SAO二次創作者と、二次主人公ズの、やりたい放題桃太郎
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第三章 救出作戦
【リン(蕾姫)】
りんが時折出会う敵を鋼糸ですぽーんしながらたどり着いたのは地下です。どうやら地下洞窟につながっているらしいそこは、肌寒くじめじめとしています
りん「いかにもって雰囲気だな」
りんの向かう先に、牢が一カ所見えました。
その牢の中には何故か四角い出っ張りがあり、中が空洞らしいそれの上には、一人の少女が手首を縛られた状態でつるし上げられていました。
少女はびしょぬれで、りんは即座に彼女が井戸の上に吊されて居るのだと気が付きます。それは所謂、水攻めの拷問でした。
りん「ん?大丈夫か!」
りんは駆け寄りながら、じぜんに聞いて居た容姿の特徴からお詩乃と呼ばれていた。お幸の家の次女である事を理解した。
詩乃「ん……また拷問の時間?」
詩乃の唇は紫色に染まり、見るからに衰弱していた。視界が霞んでいるのか、入って来たリンを自身をこんな場所へ閉じ込めた盗賊達と見間違え、寒さも合間ってガタガタと震え出した。
リン「捕虜か?今、助ける」
俺は慌てて駆け寄ると下に落ちないように横抱きに抱えてから鋼糸で縄を切る。
詩乃「……えっと、誰なの?」
りん「冷たいな……。とりあえず暖めるか……」
詩乃の問い返しに答える暇も惜しくなる程、痛々しさが見えたため、俺は羽織っていた上着を脱ぐとまずは服を脱がせる。
濡れた服を着ていてはいつまで経っても回復するわけもないのだが、やはり相手は女。多少の羞恥心と後ろめたさはある。
なるべく見ないようにして手早く服を脱がせると詩乃を上着で包み込んだ。
りん「さて……どうするか」
改めて辺りを見回す。オーソドックスな牢屋が複数併設されていたが、詩乃を除き、ここにはもう誰も囚われていないようだ。
と、考えを巡らせながらキョロキョロしていると突然ズボンが引かれた。
りん「どうした?」
詩乃「さ、寒いの……」
俺が視線を詩乃に戻すと、先程よりも身体の振動が大きくなっている詩乃の姿があった。
おそらく、先程までは拷問という極限状態であったために感覚がいろいろ麻痺していた状態にあったのだろう。溜め込んだものは吐き出さなければいけないのが世の摂理。溜め込んでいた寒さという感覚が、俺に助け出された途端決壊し、一気に押し寄せてきた……と思う。
りん「……あー……後で何をされても文句は言わない。だから今は我慢してくれ」
返事をする元気もないだろうから、間発入れずに俺も服を脱ぎ去り、上半身裸になる。洞窟の冷たい空気が上半身を撫で、軽く身震いすると詩乃の身体を被っている俺の上着を取って、そのまま裸と裸で抱きしめた。
りん「これなら少しは暖かくなるだろう」
上着というのは直接暖める機能を持たない。ならばなぜ暖かく感じるのかと言うと断熱性があり、中で身体から発っせられる熱を循環させるからだ……つまり、芯から冷えきった詩乃では前提条件の熱を発っすることができない。
低体温症に陥った人を助けるには外部から熱を与えてやるしかないのだ。
詩乃「暖かい……」
温もりを求めて、詩乃が頬を俺の胸に擦り付けてくる。
正気に戻った時が怖いと内心苦笑いしつつ、もっと強く抱きしめる。
りん「もう大丈夫だ」
詩乃「うん……」
片方の手で詩乃の頭を撫でながら、もう片方の手で入口に鋼糸を使って何重にも罠を張る。
俺は詩乃が安堵の表情を浮かべて眠りにつくまで人肌で直接詩乃を暖めながら頭を撫でていた。
────
メンバー「「「「「…………」」」」」
蕾姫「……なにか?」
鳩麦「いやまぁ先生の文章で砂糖吐かせられそうになるのは何時もの事だけどさ(苦笑)」
レオニス「やっぱ甘々ですよねぇw」
涙カノ「コーヒーは!コーヒーは無いのか!!」
