MS Operative Theory
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統合整備計画④
——携行火器の互換性を目指したMSの「手」の規格統一——
「統合整備計画」の実施前に浮上していた問題の一つに挙げられるのが既存のザク・タイプMSと当時開発中だったMSの間に、武装の互換性がほとんどなかったことだった。
簡単に言えばマニピュレーター=手のサイズが異なっていたため、そのままでは他のMSの携行火器を掴むことができなかったのだ(「統合整備計画」非準拠型のMS09 (ドム)やMS09R (リック・ドム)が、120mmザク・マシンガンを装備したしたこともあったが、これはドム用のアダプター・グリップへの換装によって装備可能となったという説がある)。
このため「統合整備計画」では、MS用マニピュレーターの規格統一が図られることになった。
「統合整備計画」規格のMS用マニピュレーターは、すべての第2機生産型MSで実用化されており、ほとんどの公国軍製MS用携行火器が運用可能となった(ただし、ビーム・ライフルやビーム・マシンガン、ビーム・ナギナタといったビーム兵器は、ジェネレーター出力やエネルギー供給デバイスが完備されていなければ使用できない。また、ビーム兵器の稼働を前提に設計されていないMSは、ジェネレーターのオーバーヒートや緊急停止を防ぐため、本体側にパワーリミッターが設けられていたと考えても不思議ではないし、そもそもビーム兵器を認識しないとも考えられる)。
また、第2機生産型MSの影響下で再設計された、MS06F-2(ザクⅡF2型)やMS09F⁄TROP(ドム・トローペン)でも第2機生産型MS仕様に準拠したマニピュレーターが採用されており、これらの機体と第2機生産型MSとの間にも携行火器の互換性は確保されていた。
このような運用柔軟性は、MSそのものどころかMS用火器すらも不足していた戦後のゲリラ活動で特に重宝され、公国の再興やスペースノイドの自治権確立を夢見た人々を支えたのだった。
一年戦争後期の公国軍と戦後のゲリラ活動において重要な地位を占めた「統合整備計画」仕様のMS用規格マニピュレーターはその後も受け継がれ、U.C.0093の“逆襲のシャア”時のネオ・ジオン軍用MSでも「統合整備計画」の系譜に属するMS用マニピュレーターが採用され、その設計思想の確かさを証明している。
——機種転換を容易にした共通コックピット——
公国軍製MS最大の問題が、機種ごとに異なる操縦方法だった。ライト兄弟が真に偉大だったのが飛行機の操縦方法を形にしたことだったように、新カテゴリーのヴィークルを開発することは新たな操縦方法も確立する必要があることも意味している。
初期の公国軍製MSが様々な操縦方法を採用したのは、MSそのものが黎明期にあった当時の状況から考えて仕方がなかった部分があろう。しかし、そのまま放置すれば異機種間の乗り換えが困難になることが懸念されたため、「統合整備計画」では第2機生産型の共通コックピットを採用することになった。これによって、どれか1機種の第2機生産型MSを操縦できれば、他のタイプのMSも操縦できることになり、機種転換が極めて容易になっている。
共通コックピットは複雑な工程が必要な曲面スクリーンではなく、平面ディスプレイとなっており、生産性を重視していたことが分かる。また、脱出機構の不備によって多くのパイロットを失った初期MS用コックピットの教訓から、シートは脱出機能を持つイジェクション・シートとなっている。
補足事項
——「統合整備計画」下の水陸両用MS——
公国軍では多種多様なMSが採用され、現場に少なからぬ混乱を招いたことはよく知られているが、それは本来ならそれほど多くの機体バリエーションが必要ない水陸両用MSの分野でも同じことだった。このため「統合整備計画」の影響は汎用MSや宇宙用MSだけではなく、最も特化した局地戦用MSとも言える水陸両用MSにも及ぶこととなった。
「統合整備計画」の規格部品に対応するため、水陸両用MSの再設計が行われ、MSM07(ズゴック)の系列機MSM07E(ズゴック・エクスペリメント)と、MSM03(ゴッグ)の根本的再設計機であるMSM03C(ハイゴッグ)が誕生する。これらの機体は各系列機の中でも最高グレードの性能とコストパフォーマンスを同時に実現した理想的なMSであった。
水中用という特殊な仕様だったが、第2機生産型コックピットが採用されている点は特筆に値する(コックピットは第2機生産型ではなく、独自なものであったという説もある)。また、ズゴックEとハイゴッグの共通装備である長距離ジャンプ用のジェット・パックも開発されたことで、共同作戦での戦術機動性の平均化も図られ、異機種混成部隊の編成が容易になった。
宇宙・地上用MSとは全く運用環境や整備性が異なる(使用限界時間が短い)、水中用MSに汎用機の部品を採用し、その性能を低下させるどころかさらなる性能向上を果たした公国軍の技術力が、極めて高いレベルに達していたことは違いない。
後書き
次回 マグネット・コーティングとサイコミュ・システム
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