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IS-最強の不良少女-

作者:炎狼
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臨海学校 前編

 
前書き
いよいよ臨海学校です

まずはほのぼのとしたお話を
ではどうぞー 

 
 シャルロットたちと買い物兼デートのようなことをしてから数日後、いよいよ臨海学校がやってきた。

 しかし響、ただいま絶賛バスの中で爆睡中である。

「それにしても響って良く寝るよねぇ……」

 隣に座るシャルロットは響の寝顔を見ながらしみじみと言った様子で呟いた。因みにこの席をどうやって獲得したかと言うと、事前に行われたじゃんけんで決まったのだ。

 だがその二人の後ろでは、

「むー……何でいつもシャルロットさんばかり……」

「まったくだ、これを不公平と言うのだろうな」

 セシリアとラウラがむっすりとした顔で前の席を睨んでいた。

 ……二人だって抱きつかれたり、服もらったりしてるじゃん!!

 内心で二人にツッコミを入れるシャルロットだが、不意に左肩に重みがかかった。響がシャルロットの肩に頭を乗せたのだ。故意ではない、偶然の産物だろう。

 ……響が僕の肩に頭を! これって完全に僕に身を任せてるってことだよね?

 顔を真っ赤にさせながら俯くシャルロットは、声こそ出さないもののその口元は完全に緩みきっていた。

 ふとシャルロットが俯かせていた顔を上げ、右手を響の頬に向けた。

「……ちょっとだけならいいよね……」

 呟くシャルロットはそのまま右手の人差し指を響の頬にそっと触れさせた。柔らかく張りのある感触が伝わる。

 ……わ、柔らかい。すっごく気持ちい。

 プニプニとした感触が指先広がり、思わず息をついてしまうがそれでもシャルロットは触る事をやめようとしなかった。

「んぅ……」

 だがいい加減嫌になってきたのか響は寝顔をしかめた。

「あ……ゴメンね響。でも嫌がる響の顔可愛い……」

 謝るシャルロットだが、顔は緩みっぱなしだ。

 その後も響が嫌がる顔をしない限り、シャルロットは響の頬を触り続けた。




「くあ~……よく寝たー。つーかあちー」

 バスから降り、大きく伸びとあくびをした響は夏の気温に文句を垂れた。

 実際現在の気温はおよそ37度らしい、熱いのも頷ける。

「つーか妙にほっぺに違和感を覚えるんだがなんか知ってるか? シャル」

「え!? う、ううん! 何も知らないよ!」

「そんなでかい声で否定しなくても良いと思うが」

 自らの頬を触りつつ首をかしげる響だがその原因は言わずもがな、例のアレである。

「おい貴様ら、早く並べ」

 シャルロットと響が話していると千冬が手招きで読んできた。

「へーい」

「はい」

 響は渋々と、シャルロットは迅速に二人は列に加わった。

 二人が並び少し経つと、千冬は頷き軽く咳払いをしたあと皆に告げた。

「ではここが今日から貴様らがお世話になる花月壮だ。くれぐれも従業員の皆様に迷惑をかけるなよ」

 千冬が注意したあと、皆がいっせいに挨拶をする。

 それに対し女将さんらしき人が柔和な笑みを浮かべながら挨拶を返す。するとおそらく前にいたであろう一夏に気付いたのか、千冬と話をしている。

 すると、一夏が千冬に頭をつかまれ無理やりに頭を下ろされていた。

「アイツも大変だな」

「そうだねぇ……実際、織斑先生みたいな人がお姉さんだったら大変だよね」

「だな」

 隣にいるシャルロットと談笑していると、

「それでは皆さんお部屋にどうぞ。海に行かれる場合は別館で着替えることができますのでそちらをご利用くださいな。わからないことがあれば我々に遠慮せずお聞きになってください」