鳩麦「そう言う涙カノさんが次なんだけどw」
────
【リクヤ(涙カノ先生)】
リクヤくんが向かった先には、やたら鉄に包まれた機械的な区画がありました。一体どうやって作ったのか。周りの簡素な牢には機械製の椅子があります。
その奥の部屋に、人が一人座っている椅子があります。
どうやら少女のようですね。と、その時です。
「きゃぁぁああああぁっ!!」
何かが弾けるようなバチバチという音と共に、少女の痛々しい悲鳴が部屋に響きます。
青白い光がピカピカと光っており……所謂電気椅子の拷問のようです。
りくや「お、おい、大丈夫か!?」
ゆか「……」
叫び声が聞こえ、焦りながら道を阻む物体を壊して駆けつけてみるとそこにはぐったりとした少女がいた。事前に聞いて居た容姿から察するに、恐らくゆかと言う少女の筈だ。
りくや「…くそっ……どっかになんかないか……」
ゆか「………そ…そこ……きゃぁぁぁぉぁ!!!」
りくや「……そこ?……これか!?」
牢屋内を見渡すとイスとは独立した機械を見つけた。何やらややこしそうな感じがするが少女はまだ悲痛な叫びをあげているので諦める訳にはいかない。
りくや「機械なんてくわしくねーぞ、俺……!」
最初は丁寧に止めることを考えていたがわけがわからなくなり、ぶっ壊すことに決めた。ラッキーかなにかか、機械はストップして悲痛な叫びも荒い息へと変わっていた。
りくや「……大丈夫か?」
ゆか「……なんとか……ですけど……」
結果オーライだった、あれでとどめさしてたらやばかった。少女は少し息も落ち着き絶え絶えながら俺と会話できるようになっていた。
りくや「………あ、イスもだ」
たぶんあの機械でイスの拘束も制御できたんだろうけど見るに堪えない鉄塊になってるな…。
りくや「ちょっとじっとしてて」
ゆか「……は、はい…」
ちょっと触ってみるとグラグラとしていてがんばって引っ張れば取れるっぽい。とりあえず腕はガコンッという音を立てて外れた。
りくや「次は脚だ………っ!?」
しゃがみこんで足枷に手を伸ばしひっぱろうとすると幸か不幸か着物の隙間から女性ものの下着が……。
ゆか「……どこ見てんのよ!?」
りくや「……ぐはっ……痛ってぇ!何するんだよ!」
外した瞬間蹴られた。
ゆか「何してるのはそっちでしょ!?人の勝手に覗き込んで!」
りくや「み、見てねーよ!……もう片方も外すから動くなよ」
まだ痛む顔を撫でながら最後の足枷へ。まぁ、目線が下がるのでみえるわけで…ガン見してしまうのは男だからしゃーないよね?
ゆか「…………」
りくや「終わったよ」
ゆか「……見たでしょ」
りくや「見てない!……そういや、歩けるか?」
ゆか「……それくらい……あれ?」
椅子から立とうとしたが今までずっとこの形で固定だったのか、足に力が入らずそのまま倒れてしまった。
りくや「無理するなって。……よっと」
ゆか「きゃ!?……な、なに!?」
倒れたのをそのまま抱きかかえたらどうやらお姫様抱っこになったらしい。少女の顔はみるみる間に赤くなって行く。
りくや「脱出するぞ!」
ゆか「え?嘘、このまま?」
なにやら文句を言っているがここに長居したくないので俺はそのままでた。
ゆか「………何色だった?」
りくや「えっと……白?」
ゆか「……最低!」
抱っこからまたビンタされた。
────
涙カノ「なんかすみません」
鳩麦「いやまぁ、平常運転だね」
蕾姫「ラッキースケベかw」
霊獣「リンも近い物が……」
蕾姫「応急処置だw」
レオニス「次は自分です?」
鳩麦「そですね」
────
【マサキ(レオニス先生)】
では、まさきが行くのはりんとは逆の地下です。その奥の方に、一つだけひっそりとした黒い扉があります
扉を開けて中を見ると、小さな灯りの下に……黒い小さな影がわらわらと動いて居るのが見えました
まさき「……」
まさきが足音を消して近寄ると、その中央に、少女が一人必死になって剣を振り回して居るのが見えます。
