八条学園怪異譚
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第四十八話 薔薇園その二
だからだ、今もなのだ。
「だから今はね」
「そこまで手が回らないっていう感じもあるから」
「まあね、私達はもう皆彼氏いるからね」
「ビクトルさんにはアタックしないからね」
彼氏がいるとだ、クラスメイト達は皆言った。
「あんた達はあんた達で早く見つけなさいよ」
「もう商業科の男子は皆売れたから」
「えっ、売れたの」
「商業科の子は」
「そうよ、さっきも言ったけれど相当変な子以外は皆彼女出来たわよ」
「中には二人も三人もいる不届き者もいる、みたいだし」
「商業科以外になるわよ」
そうだというのだ、とにかく彼氏が欲しいなら他の学科だというのだ。
「普通科なり工業科なりね」
「水産科とか農業科もね」
八条学園は色々な学科がある、そこにそれぞれ男子がいるというのだ、特に。
「商業科とは逆に女の子の少ない工業科とか狙い目よ」
「最近工業科もいけてる人多いから」
「そっちに粉かけてみたら?」
「愛実ちゃんと聖花ちゃんだったらすぐに彼氏出来るわよ」
顔とスタイルだけでなく性格を見てもだというのだ。
「愛実ちゃん頼りになるお母さんだし」
「聖花ちゃんは頭のいいお姉さんだから」
「男はそういうのに弱いのよ」
「母性、姉性つまり女らしさにね」
「ううん、まあその時になったらね」
「考えさせてもらうわね」
二人は今はこう答えるだけだった、とにかく今は恋愛に興味がなく縁もこれといってないからである。それでだった。
しかし二人の青春は充実していた、この日は昼休みに屋上のベンチに二人並んで座ってそのうえでパンとジュースで昼食を食べていると。
そこにドラキュラ達が来た、それでこう言ってきたのだ。
「うちの若旦那はどうだったか」
「気に入ってもらえたかな」
まずはドラキュラと狼男が尋ねてくる、見れば四人共その手にはお握りやサンドイッチ、それにお茶や牛乳がある。
そうしたものを持って来て二人の傍に座ってだ、そうしたものを食べながら言うのだった。
「我々としては早いうちに相手を見つけて欲しいのだがな」
「結婚相手をね」
「それで何かと探しているが」
「いい娘はいないか」
「って私達に聞くの?」
「その話を」
二人は午前中のクラスメイト達との話を思い出しながらまたかという顔で返した。
「そういうのはちょっと」
「かなり疎いから」
「そうなのか、それではだ」
「貴殿達にはこうした話はしないでおくか」
「うん、悪いけれどね」
「そういうお話はね」
こう返す二人だった、そのうえで。
普通にお握りやサンドイッチを食べる彼等にだ、こう尋ね返したのだった。
「伯爵さんが実は日光平気なのはわかったけれど」
「狼男さんって確か」
「それにミイラ男さんも」
尋ねるのは狼男とミイラ男についてだった。
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