お正月
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第四章
「最初はまずいって思っても」
「こうして飲む様になるんだよな」
「美味い美味いって」
「今みたいに」
「御前等もすぐにわかるよ」
俺は今も飲みつつ小さな従兄弟連中に言った。何時の間にか人生ゲームはしまわれていて酒とつまみを囲んでいる。
「俺達の歳になればな」
「そうなの?ジュースよりも美味しいの?」
「そうなるの」
「なるよ、絶対にな」
俺はこう言ってまた飲んだ、けれど小さな子達はそれ以上は飲まずにジュースを飲んだ。
そうこうしているうちに夜になってだ、すき焼きの時になると。
叔父さん叔母さん達は俺を見てだ、笑顔でこう言ってきた。
「いやあ、大きくなったねえ」
「暫く見ないうちに」
「もう親父さんよりも大きいじゃないか」
「本当にすぐに大きくなるなこの歳の頃は」
「そうだよな」
「あはは、そうなんだよね」
俺からもだ、笑って叔父さん叔母さん連中に返す。
「実際この一年で七センチ伸びたよ」
「ああ、七センチか」
「七センチも伸びたの」
「一八〇になったよ」
今の身長のことも言った、自分で。
「もうさ」
「そうか、本当になあ」
「大きくなったんだな」
「じゃあすき焼きも相当食べるんだな」
「そうよね」
「うん、大好きだしさ」
すき焼きだけじゃなくてだ、肉自体が大好きだ。見れば寺の大広間に台を幾つも置いて鍋も幾つも用意してそれぞれの家族単位で囲んでいる、その中にもう皆集まっている。
その部屋の中の座布団の一つの上に座った俺にだ、叔父さん叔母さん達はもう出来上がっている顔で言うのだった。
「今日も食うよ」
「よし、じゃあな」
「今日は賑やかにね」
楽しもうとだ、こう話してだった。
皆でまた飲んですき焼きを楽しんだ、それはもう何が何だかわからないものだった。
飲んで歌ってだった、隠し芸をする人もいた、漫才もあった。
そうしてとにかく馬鹿騒ぎをして途中交代で風呂にも入って真夜中まで騒いだ、最後は皆もう用意していた布団の中に入った、ただ俺は自分の部屋に戻って寝たと記憶していた。
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