 女将さんが流暢に皆に告げた。皆はそれに返事をしたあと、それぞれ自分の荷物を持ち部屋へと歩き出した。

「えっと僕達の部屋は……響と僕とセシリアにラウラに布仏さんか、なんかいつもと同じ面子だね」

「みたいだな。とりあえず行こうぜ? ここじゃ熱くてかなわねぇ」

 服の胸元をパタパタとしながら空気を送り込む響の姿はなかなかに様になっていた。

「響さん! その仰ぎ方ははしたないですわ!」

「うっせ、あちーんだからしゃーねーだろ」

 セシリアがラウラと共に二人の下にやってきながら注意するものの、響は扇ぐのをやめなかった。

「そうかもしれませんが……」

「つーか本音は何処だ?」

 響が周りを見渡すと本音がゆっくりとした動きで、

「おまたせー。いやーおりむーの部屋聞いてたら遅くなっちゃった~」

「そうかい、じゃあ全員そろったことだしさっさと行こうぜ?」

「りょ~かい」

 五人は部屋に行くため歩き出した。





 五人は部屋に着くと、それぞれ荷物を置き始めた。それなりに広い部屋であり、学生が泊まるにはもったいないぐらいだ。

「この辺もやっぱり普通の学校とは違うよなー。格差が広いねぇ」

 しみじみと呟きながら響は近場の椅子に腰を下ろした。

「このあとどうするよ? 今日は終日自由時間だろ?」

「そうですわね。では海に行きませんか? せっかくあるのですし遊びましょう!」

 行く気満々と言った感じでセシリアは拳を掲げた。

「おーセッシー行く気まんまーん。で、行くのー?」

「まぁそこにあるわけだしな。自由時間だし行かなきゃ損だ。うっし行くか!」

 響の掛け声と共に五人は部屋を後にした。

 部屋を出て水着に着替えるために別館への渡り廊下を歩いていると、響がふと立ち止まった。

 そしてある一点を見つめる。

 そこにあったのは、

『引っ張ってください』
 
 と書かれた看板とその近くに刺さっている兎耳だった。

「響さん?」

「いや、なんでもない。行くとしようぜ」

「え? でもアレ気にならないの?」

 シャルロットが声をかけるものの、

「ナンノコトカナ?」

 片言になりつつも響はそのままそれを無視し、別館の方へと歩き出した。

 ……嫌な予感しかしねぇ。

 最後にその兎耳を一瞥しながら、響はその場から去った。





「さて海に来たわけだが……どうする?」

 砂浜に黒ビキニで仁王立ちしながら響は後ろの二人に問うた。

「やっぱり泳ぐのが無難じゃない? またはビーチバレーとか?」

「わたくしはその前にオイルを塗りたいのですが……」

 響の後ろに居るのはセシリアと本音だった。他の二人、シャルロットとラウラはなにやらラウラがもたついているらしく時間がかかっているらしい。

「響さんはサンオイルを塗らないんですの?」

「めんどくさいだろ」

 セシリアの提案に響は肩をすくめる。だがセシリアは、

「いけません!! 紫外線はお肌の天敵ですわ!! 響さんも女性であるならもっと――」

「お肌の天敵っていうならわざわざ海に来なくてもいいんじゃね? しかも下着と殆どかわらねーカッコでよ」

 響は首を傾げつつセシリアに問う。セシリアは急に振られた質問に一瞬固まるとしどろもどろになりながら答え始めた。

「そ、それはその……海に服を着てはいるわけにも行きませんし……もう! 海のときはいいんですわ!!」

 若干涙目になりつつセシリアは膨れた。響はそれに苦笑すると、セシリアの持っていたサンオイルをとると、

「冗談だっての、ほれそこのパラソル空いてるからオイル塗ってやるよ。背中とどかねぇだろ?」

「は、はい! お願いします!!」

「本音はどうする?」

「私はいいかなー。っとちょっと他の子のとこ行ってくるねー」

 本音はこれまたゆっくりとした足取りでその場から消えた。

「……毎度毎度思うがあの速度で平気なのか?」

 疑問に思いながらも響はサンオイルをセシリアの背中にボトルからそのまま垂らす。

