ドラゴンクエスト5~天空の花嫁……とか、
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第15話:ギャップに萌えると言うけど限度があるからね!
(氷の館)
雪の女王……
“雪”と言うワードを聞くと連想するのが“白”だろう。
“女王”となれば高貴で美しい感じを思い浮かべる。
だから雪の女王が、白く透き通るような肌で長く漆黒の髪を揺らめかせ、絶世の美女である事を想像しても、それは悪い事じゃないと思う。
でも俺の目の前に居る“雪の女王”は、そんな妄想をぶち壊してくれるツワモノだ。
先ず……ガングロ! 顔だけじゃないね……肌の色が褐色なんだよ。
そして髪……茶髪でウェーブがかかってるボブカット。
不美人じゃないと思うんだけど、化粧がケバいんだ。
例えるなら……コギャル? いや、ヤマンバギャルってヤツだね!(汚ギャルに近いか?)
衣装もゴテゴテしてるし……超ミニスカなので背の低い俺にはパンチラ状態だが、そのパンツもヒョウ柄で、ちょっと……
何が言いたいかと言うと、俺の好みじゃないって事。
まぁザイルと付き合ってるみたいだし、割り込む余地もないだろうけど……
兎も角全然雪の女王っぽくない!
「ベロニカ、アンタ何してんのよ!?」
「だから違げぇってんだろ! 私は雪の女王よ、おほほほほ……」
もう無理がある……元から高貴な育ちではないのだろう。
「何言ってるのよ……その変な化粧を落としなさいよ。そしてベロニカだって認めなさい」
「変な化粧じゃないわよ! アンタ美的センス悪いんじゃないの!?」
「いや……俺もその化粧はどうかと思うよ。雪の女王様はスッピンでも美しいんだから、化粧を落とした方が俺は好きだなぁ」
「え、そう? やだ、ザイルちゃんってば……人目があるのに言うじゃない♥」
え、何コイツ等? 騙されたとか言ってたクセにラブラブじゃん。
ってか知り合いが居たから、正体を隠すために厚化粧してたのか?
だから現れるのにも時間がかかったのか?
「ちょっと待っててねザイルちゃん。今すぐにお化粧を落としちゃうから♥」
そう言うと懐からウェットティッシュ(コットン地の化粧落とし)を取り出し、慌てて化粧を落とし出す雪の女王……
折角時間かけて変装したのに、男の一言で化粧の意味を忘れ去る馬鹿女。
しかし、あの悪趣味な化粧を落とすと、やっぱり可愛いエルフだった。
そうなるともっと近くでパンツ共々眺めたくなるのが男の俺ちゃんです。
常備品の手鏡を貸すフリして近付き、美少女ベロニカを愛でようと思います。
「あの……俺、鏡を持ってるので使ってください」
「ありがとうボウヤ」
お礼代わりのパンツはガン見させてもらってるので、気にしなくて良いのです。
暫くして、若かりし頃のハル・ベリーの様な美少女が出現しました。
ホント……自分で言うだけあって可愛いッス。
黒人(褐色の肌って事)だけど、ザイル(男がって意味)が一目惚れするのも頷ける。
「ほら……やっぱりベロニカじゃん!」
「うっさいわね! もう判り切ってたんだから今更言わないでよ……性格悪いわね!」
違うな。ベラは性格が悪いんじゃない……KYなんだよ。致命的なKYなんだよ!
「ねぇベロニカ……どういう事なの? 何でこんな事しでかしちゃったの!? 突然村を出て行ったから心配してたのに……何でポワン様に敵対するような事をしてるの!?」
「うるさい! 私があの村でどんな迫害を受けてきたか、脳天気なアンタには解らないでしょう……魔族とのハーフエルフの私は、村に馴染もうとしても苛められるのよ!」
「そ、そんな……私とは楽しく過ごしてきたじゃない!?」
「アンタは自分しか見えてないから気付いてないのよ……他の連中は私の事を『ダークエルフ(暗黒妖精)』と呼び罵ってるのよ!」
酷いな……血筋なんて関係ないのに。
俺なんて王族だけど、前世でのパンピーが染みついてて、高貴な振る舞いが出来ないんだよ。
「それに……アンタと楽しく過ごしたって言うけど、楽しかったのはアンタだけだからね! ヒャド系の魔法が得意な私に、自分のギラを教えようとしたり……熱いのが苦手な私に、熱い温泉に入らせたり……全然私の事を理解しようとしてないじゃないアンタ!」
それがKYだ。仕方ないだろう……
「そんな……言ってくれれば「言ったわよ! 他のエルフに苛められてる事も、アンタの進める事がどれも苦痛な事も、全部言ったわよ! でもアンタ『やだぁ~、ベロニカってば面白い! 冗談が上手いわね』って笑い飛ばしてたでしょ!」
マジかよ……
「え、アレってば本当の事だったの?」
記憶にあんのかよ!?
