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久遠の神話

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第八十三話 権力者その五

「何度も言うが私は戦い自体には興味はない」
「では戦争は」
「戦争は政治の一手段だ」 
 今度は政治を語るのだった。
「時として必要だが」
「それでもですね」
「戦争は政治の一手段だが望ましいものではない」
「それはどうしてでしょうか」
「人が死ぬし産業が破壊される」
 それにだった。
「しかも予算も浪費する」
「だからですか」
「只でさえ軍事費は歳出ばかりだからな」
「収入はないですね」
「必要だが必要なだけでいい」
 割り切った、ビジネス的とも思える言葉だった。
「過度に予算を回すこともだ」
「望ましいことではないというのですね」
「軍は必要であるし国家に欠かせないものだが」
「それでもですね」
「戦争はしないに限る」
 絶対にだというのだ。
「普通の外交で済めばそれでいい、ただし」
「ただし?」
「軍を背景に交渉することもだ」
「時としてですね」
「必要だ、政治にはな」
 軍事力、即ち力もまた必要だというのだ。
「だからこそだ」
「軍は必要ですか」
「私の考えではな」
「力の論理ではありますね」
「力の論理でも何でもことが平和に済めばそれでいい」
 例え軍事力をちらつかせても戦争にならなければというのだ。
「そういうものだ、政治はな」
「古来よりある考えですね」
「間違っているか」
「いえ、間違っているかといいますと」
「そうとも言えないな」
「はい、実は」
 そうだとだ、聡美も神話の頃より見てきたことから権藤に答える。見てきたもの程強いものはないからこそ。
「神々もまた力が必要ですから」
「力がなければな」
「何も出来ませんね」
「この世の摂理の一つだな」
「その通りです」
「理想は必要だ」
 権藤は理想の必要性も認めた。
「まずどうしたいかを考えなければ政策も企業の方針も決まらない」
「そうですね」
「しかしだ」
 それでもだというのだ。
「理想だけで現実を見ないとだ」
「やはり駄目ですね」
「理想と現実は共にあるものだ」
 つまり共に見てそこから考えていくものだというのだ、権藤は企業家、政治家として考えそのうえで聡美に話しているのだ。
「そしてさらにだ」
「力がなければ」
「その理想、現実と照らし合わせて具体化させたものを通せない」
「そういうことですね」
「力は必要だ」
 ここで正義は語らなかった、力は決して正義ではないということも権藤の考えなのだ。
 それでだ、今も言うのだ。
「私は軍は必要だと考えている」
「わかりました、そしてですね」
「私自身もだ」
「力が必要なのですね」
「運もな」
 その力のうちの一つだというのだ。 
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