「ひあっ!? ひ、響さん!? サンオイルはまず人肌に暖めてから塗るのが基本なのですが……」

「あん? 知るかそんなもん。塗っちまえば同じだろ、てーことでいくぞー」

 響はセシリアの意見に聞く耳持たず、ガンガンとオイルを塗りたくっていく。

「んあっ!? 響さん私そこは自分で――!!」

「はぁ? 何いってんだどうせ塗るんだから今塗っちまったほうが楽だろ?」

「そういうことでは……ひんっ!? ですからわき腹はやめてください!!」

 セシリアは何とか響のサンオイル塗りから脱する。

「えー。面白いのに」

「面白がらないでくださいまし!!」

「はいはい。つーかセシリア」

「何です!?」

 息を荒げながら響を見据えるセシリアに響は冷静に告げた。

「前隠せ」

「へ? ……。 き、きゃあああ!?」

「おー可愛い悲鳴だ」

 セシリアが胸を隠すためにしゃがみこむが、響にはくっきりと見えてしまった。セシリアの豊満な双丘が。

「にしてもお前胸でかいな。一回揉ませてくれ」

「な、何を言ってるんですの!?」

「いや割とマジで。触ってみたい」

 真顔で答える響の瞳には真剣な光が灯っていた。セシリアもそれに押されたのかおずおずと頷き、

「……ひ、響さんがそう仰るのであれば……」

「じゃ、遠慮なく」

 響がセシリアの胸に手を伸ばす。

 が、

「貴様らは何をやっている」

 千冬が冷徹なまなざしで響の後ろにたたずんでいた。

「いえ、ちょっと同級生の胸の成長を確かめようと」

「必要ない。オルコット貴様もさっさと前を隠せ」

「は、はい!」

 セシリアは千冬にぎろりと睨まれ、そそくさと水着をつける。

「まったく、教師の目の前で淫行を働くな馬鹿者」

「いえ、同性同士でなおかつ本人の同意があったので問題ないかと」

「大有りだ馬鹿者が。ところでボーデヴィッヒやデュノアの姿が見えんが?」

 未だに大真面目に答える響きに対し、千冬は大きくため息をつく。

「そろそろ来ると思いますよ。なんかラウラがもたついてたみたいですけど」

 響がそういった時、千冬の後方からシャルロットともう一人バスタオルの塊がやってきた。

「響ー! ごめんねー待たせちゃって! ってあれ? なんでセシリアは顔真っ赤なの?」

「ほっといてやれ。ところでそのバスタオルはラウラか?」

「うん、なんか恥ずかしいみたいで」

 響が首をかしげながら問うと、バスタオルの塊、もといラウラは若干後ずさる。

 それを見た響は軽くため息をつき、

「まったく、何をそんなに恥ずかしがることがあるんだか。ほれラウラ、よく見せてみろ」

「フゴフゴ(無理だ)」

「何言ってるかわからんから、強制的にひん剥くぞ」

 言うが早いか響はラウラのバスタオルを掴むと一気に引っ張った。

「ふあ!?」

 素っ頓狂な悲鳴を上げ、ラウラの肢体は太陽の下にさらされた。

「ほう……」

「なるほどねぇ」

 響と千冬はそろって感嘆の声を漏らす。ラウラの水着はビキニタイプであったが響のシンプルなものとは違い、女の子らしいフリフリがついていた。

 普段が軍服のような感じのため、かなりのギャップが感じられた。

「うぅ……笑いたければ笑え……」

 ラウラは相当恥ずかしいのか顔を真っ赤にしたままうつむいていしまう。しかし、響は笑うことはせず、

「いいじゃん。私は可愛いと思うぜ? 普段の堅苦しいカッコから比べると全然いい」

「そうだな。お前がそんな格好をするとは思わなかった。私も似合っていると思うぞ?」

 響の意見に同意するように千冬も頷く。するとラウラは先ほどよりももっと顔を真っ赤にして固まってしまった。

「よかったねラウラ」

 シャルロットが褒めるものの、その言葉も聞こえているのかいないのか。

 響の後ろでは水着の上をつけ終わったセシリアが立ち上がる。

 すると、

「おーいひーちゃーん! ビーチバレーやらなーい?」

