ドラゴンクエスト5~天空の花嫁……とか、
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第16話:罪を憎んで人を憎まず
(妖精の村)
俺は春風のフルートを取り返し、今回の事件の当事者達と共に妖精の村のポワン様の下へ帰ってきた。
村に入って直ぐに、人々から好奇な目で見られた。
仕方ない事ではあるのだが、気分の良い物ではない。
モンスター2匹を連れ歩く人間の子供と、エルフ・ダークエルフ・ドワーフの子供と老人が一団となって移動する姿は驚愕だろう。
だから我慢はするのだが、ベロニカを指さし『あれってベロニカよね!? やっぱりあの娘は問題児だったのね』と言ってくるエルフには腹が立った。
生まれや血筋で、その人の為人が決まるわけではない。
そんなくだらない事で他者を誹謗し、自身のアイデンティティーを確立させる輩には、ガツンと言ってやりたかった……けど、暴力に訴えられたら絶対負けるので今回は許してやろうと思う。俺って優しいよね。
でもやっぱり腹立つので、今回の事件の経緯をポワン様に報告するついでに、それとなく密告ってやろうと思います。
俺に視線を向けたポワン様が……
「アルスよ、春風のフルートを取り戻してくれて本当にありがとう」
と、俺に手を差し出しフルートを受け取ろうとした時……
「ポワン様……今回の事件は、村の人々の傲慢さが原因で発生した事件でもあると思います」
と、徐に話し出す。
やっとフルートを取り戻せたと思ってたポワン様は驚きを隠せない。
「そ、それは如何な意味でしょうか? 後ろに控えているベロニカが原因でしょうか!?」
「まぁ……原因と言えば原因ですけど、根本はもっと違う事だと思います」
不安を隠せないベロニカを見て、軽く頷き彼女を安心させてポワン様に答える。
「ここに戻る途中、一人のエルフさんがベロニカに向かって言いました。『やっぱりあの娘は問題児だったのね』と……“やっぱり”って言ったんです。これはつまり、何もしてない時からベロニカに対して差別的な視線を向ける……或いは、行為・発言を行ってきたと言う事です。彼女は心ない者達に、精神的苦痛……所謂イジメに遭ってきたんです!」
「そ、そんな……間違いないのですか!? 私にはそのような報告は一度もありませんでしたよ?」
「誰が報告するんですか? イジメてた本人ですか? イジメを容認し、傍観してた他者ですか? 傍観……つまり何もしなくても、それはイジメと同義ですよ」
ポワン様はかなり狼狽えている……まぁ当然だろう。自分の納める村で、心ないイジメが発生してたのに、それすら気付かずにいたのだから。
「ベ、ベラ……貴女は何時もベロニカと仲良く過ごしてたではないですか!? 何故報告をしなかったのですか?」
「あ、いや……それは「ポワン様……ベラにそれを求めるのは些か酷ではないですか? 彼女ほど空気の読めない女は居ませんよ!」
口籠もるベラの発言を遮り、弁護的な事を発言する俺。
最初はホッとした表情をしたベラだが、後半の発言に顔を顰める。
でも文句は言えない……だって、良かれと思って行ってた行為が、ベロニカには苦痛である事に気が付いてなかったのだから。
「では……ベロニカが我々に復讐する為に、春風のフルートを盗み出し、世界を永遠の冬に変え滅ぼそうと画策したのですか!?」
「あ、いや……それはまた違うんですよ……」
エルフのイジメ問題を浮き彫りにして、ベロニカの罪を軽くしたところで今回の本筋を話し出す。
つまり……ザイルの馬鹿が知らずに巻き起こした“永遠の真冬化計画”を説明する。
・
・
・
「……と言うわけで、お爺さん思いのザイルは、真実を知らなかったが為に今回の事件を起こしてしまったんです。あと、お馬鹿であるのも要因ですけどね」
「ポワン様! 儂の孫が大変ご迷惑をおかけしました……簡単に許される事ではございませんが、儂が村を出て行った経緯をちゃんと話しておかなかった事が要因です。全ての罪は儂にあります故……孫には寛大な処置を賜りたいとお願い致します!」
「じ、爺ちゃん!? そんな……爺ちゃんは悪くないよ! 俺が何も知らずに暴走したのが悪いんだ。ポワン様……全部俺が悪いんです! だから爺ちゃんには何もしないでください! 俺……どんな罰でも受けますから、爺ちゃんとベロニカには罰を与えないでください!」
「何を言ってるのザイルちゃん!? 元はと言えば私にも罪はあるの……ポワン様、私がいけないんです! 村を離れて一人で静かに暮らそうと考えてたのに、思わずザイルちゃんに村の悪口を言ってしまったから……お爺さんとザイルちゃんを罰するのなら、私を罰するのが筋です! 二人の事は許してあげてください!」
大切な家族を思って土下座する爺さん……
そんな家族を守る為、彼女の事共々罪を引き受けようとするザイル……
更に彼氏とその祖父を守る為、自らを犠牲にするベロニカ……
多分……ポワン様は罪を問うつもりは無かったんだろうと思う。
事件の顛末は確認しなければならないけど、無事に解決したのだから誰かに償わさせようとは考えてなかったのだろう。
それを裏付ける様に、目の前で頭を下げてる3人を見て、辟易しているポワン様が存在する。
「あの……3人とも「ポワン様。どうでしょうか……今回の件を俺に一任してくれませんか?」
困り切ったポワン様が、この騒動を収めようとした瞬間、彼女の言葉を遮って俺がしゃしゃり出ていく。
良いとこ総取りの為、俺が出張っていくのです!
