ゲルググSEED DESTINY
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五十一話 憎しみの光
レクイエムが発射され、プラントが破壊されたことが報告されたのはどの勢力もほぼ同時期に手に入れていた。そして、プラントに最も近い中継ステーションではジュール隊とチャニス隊は連携して、プラントに最も近かった中継点の一つを破壊しようとしていた為、その様子がまざまざと見せつけられていた。
『クソッ!ジュール隊、聞こえるか!今は前を向けッ!こいつを陥とすぞ!二射目があったらプラントは終わりだ!!』
そんな中、イザーク・ジュールはいち早く、精神的に受けた衝撃から立ち直り、中継ステーションを破壊する為に動く。イザークのグフとディアッカのザクが先行しながら中継ステーションの周辺にいる敵部隊を次々と落としていく。
主な敵はダガーLやウィンダムだが、ザムザザーやユークリッドなども展開しており、そうやすやすと突破を許そうとはしない。だが、イザーク達グフを中心とした部隊によってMS、MA部隊を撃墜し、ディアッカ達はそのサポートをしながら中継ステーションに狙いを定める。
『一斉射撃いくぞ!エンジン部を狙え!!』
ディアッカの指示に従いジュール隊の砲撃向けのMS隊は一斉に中継ステーションに向けて砲撃を浴びせる。中継ステーションを防衛していた連合の部隊もそれを防げるほどの戦力は存在せず、あっさりと落とされる事となった。
『これで何とか、なったのか?』
一人のザフト兵がそう呟くが、それを聞いたイザークは叱責する。
「馬鹿者ッ、まだ根本的な解決には至っていない!あの兵器の大元を叩き潰さねば終わらん―――これはほんの時間稼ぎに過ぎんぞ!一度艦に戻れ!戦力を終結し直した後、こちらから指示を仰ぐ!」
イザークはそう言って敵残存戦力を掃討しながら母艦に下がる部隊を掩護する。
「状況は―――被害を含めて一体どうなっている?」
イザークは自身の旗艦であるボルテールと連絡を取り、この先どうするべきなのかを知るために情報を聞き取ろうとする。
『は、はい―――この攻撃は月基地の連合のダイダロス基地によって発射されたようです……プラントはヤヌアリウス・ワンからヤヌリアウス・フォーの4基が直撃を受け全壊…さらにその残骸がディセンベル・セブンとディセンベル・エイトの2基を崩壊したようです……』
オペレーターの絶望的な報告に。誰もが感情を堪え切れない。
「月基地のダイダロスだと……やはりこれはビームを曲げるための……」
『そうみたいだな。ダイダロスから発射された高エネルギーのビームを数回屈折させてやがる。これじゃあどこにいても相手は狙い放題だぜ』
ディアッカは受け取ったデータを見ながらそう言う。敵のダイダロス基地から放たれた攻撃はイザーク達が破壊した中継ステーションを含めて数回の屈折を繰り返し、そうして砲撃を放ってきたという事だ。だが、不幸中の幸いというべきか、プラント群中枢を狙っていたであろう射角はジュール隊とチャニス隊の活躍によって何とか角度をずらすことに成功し、プラント六基の被害に収まったと、悲しくもそう見るべき事なのだろう。
「続きを説明しろ!俺達の部隊はどう動けばいいッ!」
『イザーク、落ち着け!焦っても仕方がないぞ!』
「分かっている!だからこそ、正しい情報を教えろと言ってるんだ!」
『これよりゴンドワナ主力の月軌道艦隊が最も近く、攻撃の重要部となる第一中継点に部隊を集結させるようです。ジュール隊はそれに合流し、共に第一中継点と思われるステーションを破壊しろとの―――』
「直接ダイダロスを落とすには、次の掃射の時間が分からない上に戦力が限られている以上、それが最善とは言わずとも上策というわけか……ジュール隊、聞いたな!我々はゴンドワナに合流後、第一中継点を破壊する!」
イザーク達はそうしてゴンドワナ主力部隊に遅れて第一中継点と思われる所に向かっていく。
◇
「これは……ッ!」
一方で宙域を潜みながら移動していたエターナルもレクイエムの発射とその被害の情報が届いていた。
「なんということ……」
ラクスもその惨劇を前に思わず悲痛の声を漏らす。レクイエム―――連合がこれほどの兵器を用意していたなど思わなかった。元々クライン派のメンバーはプラントの人間が殆どであり、彼女らの情報網もプラントに依存したものになりやすい。連合の情報も手に入らないわけではないが、どうしてもザフトや連合などといった組織の情報網に敵うことはない。
その結果、彼女たちはレクイエムの情報について今まで一切握っていなかった。しかし、それでも知ってしまえば話は別である。
「私たちは、止めるべきです。あの殺戮兵器を―――」
