ゲルググSEED DESTINY
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第五十五話 感傷と干渉
イザーク達がコロニーレーザーを破壊するために戦闘を続けている最中、ザフトから漸く増援が到着しつつあった。
「各自、気を抜くな!まだ落とせたわけじゃないんだぞ!」
イザークがわずかながらも弛緩した空気を感じ取り、注意を促す。その言葉に気を引き締め直したジュール隊を含むザフトは気を引き締め直す。
「まだまだァッ―――!!」
敵の一角を担っているペルグランデがザフトの部隊を次々と落としているのが目に入ったイザークは戦力を立て直す為にそちらに向かう。
『イザーク、無茶は止めろって!』
先程から長時間戦っているイザークのグフはシールドをビグロによって破壊され、機体自体も目立つような損傷こそないものの、多数の細かな損傷はしている。エネルギーに関しても消費量が少ないグフとはいえ大幅に減らされている筈だ。
だからこそ、今また大型MAに向かうのは無謀だとディアッカは止めようとするが、イザークはそれを無視して攻撃を仕掛ける。
「そのような攻撃、二年前に嫌というほど味わったぞ!!」
ぺルグランデの攻撃は二年前の大戦時、足つきを追っていた時にメビウスゼロとの戦いで何度も経験したモノでしかない。そして、イザークは失敗した経験を活かせないような間抜けではないのだ。
「遅い!そのようなまともに連携も出来ぬ攻撃に、この俺がそうやすやすと当たると思うな!!」
二年前のメビウスゼロのガンバレルの方は上手く逃げ道を塞いでいくかのように攻撃を仕掛けていたものだが、このぺルグランデは脳に共有化処置を施された三人が操っているものである。共有化処置がされているのだから、当然思考の統一化がされている以上、連携がお粗末という事はないはずだが、個人における誤差の範囲における違和感なのだろう。
それを見切れているイザークはやはりエースとしてトップクラスの技量と言える。ぺルグランデのドラグーンがイザークのグフを落とそうとするが、イザークはそれを次々と回避し、ディアッカはそれを見ながらミサイルで援護する。
『一人で突っ走るなよ、イザーク!正直ついてけねえぜ!?』
「そのような弱音を吐くな!貴様はそれでもジュール隊の一員か!!」
実際、彼に付いてこれる技量を持っているのは、この場ではディアッカ位なものだがイザークは同期であるディアッカには人一倍信頼があると同時に、厳しくもある。イザークにとって技量的にも信頼関係的にも背中を任せることが出来るのはディアッカ位だろう。もう一人の同期であるアスランとは背中を合わせるというよりも肩を並べる仲だとイザーク自身は思っている。
「ディアッカ行くぞ!アレを落とす!援護しろ!」
『OKッ!行くぜ!!』
ぺルグランデのドラグーンによる攻撃を回避しながら接近しようとするイザーク。当然、ぺルグランデは止めようとする。遠距離からの攻撃は幾度となく他の部隊によっても行われているのだが、PS装甲を搭載している事と空間認識能力が高いせいで防がれるか躱されていくのだ。ならば接近戦を仕掛けるしかないとイザークは判断し、グフをぺルグランデの懐に入り込ませようとする。
だが、当然ぺルグランデのパイロットも懐に入り込まれれば無防備だということを熟知しているのだろう。イザークを接近させないように火力を集中させていく。
「グッ!その程度でェ!」
ぺルグランデの猛攻に流石のイザークも突破が難しいのかと考える。だが、後ろにディアッカがいるという信頼と、コロニーレーザーを一刻も早く落とすべきだという信念から、そのまま突撃する。
『その兵器にいい思い出は無いんでね!落とさせてもらうぜ!』
二挺構えたビーム突撃銃とミサイルによってイザークを狙っていたドラグーンを撃ち落とす。
『グゥレイト!イザーク、行け!!』
「わかっている!!」
ディアッカの支援によってぺルグランデの懐に入り込むことに成功したイザークはそのままビームソードでぺルグランデを切り裂いた。とはいえ名前の通り巨大なぺルグランデはそうやすやすと落とされるわけでもなく、損傷を負ったもののまだ動こうとする。
「しつこいぞ!そのまま落ちろ!」
しかし、イザークは当然それを許すはずもなく、ビームソードを刺し込んでぺルグランデに止めを刺した。
『よし、突破口が開いたぞ!各員配置につけ!』
