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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第五十八話 ロゴス壊滅

「補給はまだ終わらんのか!」

イザークは焦りを募らせながら目の前の戦場の様子を見て指揮を執る。コロニーレーザーを未だに制圧、破壊することが出来ず、戦況は膠着状態となっている。中継ステーションの時のように外部からの破壊は不可能だった。となればアレを止める方法は直接内部から切り崩すか、先程の攻撃以上に破壊力のある攻撃を仕掛けるしかない。
その為にもイザークは一刻も早く戦場に向かわなければならないと、そう思うのだが機体の修理と補給は思った以上に長く感じてしまう。

「イザーク、そうすぐに補給も修理も終わらないさ。ともかく体を休めろ――――いざって時に動けないんじゃ、あの兵器を止められないぜ」

「気休めを言うな。そのいざというときが今だという事ぐらいお前も分かっているだろう!」

ディアッカがイザークを宥めようとするが、これが落ち着いていられる状況かと逆に反論されてしまう。

「発射される前にせめて突破口の一つでも手に入れなくては話にならんぞ!」

幸いというべきかコロニーレーザーは敵の攻撃を警戒してなのか、プラントやザフトの基地を直接狙える直線状に配置されているわけではない。寧ろレクイエムのサポートを行う為に月基地にさほど遠くない位置に配備されている。今から発射したとしてもコロニーレーザーが攻撃できるのは射線上にいた部隊だけであろう。
そしてコロニーレーザーを破壊しようとしているザフトの殆どの部隊は射線から外れている。発射されても良いというわけではないが少なくとも最悪の事態は避けれるはずだ。とはいえ、もし発射された場合、その時の被害を無視することは出来ない。そう思い、イザークは現状で集め切れた情報を元に資料を提示して考える。

「内部からの破壊、或いは外部の制御部の破壊か?」

ディアッカは渡された図面を見て攻略方法を推測する。イザークも同じことを考えたのだろう。首を縦に振り、肯定の意を示す。

「そうだ。だが、問題は制御部が外部にあるのか、或いは内部に組み込まれているのか分からんという事だ。例え外部の制御部を破壊しても内部から発射できるのであれば意味をなさない。より確実なのはやはり内部に突入しての破壊だ」

外部からの破壊は少なくともMSによる砲撃では火力が不足している。それは先程の戦闘時に攻撃した時点で分かっていることだ。しかし、内部は少なくとも砲撃を行うという関係性がある以上、外部よりも防御が優れているということはまず無い。

「次の味方の増援部隊はどうなってるんだ?」

「月基地の方もあるからな、あまりあてには出来ん。現状の戦力で対処する他ない」

増援は厳しい。そして次の砲撃のタイミングが分からないというプレッシャー。ザフトの士気はプラントを守る為という意志によって保ってい入るものの、いつまでも持つとは思えない。少なくとも二射目が発射されれば士気は大きく下がるだろう。幸いなのは味方ごと巻き込んで攻撃している連合側の士気はそれ以上に低いということぐらいだろうか。

「ジュール隊長、補給が完了しました!」

「行くぞ、ディアッカ!アレを内部から破壊する!!」

イザークは補給を完了した自身の白に塗られたグフに乗り込み出撃準備を整える。ディアッカの方も黒いザクに乗り込み、コロニーレーザーを内部から破壊するために少しでも火力を高めようと装備をブレイズからガナーに切り替える。

『やっぱりこっちの方が良いぜ。機動力よりも火力ってな』

「無駄口を叩く暇があるなら少しでも突破する方法を考えろ。イザーク・ジュール、グフ――――出るぞ!」

『分かってますって、ディアッカ・エルスマン、ザク――――出るぜ!』

はたして次のコロニーレーザー発射までに間に合うのか。







「このッ、やらせるか!!」

シンはダイダロス基地の敵部隊をハイネと共に殆ど壊滅状態にまで追い詰めていた。無論、その戦果は彼らだけでなく、アスランが別の場所で敵部隊を引きつけたり、レイがドラグーンで広範囲を攻撃したり、アレックと二隻の艦が敵の動きを牽制したりと様々な要素が存在しているが、シンとハイネが最も戦果を上げていたと言っても過言ではないだろう。

「邪魔を、するなァァァ――――!!」

並の反射神経を超えた機動を見せながらシンのデスティニーは次々と敵大型MAやMSを落としていく。デストロイのIフィールドもデスティニーの近接戦と火力を前に防ぐ手立てなどなくあっさりと懐に入り込まれ、落とされていた。