エターナルの艦橋にいるメンバーは全員が肯定の意を示す。あんな兵器が存在してはいけない。まるで二年前のジェネシスのように総てを滅ぼすことが出来るようなあんな兵器などあってはならない。
「エターナルをあの兵器の第一中継地点へと向かわせてください。あのような兵器は、これ以上の憎しみを断ち切る為に破壊しなければなりません」
そう言って、彼女達はレクイエムを止めるために動いていく。
◇
一方で地上から宇宙に上がっていたミネルバやラー・カイラムにも連絡が届いていた。当然と言えば当然の事であろうが、二隻にはゴンドワナの主力部隊とは別行動によるダイダロス基地への直接的な奇襲作戦が命じられた。
「戦力が減ったこの状況でこの命令だ。正直、かなり危険な作戦だろうな」
マーレやルドルフがいない状況でこの戦力でただでさえ成功率が低いであろう作戦が成功するかは分からないが、アスランはシン達と共にブリーフィングを開いて作戦の概要を説明する。
「正直に言ってしまえば戦力を分散するのはあまり好ましい事態ではないが、俺たちの戦力が限られ、敵の兵器がいつ再発射されるか分からない以上、この作戦がベターだ」
作戦内容はいたって単純。二隻による奇襲で敵部隊を混乱させたのち、別働隊によって敵の兵器を内部から破壊するといったものだ。別働隊のメンバーは隠密移動に向いているであろうルナマリアの合体前のインパルス。その護衛であり、機動力の高いショーンのゲルググJ型。そして現場での咄嗟の判断を行えるようにする為にアスランのセイバー。この三機が別働隊であり、この作戦の本命部隊だ。
「この作戦で重要なのはインパルスの突破に関してだ。あの兵器を内部から破壊する以上、ルートは限られている。MSですら通れないルートだった場合、ルナマリアは単独でコアスプレンダーを使い、そのルートを通ることになる。俺とショーンはそれまでの護衛だ。敵部隊と遭遇した際はコアスプレンダーを守ることが最優先だ」
一方で、気を引く為の前線部隊もグループとしては二つに分かれる。正面からの強行突破と艦の防衛の二チームだ。シンとハイネは前者であり、クラウとアレックは後者である。レイはその両方をサポートする立場だ。シンとの連携を考えれば前者にすべきであり、機体特性的に見れば後者であるレイのレジェンドは結果的に両方のサポートになったのだ。
「この作戦の肝は時間といかに前線の部隊に気を惹かせるかが重要だ。途中で俺達が発見されるのは確実だろうが、タイミングというものがある。早すぎれば俺達は近づききるまえに囲まれる事になるからな。シン、頼んだぞ」
「はい―――」
力強く頷くシン。彼のその芯の強さは、猪突猛進という弱みであると同時に大いに強みとしても発揮する。だからこそアスランはシンを信頼しているし、シンもまたアスランの信頼に応えるべく頷いた。
「よし―――各自、作戦開始時間まで解散してくれ」
アスランがそうやって作戦を決め、暫く経った後―――新たな一つの悲報が届けられることになる。
◇
「敵部隊はどうなっている?」
アズラエルは一度目の砲撃が失敗してしまったことに苛立ちを感じるが、次があると判断し行動に移す。
「ハッ、ゴンドワナ級と思われる敵艦を中心に第一中継ステーションへと集結させつつあるようです。戦力はこちらが予想した以上に多く、その……正直次の発射に間に合うかどうか……」
兵士の報告はあまり良い状況のものではなく、口籠るがアズラエルはそもそも第一中継ステーションを切り捨てるつもりでいた為、気にしてなどいない。
「分かっておる。あの程度の戦力しか用意してなかったのだからな」
ドレイク級を中心とした艦隊にMS、少数の大型MA―――とてもじゃないが敵大型空母を中心とした部隊を相手に中継ステーションを防衛するのは無理といえる。
「予定していた第二中継ステーションはどうだ?」
「現在移動中です。ザフトも第一中継ステーションに気を取られているの為、今の所は大丈夫かと。しかし、発見されてしまえばあっさり落とされる程度の戦力しかありませんよ?」
第一ステーションが陥落するのはどのみち時間の問題。元々戦力などそこまで多く用意していない。そして第一ステーションが落ちれば必然的に狙われるのはレクイエム本体か次の第一ステーション候補となる第二ステーション―――その第二ステーションは既に動かしている。
しかし、第二ステーションに用意された防衛戦力は第一ステーションに配備されている部隊よりも少なく、一人の兵士が言ったようにゴンドワナを中心としている主力部隊発見されてしまえばあっさりと落とされることになるだろう。
「精々第一ステーションに敵部隊を釘付けにさせておけよ。そうでなければ意味がないのだからな―――」
意味がない、と言われ兵士は困惑するが、アズラエルは自身の秘策を前に失敗の可能性など一つも考慮していなかった。
◇
