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銀色の魔法少女

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第四十九話 鍵

 side ALL in???

「へえ、やっぱりあなたならクリムのプログラムを改変できるんだ」

「ええ、私の管制プログラムとしての知識と今までの経験を合わせれば、可能でしょう」

 どこまでも暗い闇の中、二人の声が響く

「しかし、彼女の防衛プログラムはマスター以外の干渉を全て弾くでしょう」

「……それができたら今までクリムが苦しむこともなかったもんね」

 片方が落ち込むのをもう片方が慰める。

「そう落胆することもありません、あなたたちは誰にもできなかった偉業、古から続く闇の書の悪夢を断ち切りました、ならばきっと答えにたどり着けるでしょう」

「あなたを犠牲にしておいて偉業も何もないと思うけど」

「…………」

 少女の言葉に、彼女は応えない。

「”クリムたちが作ったプログラムも完全じゃない、なら今の内に破壊してもらおう”、それくらい簡単にわかるよ」

 「もし、あなたが私だったら確実にそうするしね」と、少女は小さく呟く。

 悲しそうな少女に対して、彼女は落ち着いたように話し始める。
 
「あなたが悲しむ必要はありません、むしろ私は今はとても満ちています、もう思い残すことはありません」

「……けど、納得いかない」

 破壊不可能と言われた闇の書を死者ゼロで破壊する。

 全体的に見れば大金星だが、少女は彼女が犠牲になるのが納得いかない。

 本当はもっと時間をかけて闇の書対策をするはずだった為に、悔しいことこの上ない。

 さらに、問題はこれだけではない。

「それよりも、あなたは自分の心配をするべきでしょう」
 
 そう言われ、少女は自分の体を見つめ始める。

「侵食率は95.78%、一切魔法を使わなければ二日は持つくらいの余裕はあるでしょうしかし――」

「いつ暴走するかわからない状態だよね、これ、幸いなことに私が寝ている間は侵食は止まるみたいだ、けど…………」

「? どうかしましたか?」

 彼女の声を無視して、少女は一人考え始める。

「もし、――が私を――――進ん――なら、―以外――を――りにすれば、それで――の間に……」

 うんうん、と少女は頷く。

「いける、これなら……」

 彼女は頭に疑問符を浮かべながら、少女に尋ねる。

「何か思いつたのですか? 遼」

「うん、とっておきの一手を思いついたよ、リインフォース」







 said すずか

 闇の書、もとい夜天の書の暴走から少し経った日の早朝。

 私、月村すずかは次元航行船アースラのとある一室を訪れていた。

 ベッド近くに置かれた椅子に座り、私はそこに横になっている少女に話しかける。

「さっきね、リインフォースさんとお別れしてきたよ」

 静かに語る彼女の声は少女に届いていないのかもしれない、けれど、私は話し続ける。

「防衛プログラムは凍結できたけどいつまた動き出すかわからないから、今の内に破壊しちゃった方がいいんだって……」
 
 私はそっと、その手を少女の頬に触れる。

「ねえ、あれでよかったのかな? 遼ちゃんなら何かすごい方法を思いつけたのかな?」

 私の呼びかけに、彼女は応えない。

「ねえ、いつになったら目を覚ますの? 遼ちゃん…………」



 
 

 闇の書の暴走から一夜明けても、遼ちゃんが目を覚ますことはなかった。

 最初は疲れているのかと思ったけど、あの日からずっと彼女は眠り続けている。

 原因は分かってない。

 遼ちゃんの体を蝕んでいる侵蝕も、止まっているらしい。

 クリム曰く、「あれはマスターが意識不明の時には進まない仕様」らしい。

 幸か不幸か、今の状態はクリムさんたちにとっては遼ちゃんの体を治す絶好のチャンスらしい。

 けれど、私は寂しい。

 いや、私だけじゃない。





「あ、すずかちゃんも来てたんだ」

「なのはちゃん……」

 ひょこりと、なのはちゃんが顔を出す。

「私たちもいるわよ!」

 扉近くに立つなのはちゃんの後ろから、アリサちゃんやフェイトちゃんが現れる。

「はやてちゃんは?」

「泣き疲れて寝ちゃった、仕方ないよね、大事な家族との別れだったから……」

 そう言って、フェイトちゃんは遼ちゃんを見つめる。

「まだ、目が覚めないんだね」

「うん、今日も同じ、体調とかは問題ないみたいだけど、意識が戻らないの」

「不思議よね、今にも起きそうな顔してるのに」

 アリサちゃんが指で遼ちゃんの頬をぷにぷにし始める。

「ちょっと、アリサちゃんダメだよ」

 私がすぐに彼女の手を退けようとした時だった。

「う、……うう」

「遼ちゃん!?」

 遼ちゃんが起きそうになって、私は急いで彼女に体を近づける。

「あ!?」

 けど、慌てていたためか足が滑って彼女の上に覆いかぶさる形で転けてしまう。

 私は目をつぶって、来るべき衝撃に備えるけど、何もない

(?)

「あ!?」

 なのはちゃんの声が聞こえて、私は恐る恐る目を開ける。



 私の体は誰かに支えられていた。


 いや、誰かはわかっている。



「遼、ちゃん……」

 遼ちゃんがその身を起こして、私を支えてくれていた。

「「遼!!」」「遼ちゃん!!」

 私は嬉しくて泣きそうになるけど、

(あれ?)

 何かがおかしい。

 いつものような優しい瞳だけど、何かが違う。

 例えるなら遼ちゃんは太陽のような暖かい、けど今の彼女は吹き抜ける風のような……。

 呆然とする私を椅子に戻し、彼女は自分の体を見つめる。

「なるほどこれがとっておきの一手か、確かにこれならば侵食も進まないだろう」

 遼ちゃんの体から放たれる、遼ちゃんの声。

 けど口調は全く違う。

 いつもの弱々しいものでもなければ、最近見た明るい時のものでもない、大人びた口調。

「遼ちゃん?」

「ちょっと、一体どうしたのよ?」

 なのはちゃんは首をかしげ、アリサちゃんは遼ちゃんの様子がおかしいのに気づいて彼女に問いかける。

「…………この話し方、どこかで」

 その中フェイトちゃんは冷静に遼ちゃんを見つめ、何かを考えている。

 そして、彼女は私たち全員を見渡たして、言った。

「ああ、すまない、少し考え事をしていた、…………ところで主はやてと守護騎士たちはどこにいるのだろうか?」

 それに一番最初に反応したのはアリサちゃんだった。

「主はやて? ちょっと、どこか頭でも打ったの!?」

「! 待ってアリサ、もしかして彼女は」

 何か思い出したようなフェイトちゃんと、驚きいて目を大きく広げているなのはちゃん。

 二人にはもう彼女が誰かわかったのだろう。

 少しして、アリサちゃんの態度から何かを察した彼女は、私たち二人に向けてこう言った。

「ああ、すまない、そう言えば自己紹介がまだだったな」











「私はリインフォース、かつて夜天の書の管制人格(マスタープログラム)だったものだ」









 
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