戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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五章 幕間劇
久遠と一日買い物デート
本日も晴天なり、堺の町は相変わらず良い天気だ。スマホからの天気予報では、ずっと晴れの予報だからこのまま大丈夫かと思った。そういえば今日の予定は特に決まっていない。昨日の夕食では特に言ってはいなかったし。まあ堺見物もいいけど、久遠にはやる事がいっぱいだしな。俺から誘う訳にもいかないし。
「おーい、一真。供をせい」
「あいよ」
久遠からのお呼び出しで向かったら、久遠一人だけだった。歩き出してから、今日のお供は俺だけかと思った。
「今日はどうした?皆と一緒じゃないのか?」
「うむ。今日は特に予定も入れてなかったからな。エーリカは用事があろうし、ひよ達も自由にさせておる」
「そうか。で、今日はどこに行くんだ?もしかして土産でも買いに行くのか?主に結菜に」
「そうだ。さすがに壬月達に買うとお説教があるからな、我が妻である結菜にと思ってな」
それに早朝から出る時に、土産買うからなと言っちまったしな。結菜は久遠の妻でもあるが、俺にとっては恋人だから。恋人といえども土産くらいは買わないとな。しばらく歩いていると久遠が止まった。
「ふむ・・・・この辺りには良い物がありそうだな」
止まった場所は、小物や飾り物が多く並んでる所だった。小物屋は、清州や美濃でも見た事あるが、さすが堺。小物屋が通り一面にずらっと並んでいる。
「いらっしゃい」
「ちと見せてもらうぞ」
「はいはい。ゆっくり見ていって下さいね」
そんな小物屋の一つに足を踏み入れて、久遠は早速品定めを始める。
「ふむ。・・・・これも悪くないな」
髪飾り何かを専門に扱う店だ。まあ確かに結菜も髪長いし、髪飾り何か似合うかもな。あと、デザイン次第と似合うかどうかの想像力が必要。結菜は帰蝶とも言われるからか、蝶の柄の方が似合うんじゃないかなと思った。そしたら三国志の外史で華蝶仮面ってのがいたな。あれも蝶の仮面を被っただけ何だが、なぜか気付く奴と気付かない奴がいたな。数件回ったが、久遠の買い物は決まらずにいた。
「ふむ・・・・これも悪くはないが、ちと違うか」
まあ、久遠の妻だから真剣に考えるよな。俺もデートとかで、服とか買う時は真剣になるけど。
「これも・・・・いやいや、これではないな。・・・・一真、これはどう思う?」
「ん?簪と櫛か。結菜に似合うならどっちも似合うが、どっちだろうな」
「そうなのだ。さて、どうするべきか・・・・」
ん?あの蝶のはいいなと思って、手に取ってみた。二種類あるな、一つは結菜でもう一つは久遠かな。恋人とはいえ、贈り物はしたいし。
「一真、髪飾りを取ってどうかしたか?」
「ん?ああ、少し考え事をしていた。こっちは結菜に似合うかどうか考えたら、もう一つの方は久遠に似合うんじゃないかなって」
「はぁ!?お前、結菜の土産を買うんじゃないのか?」
「あのな、一応言っておくが周りから見ると、俺と久遠は今逢い引きだと思われてるぞ。だったら、これは土産ではなく贈り物としてだ」
と言ったら顔を赤くした久遠だった。たぶん逢い引きと言ったからかな。と久遠は他に目にいってるためなので、こっそりとこの二つの髪飾りを買った。
「なかなかいいの、見つからないね」
「うむ。真剣に見定めると、難しいものだな」
何件か回ったが、久遠のお気に召した物はないらしい。こだわりが強いようだ、だから決められずにいた。
「少し考えをまとめるか・・・・」
「なら、どこかでお茶かお昼にしよう」
時計を見ると、もう昼時だ。
「そうだな。少々腹も減ってきた、飯にしよう」
「あ、一真様!」
「久遠様ー!」
久遠とどこか昼飯でも食うかと言ったら、ひよ達が来た。しかもエーリカと沙紀もいた。
「おう。今日はエーリカと沙紀も一緒何だな」
「はい。エーリカさんに、堺を案内してもらいました。詳しいところは沙紀さんが教えてくれましたけど」
そしたら沙紀の手にはスマホがあった。なるほど、エーリカには堺の町を知っている所を案内して、沙紀はエーリカでも知らない所をご案内か。やはり連れてきて正解だったな。
「ええ、沙紀さんは私でも知らない所を案内してもらってました。来た事ないんですよね?」