「ビーチバレーか……いいぜ。あ、そうだ。織斑先生、勝負しません?」

「フッ、いいだろう」

 響の誘いに千冬は小さく笑うとそれを了承する。二人の間にはバチバチと火花が走っていた。




「ゲームはどうします?」

「手早く終わらせるために12P先取でいいだろう。どちらも11Pになった場合も12Pで終了だ。構わんな?」

「上等」

 コート内に立つ響と千冬。二人の間には何人も寄せ付けないオーラが漂っている。

 メンバーは響のほうはシャルロット。千冬の方は真耶が担当している。

 既に周りには多くのギャラリーが集まっている。その中には一夏の姿も見える。

「両チームともがんばれよー!」

 一夏が応援するものの、響と千冬はそれを何処吹く風として受け流す。

「でははじめます! 試合開始ですわ!!」

 審判の役を命じられたセシリアが高らかに宣言すると、ボールを持っていた千冬がサーブを放つ。

 千冬のサーブはかなりの速度のものだったが、響はそれを受け止めレシーブする。レシーブされたボールはいい感じにシャルロットの真上に上がり、彼女もそれを確認すると響とアイコンタクトを交わす。

 響がそれに頷いたのを確認すると、シャルロットはそれをネットの方向目掛けてトスをする。それを目掛けて駆け出した響は一瞬で辿り着くと、

「まずは一点!!」

 言い放ち、強烈なスパイクを千冬のコートに叩き込む。

 そのボールの速度に千冬も真耶も反応することができなかった。

 しかし、ボールが入ったところを見てその場にいた全員が驚愕する。

「なに、あれ……」

「ボールが砂浜にめり込んでる……!?」

 そう、響の放ったボールは見事に砂浜に突き刺さっていた。

「……まずは一点」

 響は静かに告げる。その瞳はまるで獲物を狙う狼のようだった。

「お、織斑先生。どうしましょう、鳴雨さん凄く強そうですよ?」

「ふむ……」

 真耶の心配を流し、千冬はボールをとり響側に投げ返したあと、にやりと笑う。

 点を取ったため今度は響たちのサーブとなる。

「これで二点目ももらうぜ!!」

 宣言と共に、ドライブのかかった鋭い打球が相手のコートを抉る。

 が、しかし、

「甘いな」

 小さく聞こえた呟きが響の元に届いた瞬間は既に遅かった。

 トンっという小さい音と共に、響側のコートの左端のラインギリギリにボールが落下した。千冬の方を見るとかなり低い位置でボールを捕球したようだ。

 千冬はゆらりと立ち上がりながら響たちを一瞥すると、

「鳴雨、気を抜いていると……狩るぞ?」

 その視線は先ほどの響と同じかそれ以上の強者のそれだった。

「……ハッ! 上等だよ!!」

 響も拳を打ち鳴らしもう一度戦闘態勢に入った。





 数十分後。

 響と千冬は互いに肩で息をしながら対峙していた。得点は11対11、互いにマッチポイントである。

「やるな鳴雨。まさかここまで食いついてくるとは思わなかったぞ」

「そりゃどうも。でもまさか織斑先生がここまで本気になるとも思いませんでしたよ」

「勝負は何事も本気でやるのが私の信条でな。たとえスポーツであったとしても手は抜かん」

 千冬は小さく笑いながら響に答える。

 対し、響も小さく笑うと、

「じゃあこれでどっちが勝つか決まります。絶対手は抜かないでくださいよ?」

「ああ。貴様もな」

「冗談!! 手なんか抜くわけないっしょ!!」

 響は答えながら最後のサーブを放った。

 鋭角に入ったサーブを千冬は落ち着いた様子でレシーブする。レシーブされたボールを今度は真耶がトスをあげた。最初響とシャルロットがやった展開と同じスパイクだ。

「ハッ!!」

 千冬は気合をいれてボールを放つ。ここまで熱戦を繰り広げているのにもかかわらず、そのボールに疲れは微塵も見られない。

 だが響もこれを読み、その打球を受け止める。

「ぐっ!?」

 ……重い……!!

