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どっかの分隊長

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いつ、人生を間違った?

――――人が巨人に食われていく…………。

あの腐敗臭のする口の中で殺されるのは、さぞかし気持ち悪かろう。

――――人が巨人に食われて………。

食べられる人間、それを見ている人間。幸せなのはどちらだろうか。

――――人が巨人に………。

俺が判断を間違ったか。それとも、正解なんて無かったか。


―――人が………………。

あぁ、誰か。頼むから不甲斐ない俺に教えてくれ。
俺はいつ、



人生を間違った…………?





俺は昔、孤児だった。親は覚えていない。物心ついた頃にはゴミ山でゴミをあさって生きてきた。周りにも数人そうゆう奴がいたし、こうゆうもんなんだと思ってすごしていたと思う。そこに悲しさや悔しさは無かった。

そんな俺の平穏(?)が崩れたのはまだ齢一桁のころ。

調査兵団に誘われた。親がいない孤児なんて格好のえさだ。死んでも誰も気づかない、悲しまない…つまりはそうゆうことである。勿論選択の余地はあったのだが、それは脅されたも同然のモノだった。思い出すだけで腸が煮えくり返りそうだ。

最初は訓練兵として過ごし上位10位に入ったのだが、結局憲兵団には入れさせてもらえず、そうして流されるままに調査兵団へ。

始めの壁外調査は、もう恐怖で埋め尽くされ、何がなんだか分からないままがむしゃらに逃げ回った。俺が数匹倒したとか何とか書類に書いてあったが、多分どっかでミスがあったのだろう。

本当は、俺……一匹も倒してない。

だから、エルヴィン団長に「初陣のくせに、良くやってくれた。」と言われて、苦笑いしたのを覚えている。

二回目、三回目を重ねても巨人の恐怖には勝てず、逃げ回っていた。その癖、書類の討伐数がどんどん上がって、本気で意味不明だった。……書類作った奴、ミスしすぎだろ。
確かにあのカオスの中では色々大変なのだろうが、かといってあれはない。
何で一匹も倒してない奴が、14匹も駆逐した事になっているんだよ。どんなミスだよ。

そうしている内に何故か班長に昇格。確実にあの書類のせいだと思われる。しかし、団長にその事を言っても「謙遜するな。あれは確実にお前の成果だ。誇れ。」と言われた。………何ソレ、格好いい。こう言われたらもう何も言えまい。色々言いたい事を飲み込んで、俺は昇格を受けいれた。

………あの時は胃痛が酷かったのを覚えている。

こうして、ただの兵士から班長になった俺は、初めての数名の兵士を率いての壁外調査となった。

あぁ、正直荷が重い。重すぎる。俺がもし判断を間違ったら、人が死ぬ。そんな責任を背負えというのか。ちんけな俺には無理だ。不本意ながらだんだん人が死ぬのには慣れてきたが、背負うのとはまた違う。

それでも何とか頑張って15匹倒した。…いや。頑張ってもなにもあれはただの仲間の技量だったな。
たまたま新人がいなかったのが良かったのか、あるいわ良い兵士が集まっていたのか、俺の班の奴らは凄かった。それはもう、俺が班長とかやっているのが申し訳ないくらい凄かった。バッサバッサと巨人を倒し、俺の適当な指示に従いながらも、常に最善な行動をしていた。あれこそ本物の兵士というものなのだろうと関心したものだ。

しかしやはり意図的にそこまで交流をしなかったとはいえ、俺の指示で仲間が死ぬのは辛かったがな。
戦っている最中は感覚が麻痺して問題ないのだが、終わった直後、罪悪感と自己嫌悪におちいる。

ふとした時、一人になった時、暇になった時。戦いで死んだ仲間が皮も肉も無い骸骨になって、
『お前は俺が死んだのに、何故生きてるの。』
『俺達の死を何の役にも立たせれなかったくせに。』
『お前の命令のせいで俺は無駄死にしたんだ。』
『死んで死んで死んで死んで死んで死んで。』
と、ささやきかけてくるのだ。

勿論それは幻聴なのだろうが、最初殺した時から一生離れない俺の罪の罰だ。しかしそんな罪にさいなまれながらも、どこかの英雄のように精神強化もされず、ただただ俺は自分の無力を呪うだけだった。

そんな訳で、俺は本当に何もしていない。役に立たず、仲間の死に罪悪感をおぼえるだけ。

だからさ………終わった後「流石は班長!!」とか言って来ないで欲しい。いや、本気で何もしていないから。何か申し訳ない。苦笑いで流した。

こうして俺の情けない壁外調査が終わった……と、思いきや

俺は更に分隊長に昇格していた。

……お前等は、どれだけ俺の胃を痛めるつもりだ?