といっても、既に全身黒い影に取り付かれ、息も絶え絶えですが
まさきは黒い影が……人を噛みもしないし痒みも出ませんが、大量に打つと確実に人を衰弱させ死に至らしめるごく弱い毒を持つ虫である事に気が付きました。蠱毒の壺に近いですが、用は蟲責めのようです。
まさき「チッ……」
まさきは鋭く舌を打つと、腰元から蒼風を引き抜いて正中線に構えた。少女がまさきに気付く余裕はなく、徐々に荒くなる息と剣先が、彼女に残された時間の短さを物語っている。
まさき「……」
状況は一刻を争う。だがまさきは少女に駆け寄るどころか、その場で意識を少女の動きに集中させた。
筋肉が示す僅かな伸び、縮み。それらを脳内で読み取り、彼女の動きを詳細に予測する。
そして。
まさき「……せっ!」
まさきはゆっくりと刀を振り上げると、目に見えぬほどの速さで振り下ろした。瞬間、風でできた刀身が暴風の奔流へと形を変え、少女の右腕の僅かに上を駆け抜けた。
?「きゃっ!?」
唐突に襲った暴風に、少女は身を強張らせた。が、そのときを見計らったように、まさきは次々と風を繰り出していく。少女の動き、虫の位置、全てが計算されつくした風は、尽く彼女の身体を掠め、その表面にこびりついていた虫だけを見事に吹き飛ばした。
あっという間に、壁に叩きつけられた虫達が潰れる。
?「ぁ……」
まさき「おい、大丈夫か?」
まさきが駆け寄ると、力を使い果たしたらしい少女はその場に崩れ落ちた。かろうじて意識はあるが、目は虚ろで、命の危機が差し迫っていることは誰の目にも明らかだ。
まさき「少し見るぞ」
言うが早いか、まさきは彼女の着ていた着物の帯を緩め、刺された場所を診た。だが、その数はあまりにも多く、彼女の体力的に見ても明らかに応急処置程度では間に合わない。
まさき「血清が要るな……。おい、言葉が分かったら答えてくれ。血清の場所は分かるか?」
?「……む、こう、の部屋……」
まさき「分かった。少し待ってろ」
消え入りそうな声に頷いたまさきは、虫の生き残りがいないことを確認してから彼女を座らせ、言われた部屋に向かう。
部屋の入口から中を覗くと、入口から5M程度の場所に、二人の男が話しこんでいるのが見えた。
「あの小娘何分持つかな」
「さあな。死んだら教えろって言われてるだけだし、後でもっかい見に行きゃいいさ」
「だな。いやあ、旦那も恐ろしいお人だぜ」
まさきは扉をもう少しだけ開けると、腰元から一枚の投剣を取り出した。表面には、毒々しい緑色をした即死性の毒が塗られている。
まさきは距離と方向を確認すると、僅かな隙間から手首のスナップを利かせてそれを投げ入れた。空気を切り裂く音さえ立てずに無音で飛んで行くそれは、右側の男の首筋に、トスッと軽い音で突き刺さった。
「が……っ!?」
首に穴を開けられたせいで声すら上げられぬまま、一瞬にして男は絶命、白目をむいて倒れた。
「!? お、おい! いったいどうし……!」
片割れの急死に気付いたもう一人が、慌てて助けるようにしゃがみこむ。が――
まさき「……遅いんだよ」
「……ッ!!」
男が言葉を言い終える前に、一瞬でもう一人の背後に回ったまさきが、後ろから男の喉元に短剣を突きつけていた。
まさき「血清はどこだ」
「な、なんのことだ……」
まさき「さきそこの部屋にいた少女を襲っていた毒虫の血清だ。さっさと言わないと……」
まさきは突きつけていた短剣を男の目の前にかざして見せた。
まさき「これは遅効性で、かつ致死率100パーセントの毒が塗られてる。死に至るまで5時間。その間地獄よりも過酷な苦しみを味わい、そして死ぬ。……さて、どっちがいい?」
「ひっ!わ、分かった!言う、言うよ!其処の棚だ!下から二段目。左から三番目の瓶!」
喚くように男が言って、棚の一カ所を指差す。
「さ、さぁ。言ったんだ。これで……!
