転生者拾いました。
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ノルン火山
猛火龍
巨石を囲む白衣の集団。間違いない。白光教会の連中だ。
巨石から空に向かって太く白い光が昇っており、巨石から膨大な魔力に感じる。
「遅かったか。」
「ボス……。」
巨石を囲む窪地の淵に手を突く。
龍が復活する。オレたちの負けか。
「まだよ。」
だが、シルバは毅然として言い放つ。
「あれはまだ始動段階。魔力供給を止めれば完全ではないにしても封印することが出来る。」
「「おお~!」」
取り巻きにどよめきが走り、落ちていた士気が再び上がる。
部下が元気なのにリーダーが沈んでいるのは格好が付かないな。
「よし、おまえら、」
気を引き締めB班のメンバーを見渡して、
「シルバはまだ間に合うといっている。白光教会の計画をぶち壊すぞ!」
「「おお~!!」」
「突撃ぃ!」
俺を先頭に部下が走って巨石に向かい、各々の武器を振りかざすが手応えを感じられない。
「……なに?」
しかし剣が白衣を斬らずに空気を斬っている。
「カズヤ、こいつら全部幻影だよ!」
「くそっ、やられたか!」
「ボス!巨石も幻影です!」
なんと目標の巨石まで作ったか。
相手には相当の術師がいるらしい。単なる数で押し切る戦術では通用しないだろう。
もっとも地図をよく確認しなかった俺にも否はあるが。
「そういえばシルバはどこに行った?」
「そういえば、見てませんね。」
「まさか、裏切ったんじゃ?」
「それはありません、セリナさん!シルバさんは絶対……。」
「さっき白光教会の気配がすると言っていたからそれを追ったか?」
部下の一人が進言する。
確かにそう言っていた気がする。だが、彼女が居なければ白光教会にたどり着けない。いままでは運良く当たれた。しかし、相手は幻術まで用いてオレたちを欺瞞し、目的をなそうとする。
「追いましょう。シルバさんを!」
「そんなに遠くじゃないはずよ!」
我が軍の女神たちがシルバを援護し、追跡を要求する。
すると東に廻っていたA班から通信魔法が入る。
『ボス、白光教会と思われる一団を発見しました。』
「C班、D班、そっちはどうか。」
『何もありませんでした。』
『こちら、D班。同じく何も。』
どうやら本物は東にいるらしい。
「A班はその場で待機。他は東側に急行しろ!」
『『『了解!』』』
通信魔法を切りB班を引き連れて指定ポイントに向かう。
既にC班とA班は集合してそれぞれの観測手が双眼鏡を覗いている。
「何かあったか?」
「あ、ボス。」
「はい、奴さん、順調に儀式を進めてます。」
「シルバは見た?」
オレの後ろからセリナとエリザが出てきて兵士に問う。
「いえ、見てませんが。」
「そう……。」
ほんと何時の間に仲良くなったのかはなはだ疑問だ。
「攻撃準備だ。」
「「「はっ!」」」
各班の司令がそれぞれ命令をもって自分の班に走り去る。
「カズヤ、何かイヤな感じがする。」
「あたくしも寒気が。」
「オレもだ。何か来る。」
妙な空気が辺りに立ちこめ砂を踏みしめる音さえ聞こえなくなる。
「カズヤ……。」
「怖いです……。」
2人の顔色がどんどん悪くなり震え出す。
オレは二人に寄り添い肩を抱く。すると双方オレの腕をとってきつく抱きしめる。
「ボス、準備出来ました。」
「……行くぞ。」
「はっ。」
顔だけ部下に向けて指示を出す。
普段流れない神妙な空気が自然と緊張を高める。
『グオオオオオオォォォォォォン!!!!!』
!なんだ!?何かの声?
「あ、ああぁっ!?」
近くにいた部下の視線は空に向いている。
視線の先には見たこともないほどの火柱が。
「完全に復活した。」
「!シルバ!」
「もう手遅れ。逃げないとワタシ達が危ない。」
火柱が螺旋状になり中心付近に影が映る。
「猛火龍、復活した。」
後書き
悪魔と天使の祝宴
龍の身許で繰り広がる
次回 御前
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