 響の腕にかなりの重圧が加わる。まるでボールではないかのような重い球だ。

 ……だけど!!

「負けられっかよ!!」

 響はその打球を返す。だが、

「上げる方向を誤ったな鳴雨」

 響がレシーブをしてしまった方向は千冬のコートだった。しかも打球は完全なゆるゆるボール。それを千冬が見逃すわけがなく、

「これで……終わりだ!!」

 千冬の声と共に打ち出された打球はもはや弾丸だ。それは響とはまったく逆の方向に打ち出された。

 ……ちくしょう、これで負けかよ。

 ボールを見ることなくただ呆然とした様子だ。しかし、

「まだだよ響!!」

 凛とした声と共にシャルロットが弾道の先に回りこみレシーブの体勢をとる。それに気付いた響は慌てて声をかける。

「やめろシャルロット!! その球はお前の細腕じゃ無理だ!!」

「大丈夫!!!! 僕を信じて響!!」

 力強く宣言された言葉に響は強く頷いた。シャルロットもそれに頷き返し、打球を捕球する。

「くぅぅぅぅっ!!」

 ……こんな重い打球を響は打ち返してたんだ。……だけど僕も響を勝たせてあげたいから、こんなことで負けるわけには!!

「いかないんだあああああ!!!!」

 シャルロットは力強い咆哮と共に、レシーブを放つ。

 ボールは絶好のスパイクの地点に上がった。

「行って!! 響!!!!」

「おう!!」

 ……シャルロット、お前の思い受け取ったぜ!!!!