まさき「ご苦労」
まさきは短く言うと、短剣で首元を一瞬で掻き切った。
「か、は……ッ!」
ひゅうひゅうと空気が抜ける音を喉から漏らし、十秒も経たないうちに男はこときれた。まさきは男の死体を無造作に横たえると、言っていた場所を探す。
まさき「……これだな」
まさきはその棚の中から一本の小瓶を取り出すと、全速力で少女がもといた場所に戻った。
まさき「おい、大丈夫か? しっかりしろ!」
まさきが戻ると、少女は壁に寄りかかったまま力なく項垂れていた。まさきが駆け寄って肩を揺すると、僅かに瞼を持ち上げて光の消えかかった濡れ羽色の瞳がまさきを視界に収める。
まさき「ほら、血清だ」
僅かながらも意識があることを確認したまさきは、血の気の引いた、しかしふっくらとした唇の間に血清を流し込む。
?「ゲホッ!ゴホッ!」
まさき「焦るな。ほら、水だ」
?「……!」
少女は差し出された水筒をぐいと呷って中の水を一気に胃へ送り込むと、力尽きたように意識を失った。一瞬背筋にひやりとしたものを感じたまさきだったが、彼女がすぅすぅと寝息を立てていることを確認して、ほっと安堵する。
まさきは彼女の隣に腰掛けると、隣の少女を見た。肌は雪のように白く、美しい塗れ羽色の髪と重なって美しいコントラストを描いている。顔のつくりはあどけなく、どこか天使のような雰囲気を感じさせるが、その体つきはしっかりと女性特有の丸みを帯びていて、戦闘とまさきが帯を緩めたせいで僅かにはだけた着物の間から覗く鎖骨や胸元が、艶やかな色気を醸し出す。
まさきはそんな少女の隣に腰を降ろすと、しばしの間、彼女の目覚めを待った。
えみ「ん……ぁ……」
どれほどの時間が過ぎただろうか。深い深い底に沈んでいたえみの意識が、ようやくぼんやりと覚醒した。
身体が重く、頭がズキズキと痛む。
えみ「あ、れ……わたし、一体……」
海賊に連れてこられた後、この部屋に剣を持ったまま閉じ込められたことまでは覚えている。確かその後、大量の毒虫に襲われて――
えみ「……っ!!」
身の毛がよだつ感覚に襲われたえみが、恐怖と不快感を滲ませた顔を突然上げ、塗れ羽色の瞳を見開いた。だがそこには、先ほどまで自分を包み込んでざわめいていた虫たちはかけらも存在していない。
?「目が覚めたか」
周囲を見渡したえみの視界に、虫の代わりに飛び込んで来たのは、少し長めに切り揃えられた髪の奥から優しげな瞳を覗かせた、一人の青年だった。
えみ「……!」
青年の存在に気付いたえみは、反射的に刀を取って立ち上がろうとした。が、まだ体から毒が抜け切っていないのか、バランスを保てずに転んでしまう。
まさき「落ち着け。俺は敵じゃない。その証拠に、虫を追い払って血清を飲ませただろう」
えみ「え? あ……」
空になった小瓶を見せる青年を見て、えみの中に微かに残っていた記憶が舞い戻ってきた。確か、自分が力尽きかけたときに突如突風が吹き、その後青年が薬らしきものと水を飲ませてくれた。その時の声からして、彼がその青年だろう。
えみ「……すみません。気が動転していて……。それと、ありがとうございます……」
まさき「いや。問題ない」
青年は一言だけ言って立ち上がると、えみの前に手を差し出した。
えみ「あ、ありが……」
えみはその手を取ろうとするが、手と手が触れる直前になって、躊躇したように動きが止まる。
しばらくの間、そのままの状態で静止していたえみだったが、やがて決意したようにその手を引っ込めると、その手を地面につけて頭を下げた。いわゆる土下座の体勢である。
まさき「おい、一体何を……」
えみ「わたしはこの島を代々管理している者で、えみと申します。実は、わたしの他に二人、姉妹がここに捕まっているのです。身勝手なことは重々承知しておりますが、どうか、どうか二人をお救いください……!」