『ふ、ふざけるなよ!?こんな少数の部隊にこのダイダロス基地が……!』

前線指揮をとっていた司令官の一人が司令部の一角でそう叫びながら現状を訴える。

『最高司令部との連絡はまだつかないのか!このままでは持ちこたえられないぞ!?』

司令官がそういった直後、オレンジカラーのデスティニーが司令部の正面に立ち、CIWSを撃ちこんできた。

『制圧完了――――次が最後の筈だ。行くぜ、シン!』

「了解!」

シン達がレクイエム付近の最後と思われる基地司令部を制圧するために向かい始める。その最後の数少ない防衛部隊だろう数機のワイルドダガーが突破を阻止するために、変形して月の大地を四脚で蹴り上げながらガトリング砲を放ち突撃してくる。だが、実弾であり、収束性の低いガトリングは殆ど命中することなく、時々運よく命中した弾丸もVPS装甲によって防がれてしまう。

『オラァ――――!』

ハイネは自身のデスティニーの腕に取り付けられたワイヤーでワイルドダガーの一機を捕らえ、そのまま横に振り回す。すぐそばの真横にいたもう一機のワイルドダガーに衝突し、ガトリング砲を取り出して広範囲にばら撒く様に放つ。

『ガトリングってのはこうやって使うもんだぜ!』

ワイヤーで捕らえられ、別の一機に衝突させられた二機を除いた数機は回避するが、その二機はまともに動くことも出来ず、起き上がる前に蜂の巣にされてしまう。Iフィールドやビームシールド、陽電子リフレクターを前にすると無力化しやすいビーム系統のガトリング砲だが、そういった対策が立てられていなければこのビームガトリングは驚異の兵器と言える。母艦で補給を受ければ実弾にも切り替えれる事から汎用性自体は低くない。

「これでッ――――」

ミラージュコロイドで隠れ潜んでいたNダガーNがシンの乗るデスティニーの後ろから不意を突く様に対装甲刀で斬りかかるが、シンは直感めいたものでデスティニー反転させ、その攻撃をあっさりと躱す。反転して突然正面を向いてきたデスティニーにNダガーNのパイロットは驚愕して動きを止める。ミラージュコロイドが発動している筈なのだがデスティニーに見られているような感覚にパイロットは囚われた。そして、その推測はある意味正しく、デスティニーは片手を突き出しNダガーNの頭を掌で押さえつけた。デスティニーの光輝く掌によってメインカメラに収束する光を前にパイロットは恐怖し、膠着してしまう。

「終わりだァァァ――――!!」

放たれた光――――パルマフィオキーナがNダガーNは頭部を破壊し、そのままNダガーNは月面に落下して爆発した。

『敵は……沈黙したか?』

敵部隊が壊滅し、現れなくなったことでシンとハイネは一息つく。他の場所に残存戦力は残っているだろうが、司令部が壊滅した以上まともに抵抗することも難しいだろう。

『よし、ロゴスに止めを刺すぞ。今度こそ、あのオーブの時みたいに逃しちゃならねえ』

「――――分かってるさ!」

ヘブンズベースでロゴスを逃さなければ、自分の故郷を戦場にするようなことはなかったはずだ。オーブで逃がさなければ、プラントで過ごしていた人達が死なずに済んだはずなんだ。そんな思いを胸にシンはロゴスを逃がさぬよう動き続ける。

「絶対に、許すもんか……お前たちをッ!」

シャトルや艦が数機脱走のために出撃する。あの中のどれかにロゴスの最後の生き残りであるブルーノ・アズラエルがいるはずだ。

「逃がす、もんかァッ――――!!」

MSの中でもトップクラスのスピードで駆け抜けるシンのデスティニーは流れるようにシャトルや艦を落としていく。これ以上戦争を続けさせないためにも、戦争で失われいく命を救う為にもシンは駆ける。そして見渡す限り全てのシャトルを落としたシンはデスティニーを減速させた。

「全部、終わったのか……」

今度こそ戦争が終わったのかと、そう思った瞬間に新たな報告が入る。

『なッ!?新たな戦艦だと!しかも、こっからじゃ間に合わねえぞ、こいつは!?』

離れた場所から現れた一隻の戦艦。まさかこれが本命なのか。シン達は焦りを見せてまた逃してしまうのかと恐怖する。しかし、その予想に反してその艦は止められることになった。

『投降しろ!貴様らの負けだ!』

ショーンのゲルググJG型が敵の脱出艦であるガーティ・ルーを止めたのだ。長く続いたロゴスとの戦いは今まさに、決着がついたのだった。







「グッ……馬鹿な……」

自身の乗っていた艦であるガーティ・ルー級が目の前の一機のMSによって止められた。アズラエルはまだ助かる方法はあるのではないのかと考える。考えた末に出した結論は自身は助からないという事だけだった。周りのMSやMAは既に壊滅。脱出の為に囮にした他の船も全滅――――ましてや目の前に自分たちを捉えた敵がいる。砲頭も叩き潰され最早抵抗などする方法もない。