「まあな。だけど知識ではあると言ってもいいだろう。沙紀ご苦労さん」
と言ったら敬礼した沙紀。俺も一応敬礼したら、詩乃が海の魚がうまいと言っていた。湊町だもんな堺は。貿易港な訳だし、堺も立派な漁港がある訳だ。確か明石辺りは潮の流れも速いから、魚は特に美味しいんだよな。
「はい。先程皆さんと、明石の蛸を頂きましたが、とても美味しかったですよ」
「あれ?南蛮の方は食えないんじゃなかったか?」
「他の国では悪魔の化身と呼んで食べない国もあるようですが・・・・ポルトゥス・カレでは普通に食べますよ」
「あんな美味しい物を食べない国があるんですか?もったいないなぁ・・・・」
「一真様達、お昼ご飯は?」
「まだだ。これから食おうと思っているがいい所はないか?」
「隊長、この通りの向こうに新鮮な魚を出すお店がありますので、そこに行かれてはどうでしょう?データは送信済みです」
と沙紀から新情報を頂いた俺は、早速スマホを出すとデータがあった。そこに行くかと久遠に言ったら異存はないと言ったので、俺と久遠はそこに行く事にした。
「俺達はそこに行くが、皆はこれからどうするんだ?」
「はい。エーリカ殿と沙紀殿と一緒に、もう少しこの辺りを回ろうかと」
「そうか。ではまた宿で会おう。沙紀、案内を頼んだぞ」
と言って俺はスマホを片手に持ちながら、進んだ。通信機から、何か聞こえたので何だろう?と思って左耳に装着したらひよ達の会話だった。沙紀が盗聴器を使って聞こえるようにしているんだろうな。さすがは俺の妻の一人である沙紀はいい仕事をする。
『行ってしまわれました』
『うぅ、久遠様いいなぁ。一真様と一緒に街を回れて』
『羨ましいのは私も同じです』
『けど、仕方がないよ、久遠様は、一真様は恋人なんだから』
『だよねぇ』
『皆さん、本当に一真様の事がお好きなのですね』
エーリカにも様付かよ。まあ歳は上だしな。
『えへへ・・・・はいっ』
『それに一真様にはたくさんご恩がありますし』
『それに女性の扱いに慣れているご様子ですし』
『慣れていると言う事は、一真様はご結婚されているのですか?』
『はい。隊長には奏さんという奥さんがおります。どういうお方かは、茶屋かどこか、ゆっくりお話出来る所にでも行きましょうか?』
ははは、あいつら。あとで覚えていろよ。確かに慣れてはいるけどな。通信機をしまって、俺は地図にあった美味しい店に到着した。
「お、ここだ。ごめんくださーい!」
「いらっしゃい!お二人なら、空いている席に座って!」
「久遠は何にする?」
メニューにはいろいろと書いてあったけど。外の看板には、刺身や蛸って書いてあったな。
「我は刺身にしよう」
「いらっしゃい。何にするか決めましたか?」
「我は刺身と飯をもらおう」
「そっちのお兄さんは?」
「俺は蛸が食いたいがおすすめはあるかな?」
「じゃ、蛸ぶつがいいかな。蛸をぶつ切りにした刺身だよ」
「ならそれで。あとご飯は大盛りでね」
「はいよ!刺身と蛸ぶつね!」
でオーダーしたら、久遠は何か考え事をしていた。まだ結菜の土産が決まっていないそうだ。さっきまで行ったのが、西側だけど主要な区画のほんの一部何だよな。東京や横浜とかも、回るのに一日以上は掛かる。電車とかあれば回れるかもな。
「なら、次は反対側を回るか。これくらいで疲れたとはいえないしな」
「それなら良い。後も頼むぞ」
「へい、刺身定食に蛸ぶつ定食、おまちどう」
ここで俺たちの注文した物がきたので、話はあとにして食べる事にした。手を合わせていただきますと言って食べた。
「・・・・なるほど。確かにこれは美味い」
「蛸も獲れる場所が違うだけでうまいとはな」
今度トレミーに行ったら、たこ焼きでも作ってみるか。確かたこ焼き機があったはず。
「久遠。久遠の刺身と俺の蛸を交換しないか?」
「うむ。そうしよう。一真の蛸も美味しそうだ」
と言って交換したが、さすがだな。これは、エーリカや詩乃も絶賛する訳だ。まあ次行く時は、結菜も連れていこう。こんな絶品な魚料理もあるんだしな。で、食い終わった所だから、反対側に行ったら。
「ふむ・・・・。ここは武具を扱う通りか」
「さすがにここには結菜の土産はないだろうな」
「だな。お、あそこに鉄砲商の店が・・・・」
「おいおい。結菜の土産に鉄砲か?」
とまあこんな話をしながら歩いていたがな。任務の時は任務に集中もあるが、遊ぶ時は遊ぶし。土産を選ぶならちゃんと探せばいいし。