第一中継点に辿り着いたゴンドワナの部隊とエターナルは一時的にお互いの目的が同じであることを確認し、不干渉を貫くことを黙認してくれた。レクイエムを止めるのがザフトにとっての最優先であり、争っている暇はないというのが彼らの意志なのだろう。
「頭の固い人でなくて良かったですね」
ダコスタはそう言いつつエターナルの指揮を執る。バルトフェルドがいない以上、彼が指揮を執らなければならない。
「ええ、私達はあのような無用な殺戮兵器を止めなければならない。その為に、守るために戦う意志は皆同じですわ」
エターナルの数少ないパイロットを出撃させる。本来はヒルダ達の乗機となる予定だった鹵獲した三機のゲルググや旧式のゲイツなど出せるMSは総て出していた。此処で出し惜しみなどしてプラントが落とされてしまうことなど許されないのだから。
「けど、敵があの程度の戦力なら破壊は可能ですよ。あの兵器は驚異的ですが、大型である以上、的になりますし」
ダコスタはこの様子なら勝てると思って艦を進ませる。MS隊の総数でこちらが勝っており、大型MAもザムザザーやユークリッドが数機いる程度に過ぎない。旧式も多く、ヒルダ達と比べるとどうしても見劣りしてしまうパイロットだが、それでも前大戦から生き延びたものも多い彼らは次々に敵MSを打倒していく。
一機のユークリッドと三機のウィンダムが連携をしながらエターナルを撃沈させようと突破を図るが、エターナルに取り付けられたミーティアによる砲撃が放たれ、ユークリッドは陽電子シールドを展開させる。その隙を突くかのように懐に潜り込んだゲイツが下からアンカーを放ち、差し込まれたアンカーを回収する要領で近づいてシールドに取り付けられたビームクローで貫く。
動きを止めたユークリッドに止めを刺す為に一機のゲルググが上からナギナタで陽電子シールドを突破して切り裂いた。しかし、流石に連合もやられてばかりではない。クローで攻撃したことで無防備になっていたゲイツをウィンダムはビームで撃ち抜きながら短剣を投げつけ、ゲイツは爆発した。
だが、この調子なら次の砲撃のタイミングは分からないがおそらく間に合うはず。そう思いつつも、それでも気を引き締めなければと艦隊の指揮を執ろうとしたとき―――
「いけませんわ!全軍に下がるように言ってください!」
「えッ!?」
何をいきなり言っているんだとダコスタは振り返るが、ラクスはただ一言そう呟く。
「憎しみの光が―――」
そうラクスが言った直後、一筋の光が中継ステーションごと巻き込み、ほぼ総ての部隊を消し去った。
◇
「嫌ッ、嫌ぁッ―――!?」
シンが出撃前にステラの顔を見ておこうとステラの部屋でいた時、突然ステラが叫び出してシンは困惑してしまう。
「ステラ!落ち着いて、ステラ!」
いきなり錯乱しだした理由が分からない―――いや、自分にも何か嫌な予感はするのだが、明確にそれが何なのか分からないのだ。言うなれば直感のようなもの。そんな当てにならないものをこの場で挙げるべきものではない。
「光が―――ステラを、人を殺していくの!?」
「大丈夫!ステラは死なせない!絶対に俺が守るから!!」
ステラのブロックワードである『死』という言葉自体はクラウの治療によって消えたのだが、『死』そのものに対する忌避感やトラウマが消えたわけではない。ステラは今でも死に怯えを見せるし、シンの守るという言葉に心を落ち着かせる。だからこうやって守るという言葉を言って精一杯抱きしめる。
「人が、一杯死んだの……」
少しして落ち着いたのか、それとも精神的に疲れたのか、彼女は寝息を立て始める。抱き付いたシンはそれに狼狽するが、ステラの顔に涙が流れていることに気が付き、そのままステラの部屋のベッドに寝かしつけた。そのまま部屋を出て、すぐにでも出撃準備を整えないとと思っていると、ルナマリアが急いだ様子でこちらに向かってくる。
「シン、何処にいたのよ!探したのよ、大変なことになってるんだから!?」
「大変な事?もしかして二射目が!」
大変な事と言われて敵の大型兵器の二射目がもう撃たれたのかと驚愕するが、ルナマリアはそれを否定した。
「違うわ、でも状況次第じゃもっと悪いかも……敵の別の大型兵器で第一中継点ごとゴンドワナが落とされたって……」
「何だって!?」
狂気の戦争は続いていく。
後書き
ロゴス大活躍!まさに原作での最後の見せ場だけに頑張っております(笑)
コロニーレーザーが総てを焼き尽くす。薙ぎ払えッ!
というかステラってデストロイの時もそうだったけど確実にニュータイプとして芽生え始めてるよ!?多分、感応型という面としては(ララァやカミーユなど)シンやマーレよりも上でしょうね(笑)
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