まさき「それなら大丈夫だ。もう別の二人が助けに向かっている。今頃脱出を試みているだろうから心配はいらない」
えみ「そう……ですか……」
額を地面に擦り付けて懇願するえみにまさきが伝えると、えみは心底安堵したようにほうっと息をついた。が、それも一瞬のことで、再び緊迫した表情に戻る。
えみ「でしたら、今すぐにこの島を脱出してください。そのための時間はわたしが稼ぎますが、そう長くは持ちません。ですから、一刻も早く……!」
まさき「それは無理だな」
えみ「そんな……! 金品は奪われて何も残ってはおりませんが、他のもの……この身体などでよろしければ、幾らでも……!」
青年「落ち着け!」
えみ「……ッ!」
まさきが強い声で言うと、えみは萎縮したように黙り込んだ。それでも想いは変わらないらしく、頭を下げたまま縋るように「どうか……どうか……」と、うわごとのように呟いている。
まさきは彼女の前でしゃがみこむと、宥めるように話し出した。
まさき「……すまない。威圧したようなら謝る。が、俺たちの役割は、君たちを助け出すことじゃない」
えみ「それは承知しております。ですが、そこを何とか……!」
まさき「最後まで聞いてくれ。……俺たちの役割は、この島に巣食う鬼の討伐。わざわざ島の外まで逃げずとも、結果は変わらな――」
えみ「それは駄目です!!」
まさきの説明を遮るようにして、えみが叫んだ。その顔には、必死の形相が張り付いている。
まさき「何故、駄目なんだ? ……言っておくが、これでも腕に多少の覚えはある。それとも、何か姉妹のもとに帰りたくない理由でも?」
えみ「そんなこと……あるわけないじゃないですか……! 皆、わたしにとって唯一の家族なんですから。わたしだって、出来ることなら皆と一緒に暮らしたい……!」
俯いたえみの瞳から、クリスタルのように透き通った涙がつぅと流れ、頬を伝って土を濡らした。声は震え、耳が真っ赤に染まる。
まさき「なら、自分がしたいようにすればいい。人間てのは、やりたいことをやったとき、その逆よりもよほど大きな力を出せる生き物だ。どうせ全てをかけるなら、自分の感情にBETすべきだ」
えみ「……いいえ。それは出来ません」
宥めるようなまさきの言葉。だが、えみはそれにも首を横に振った。目尻に涙を限界まで溜めながら。
えみ「……わたしが言うことではないかもしれませんが、彼らの力は半端ではありません。一対一では有利でも、数の暴力で潰されてしまいます。現に、この島にいた僅かの守備隊は、一日も持たずに全員が血祭りに上げられてしまいました。……もう、この島を取り返すことなど、不可能でしかないのです。……ですから、お願いします。どうか……」
再び、すすり泣く声だけが陰湿な地下に響いた。その間も彼女の流す涙が乾くことはない。
――やがて、彼女の零した涙が小さな水溜りとなった頃。まさきは「分かった」と小さく言った。その言葉を聞いたえみが、僅かの希望を浮かべて顔を上げる。
えみ「ありがとうございます……! では、時間はわたしが責任を持って稼ぎますから――「覆せばいいんだな」……え?」
涙の痕が残る顔を僅かな希望に染めたえみだったが、まさきの少々的外れな発言に、一瞬戸惑ってしまう。
まさき「だから、覆せばいいんだろう? その『不可能』とやらを」
えみ「そんな……! それは……!」
まさきが鬼を討伐する考えを改めていないことを悟ったえみは、なんとか意見を変えさせるべく、必死に頼み込もうとする。
そんなえみを前に、まさきはにやりと不敵に笑うと、自信に満ちた声で言った。
まさき「無理じゃないさ。いつもやっていることだ。……俺はまさき。職は学者。不可能とされた定説を覆し、可能を証明することが本分だ」
えみ「……!」
えみが目を覚ましたときの優しげな視線とも、その後のクールな雰囲気とも違う、自信に満ちた不敵な表情。今まで見せてきたものとのギャップに、えみの心臓がトクンと跳ねた。
