Element Magic Trinity
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不幸な涙は仲間の為に
前書き
タイトル・・・漫画だと「ルーシィVSジュビア」なんですけど。
ここにルー入れると長いよなーと思ってオリジナルで創りましたが。
・・・変ですね。
「ヒャハハハ!地獄に連れてってやんよー!メスブタがああァァァ!」
暗殺ギルド・髑髏会、特別遊撃部隊・三羽鴉の1人、ヴィダルダス・タカの魔法『ロック・オブ・サキュバス』によっておかしくなったジュビア。
「な、何よコレぇ・・・」
「しっかりしてよぉ、ジュビア・・・」
そのジュビアを見てルーシィとルーは戸惑ったように声を掛ける。
「サキュバスのトリコになった女は俺の命令しか聞かねぇ」
「まさか、そのギターの音でジュビアが・・・あれ?何であたしとルーは大丈夫なのかしら」
「んー?何でだろーね?ねぇねぇ髪長パンクおじさん、どーして?」
ヴィダルダスは名乗ったというのに、相変わらずのネーミングセンスを発揮するルー。
どうやら、彼の頭の中にヴィダルダスの名前は残っていないらしい。
頭のネジが1本抜けて、代わりにシメジが刺さっているであろうルーの記憶に残っていたヴィダルダスの名前は、ジュビアがおかしくなった事によって消え去ったようだ。
「ヒヒっ、いいトコに気がつくねぇ。まず、俺は男にゃ興味がねぇ」
「僕・・・いつもこんな事言われてる気がする・・・」
若干落ち込むルー。
「それに、2人ともトリコにしちまったらゲームの面白みがねぇ!俺が見てぇのは女同士のキャットファイトよ!『服が破れてポロリもあるよ』ってやつさ!」
「最低ね」
「わー、サイテー」
呆れたように呟くルーシィとルー。
が、2人の放った『最低』という言葉がヴィダルダスに火を点ける。
「『最低』こそ最高の賛辞だぜーーー!イヤーーー!」
「ロックも知らないネンネは死んどきなー!」
ヴィダルダスに続くように、ジュビアが叫ぶ。
その瞬間、ルーシィとルーはサーファーが大喜びするような高波に囲まれていた。
「うわっ!」
「わわっ!」
突然の波に戸惑い、驚愕する。
「せっかく着替えたのに!」
「!ルーシィ!前、前っ!」
すると、何かに気づいたルーが慌てたようにルーシィのちょうど前を指さす。
その指の先には、水の中から顔だけを出すジュビアがいた。
「どこから食いちぎってやろうかね!」
「ちょっと!ジュビア本気!?」
「ほ、本気っぽいよルーシィ!この目はかなり本気だよぉぉー!」
ジュビアの手がルーシィに伸びる。
手だけではなく、水の勢いと共に、ルーシィに向かっていく。
戸惑うルーシィに容赦なく、ジュビアは裂いた。
「その無駄にでけぇチチだなっ!」
「ひいいいっ!」
―――――ルーシィの着ていた星霊界の服の、ちょうど胸辺りを。
「ヒャーッホウ!コレだよコレー!」
「わわわわわっ!?大空目隠ーっ!」
望んでいた女同士のキャットファイトに、ヴィダルダスは歓喜の声を上げる。
ルーは大慌てで風を操り、自分の目を封じた。
淡い緑色の光を纏った風がルーの目だけを綺麗に塞ぐ。
「な、何すんのよ!」
「ル、ルーシィ・・・もう、目・・・開けてもいい?」
「えぇ!」
ルーシィは髪の毛を高い位置で結んでいた布を取り、胸に巻く。
戸惑ったように舌足らずな口調でルーが呟き、ルーシィが頷き、やっとルーの目隠しが外れた。
その頬は、心なしか淡い赤色に色づいている。
「ヤッ!ハァ!」
「いっ!」
「うぐっ!」
それとほぼ同時にジュビアの頭突きがルーシィとルーの額に決まる。
「アンタ妖精の尻尾に入りたいんでしょ!」
「だったら、仲間に攻撃なんて・・・!」
頭突きされた額を押さえ、ルーシィとルーが叫ぶ。