「いや……あるにはあるのか」

しかし、それは最悪の鬼札。コロニーレーザーをこのダイダロス基地に撃ちこむというものだ。不十分なエネルギーだとしても月面にいる数機のMSと二隻の艦を落とすには十分すぎる筈である。だが、アズラエルがそれを使えば確実にアズラエル自身の命も助からない。自身が助かるために方法を考えているのに自身がその結果で死んでしまうのでは本末転倒と言えるだろう。そしてアズラエルには自身が死ぬとわかってやるような度胸は無い。所詮彼は凡俗の人間に過ぎないのだから。

「――――投降するッ……」

アルザッヘル基地まで逃れれば或いは、そう思っていたがレクイエムが発射予定時刻を過ぎても何の反応もないことからそれも潰えたのだろう。今の状況ではもし仮にアルザッヘル基地に逃げた所で落とされるだけに違いない。アズラエルは奥歯をかみしめながら自身の人生が終わったことを悟った。







「投降だと?」

イザーク達が再びコロニーレーザーへと敢行しようとしていた所で敵側が無条件降伏を出してきた。イザーク達は困惑するがその理由もすぐに判明した。

『ロゴスが壊滅した。つまりそういう事だ』

敵の旗艦の艦長がこの場において最も権限のある指揮官であったイザークに対してそう言葉を発する。

『無論、抵抗する戦力は未だに残っているが、これ以上兵を無意味に死なせるわけにはいかん。我々はこれ以上戦闘を継続する意思はない』

ロゴスの壊滅。それ自体の情報に関しては先程イザークも受け取った情報だった。だが、確実な信憑性のある話ではないと判断して再度の確認をさせていたのだが、どうやら連合側でもその情報が入ったらしく彼らは投降を選択したらしい。

「そちらが投降するというのならば我々としても受け入れよう」

かくしてイザーク等ジュール隊とコロニーレーザーを防衛していた連合部隊との戦闘はロゴスの壊滅という形で終息を迎える事となった。しかし、イザークや連合旗艦の艦長の選択はこの時だけは間違っていたかもしれない。何故なら、コロニーレーザーという戦略兵器は未だに健在であったのだから。そして、それが誰の手に渡るのかは当然、イザークだけでなく此処にいる人間なら、誰もが予想がついたはずなのだから。







ロゴスを捕らえたという情報はすぐさまあらゆるメディアを通じて放送されていた。それはザフト、連合、オーブ、スカンジナビア、南アメリカとどの国や組織に対しても報道され、平和へのおとずれに歓喜する事となる。しかし、平和のおとずれに感謝できないものも当然いた。ファントムペインやそれに準ずる組織に所属している人間だ。そして、当然ながらネオ達もまたその一つであった。

『貴方達の負けです!この戦闘に意味はないんですよ!もう戦闘を止めてください!?』

「それを俺達に言うか?俺達には帰る場所もまともに生きる道も最早残されてないんだよ!」

頭部と右腕を失ったライゴウは必死に攻撃を躱しながら戦いを続ける。ファントムペインに道は残されていない。少なくともジブリールが死んだ時点で厄介者の存在となり、アズラエルが捕らえられロゴスが壊滅した今、彼らに残された道は最早ないも同然だった。この戦闘も既にコロニーレーザーやレクイエムを失った以上、建前としての意味すら存在しない。
それでも、彼らは戦いを続ける。そうすることでしか存在理由を証明することは出来ないのだから。そうしなければ彼らの出自の関係上、生き残ることすら出来ないのだから。エクステンデットやロゴスの洗脳に近い教育。それらは彼らが社会で生き残ることを困難にさせる要因なのだ。
だからこそ今は引くしかない。海賊だろうが何だろうが泥をすすってでも生きて、貶められてでも勝たなければならない。それがこの形骸化した組織の最後の悪あがきでもある。

「下がるぞ、お前ら!俺達の意地ってやつを最後まで見せなくちゃならないんだからな!!」

ネオはファントムペインという組織は嫌いだが、この組織に自分は属し、その組織にいる人間は嫌いではない。だからこそ、生き恥をさらしてでも彼らの生きる道を与えなくてはならない。それが例え自分の命を犠牲にする結果となっても。その思いを胸に秘め、彼はアークエンジェルの部隊から撤退した。
 
 

 
後書き
というわけで皆してショーンがフラグだ、フラグだと言ってきたので期待を裏切っての大戦果。寧ろ騙されたのはシン達の方でした。
そして久しぶりにディアッカのザクはガナーの出番かと思いきやあっさり戦闘終了。所詮は迂闊で残念なキャラか(笑)
ネオ達ファントムペインは最後の意地を見せるのか?それともこのまま宇宙の藻屑となるのか? 
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