――この人なら、本当にどうにかしてしまいそう。そんな、根拠のない期待が胸のうちで膨らんでいく。
ドクドクと跳ねる心臓のせいで、えみが中々まさきから目を離せずにいると。不意にまさきがえみから目を背け、申し訳なさそうに言った。
まさき「……それで、出来れば着物はきちんと着なおして欲しいんだが」
えみ「え……? あ……っ!」
言われて気付いた。えみの着物は元々戦闘で僅かに着崩れていたところを、まさきが応急処置のために帯を緩めたのだ。しかも、その状態で転んだり土下座したりしている。
その結果、えみの雪白の肌を隠すためにあるはずの布地は、彼女のふくよかな双丘の頂点手前に辛うじて引っかかっている状態であり、その先端すら何とか隠しているものの、かなり際どい状態であった。
えみ「す、すみません! 今すぐ直し……きゃぁっ!?」
えみは自分の格好に気付くや否や、即座に立ち上がった。このとき毒はもうかなり抜けていたらしく、力が入らずに転倒ということはなかった。のだが。
――たった一つ問題点を挙げるとするならば、立ち上がる際、慌てていたためにずり落ちていた着物のすそを踏んでしまっていたことだろう。
考えてもみてほしい。本来着物を固定しているはずの帯が意味を為していない状態で、下側を固定したまま急に立ち上がった場合にどうなるのかを。
えみ「あっ……!」
まさき「……」
途中の違和感でえみはようやく自分の失敗に気付くが、立ち上がることをキャンセルすることもできず。
ファサッ、という衣擦れの音だけを残して着物が地面へと完全に落ち、辛うじて隠されていた全身が、布一枚に覆われた秘所を残し、完全に露になった。……すらりと伸びた肢体も、白い双丘の頂点も、全て。
えみ「―――――ッッッ!!!!!」
まさき「…………」
二人の視線がえみの身体にあつまり、そして、再び交錯して。
えみ「後ろ……」
まさき「あ、と……?」
えみ「後ろ向いててください……っ!!」
えみの裏返った叫び声に、慌ててまさきが後ろを向くと、えみは顔を真っ赤にしていそいそと着物を着なおすのだった。
えみ「その……、もう、いいですよ……」
まさき「あ、ああ……」
えみが帯を巻き終わって声をかけると、まさきがおずおずと振り向いた。瞬間、さっきのことが脳内に蘇り、顔が爆発しそうに火照る。
まさき「……行けるか?」
えみ「……はい」
まさき「……それと、敬語はいい。面倒だ」
えみ「……は……う、うん」
もう、えみの頭の中に自分が囮になどの考えは全くなかった。否、考えられなくなったというべきか。
隣を歩く、まさきと名乗った青年の顔を覗くと、それだけで顔がかあっと熱くなり、心臓が早鐘を打つ。それでも裸体を見られたことに対する恥ずかしさは徐々に消えていったのだが、それとは違うもう一つのドキドキはずっと胸の中に残り続けて、逆に強くさえなっていた。
――まるで、何かの毒に冒されてしまったみたいに。
────
鳩麦「十分アンタもイチャイチャじゃないかw」
レオニス「いやまぁ、ねぇ?」
涙カノ「しかし……思えばこれはネタばれに当たるのでは」
蕾姫「まぁそれ言いだすと此処で中断だが……」
メンバー「「「「……ま、良いか」」」」
涙カノ「てかまさきくん容赦ないですねw」
レオニス「え?だって逆に聞きますけど涙カノ先生、ヒロインにあそこまでやられて手加減します?」
涙カノ「……しませんねw」
蕾姫「そもそも敵に情けとか無用。寧ろタダでは殺しませんがw」
鳩麦「ヒロイン出て来て無い俺に死角なし。さてと、書かねば」
蕾姫「ボッチだねw」
鳩麦「ほっとけ!良いもん!こっちはこっちで敵とイチャイチャするもん!!」
連夜「ホモ?」
鳩麦「違ぇから!!」
なべさん「ごく一般的な遊びを行うんですね分かりますw」
霊獣「それはつまり……」
ULLR「あれですね」
一同合掌
────