戦線の一角を担っていたぺルグランデが落とされたことによって連合の戦線はそこを中心に瓦解し始める。そして、ディアッカの指示によってジュール隊の砲撃部隊は中継ステーションの時と同じように一斉射撃の準備を行う。
『隊長!配置につきました!』
「全機、発射しろ!!」
ザクのオルトロス砲やゲルググのビームキャノン、艦隊の艦砲が同時に放たれる。コロニーレーザーの外壁に見事に命中する。
『やったか!』
『よし、後は敵の残存戦力を―――』
『いや、駄目だ!?』
命中した先を見てみると、コロニーレーザーは無傷ではないものの、ビームによる攻撃は突破しきっていなかった。それを見て愕然とするザフト軍。イザークも拳を握りしめて叫ぶ。
「クソッ、ディアッカ!内側から叩くぞ!それ以外に手はない!!」
内側からコロニーレーザーを破壊する。確かに、外壁に数多くのビームを当てても効果が薄いとなれば、内側からミラーなどを破壊するか、システムそのものを破壊、制圧する他ない。
『イザーク!いくらなんでも無茶だぜ!機体だって損傷しているし、エネルギーも不足してるぞ!?焦るのはわかるが、一旦戦線は他の部隊に任せて補給するんだ!』
イザークの乗っているグフはあちこちが損耗しており、エネルギーも核動力などではない為、確かに底をつきかけていた。そのことは理解していたのだろう。渋々といった状態ではあるもののその言葉に対して一理あると判断して補給の為に母艦に帰還することを選択した。
果たして、次の砲撃までにコロニーレーザーを破壊することが出来るのか?ザフトのパイロットたちはそう不安に感じるのだった。
◇
「て、敵砲撃を何とか退けたようです……」
「コロニーレーザー―――予想以上の強度ですね」
コロニーレーザーの後ろの方に待機していた連合の旗艦であるアガメムノン級のクルーはザフトの攻撃に耐えたことに一息つく。補給に戻る機体も多く、攻撃は一時的なものだが下火となっていた。
「しかし、大型MA部隊は半数以上が既にやられたか……MS隊の被害はどうなっている?」
総指揮官であるアガメムノンの艦長は、敵の攻勢が緩まった現状で反撃が可能かを確かめる。だが、報告はあまり芳しくないものだった。
「最前線に出ていたMSの内、通信が取れるものは半数以下です。通信が取れる機体もいくつかは戦闘の継続が難しいものもあり、正直戦力は未だに敵の方が少ないものの、押し込まれています……」
コロニーレーザーの第一射でゴンドワナなどのザフト主力部隊に甚大な被害を与えたものの、こちらにも被害が無かったわけではない。さらに言えば、あのような味方すら容赦なく巻き込む作戦に連合軍自体の士気の低下が顕著なものとなっていた。
「正直、このような兵器は無い方が良いんだがな……後方艦隊の戦力を一時的に前線へ出すぞ。敵部隊を戦線から押し返した後は残存のMS隊で攻撃を仕掛けろ」
「それでは後方を突かれるような事になった場合危険ですが?」
副官が突破された場合や、後ろから突かれた場合に対応できなくなるがと忠言する。そのことを艦長は理解しているのだろう。肯定しながらも意見を言う。
「どの道安全な場所など有るまい。こちらの次弾発射のサイクルが分からない以上、敵は悠長に後ろから突こうなどと思えんだろうさ」
艦長の言っていることは半分は正しいが、半分は間違っているとも言える。ザフトは元々連合よりも一人一人の実力が上回っている。突破力のあるエースなら戦線を抜けきることも出来るだろう。実際コロニーレーザーを止める手段は多数ある。
核ミサイル、同様の大型兵器による砲撃、外部からの継続的な攻撃、内部からの破壊或いは制圧。前者二つはもう一基存在している大型兵器―――レクイエムによって牽制されており、後者二つは今自分たちの艦隊やMS、MA部隊によって防がれている。
だが、他にも方法は存在する。その一つが、自分たちの艦隊を突破し、旗艦の存在しているこの宙域まで来ることだ。戦力の少ないこの宙域で戦闘が起これば、確実に自分たちは敗北、撤退をする事になるだろう。そうなれば、後方に存在しているコロニーレーザーの制御を担っている部分はがら空きになるのだ。
「それに気づかれれば我々の敗北か……」
そのような賭けのような作戦を取らずとも、艦隊を盾にして犠牲を増やせば持ちこたえれるはずだ。しかし、それを艦長はあえて選択せずに、味方の犠牲を増やさぬ様な選択を取り、逆にコロニーレーザーを止められるリスクの上がる選択をした。
