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ドリトル先生の来日

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第一幕 困っている先生その五

「あとアフリカの言葉も幾つか」
「じゃあかなり行ける国多いじゃない」
「そうだね、じゃあね」
「とにかく生きないと」
「皆もいるし」
 先生は周りの動物達も見つつ言います。
「何とかしないとね」
「あのお馬さんや頭が二つある山羊さんもいるでしょ」
「皆元気だよ」
 勿論彼等もだというのです。
「凄くね」
「それじゃあ絶対にね」
「食べられる仕事探すよ」
「そうしてね、じゃあ私はね」
「もう帰るのかい?」
「お仕事でね」
 家のお仕事でだというのです。
「お客さんを接待しないといけないから」
「逃がす訳にはいかないね」
「絶対にね」
 サラも真剣です、何しろ不況で来てくれるお客さんはもう天使に見えるからです。それで逃がす訳にはいきません。
「さもないとパンを食べられなくなるわ」
「ジャガイモもかな」
「そう、それもね」
 サラは厳しい顔でお兄さんに言うのでした。
「大変なんだから」
「ううん、本当に困ったな」
「何処かに大きな契約ないかしら」
 サラは立ったまま腕を組んでこんなことも言いました。
「お茶をどんどん買ってくれるとか」
「そういえば日本もお茶の国だね」
 先生は今ちょこちょこ名前が出ているこの国のことをここで出しました。
「そうだったね」
「あの国は紅茶だけじゃないわよ」
「色々なお茶を飲んでいるらしいね」
「そう、何種類あるかわからない位よ」
「紅茶だけじゃないんだ」
「凄いのよ、あの国は」
 サラは日本のお茶についてもお兄さんにお話します。
「味にも五月蝿いらしいわ」
「じゃあ君のご主人の会社にもいいじゃないか」
「お茶の味がいいからっていうのね」
「お茶の味には自信があるんだろう?」
「うちの会社のお茶はイギリス一よ」
 サラは胸を張ってこう言い切りました、それまで組んでいた手は腰の横に置かれました。
「甘く見てもらっては困るわ」
「そうだよね、それじゃあ」
「ええ、日本人にも満足してもらえるわ」
「あのグルメのだね」
「絶対にね」
「じゃあ日本の仕事が入ればいいね」
「そう思うわ、とにかく今はイギリス中どころかヨーロッパ全体が苦しいから」
 サラはまた腕を組んで言いました。
「兄さんも真剣に考えてね」
「本当に移住を考えようかな」
「それだけの言葉を使えるならね」
 是非にと言うサラでした。
「考えてね」
「わかったよ、じゃあ」
「それで兄さん今三時よ」
 サラはここで話題を変えてきました、それまでの不況だの経営だのといった深刻なお話もこれで止めたのです。
「紅茶はまだあるわよね」
「勿論だよ」
 それはあると答えることが出来た先生でした。 
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