八条学園怪異譚
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第四十八話 薔薇園その三
「満月じゃないと狼になれないんじゃ?」
「それとミイラ男さん包帯いつもどうしてるの?」
「ああ、これ普通に自分の意志で変身出来るんだ」
まずは狼男が答えてきた、その狼の顔で普通に。
「満月を見なくてもね」
「あっ、そうなの」
「満月でなくてもなの」
「うん、そうなんだ」
お握り、昆布のそれを手に取って食べながらの言葉である。
「面白いでしょ」
「面白いっていうかね」
「こまたハリウッドと違うんだなってね」
そう思ったというのだ。
「本当にハリウッドはハリウッドなのね」
「実際の妖怪さん達とは違うのね」
「違うのだ、これがな」
フランケンも言う、彼は野菜サンドを食べている。
「わしもこうして普通に食べているしな」
「ああ、フランケンさんもゴーレムなのよね」
聖花はここでこのことを話した、フランケンはそれだとだ。
「ゴーレムは造られた生命体だけれど」
「わしは言うならフレッシュ=ゴーレムだ」
自分でこう言うフランケンだった。
「人間の肉体から造られたな」
「だから本来は食べなくてもいいのよね」
「しかしだ、見ての通りだ」
今も野菜サンドを食べながら言うのだった。
「こうして食べている」
「つまり内蔵があるのよね」
「ちゃんと動くものがな、トイレにも行く」
そうした意味でも内蔵は完璧に動いているというのだ。
そしてだ、今度はミイラ男も言って来た。
「余は包帯は自分で取り替えている」
「自分でなのね」
「そうしてるのね」
「そうだ」
その通りだというのだ、そしてミイラ男は二人に対して自分自身からこのことを話した。
「無論余もトイレに行く」
「じゃあ内蔵あるの?」
「その中に」
「ある、というか内蔵を戻したのだ」
ミイラは身体の中から内蔵を出してから作る、内蔵は腐りやすいから出すのだ。
「そうしてな」
「それでなのね」
「ものを食べられるのね」
「無論余もトイレに行く」
ミイラ男もだというのだ。
「そうしている」
「ううん、本当にハリウッド通りじゃないわね」
「あらためてわかったわ」
映画は映画に過ぎないということがだというのだ。
「現実の妖怪さんって違うのね」
「そうそう、というかね」
狼男は二人に穏やかな声で話す。
「映画は物語を面白くする為に作るからね」
「演出とか設定があるのね」
「独自の」
「そうだよ、だからね」
そうしたことを差し引いて考えて欲しいというのだ。
「僕何時でも人間の姿になれるから」
「じゃあ今も?」
「人間の姿になれるの?」
「うん、なれるよ」
実際にそうだというのだ、そして。
その顔を変えた、茶色の髪と瞳の精悍な顔の青年になった。しかしその顔はどういったものかというと。
眉がつながっている、愛実はその眉を見て言った。
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