さて、正門ではと言うと、相変わらずりょうによる一方的な虐殺が巻き起こっていたりした。
「ふざけんな!!男一人になにやってる!!」
「し、しかし「ぎゃあああっ!?」ひっ!?」
何をされたのか空中に吹き飛んだ20人以上の人影が、虫のようにばたばたと地面に叩き付けられる。切り裂かれた身体からまき散らされた血は、雨のように彼の元に降り注ぎ、赤い雨の中、彼は言った。
りょう「やれやれ。練度が足りないんじゃない?“男一人”にこれじゃねぇ?」
まるで世間話もするかのように言うが、彼の周りには既に3桁に登ろうかと言う死体がごろごろ転がっている。
そのギャップが、ますます狩られる側の者たちを焦らせる。
「な。何してる!殺せ!」
「う……おああぁ!!」
りょう「……はぁ」
「ごっ!?」
りょうは正面から突っ込んで来た男の顔面に、冷裂の柄をぶち当て黙らせると、そのまま地面に向けて立てるように背中に回した冷裂を、背中で振り上げるように振り下ろし、後方に居た敵を惨殺する。
と、右から振り下ろした隙を狙ったつもりなのか振り下ろされた刀をひょいとかわすと、振り下ろした本人の顔面を鷲掴みにして……
りょう「黙ってろゴミ屑!!」
地面に叩き付けて更にその頭を地面が凹む勢いで踏みつけ、黙らせる。
ついでに左から来た男の顔面を地面に冷裂を突き刺し手ぶらになった左手でつかむと……
りょう「おるぁっ!!」
立ち上がりながら振り上げた膝蹴りに叩きつけて相手の意識を消し飛ばす。
そのまま掴んだ頭は離さずにいっきに振り回すと、後方から近付いてきた一段に彼を投げつける……と言うか叩き付ける。そして……
りょう「ぶちまけろ!」
空中に飛び上がり地面と垂直に三回転。言われた通り、彼らはまるでミキサーに入れられたように自身の中身を周囲にぶちまけて果てた。
りょう「やれやれ。ほんとに数はいっちょ前な。」
言いながらりょうは冷裂を担ぎ直すと、首だけを回して奥にいる頭目らしき男を睨む。
りょう「まあ良いや。所で、諸君……今更だけど、旅立つ準備は出来たかね?」
にやり笑った彼の顔は、返り血でどす黒く真っ赤に染まっていて、それはまるで……
「あ、赤鬼……!」
────
メンバー「「「「(鬼って)お前かよww」」」」」
鳩麦「何時から鬼が海賊だけだと錯覚していた?」
蕾姫「りょうマジバーサーカーw」
涙カノ「寧ろ海賊よりよっぽど怖いんですが」
レオニス「ラスボスはりょう説w」
ULLR「有りえなくないw」
鳩麦「言いたい放題だなお前らw!ほれ!次行くぞ!」
────
では表に出ていた海賊の過半数が倒れ、呻くものも殆ど居なくなった庭先に、“陽動”を行っていた筈の男が立っていました。
男は海賊の一人の顔面を掴んで、目の前につるし上げています。
其処に、三人の男がやってきました。
りょう「よぉ、救出終わったのか?」
りくや「…終わったけど……何この良い子はみちゃダメな風景」
りん「はぁ……これは陽動ではなく殲滅だ」
戻ってきたメンバーは、其々の救出対象をしっかり確保していました。りん等は、服を着せた詩乃を背負ってますが、それと反比例するようにリンはかなり薄着になっていました。
りょう「固いこと言うなって。おなじようなもんだ。てか、なんだその格好……お楽しみでした?」
りん「そんなわけあるか」
りょう「冗談冗談」
呆れたような顔で言うりんに、りょうは笑いながら返す。
と、ふと気が付いたように、
りょう「しかし……まあびしょぬれだなおい」
リン「まあ、そこは察しろ。で、盗賊はこれで全部か?」
りょう「この屋敷に居るのは全部みてーだぜ?なんか暴れてたら皆でてきちまった」
りん「…………」
肩をすくめて言ったりょうに、りんはやれやれと首を振った。
と、そんな彼をよそに、メンバーは其々で話しこんでいるようだ。其れを見ながら、リョウは苦笑して言う。
