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久遠の神話

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第七十話 富と地と名とその十三

「それで朝ですが」
「朝?」
「朝といいますと」
「朝の部活は」
「あっ、今からです」
「今から行きます」
 そうするとだ、二人は高代の問いに答えた。
「朝はランニングにサーキットトレーニングです」
「夕方も走りますけれど」
 そういったものがメインになるというのだ。
「うちの先生剣道よりもまずは走れって言いますから」
「朝も夕方も走っています」
「部活は勝つ為のものではないですからね」
 高代は二人の話を聞いてこう返した。
「身体を健康にし精神もです」
「鍛えるんですね」
「いいものにしていくものなんですね」
「そうです、ですから剣道自体の稽古ばかりするのもいいですが」
 それと共にだというのですが。
「走ることはいいと思います」
「先生もそう仰っています」
「学生の時代は走ることが第一だって」
「走れば足腰が鍛えられて健康にもいいと」
「それで黙々と走る中で心に感じるものもあって」
「剣道もまずは走ることからだって言われています」
「そうなんです」
 二人は高代に話す、彼等がいる剣道部の考えを。
「それでこれからもです」
「走るんです」
「いいですね、あの人らしいですね」
 高代も剣道部の顧問の先生とは知り合いだ、それで言うのだった。
「走ることを第一に置かれていますか、今も」
「はい、お陰で足腰がかなり強くなりました」
 上城は歩きながら自分の足を見た、そのいつも走っている足を。
「何か剣道の時もしっかり動けています」
「全ては基礎から、走ることは運動の基礎ですから」
「だからいいんですね」
「基礎を教えない先生は駄目です」 
 剣道部でも剣道の稽古ばかりでは駄目だというのだ、ただ勝つ為に生徒にそればかりをさせている教師は自分の得点の為にしているのだ、こうした教師は生徒のことなぞ何一つとして考えていないのである。
 そうした教師はどうなのか、高代はこう切って捨てた。
「反面教師です」
「そうした先生が、ですか」
「反面教師ですか」
「それ以外の何でもありません」
 こう言ったのである。
「そうした人がいる部活には近寄ってはなりません」
「絶対にですね」
「そうした人に近寄ったら」
「反面教師として見るにはいいですが」
「傍にいたら大変なことになるですね」
「そうなるんですね」
「はい、ですから」
 だからだとだ、高代は二人に今は確かな顔で話す。
「今の部活の先生は信じて下さい」
「そしてそうした先生には近寄らないことですね」
「基礎を教えない先生は」
 ただ単に教えることが極めて下手か生徒を早く、自分の得点の為に勝負に勝たせることしか考えていないからだ。
「貴方達はまず基礎を学ぶ段階なのですから」
「学生はですね」
「まだ、ですね」
「そうです」
 こう話しながら三人で登校した、高代にとって運命の日の朝はまずは穏やかにはじまった、しかしその日常は間も無く大きく変わろうとしていた。


第七十話   完


                               2013・5・30 
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