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迷子の果てに何を見る

作者:ユキアン
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第十五話

 
前書き
人間誰しも間違いはある。
あっ、オレ人間じゃなかった。
byレイト 

 
第十五話 整理

side エヴァ

眼を覚ますと、そこには自分と同じベットで自分と同じ様に何も着ていないレイトが寝ている。
昨夜のことを思い出し顔が火照るがそれよりもレイトが目の前にいてくれるということが、夢でないということがたまらなく嬉しかった。

「どうしたんだキティ」

いつの間にかレイトが起きて心配そうな顔で私を見ていた。

「夢じゃなかった」

「夢なんかじゃないさ。オレはここにいるし世界から弾き飛ばされようがすぐに帰って来れる様にもなった。だから泣くな」

私を抱きしめ子供をあやす様に撫でてくれた。

「私は泣いているのか」

「オレがいなくなってからまともに泣いてなかったんだろ。結界も張ってあるから思いっきり泣いちまえ」

そう言われて私の感情は一気に爆発した。



side out






side レイト

エヴァが落ち着いてから服を着替え朝食をとりながらこれまでのことを話し合う。
オレは『根源』に飛ばされたこと。オレに理解できないことは何も無いということを知ったこと。そこからブリミルに召還され、その後こっちに戻ってくる際にちょっとばかし神に話し合いと言う名の殺し合いをして来たことを話す。えっ?殺し合いの結果?
TKO勝ちで殺してはいませんよ。代わりに上位神が出て来て、ある条件を出されこの世界に正しく帰ってくるのとは別に前報酬付きで帰ってきました。
条件のことはとりあえず置いておいて、次にエヴァの話を聞きます。

エヴァ自身はオレの跡を継いで教授になりオレの部屋の管理と禁忌系の呪物や技術の封印を行っておいてくれたらしい。これには素直に感謝したがその場合あのグレート=ブリッジで使われたアレがどうやって手に入ったのかが分からなかったがすぐに判明した。
エヴァが管理し始めたのがオレが消えてから数十年後からだったのでその間に盗まれただけだった。
確認したがかなり危ない順にあと7種類程、合計10点の兵器が盗まれていた。
どれもこれもが使い捨てであるため残り9回の大量虐殺が行われる可能性がある。
これは全部回収して破棄して、使用許可を出した元老院を抹殺することが確定した。

それから今回の戦争についてだが、昔からあった旧世界からきた奴らと亜人系の戦争らしい。
正直な感想が立派な魔法使いのくせに侵略戦争とはこれ如何に。
と言った所か。
ぶっちゃけどうでも良いことだが基本戦争には介入しないことにする。オレの『誇り』を穢される様な行為が行われればその限りではないが連合は苦戦を強いられるだろう。
命令を出す元老院のじじいどもを殺されるのだから。
その後、このスタンスをエヴァに伝えると自分も一緒に行くというのでもちろん許可を出す。
まあ、言われなくても連れて行く気だったので問題は無い。

「そういえば気になったのだが、レイトのはどんなアーティファクトなんだ」

「......アーティファクト?」

「......お前まさか忘れていたのか」

「そういえば契約カードを使用して特殊な魔法道具を召還できるんだったな」

「本気で忘れていたんだな」

「面目御座いません。それどころか召還し方すら知りません」

「......まあ、無くても十分強いもんな。とりあえず私のを見せておこう。アデアット」

エヴァが呪文を唱えると契約カードが一冊の本に変わった。

「ぱっと見は普通の魔道書だな。ちょっと貸してくれ」

エヴァから渡された魔道書を理解する。



従者の称号: <理解された吸血姫>

カード番号: 1
色調:黒
徳性:知恵
方位:中央
星辰性:冥王星

アーティファクト: 『魔を内包する書』

形状: 魔道書

効果:所有者が内容を理解している魔法を準備や段階を無視して一瞬で発動させることが出来る。その際の魔力消費量は若干多めに必要とする。使い方はページを一枚破り呪文名を唱えながら魔力を込め投げるだけ。

条件:特になし。

備考:内容を理解していればどの系統の魔法でも使用可能。






「なんだこれは、反則じゃないのか」

「ああ、お前が教えてくれた魔法も全て使用できる」

「ますます反則だな」

「まあ、このような物が手に入る。一種の宝くじだな」

「ならオレはどんなのか。アデアット」

だが契約カードが消えるだけで何も召還されることは無かった。

「どういうことだ」

エヴァが不思議そうにしているがオレにも何がなんだか分からなかった。

「とりあえず一度戻してみろ。戻し方はアベアットだ」

「わかった、アベアット」

今度は正しく契約カードが現れる。

「改めて見るとこの契約カードはおかしいな」

「どこがなんだ」

「普通、カードには契約者とアーティファクトが描かれているんだがこれにはお前しか描かれていない。他の部分には異常が見当たらないのにだ」

「なら理解した方が早そうだな。アデアット」

もう一度召還し服装やら身体を理解し直すとやはりアーティファクトは出ていたようだ。





従者の称号:<神に最も近い存在>

カード番号:0
色調:無色
徳性:知恵
方位:中央
星辰性:太陽

アーティファクト:『理解を現に』

形状:無し

効果:所有者の『理解』を世界に反影させることが出来る。

条件:完全なる『理解』が必要。

備考:生物、無機物等の制限は一切なし。個体差も表現することが出来る。









「......これを作ったのは神か?」

「何か分かったのか」

オレはエヴァに包み隠さず全てを話した。

「称号の<神に最も近い存在>も全くの嘘ではなくなってしまったな」

「後は不死になれば確かに神になれそうだな」

「......笑い事ではないな」

「......そうだな。とりあえず封印という方向に、いかなくてもオレしか使用できそうにないな」

「完全な『理解』が必要なのだから無理だろうな」

「なら切り札ということで」

オレはアーティファクトを展開したままにしておく。
物体として存在していないから武装解除もきかないし油断も誘える。なんて都合がいいのだろう。




朝食をとり終わりニュースを見ていると昨日のグレート=ブリッジのことが取り上げられていた。
原因不明の攻撃により連合、帝国両者は大打撃を受けたことと、行方知れずだった『形なきもの』が戦場に現れたことの二点が発表されていた。
ちゃんと赤き翼たちはオレのことを報告してくれたみたいだな。
連合はオレの懸賞金を更に上げ討伐対象にも仕立て上げたようだ。
まっ、どうでもいいか。
そう考えているとまた黒服の人たちに囲まれてしまいました。
学園長が会いたいそうです。
めんどうだけど会わないという選択肢は存在しないな。
さて、どうなることやら。

side out
 
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