りょう「なんだよ、姉妹揃って美人さんだなオイ」
りくや「美人って……こんな乱暴な人がっ!?」
ゆか「誰が乱暴なのよ!」
えみはりくやに対して、お姫様だっこの状態でビンタをかましている。その脇では……
えみ「お姉ちゃん……よかったぁ……」
まさき「とりあえず一段目の証明はできただろう?」
えみ「……! うんっ……!」
まさきが珍しく表情を柔らかくして、えみがそれに泣き笑いのような顔で頷いて居た。
りょう「っは~……お前ら何そろって美人とお近づきになってんだよ。俺だけ野郎の相手だし」
りん「リーダーはもう居るだろうに」
りょう「は?」
りょうが若干口を尖らせてそう言うのに、りんは苦笑しながら返す。しかし当の本人は何も分かって居ないようなので、再び呆れた表情になった。と、不意に、りんの背中で、お詩乃が目を覚まします。
詩乃「ん……ここは?」
りん「起きたか」
ゆか「……姉さん……無事なの?」
えみ「お姉ちゃん! 大丈夫!?」
目を覚ました詩乃に、妹達でもあるゆかとえみが心配そうに近寄ります。二人と違い別段外傷はなさそうでしたが、三人の中で最も衰弱しているように見えたからです。
しの「なんとかね……。この人が助けてくれたから。ゆかは大丈夫?」
ゆか「……うん。こっちもあのちっこい人が助けてくれたから」
りくや「誰がちっこいんだよ!」
りん「確かに小さいな」
ゆかの発言に突っ込んだりくやの後ろで、りんがなんともなさそうに言って、自分より背の高い男子三人を見回したりくやが一言も発さずに轟沈します。
しの「えみも、大丈夫だった?」
えみ「うん! わたしも、この人が助けてくれたから……!」
言いながら、何故かえみは頬を朱くします。何人かのメンバーはそれでまさきを見ましたが、当の本人は全く気が付いている様子が有りません。
と、りょうがふと思い出したような様子で口を開きました。
りょう「そーいやさお前ら。此奴らのバックが居るって話、したっけ?」
りょうの言葉に、メンバーは少し意外そうな顔をして答えます。
りくや「初耳だけど」
りん「いや、初めて聞いたが……」
まさき「俺も聞いたことがないな」
そうなのです。お幸から聞いた話を、りょうはあらましを話しただけで、明確な所を伝えていないのでした。
ついでに言うと、りょうは先程ボコボコにした海賊メンバーから、新たな情報も得ていたのです。
りょう「超が付くドSの武家のボンボンらしいぜ?その子ら、なんかされてなかったか?」
りくや「………されてた、な」
内容は言わない物の、各々険しい顔をして答えます
りん「……察しろって言っただろ……」
りんは、少し震え始めたしのの頭を撫でながらの答えでした。そして……
まさき「ああ。こっちもだ。……待てよ? 確か、賊の一人が『旦那』とかなんとか……」
りょう「あー……すまん。んで、だ。そのボンボン。今どこに居ると思う?」
言いながら、りょうは海の向こう。目を凝らすと微かに見える、小さな灯りを見ました
りくや「……なにあれ?」
りん「まあ、ここに来る人間は限られてるわな」
まさき「黒幕様のご登場、か」
三人が海の向こうを見つめる中、りょうが面白がるように言います。
りょう「船。それも南蛮から輸入した……超大型ガレオン船だとさ……ま、ようはクルージング気取って戻ってきたボンボンをどうするかね。って話だな」
りん「成程……なら」
目を細めた後、ニヤッとりんがうっすら笑った。
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鳩麦「じゃありんが罠を仕掛けると言う事で?」
蕾姫「任せろw」
涙カノ「こええw」
レオニス「絶対キルトラップですよね」
蕾姫「寧ろそれ以外に何が有る」
……続く
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