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久遠の神話

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第七十話 富と地と名とその十二

「お互いに育てるものなのですね」
「えっ、先生もですか?」
「生徒に育てられるんですか?」
「はい、私は今このことを実感しています」
 このうえなく優しい微笑みでの言葉だった。
「これまではそれ程感じてはいませんでしたが」
「今はなんですか」
「そのことを」
「感じています」
 そうだというのだ。
「このことは貴方達もやがて理解されると思います」
「いや、生徒が先生を育てるなんて」
「それはないですよ」
 このことは二人共わからなかった、樹里もだ。72
 だから学校に向かうその朝の道でだ、今は首を傾げさせた。
「そんなことあるんですか」
「有り得ないと思いますけれど」
「人は誰も教師であり生徒です」
 こうも言う高代だった。
「そういうことです」
「反面教師ですか?」
「そうなんですか?」
「その場合もありますが」
 反面教師、それもあるというのだ。
「ですがそれでもです」
「皆が先生で生徒ですか」
「それが学校なんですか」
「学校とは限りません」
「あれっ、限らないって」
「それって」
「社会、世の中全体です」
 その全てがだというのだ。
「全てが学校でありです」
「誰もが先生ですか」
「それで生徒なんですか」
「このことはお二人ならやがては」
 必ず、だというのだ。
「おわかりになって頂けます」
「だといいんですけれど」
「そうなら」
「ではです」
 それならと言ってだ、高代は。
 前を観たままだ、二人にこうも言った。 
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