「だが、この物の流れの規模は何度見ても凄いな。やはりこれからは銭と商人の時代か」
「そういう考えも今日は無しだぞ、今日くらいは遊びな」
「働けと言ってくる者は多いが、遊べと言ってくる者はお前くらいだぞ、一真」
「だって今は逢い引き中だぞ。仕事を忘れない方がおかしいぞ。それに久遠は働き過ぎだ。たまには遊んで甘えるのもいいだろう?」
「そうか。これが甘やかされるということか」
と何か一人で納得されたがまあいいか。たまにはこれでいいと思う。武具や鉄砲を一通り見た俺達は、その先に行くと久遠のテンションが上がった。何だと思えば南蛮菓子屋があった。なので寄ってみる事にした。
「いらっしゃい。ゆっくり見ていって頂戴」
「うむ。おお・・・・色々あるのだな」
クッキーやタルトがあったり、チーズケーキやキャンディーが置いてあったが、全部作れるな。菓子作りにも、積極的になった時があってその時いた女性隊員に、試食をしてもらったらまるで店置いてあるみたいと絶品だったな。
「ケジャトと有平糖だな、甘いぞ」
「ケジャトってどんなお菓子なんだ?」
「牛の乳で作った菓子だ。我はあまり好かんな」
ふむ。正史での信長は好みと聞いたが久遠は好みではないのか。ケジャトっていうのは、ポルトガル生まれのベイクドチーズケーキらしい。
「だが、我の食べた事のない物もあるな。幾つか買って帰るか・・・・」
「そんなに買ってどうするんだよ。それに京まで行くんだから節約しないとダメだろう」
まあ、本当はここにある南蛮菓子はほとんど作れるけどね。で、しゅんとなった久遠に、じゃあ宿で食べるなら一つだけでいいからと言って俺が買うと言ったら明るくなった。
「そうか。一つだけか・・・・どれにしようか・・・・」
久遠はそんな調子で真剣に選ぶ。どうやら有平糖とぼうろは食べた事はあるが、カルメルというのは食べた事がないらしい。お菓子を真剣に選ぶ姿を見たら、この子は本当に織田家の棟梁かと疑問に思う位だ。
「ふむ・・・・一つとなると、やはり迷うな。・・・・決めたぞ一真。このかすていらにしよう」
あら?色々あったのに、そんな定番なのでいいのかと思った。
「じゃあ、このカステラ一つをもらえるかな?」
「はいはい。これと・・・・これで良いの?」
これとこれ?何だと思ったらカステラの脇にもう一つ、小さな包みが置いてあった。中身は鮮やかな砂糖の塊である金平糖だった。
「おい久遠?」
「もう一つ・・・・ダメか?」
何か上目使いを使ってきたな。しょうがないと思って、それも買ってあげた。
「結局どうするの、久遠?」
そして堺の町を散々歩いて、とうとう夕方になってしまった。
「どうするのはいいが、お前は買ったのか?一真」
「とっくに買ってるよ」
「何・・・・いつの間に・・・・!」
「久遠が真剣に選んでる時にこっそりと買った」
「むぅ・・・・ならやはり次で最後にする。こっちだ」
こっちだっていうと、最初に来た小物屋だった。久遠は櫛を買ったようだ。
「それと・・・・」
「なんでしょう・・・・」
「ここにあった蝶の簪は知らんか?」
「さあ。私は昼からの出だったもので・・・・朝の内に売れちゃったんですかねぇ・・・・?」
「なら分からんか・・・・」
「申し訳ありません」
「よい。無理を言ったな」
あの蝶の簪も買おうとしてたようだが、残念でした。俺が買ってしまったからな。
「久遠、久遠が買うと思ってこれを受け取ってほしい」
何だ?と思った久遠は、受け取った物の蓋をそっと開ければ、対になった蝶のかんざしだった。俺はあの時に、既に買っていたのさと言ったら照れていたけど。
「気に入らなかった?」
「この旅の土産だからな。美濃に戻ってから、結菜と一緒に付けてもらうことにする。・・・・良いか?」
「構わんさ。それにもう一つは結菜のために買ったからな」
「だが、先につけてもらうのは我だ。忘れるなよ」
「はいはい。分かりましたよ」
一日掛かりではあったが、買い物も済ませてようやく宿への帰り道。久遠は俺にすまんなとか言ってきたが、俺は気にしてないと言った。やりたい事もあったが、こうして久遠と二人っきりで一日過ごしたかったと言った。そしてもう一つやりたい事があると言って、手を握った。いきなりの事で驚いていたが、拒否もしないで握ってくれた。
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