「……と、言いますとアルスには何か良い方法があるのですか? 今回の件……私は大事にするつもりはありませんよ」
良い方法も何も、これが俺の主目的だ!
「理由はどうあれ、ザイルとベロニカが事件を起こした事に変わりありません。その理由をポワン様達が説明したって、元から良い感情を持ち合わせてない者達には、簡単に許せる事ではないでしょう! となれば、ベロニカへのイジメもザイルへの対応も、ポワン様達に気付かれない様な陰湿なモノへと変わっていくと思います」
俺はそこまで言い終えると、ベロニカとザイルを見て微笑んだ。
「俺が提案するのは、二人を俺と一緒に人間界へ連れて行く事です。勿論これは追い出しと言う意味では無く、二人の自主性に委ねたいと思います。人間界へ行く事を拒み、この村……もしくはこの世界で暮らすのも自由です。二人を苛める方々の気持ちも、時間をかければ変わるでしょうから、何れは幸せに暮らせる日が来るでしょう」
「しかし……アルス殿には迷惑な事ではないのですか? 人間の世界に……アルス殿が暮らす村に、突然エルフとドワーフが現れ、剰えその二人がアルス殿の知り合いであると知れれば……」
爺さんは俺への迷惑を考え、提案を否定的に捉えてくる。
確かにエルフとドワーフを連れ歩けば、村の連中以外にも驚く人が沢山でてくるだろう、けど……
「お爺さんの心配は尤もですけど、俺の村での評価は最低レベルなので、そこは気にしないで良いですよ(涙笑)」
ベラから聞いた村人達の俺への評価を思い出し、ちょっとヘコむ俺ちゃん……
「それに……俺にも下心がありますから! だから俺への迷惑は考えず、二人の気持ちだけで決めて下さい」
「下心……?」
誰もが気になる一言だったろう……それでも今回の事件を円満解決させようとしている俺に遠慮して、気付かぬフリをしている中、ベラだけが疑問を口に出してきた。
まぁ聞かれる事を前提で言った言葉だから良いけどね。
「うん。下心……と言ってもエッチな事じゃないよ。俺のお父さんは、何かを求めて世界中を旅する事が多いんだ。多分、俺が赤ん坊の時に攫われたお母さんに関係してるんだろうけど……兎も角世界中を冒険してるんだ! だから俺もそれを手伝いたいんだ。でも俺には戦う力が無い……戦闘力を数字に置き換えたら、きっと『3』とか表示され、エリート戦士に『ぺっ、ゴミが!』とか唾吐きながら言われると思うんだよね」
ちょっと自虐的に自分の事を語ったのだが、「はぁ……」と不思議そうに頷かれただけで、あまり感銘を受けてもらえなかった。
作画は同じ人なのになぁ……
「でね俺もお父さんと世界を旅する為に、戦力が必要だと考えてるんだよ。それが俺の下心……別に俺の手足となって戦えと言うわけじゃないけど、俺の事を守ってほしいなぁって思ってるのです! ダメかな?」
「なるほど……アルスは私の氷結魔法が必要なのね?」
「うん、出来ればザイルの怪力も……恋仲のお二人を引き離すのは忍びないから」
スドー君というイレギュラーキャラが居るのだし、ベロニカという原作に無いキャラが加わっても問題ないと思う。それにザイルは仲間になるキャラだから……本当は今じゃないけど、仲間キャラだから!
「俺は……ベロニカと一緒だったら何処でも行くぜ。爺ちゃんと離れるのは寂しいけど、俺……ベロニカの事が大好きだから!」
「ありがとうザイルちゃん♥ 私嬉しいわ!」
俺の目の前でイチャつく二人……
筋肉チビ(チビと言っても今の俺よりは長身)のクセに生意気だ!
ベロニカも化粧さえ落とせば凄ー可愛いので、抱き付かれふくよかな胸の感触を味わうザイルが羨ましい。
見た目はベラと同い年(エルフなので実年齢は判らない)に見えるけど、発育面はずば抜けているから本当に羨ましい。
でも大丈夫……俺の嫁(未来のビアンカ)は絶世の美女だから、全然悔しくない。
10年後(奴隷生活回避予定)、ザイルにイチャラブを見せつけるから、全然悔しくない。
ページ上へ戻る