「うおおおおおおおりゃああああああああ!!!!!!」

 一際大きい咆哮と共に渾身の力をこめた打球が千冬のコートを抉った。

「ゲームセット!! 勝者、鳴雨響チーム!!」

 セシリアの宣言と共に、ギャラリーの歓声があがる。それと同時に響も仰向けに倒れた。

「……つかれた」

「お疲れ様響。ああ、お前もナイスガッツだシャルロット。最後レシーブサンキューな」

 響とシャルロットは互いに握った拳をあわせる。

 すると、千冬が拍手をしながらやってきた。

「見事だお前達。またできればまたやりたいな」

「それだけは勘弁。次は勝てる気がしないっすよ」

「フッ、そうか。ではまたな。ほお前達も散った散った! これ以上は見るものもないぞ」

 千冬は周りの生徒達に散開を促した。それに呼応するように、周りで騒いでいた生徒達もぱらぱらとしていく。

 響はそれを確認することはなく、大きく息をはいた。

 それを心配してか、ラウラとセシリアが駆け寄る。

「大丈夫ですか響さん!」

「大丈夫だけど……疲れたー……」

「ほら響、シャルロット、水分を取っておけ。さすがにこの炎天下でアレだけ動けばきついだろう」

 ラウラはよく冷えたスポーツドリンクを響とシャルロットに手渡した。響はそれを受け取ると、がぶがぶと飲み干した。それだけ喉が渇いていたのだろう。

 シャルロットのほうはゆっくり飲んでいるものの、飲む口を休めていなかった。

「いやー……生き返った。 ありがとなラウラ」

「気にするな。それよりも凄かったな戦闘ではなかったが、あの教官を倒すとは」

「ああ、それは私一人の力じゃねぇよ。シャルロットがいてくれたからだ」

 響はシャルロットに向き直ると彼女の頭を優しく撫でた。

「さっきも言ったがありがとよシャルロット。お前がいなかったら勝てなかったぜ」

「う、ううん! ぼ、僕もあれぐらいのことしかできなかったし……でも力になれたみたいで良かったよ」

 シャルロットは俯くがその顔はとても嬉しそうだった。






 響と千冬の激闘から数時間たち夕食の時間。

 大広間で食事をする響はまさしくがっついていた。

「この刺身うまいなー何の魚か知らんけど。うまいわー。すいませーん飯おかわりー」

 響は猛烈な速さでご飯を平らげていく。それを見て隣に座るシャルロットとセシリア、さらに前に座るラウラは唖然としていた。

「響、今日は凄い食べるね」

「試合のせいで腹減っちまってなー。食っても食っても満腹になりゃあしねー。すいませんーんご飯もう一杯ー」

 シャルロットと話しながらも響はガンガンと飯を平らげていく。まるで掃除機のようだ。

 だがそのようにパッパとご飯を平らげる響の隣ではセシリアがプルプルと震えていた。その理由としては正座である。

 がんばって味噌汁を飲もうとしているものの、もうプルプルと震えまくりで生まれたての子じかのようになっている。

 するとそれを見かねた響がセシリアに声をかける。

「やっぱりお前こっちじゃなくて隣の部屋のテーブル席のほうが良かったんじゃね?」

「い、いえ……だいじょうぶです、わ。……つぅ……!」

「ほら無理すんなって。……たく、しょうがねぇなぁ」

 響は若干声を荒げながらもセシリアを自分の方に向かせる。

「な、何を?」

「口開けろ。食べさせてやる。このままじゃ見るにたえないからな」

「え!? い、いいのですか?」

「ああ、いいよ。だからさっさと口開けろ適当に放り込んでやるから」

 響の提案にセシリアは先ほどまでの苦しげな顔は何処へやら、凄く嬉しそうな顔になり口を開ける。

「んじゃあ最初は刺身から行くか? あ、でも欧米だと生で食わないんだっけか?」

「い、いえ!! だいじょうぶですわ!! ど、どうぞ!」

「あいよ。ホレ」

 口に入れられた刺身を咀嚼するセシリアはとても満足そうだった。だが、それは刺身が美味しいというわけではなく、単に響に食べさせてもらったということが嬉しいのだろう。

「どうだ?」

「お、おいしいですわ」

 そう答えているものの、実際味のことなど大して分かっていないだろう。

「そうか、じゃあどんどん行くぞー」

 そのあとも響のセシリアに対する食事の手伝いは続いた。ただ、響の隣に座るセシリア、前に座るラウラはむすっとしていたが。






 その日の深夜、響は泊まっている部屋にて響は眠ることはせず、夜空を見上げていた。

 どうやら今日は満月らしく、夜だというのに、月の明かりで影ができるほど明るかった。だが響はその月を見て、顔をしかめつつ小さく呟いた。

「……なんか嫌な感じな月だな。いつもと変わらない様にも見えるが……逆に今日はそれが気味悪い」

 ……今日見たあの兎耳、明らかにあの女のヤツだった。

 響は今日海に行く前に見た地面に突き刺さっていた兎耳を思い出していた。響が見たアレは明らかに篠ノ之束のものだった。

 もし束が来ているのであれば、おそらく響にもちょっかいを出してくるだろう。しかし今回はそれをしなかった。別の狙いがあるのかもしれない。

「……まぁどちらにせよ。ふざけてことしやがったらぶん殴るけどな」

 言うと響は布団にもぐって眠りについた。

 しかし、翌朝。響の予感は的中することとなる。 
 

 
後書き
以上です

今回は福音との戦闘に入る前だったので少し遊ばせましたw
響が途中変態化してますが気にしないでください。夏の暑さにやられたんです。

入浴シーンがねーじゃん!と思う方ご安心を!!
最終日福音を倒したあとにねじ込みますwww

さて次は臨海学校後編です
おそらく福音との第一戦です。今回もなるべく熱い展開にするようがんばりたいと思います!!

感想お待ちしております! 
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