怖いわぁ~……無意識の苛めって怖い!
「でも……だからって春風のフルートを奪い、冬を永遠に継続させようとするなんてダメよ! 冬だけじゃ世界は滅んじゃうんだよ」
「え、冬だけじゃ世界は滅んじゃうの!?」
ベラの悲痛な訴えに、驚いて声を上げたのはザイルだった。
「ちょっと……ザイルちゃん本気!? ずっと冬が続いたら、植物が育たなくて食べ物が無くなっちゃうでしょ」
「で、でも……俺は肉食だし、植物がなくても食べるのには困らないけど……」
あれぇ~……もしかしてザイルってば筋肉馬鹿?
「ザ、ザイルちゃんがよく食べる牛肉……あれは牛の肉なのよ。そして牛は草食動物で、牧草地とかの植物を食べて生きてるの。つまり植物が育たない環境になると、食肉の確保も出来なくなり、行く行くは食べる物が乏しくなっていくのよ」
食物連鎖ってヤツだ。
「ベロニカ……そこまで理解してて何でフルートを盗んだのよ!?」
「わ、私が盗んだんじゃないわよ! ザイルちゃんが私の境遇に共感して『よし、俺が妖精共にギャフンと言わせてやる!』って言って……」
「……いやぁ~、春が来ないと世界が滅ぶなんて思わなかったから」
「私は、苛めに遭う村での生活より、ここで静かに一人暮らしをしようと思ってたの。その為にこの館を建設してたんだけど……そんな時にザイルちゃんが現れて、妖精の村から追い出されたお爺さんの話をするじゃない! 私だって良い思い出のない村に対しての愚痴を披露するわよ! そうしたら話が盛り上がっちゃって、さっきのザイルちゃんの台詞に期待しちゃったの……」
何奴も此奴も馬鹿ばっかだな……
「でも、まさか春風のフルートを盗んでくるとは予想外だったわ! 直ぐに返そうと思ったけど、私の為に危険を冒してまでフルートを盗んできたザイルちゃんに悪いかなって考えちゃったら、直ぐに返せなくなっちゃったの……で、雪の女王って言う架空の悪者を作り出して、村の連中に一泡吹かせたらコッソリ返そうって思ったの」
酷い計画だ……
「ベロニカとやら……そうなると一つ聞きたい事がある!」
今まで静かに話を聞いてた爺さんが、何かが気になりベロニカを威嚇しながら問いかける。
アメリカ映画に出てくるバイカーギャングみたいな風貌で威嚇してくるから、彼女も脅え震えている……可愛そうだな。
「儂がポワン様に追い出されたと言ったのはお主だろう。何故にそんな嘘を吐き、ザイルの事を騙したのだ!?」
「騙してないわよ! 村の者を追い出す事の出来る権限を持った奴なんて、村長以外あり得ないでしょ! だからお爺さんが村を追い出されたと聞いて、そんな事出来るのは『村長だけだ』と言ったの! だって私、お爺さんが村を追い出された事自体知らなかったんだもん!」
それをザイルは勘違いして、ポワン様が追い出したと思い込んだのか。
めんどくせぇ馬鹿だなコイツ……
でも、どうやら戦闘なしで事件を解決する事が出来そうだ。
爺さん程じゃないけれど、ザイルも筋肉ムキムキで倒すのは大変(俺一人じゃ無理)そうだし、ベロニカもヒャド系や吹雪系の攻撃が凄そうで、大苦戦(俺一人じゃ死)しそうだったし……安全第一の俺ちゃんにはハッピーエンドになりそうだ。
でも、ただハッピーエンドにしたんでは不十分だ。
今後に繋がるハッピーエンドに仕立てなくては……
こりゃぁ俺にとっての本番はこれからだろうな。
後書き
今回も戦闘らしい戦闘は回避しましたアルス君。
この先に待ち構えているであろう困難に立ち向かう力を備える事が出来ているのだろうか?
未来からのアルスも来なかった事だし、コイツに未来はないのかも……!?
ページ上へ戻る