が、操られ、ヴィダルダスの命令しか聞かない状態のジュビアには、何も言っても無駄だった。
「やべばっ!」
「むぐっ!」
全身を水へと変換し、その水は容赦なくルーシィとルーを襲う。
「痛っ」
「くっ」
右手でルーシィの金髪を、左手でルーのエメラルドグリーンの髪を掴み、床すれすれを飛ぶように走るジュビア。
「きゃあ!」
「うわっ!」
そして勢いをつけたまま、2人から、2人を投げるように手を離した。
その両手に金色の髪と緑色の髪が数本握られ、手を開くと同時にパサリ、と床に落ちる。
「うう・・・」
「痛いよぉ・・・」
「ヘイ!ヤー!髪ー!シビれるぜ!ヒャハハハッ!」
思わず頭を押さえるルーシィとルーを見て、ヴィダルダスはギターを鳴らしながら嬉しそうに叫ぶ。
「水流烈鞭!」
「ちょ・・・!痛ーーーい!」
「くっ・・・!大空烈鞭!」
ピシィ、と。
鞭が撓る音が響く。
ジュビアの両腕が水の鞭と化し、ルーシィとルーを叩いている。
やむを得ず、といった表情で、ルーは左手のジュビアに向け、その掌から風の鞭を放ち、向かってくる鞭を防いだ。
「これ・・・!ロックっていうか・・・!」
「うん・・・これはロックというより・・・」
「「ドS!」」
半泣き状態のルーシィと、困ったような表情を浮かべるルーの声が重なる。
「変態ドMコンビ!ジュビアの中で砕け散りな!」
「何よそれー!」
「ちょっとそれはお断りさせてもらいたいなぁ!」
ルーの珍しく丁重なお断りは見事なまでに無視された。
ザバァ、と海岸で耳にするような音が響き、ルーシィとルーは再び全身を水へと変えたジュビアの水に襲われる。
(ダメだ!完全に操られてる。どうしよう!ジュビアとなんて、まともに戦って勝てる訳ないし・・・)
(あの時は水を凍らせられて、しかもちゃんとした攻撃が出来るグレイがいたからいいけど・・・後方支援が得意な僕と最強チームの中で1番弱いルーシィの2人じゃ、ファントムのS級に当たるエレメント4だったジュビアに勝てる訳ない!でも、どうにかしないと・・・)
そう。
ここにいるのが攻撃する事を得意とし、尚且つ自分と同じ体を持つティアだったら、自分の弱点を突く事でジュビアを倒せる。
攻撃と防御、両方が可能のアルカなら、相手は水のため大火は使えない。が、大地を取り戻した為、戦えるには戦える。
グレイなら水を凍らせられるし、ナツは魔法の相性的には悪いが、限界まで戦い、勝つだろう。
・・・なのだが、ここにいるのは戦うのがあまり得意ではない星霊魔導士と元素魔導士。
しかも相手はエルザやティアと同じS級の実力を持っている。
勝てる確率はかなり低いだろう。
(・・・ああ!どう考えても思いつかないよ!銃はあるけど、仲間に銃を向けるなんて出来ないし・・・!)
ルーが必死に悩んでいた、その時。
『ルーシィさん。ルーさん』
「「!」」
ジュビアの声が聞こえた。
「キャハハハッ!苦しめ苦しめぇ!」
『外』にいる―――――ヴィダルダスによって操られているジュビアは、ルーシィとルーを『敵』として見た言葉を叫ぶ。
が、『中』にいる―――――ルーシィとルーが聞くジュビアの声は、それと正反対だった。
『こんなのはジュビアじゃないです!』
操られている自分自身を否定し、2人に語りかける。
(ジュビアの声!?)
(・・・そっか!ここがジュビアの中だから!)
現在、2人はジュビアの中にいる。
その為、操られ―――――自分の正常な意識を奥へと押し込まれたジュビアの声が、ハッキリと聞こえるのだ。
『ジュビアは仲間をキズつけたくない・・・仲間、なんておこがましいかしら・・・』
キラキラと、水の泡が舞う。
『確かにルーシィさんは恋敵だし、ルーさんはジュビアと戦った人だけど・・・』
(違うけど・・・)
(ルーシィってジュビアの恋敵なの?)
