この世界はヒーローが大勢いる!
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Unexpected things often happen(ひょうたんから駒)
『さあ! 事件の現場にヒーローがやって来ました! やって来たのはB級五十二位ヒーロー、正義の壊し屋ワイルドタイガーです! ワイルドタイガー以外のヒーローはまだ現れておりません! これからワイルドタイガーはどのように戦い、犯人を逮捕するのでしょうか!?
なお、この番組は皆さんご存じ、ヒーロー達が犯罪や災害等、実際の事件現場で活躍する模様を生放送でお茶の間にお届け! 活躍の内容に見合ったポイントを加算し、ヒーローのランキングを決めてしまおうというエンターテイメントレスキュー番組! ヒーローTVラーーイブ!』
この世界に転生してから五年目。ようやく十歳になった俺は自宅で「ヒーローTV」を「二人」で見ていた。何でもこの世界のヒーローTVって、ヒーロー協会も協力して放送しているらしい。
テレビの中では「TIGER&BUNNY」の主人公の一人であるワイルドタイガーが、銀行に襲っていた強盗団を相手に大立回りを演じていた。こうして物語の登場人物が実在している映像を見せられると、自分が異世界にいるんだと実感する。
まあ、物語の登場人物といえば、今俺の隣にいる「彼女」もそうなんだけどね。
「………」
横目で隣を見ると、そこには俺と小さな女の子が無言でテレビを見ている姿があった。
女の子の年齢は俺と同じ十歳。光の加減によってはピンクにも見える色が薄い赤髪が特徴的で、何やらキツネ耳が似合いそうな女の子だ。
はい。そうです。どう見ても「Fate/EXTRA」のヒロインの一人、「キャスター」のロリバージョンです。名前はそのまんま「キャスター」でネクスト能力者だと言われた時は思わず納得した。うん。キャスターがこの世界にいたらまず間違いなくネクスト能力になるよな。
このロリキャスター、去年の春ぐらいに家族で俺の家の隣に引っ越してきて、それ以来こうしてよく遊びにきているのだ。
どうやらこの世界は「TIGER&BUNNY」だけでなく他の物語の設定や登場人物も混じっているようだ。
「ん? どうかしたの?」
こちらの視線に気づいたキャスターに「別に」と答えてテレビを見ると、画面の中のワイルドタイガーがネクスト能力「ハンドレットパワー」を発動していた。やっぱりカッコいいよな。
「ねえ、砕って一体どんなヒーローになりたいの? やっぱりワイルドタイガーみたいなヒーローになるの?」
テレビを見ているとキャスターがいきなりそんなことを聞いてきた。
……どんなヒーローになりたいか、か。確かにワイルドタイガーみたいなヒーローにも憧れるけど、俺は弓矢で悪人をクールに狙い撃つ感じのヒーローになりたいかな。
ほら、俺ってモンハンだと弓使いだったし。
「ふーん。じゃあ、もしネクスト能力が使えるようになったらどんな能力がほしい?」
キャスターの次の質問を聞いて、俺の脳裏に前世で苦労して作ったモンハンの弓「爆砕の征矢」と、その素材元であるブラキディオスが思い浮かんだ。
そうだな。皮膚から爆発する粘液でも出てくる能力だったら面白いか……も……?
チッチッチッチッ……。
そこまで言ったところで床の辺りからどこかで聞いた音が聞こえてきた。床を見るとさっきまで俺が手をつけていた部分に緑色の手形がついていて……って、あれ? この手形、色が赤に変わって……?
…………………!? まずい! キャスター、逃げろ!
「えっ? ……きゃっ!?」
嫌な予感を覚えた俺はキャスター押し倒すようにして距離をとった。その次の瞬間……、
ドガァン!
と、大音を立てて手形が爆発し、床に大穴があいた。
……うそ? これってもしかして俺のせい? 俺って本当にネクスト能力に目覚めたの?
ちなみに家に帰ってきた俺の両親は、俺がネクスト能力に目覚めたと知っても全く驚かず、床に大穴をあけたことを怒ってきた。
いや、うん。床に大穴をあけたのは悪いとは思うけど……。それでいいのか、ウチの両親?
あとキャスターが「私を押し倒した責任はとってもらうから!」とか言ってきたが……なんでさ?
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