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圧倒的究極神が世界を旅するそうです ハイスクールD×D編

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旧校舎のディアボロス
  第二話

 
前書き
三人称って難しいですね。 

 
「ありがとう、とても美味しかったわ。」

「満足してくれたようでなによりだ。」

一誠と告白してきた少女、天野夕麻は夕暮れの街を並んで歩く。

「でも大丈夫? 私もお金出したほうがよかったんじゃない?」

「こういう時は男が払うものだ。それに君のような美しい女性と楽しい一時を過ごせたんだ。

 そのお礼だと思ってくれ」

「…わかったわ、その、ありがとう」

夕麻は顔を赤く染めながら礼を言った。

2人は先程まで喫茶店にいた。

その喫茶店は紅茶とスコーンのセットが美味しいと有名な店だった。

2人で美味しい紅茶を飲み、スコーンを食べれば話も弾み、互いに色々なことを話し合った。

一誠はその話の中で夕麻のことを大まかに理解した。

彼女は意外に初心な性格らしい。少し褒めたり、少し下世話な話を振ったりすると途端に顔を赤くする。

容姿も然ることながら、性格も可愛らしい、そう思う一誠だった。

話をしながら歩いていると、少し先に公園が見えた。

「少し、あそこで話しましょ」

公園の一角に設けられたベンチを指差して言う。

「構わない」

2人ベンチに並んで腰掛ける。

「今日はありがとう。とても楽しかったし、美味しかったわ」

「それはなによりだ。俺も君のことを知ることができたから」

「…私もあなたのことを知ることができたわ」

それから少しの間、話をする。

気づくと、陽が暮れていた。だいぶ話し込んでしまったらしい。

「そろそろお開きにするか、日も暮れてきたから送ろうか?」

「大丈夫よ、それよりも一つだけお願いがあるの。聞いてくれる?」

「ああ、いいぞ」

一誠は身に覚えのある違和感を感じた。自身もよく使うから間違えるはずがない。

(結界が貼られた? 何のために)

夕麻の服装が変わる。制服からボンテージらしきものにかわり、背中には仄暗い羽が生えている。

「最後だから教えてあげる。本当の私の名前は天野夕麻じゃなくて、レイナーレよ。」

レイナーレは光の槍を、右手に創りだし構えた。

先ほどまでの優しげな表情ではなく、獲物を狩る目をしている。

「あなたと過ごした時間はとても楽しかったわ。でも私にはやらなきゃいけないことがあるの。

 だから、死んでちょうだい」

そう言ってレイナーレは創りだした光の槍を、刃物で刺すように一誠の腹部へと突き刺した。



ガシャァァン……



硝子が割れたような音が辺りに響く。

レイナーレを見てみると、突き刺した体勢のまま、表情を驚愕に染めていた。

「…うそよ、どうして、光の槍が効かないの?

 あなたからは魔力を感じない、神器(セイグリッド・ギア)も覚醒していないのに。

 どうして、どうなってるのよ!?」

距離をとり、今度は両手に光の槍を創りだす。

「私は高貴なる堕天使なのよ!? たかが人間に遅れを取るはずがないわ!!」

自らを鼓舞するかのように、レイナーレは叫ぶ。

一誠は動かず、レイナーレを見つめている。

勢いをつけ、もう一度突き刺した。

その結果は。

「うそよ、どうして、相手はただの人間なのよ?