相変わらずの勘違いにルーシィは少し呆れ、ルーは首を傾げた。
が、次の言葉で2人は目を見開く。
『ジュビアは妖精の尻尾が大好きになりました』
今回の楽園の塔の件がある前から・・・ジュビアは妖精の尻尾を―――正確にはグレイを―――見ていた。
ルーシィが実家に帰った時も、鳳仙花村の旅館に泊まった時も・・・。
『仲間想いで・・・』
ジュビアの脳裏に、実家に帰ったルーシィとそれについて行ったルーを追いかけてきたナツ、グレイ、エルザ、アルカの姿が浮かぶ。
その後の、実家には帰らないと知った時のナツ達の姿も。
『楽しくて・・・』
続いて、鳳仙花村の旅館での枕投げが浮かぶ。
枕を持ったナツとハッピーが部屋に入ってきて、エルザに枕を投げつけるが跳躍し避けられる。
その枕がグレイに直撃し、続いて投げられた枕がティアの体をすり抜ける。
途中から枕投げと呼べなくなった競技に困ったようなルーシィとルーの姿も、浮かんだ。
『あたたかくて・・・』
最後に、ジョッキを持ちお祭り騒ぎをするギルドメンバーが浮かぶ。
全員が笑顔で、全員が楽しそうで―――――。
『雨が降ってても、ギルドの中はお日様が出てるみたい・・・』
そんな様子を思い出しながら、ジュビアはゆっくりと言葉を紡いでいく。
(ジュビア・・・)
ジュビアの想いに、ルーシィは目を伏せる。
『せっかく皆さんと仲良くなれそうだったのに・・・』
その言葉を紡いだ後、ジュビアの脳裏に昔の出来事が浮かんだ。
ジュビアがいると雨が降るから、と嫌われていた事。
手作りのてるてる坊主を作るが、雨女体質は変わらなかった事。
『ジュビアはやっぱり不幸を呼ぶ女』
そう紡ぐジュビアの頬には――――涙が伝っていた。
(涙・・・)
(ジュビア、泣いてる・・・)
その涙はジュビアの中にいるルーシィとルーも感じる事が出来た。
彼女の辛さも、自分のせいで2人が痛い目にあっているんだという悪い意味での責任感も。
「ジュビアちゃん!そろそろトドメ刺しちゃって!」
ジュビアを操っているヴィダルダスの命令によって、2人はジュビアの中からはじき出される。
「いぎいぃいっ!」
「うぐぁぁぁっ!」
床に思い切り投げ出され、ルーシィとルーは苦しげな声を漏らす。
つー・・・とジュビアが水浸しになった床を滑り、その後ろでヴィダルダスはギターを奏でながらぐりんぐりんと頭を回していた。
「仲間の為に涙を流せる人を、妖精の尻尾が拒むハズがない!」
「心の底から僕達をキズつけたいワケじゃない・・・その言葉、届いたよ。ジュビア!」
叫ぶと同時に、ロングスカートの右脚側をルーシィは裂く。
スリットを入れるように裂かれたスカートは既にボロボロだった。
『ルーシィさん・・・ルーさん・・・』
2人の言葉に驚愕するように見開かれたジュビアの青い目から、涙が溢れた。
「胸張っていいわよ!アンタのおかげでいいコト思いついちゃった!」
ビシッと効果音が聞こえてきそうな勢いで、ルーシィがジュビアを指さす。
「くだんねぇな!とっととイカしてやりな!ジュビアちゃんよォ!」
ヴィダルダスの命令を受け、ジュビアは攻撃を開始する。
「水流激鋸でバラバラになりなァ!」
『ルーシィさん、ルーさん!よけてぇ!』
2つのジュビアの声が、2人の耳に聞こえる。
が、ルーシィは避ける事をせず、向かってくる激しい水に向かって、右手で固定した左手を突っ込んだ。
「ルー!あたしを支えて!」
「うん!」
水の勢いに今にも負けてしまいそうなルーシィを、後ろからルーが支える。
「開け!宝瓶宮の扉!」
その言葉に反応し、魔法陣がジュビアの背後に、激しい水に描かれる。
