方々にご面倒を掛けるのも、気が引けてしまいます・・・・」
「ふむ。我は一向に構わんが・・・・」
「久遠。いきなり過ぎて信用できないぞ。現実としては正論かもしれんが、一つずつ話をして信用させた方がいいと思っている。エーリカと言ったな、俺達は堺で南蛮人と繋がりを持ちたいのだが、生憎知り合いがいない状況で、知り合いの商人がいれば、俺達に紹介してもらいたい。一応通訳として連れてきた者もいるが、エーリカにも通訳として頼みたい。無論宿代食事代とか、その他諸々は俺達が負担しよう。必要なら給料も出す。それが俺達がエーリカに求める対価として考えてもらいたい。その代りにエーリカがしたい事、足利将軍に拝謁を叶うために何とかしようと思う。こういう契約はどうかな?」
しばらく黙ったエーリカ。そりゃ、こういう事言ったら誰でも考えると思うけど、悪い話ではないからな。利害が一致すれば、同行も可能だろう。
「良いでしょう。その契約であれば私自身も納得がいきます」
「では誓約書を作るから、ちょっと待ってな」
と言って、空間からノーパソを出して誓約書を作成した。作成した後にノーパソを閉じて空間に入れたけど。作成して、印刷し終わったとケータイから連絡があったら空間からできた誓約書を確認したら、互いの名前を書いた。俺の持っているボールペン。俺は日本語だけど、エーリカはたぶんポルトガル語で書いた。
「よし、これで契約完了。これからよろしくな、エーリカ」
「ええ。よろしくお願い致します。まさかこの国で誓約書、もしくは契約の概念を知っておられる方と出会う事になるとは。あなたはこの日の本の方では無いのですか?」
「まあそういう事だ。それに誓約書あるいは契約と言う言葉がなくとも、この国には約束という言葉がある。その約束を絶対に守るという保証もあるから安心してほしい」
「はい。あなたを信じましょう」
「・・・・話は纏ったのか?」
「纏ったよ。早速で悪いが、エーリカの知り合いの南蛮人を紹介してほしい。いけるか?」
「もちろんです。では、私が乗ってきた船のフェルナン・デ・ソウサ船長をご紹介致しましょう」
思わぬ所で出会った西洋人少女。名はルイス・エーリカ・フロイス、日本式の名だと明智十兵衛だけど本当にこの子は明智光秀何だろうか?正史ならあり得ないが、外史ならあり得ると思って一人納得しちゃう。マークはしとかないとな。で、紹介された船長は、たぶんポルトガル語だと思うが、沙紀が俺の言葉を通訳してくれてから、やはり連れてきて正解だなと思った。無論エーリカもいるけど、沙紀がポルトガル語で話してる時の久遠達の顔を見たら、何で南蛮語を話せるんだろうと思ったに違いない。
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