 なのにどうして、きかないの?」

勢いよく一誠に突き刺したものの、槍は体に当たったところから砕けていく。

最終的にレイナーレが一誠にもたれかかるようにして勢いが止まった。

言語が少し幼くなっている。

認めたくないのだろう。

相手はただの人間、それも神器が宿っていたとしてもそれを使うことすらできない。

それに対し自分は堕天使、人間など路傍の石と変わらない。

だというのに、目の前にいる人間に傷一つ付けられない。

目の前にいるこれは本当に人間なのか、人間の皮を被った何かじゃないのか、レイナーレの思考は混乱の極地に当たった。

「捕まえたぞ、夕麻、いやレイナーレ」

一誠はもたれかかったままのレイナーレを抱きしめた。その時、堕天使の羽に触れたが以外に手触りが良く何度も撫でている。

抱きしめられて振動でレイナーレの意識が戻ってきたが、自分の置かれている状況を頭が理解し始め体が震えていた。

「…いや、いやぁ! 放して! 放してぇ!」

レイナーレは必死にもがくが振りほどけない。それが余計にパニックを加速させる材料になった。

放して、死にたくないと彼女は泣き叫ぶ。

命まで奪うつもりはなく適当にお仕置きをして帰そうと思ったが、泣き叫ぶ姿をみて一誠の中の嗜虐心が鎌首を持ち上げた。

「少し騒がしいぞ、レイナーレ」

「ひっ、あ、ああ、お、お願いします。こ、殺さないで、うむ!?」

一誠はレイナーレの頬に手を当て、上を向かせキスをした。

「ぅむ…ちゅぅ、んん…」

「ん、人の命を狙ったんだ、当然命で返してもらおうか」

徐々にキスは激しくなっていく。

唇を啄むようにしていたが、貪るようなキスに変わっていく。

一誠は舌でレイナーレの唇をこじ開け、歯茎をなぞり、唾液を送り込む。

送り込まれる唾液を飲み干していくレイナーレに、少し変化があった。

他人に生殺与奪を握られ、道具のように扱われる。

そんな状態の中で彼女の瞳に悦びが見えた。

威圧しすぎて精神がおかしくなったのか、一誠はそう判断した。

キスに満足をした一誠はレイナーレから唇を離す。

そのことに安堵した様子のレイナーレだが、一誠の後ろにさっきまでなかったものを見て固まった。

棺桶があった。上部中央に太陽をもしたようなモニュメントがあり、それを囲むように装飾がついている。

頂点には冠がつけられ、冠の先端に紫色の火が灯っている。

そして冠から鎖が伸び、一誠が鎖を握っていた。

「い、イッセー君? そ、それは何?」

声が震えている。レイナーレの顔は恐怖に歪んでいる。

「棺桶だ、ただし」

言葉を区切り、一誠の視線がレイナーレを射抜く。

「入るのは君だが」

その言葉と共に棺桶が開き、中から紫色の手が飛び出してきた。

それは一誠に当たることなく、レイナーレを掴む。

「お、お願いします、殺さないで! な、何でもするわ! 靴をなめろっていうなら舐めるし、体だって差し出すわ!」

中々魅力的なお誘いだ、だが一誠はそれを切り捨てた。

「さっき言っただろう? 命を狙ったんだ、当然命で返してもらう」

「あ、ああ…」

レイナーレの顔が蒼白を通り越して土気色にまでなってしまった。

やりすぎたか、だがいまさらやめることもできないな。

ならとことん悪役になりきろう、と一誠は割り切った。

「では、さようならだ、レイナーレ」

一誠が指を鳴らすと手がレイナーレを握ったまま棺桶の中に戻っていく。

もう抵抗する気力もないのか、ただ為すがままにレイナーレが引き摺られていく。

「…誰か」

僅かな抵抗として、腕を伸ばすがその手を掴むものはいなかった。

「ご機嫌よう、堕天使さん。ここがグレモリーの管轄と知っての狼藉か…しら」

突如グレモリーと名乗る女性が乱入してきたが、目の前の光景に言葉を失っていた。

それも仕方ないと言える。

棺桶に引きずり込まれている堕天使の女と、それを眺める人間の男。

そして、一誠はグレモリーと名乗る女性に見覚えがあった。

「リアス? こんなところで何をしている?」

一誠からの問いかけにリアスは驚いていた。

「一誠!? 大丈夫? 怪我はない?」

リアスは一誠に駆け寄ると、怪我がないかくまなく探した。

「怪我はない」

「そう、よかったわ。それと聞きたいことがあるわ」

リアスは棺桶を指差し言う。

棺桶は既にレイナーレを引きずり込み閉じていた。

「あなた、人間のはずよね? どうして堕天使を退けるどころか倒すことができたの?

 そしてあれは何?」

リアスから見た一誠はただの人間である。

普通の人間より運動能力が高い程度の一誠が、堕天使を打倒したことに対して疑問を抱くのは当然のことであった。

一誠としては隠すことでもないから話しても良かったが、時計を見てみると既に19時を周り、空も暗くなっている。

「明日ではダメか? 逃げもしないし隠れもしない」

「…わかった。私のことも明日話すわ」

リアスは一誠から少し離れたところで、魔法を発動させた。

「おやすみなさい、イッセー。また明日学園で会いましょう」

「お休み、リアス。また明日学園でな」

別れ際の挨拶をすませた一誠は、脇に置いたままの棺桶を見た。

棺桶は時折震え、中から少し声がする。

「ちょっと、なにこれ。ひゃん!? い、今何かが私を触った?

 …あれ? 魔力が抜けていく?

 イッセー君、出して! ここから此処からだして!?」

レイナーレの悲鳴と抵抗を封殺し、棺桶を戻し帰宅の途につく一誠であった。




「それでいっくん? 今日は先に帰っているはずだよね、どうしてこんなに遅いの?」

「それだけじゃないにゃ。雌の匂いもする、それも二人もにゃ」

「それは本当ですか、姉様? 兄様、私たちというものがありながら」

「なんだ一誠、外で女を作ってたのか? 私は別に構わないが」

「紅音、少し黙ってる。イッセー、今まで何してた?」

帰宅した一誠を迎えたのは、般若と化していたシルマ達3人と、口元を面白そうに歪めた紅音、心配した顔をする霞だった。

「堕天使のお誘いに乗っただけだ。それと悪魔にもあった」

怪我もしていない、と言ってアピールをする一誠に白音が駆け寄った。

体を隈なく調べ、怪我がないことを確認して安堵の息をついた。

「兄様の怪我はないは信用できません。敵の攻撃を避けようともしないんですから」

心配してるんです、と呟く白音の頭を一誠が撫でた。

ゆっくりと髪を梳くように撫でられて、白音の顔が徐々にほころんでいく。

そんな二人に紅音が声をかけた。

「そろそろ夕飯にしよう。どこぞの女誑しが女の尻を追っかけてたせいで、私達の夕飯まで遅れたんだ」

その言葉に女性陣からは笑いが漏れ、一誠は肩を竦めることになった。

紅音を先頭に夕飯が用意してあるリビングに移動をし始めるが、シルマと黒歌が一誠の元に寄ってきた。

「夕飯の後にしっかりと話してもらうからね」

「それと体についた二人の雌の臭いについてもにゃ」

言いたいことを言ったのか、シルマは直ぐにご飯~♪と言ってリビングに消えていった。

黒歌は自らの匂いを、こすりつけるかのように一誠に抱きついた。

満足したのか満面の笑みを浮かべ、上書き完了にゃと言いシルマを追うようにリビングに消えていった。

「今日は我の番」

霞は一言、言葉を残し黒歌を追った。

それを見届けた一誠は、一旦カバンを置きに自分の部屋に戻るのだった。





とある深夜にどこかの部屋から女性の嬌声らしきものが複数聞こえたらしい。 
 

 
後書き
レイナーレは死んでいませんよ。 
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