カッ、と光が起こり、荒れ狂う水から―――――
「アクエリアス!」
ルーシィと契約する、彼女の持つ最強の星霊―――アクエリアスが姿を現した。
「!」
「ジュビアの体を使って星霊を!?」
「なるほどっ!」
「水があれば最強の星霊アクエリアスが呼べる!アンタのおかげよ、ジュビア!」
そう。
確かに今はアクエリアスを呼べる環境が整っていた。
水があり、ルーシィの魔力もアクエリアスを呼べるほど残っている。
が、ここにいる4人は大事な事を忘れていた・・・否、ルーシィとルーしか知らないのだが。
「やかましいわ!小娘どもがァ!」
アクエリアスが水瓶を振るう。
と、同時に水瓶からジュビアの水流激鋸にも負けないほどに荒れ狂った水が噴き出した。
「ヒィィィ!」
「やあああ!」
「うわわわ!」
「ぬおおおおお!」
そう。
アクエリアスは敵味方関係なく大津波を起こす。
つまり、敵であるヴィダルダスだけでなく、所有者であるルーシィやその仲間のルーとジュビアも含め、攻撃を受けてしまうのだ。
が、この状態で、ヴィダルダスは有利だった。
「効かんなァ!俺の髪は水を吸収すると言っただろーがヨ!」
彼の長髪は液体を吸収する。
その為、いくら最強の星霊アクエリアスを呼んでも、水を吸収してしまうヴィダルダスには通用しないのだ。
「ジュビア!」
―――――そう。
「ルーシィ!」
―――――普通なら。
「!」
荒れる波の中、お互いに伸ばしたルーシィとジュビアの手が――――強く、繋がれた。
パキ、と。
倒れた鍵の駒と犬の駒、水瓶の駒の前に立つギターの駒の一部が割れる。
「何!?」
それを見たジェラールは目を見開く。
「こ・・・この魔力は・・・」
ぞわっ、と。
寒気がジェラールの背中を襲う。
「あんな小娘どもが・・・魔力融合!?」
つー、と。
驚愕に顔を染めたジェラールの頬に、一筋の汗が流れた。
「ぬお!ちょっと待て!な、何だこの水は!?」
その異変は、ハッキリと起きていた。
「オ、オイ!容量を超え・・・」
ヴィダルダスの姿が水に飲まれていく。
強く繋がれた2人から、凄まじい量の魔力が溢れ出す。
それを見たルーは、ギリギリ安全な所に避難し、目を見開いた。
「合体魔法!?」
渦を巻く水は、真っ直ぐにヴィダルダスに向かう。
「スパーキング!」
回転しながら、ヴィダルダスは吹き飛ばされる。
ルーシィとジュビアも、水が消えたと同時に床に倒れ込む。
ヴィダルダスは床を何回か跳ね――――完全に気を失った。
あれほどまでに長かった髪の毛が、1本も残っていない状態で。
「やった!」
「ジュビア、元に戻れた!」
「わーいわーい!」
それを見たルーシィとジュビアは抱き合って喜び、ルーは2人に駆け寄る。
「つーか、とんでもないトコから呼び出すんじゃないよ」
「「「!」」」
そこに、アクエリアスが声を掛ける。
「しまいにゃトイレの水から呼び出す気じゃねぇだろうな?殺すぞテメェ」
「ご・・・ごめんなさい・・・」
とてつもなく不機嫌なアクエリアスに謝罪するルーシィ。
それを見たジュビアとルーは――――
「素で怖い・・・」
「ガラ悪いね、相変わらず・・・」
ジュビアは驚いたような目で、ルーは困ったような目で、ルーシィとアクエリアスを見つめていた。
後書き
こんにちは、緋色の空です。
最初はここにルーじゃなくてティア入れて、3人で合体魔法!も面白いかな、と思ったんです。
でも、ティアはナツと行動する方がいいよなーって事でルーになりました。
感想・批評、お待ちしてます。
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