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PWS TALES OF THE WORLD 3

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1
二章
  無知、未知

 
前書き
形は記憶から為るもの。 

 
「イーリス」

目の前の緑色の髪をした、どこかぼやーっとした様子の彼女はたっぷり間を置いてからそう答えた。
この子、なんで名前を名乗るのにあんなに時間をかけたんだろう?
警戒、してる?

うーん…、そういう感じでも無いし…。

それにしても、イーリス、か。

「いい名前だね!」

イーリス、今まで聞いたことのない、けれど、惹かれる名前。
とても心に浸透する名前だ。
濡れたような瞳。心許ないような、か弱い身体と、庇護欲を掻き立てるような頼りない肩。
可愛いなぁ、と。そう思った。
バンエルティア号に戻れば可愛いとか、綺麗っていう人はいるけれど、みんながみんな違う可愛いと綺麗で、この子もまた、そういうみんなとは違う可愛いの女の子。
ジッとわたしを見つめるその琥珀色の瞳。
ふるふると震え、頼られているような、そんな気持ちになる。

「ねぇ」

それを振り切り、聞きたいことを思い出す。
絞り出してそれを聞いた。

「ここら辺で光、すごく強い光だったんだけど、見なかった?」
「……?」

顕著な反応はなかったけれど、傾げた首でなんとなくわかった。
きっとこの子は知らない。
そりゃそうか。この子は眠っていたもんね。
少し落胆したけど、笑ってそっか、と言った。

ここら辺だと思ったんだけどなぁ…。
むしろこの子が光を放ってたり?
なんて思ってしまう。
見間違いじゃ無ければ、この子はわたしがここに到達するギリギリの瞬間まで、光に包まれて宙に浮いていた気がしたから。
勿論そんなことはありえないけど。
もしかしたら、という希望がわたしの胸にはためく。
ひらひらと、諦め悪くそんなことを考える。
魔法だったら、そういうのもあるんじゃないか、って。
わたしの知らないことの方がこの世界には多い。
そうでしょう?と、自分の希望じゃない部分に聞いてみる。

「あなたは、魔法を使えるの?」
「……?…わかんない、かな」
「え?」
「ここ、どこ…?」
「えっと、ルバーブ連山っていう、ダンジョン地区だよ?」
「ダンジョン地区…、ってなに?」
「えっ?」

この子、まさか…。

「えっと、ダンジョン地区っていうのは、ギルド連盟っていうとこの人達が認定してる、『ここを一般人が交通するのに護衛がいたほうがいいよ』っていう危険地に指定してる場所だよ?」
「そうなの?ここ、危ないの?」
「うん。ちょっとね?あなたは、ここにどうやってきたの?」
「わかんない」

やっぱり。
最後のは確認の質問だったんだけど。
この子は、きっと記憶が欠損してる。

「名前以外に、わかることは?」
「……?」

少し悩むような仕草で空を見る。
手を太ももに挟んで、じっくり考える。
というより、ぼやーっとしている。
すんごいぼやーっとしている。
可愛らしく顎を上げて、じっくり。

「わかんない、かな…?」
「わからないの?」
「…わかんない、と思う」
「どうして?」
「わかんない」
「そっか…」

完全に、記憶喪失だ。
目はしっかりしているけど、目線はどこか虚ろだ。
不安なんだ。きっと。
だから、何を見ていいかわからないんだ。

「わたしと一緒にいこ?」

気がついたらそんなことを言っていた。 
 

 
後書き
ポツリポツリと書いていきます。 
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