「本当は、止めてほしいのかもしれんな―――このような大量殺戮兵器を」
「艦長……」
そう呟いた艦長の言葉に副官は複雑な気持ちで何も言えずにいた。
◇
コロニーレーザーとレクエイム周辺で戦闘が続けられている中、戦場から離れた一角で何機かのジン長距離強行偵察複座型がデブリを捜索していた。
『どうだ、見つかったか?』
『いや見つからねえな―――けどよ、元々同系統のものが多いから外装でも見つからないと区別がつかないと思うぜ?』
母艦のナスカ級を中心にして、デブリ地帯の残骸を漁っていく。その姿は一見ジャンク屋かハイエナ風情の海賊だと勘違いしそうな状況だ。しかし、彼らはザフト軍に所属しており、これは正式な命令だった。この場所のデブリの多くはコロニーレーザーによって破壊されたゴンドワナを中心としていた艦隊やMSの残骸なのだ。
殆どが原型すら留めておらず、MSなどは完全に消え去ったものもあるのだろう。それらの残骸を一つ一つ調べていく彼らは、それが下された任務だからこそだ。元々戦闘能力の高くない強行偵察用のジンでは戦場に出向いた所で役には立たないのも理由の一つだろうが。
『それにしても、酷いありさまだな……呪われそうだぜ』
『おい、止めろって。そんな事言ったら本当に呪われて死んじまうぞ』
『え、お前ってジンクスとかそういうの信じるタイプなの?』
会話をして気を紛らわせながら作業を進める数機。そんな中、一機のジンが目的のものを見つける。
『あったぞ、こいつだ―――』
『本当か?』
『ああ、殆ど焼け落ちてるが装甲の色が特徴的だ。連合艦とも思えないし多分コイツだろうぜ』
装甲がローズレッドと思わしき色であり、部品の特徴もザフト軍のパーツと酷似している。少なくとも中継ステーションで敵が巻き込んだ連合製の艦ではないだろう。
『よし、この周辺をくまなく探せ。運が良ければ残骸はまだ残っている筈だ』
ジンが他にも残骸が残っていないかを調べだす。
『しかし、この様子じゃあ脱出ポッドとかシャトルで脱出してたとしてもお陀仏でしょうね……』
『どの道、生存は絶望的だ。攻撃範囲そのものが広かっただろうからな』
そうやってしばらく周辺を探し続け、予想した通り他にも幾つかの残骸を発見したのだろう。残骸を発見するたびに記録を撮っていく。
『よし、これだけ集めれば十分だ。各員、撤退するぞ』
そうして彼らは母艦に帰還していった。集めたデータは一つのファイルに入れられていく。そのファイル名は『eternal sink』と書かれていた。
◇
「さて、盤面は既に佳境というべきかな?」
デュランダル議長は勝利か敗北かの瀬戸際という今の状況を楽しんでいた。元々敗北の瀬戸際に追い込んだ間接的な原因は議長自身なのだから当然だろう。レクイエムでプラントの一部を崩壊させたのも、ゴンドワナ主力部隊をコロニーレーザーで壊滅に追い込んだことも、それらの事前情報は既に持っていた。にも拘らず、彼はそれを伝えなかった。己の悲願を成す為に。
「デスティニープラン……人類が種として導かれる世界。悪く言えば統率され、人が遺伝子に支配される世となる。そして、これを受け入れられぬというなら、別の導き手が必要になる――――」
チェス盤は以前にもまして混沌と化しているだろう。あらゆる駒が盤面で入り乱れているのだから。ナイト同士のぶつかり合い。ルークに挑むナイトとビジョップ、孤独のクイーンの傍に佇むこちらのルーク。
「可能性は多い方がいい。なら不確定なものは取り除くべきか――――それとも、それを介して新たな可能性を紡ぐ事とするべきか。どちらであろうとも構わない。それは私自身の可能性を導く結果となるかもしれないのだから」
盤面のガラスの駒であるクイーンを横に倒す。それはそのまま転がり落ち、テーブルから落ちて、砕け散った。
「さようなら、ラクス・クライン――――君の歌はラウ同様、私も好きだったよ」
後書き
パソコンで書いてたデータが一気に吹っ飛んだぜ、四千字ぐらい(笑)
相変わらず夫婦のイザークとディアッカ。シホあたりがきっと泣いてるぞ。
どうでもいい設定。連合のコロニーレーザー防衛の旗艦の副官は女性です。ついでに艦長に片恋してます。凄くどうでもいい話ですね。すいません。
今回の話は中身が薄っぺらいと思いつつ。やったことって―――
夫婦漫才、残骸確認、議長笑うの三つですし。ほとんど進んでないですね~
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