「隊長!左前に巨人接近!!15m級です!」

ゴツゴツしている大柄な男が、焦りながらも報告してくる。コイツは俺が班長の時から一緒の仲間で、例の凄いやつの一人だ。名を、ルイビルという。

「信煙弾はお前が打て。」
「了解!」

巨人が発見された印の赤い煙が発射される。それが、少し時を経てそれぞれの班から同色の煙が見えてきた。

あぁ。ちなみに何の悪戯か俺達は右翼“初列索敵班”である。一番死ぬ確率が高い場所だふざけるな。

「隊長、緑の信煙弾が発射されました。」
「あぁ。急ぐぞ。」
「「「了解!」」」

緑は方向を伝える弾だ。俺も同じ方向、南東に撃つ。

《あ………ぁ……………。》
「「「「っ!!?」」」」
「巨人接近してきます!」

わずかながら団長の判断が遅れたのか、巨人がこちら側に迫ってきていた。嗤っている様で嗤っていないその顔が、どしどしと近づいてくる。恐らく、この距離では馬でも逃げ切れないだろう。

「巨人、さらに急接近!!」

再び彼の焦った声が嫌に響いて聞こえる。いや、なにもおびえているのは彼だけじゃない。他にも新人含めた俺の隊員3人も多少の違いは有れど皆巨人を前にして恐怖していた。

そして、また俺も。

……怖いといってもちょびっとだけどね。まぁ、9回も来てるわけだし?ま、まぁ怖いっちゃ怖いんだけどな。そ、そもそも巨人って何故あんな大きいんだろうか。大きいからこその“巨人”だが、人は自分より大きいモノに恐怖するものだ。

……素直に言えば、巨人マジ怖い。

「ルイビル、ライ。」

震えそうになる声をなんとか静めて、恐怖をまるで感じていない様子を装う。まったく、こうゆう事だけ巧くなったものだ。まったく全然嬉しくないが。

「「はい。」」
「馬を頼む。」
「「了解!」」
「ぺトラは一緒に来い!」
「了解です!」

俺は愛馬のカイーブを踏んで、立体起動装置のガスを吹かす。ぺトラも、一緒に来ているのを確認し更に速度を上げた。

「俺が注意をひきつける。その間にうなじをやれ。」

俺、15メートル級無理だから、そこらへんうろちょろしてみる。だから頑張って倒してくれ。

……この意味伝わったか。

「了解!」

もう十回以上壁外調査に出ている以上、俺も班長の時とは違って、数匹程度は巨人も倒したが…。

それでも15m級は無理。

うん。これ決定事項な。俺にあれを倒すほどの力はない。自分に過信はしない主義で。だから、……俺はぺトラにすべてをたくそう。大丈夫、お前なら出来るさ!お父さん信じてる!…いや、まぁまだ俺ピカピカの10代だけど。ほとんど実力はともなわないがな。

「来い、化け物!」

俺は叫びながら、巨人の前でアチラコチラと移動してみた。周りは平野でやりずらいが15mなんてデカイ図体しているんだ。それを利用しない手はない。ワイヤーの先を様々な所にかけながら相手を誘導する。

そして手を、足を、色々な部分をそぎとり、なるべく足止めをしようと努めた。その結果あって、巨人が前方に倒れる。

「はぁぁぁぁあああ!!」

ぺトラはその間に隙を見出したようで、剣でうなじを切り裂く。相変わらず、嫉妬したくなるほど優秀な部下である。妙に熱い血が出て俺の頬にかかり、真顔の巨人はやがて倒れた。

「はぁっ、はぁっ!や、やりました隊長!」
「あぁそうだな。良くやった。」

分隊長として最低限の社交辞令だけ済ませる。……無愛想すぎるか?まぁ、隊長なんてこんなもんだろう。仮にも隊長と言う立場から手柄があれば褒めるのが常識だが、そこに愛想なんてものは必要ない……と、思う。俺に上から無愛想に言われる彼女には、非情に申し訳ないが、まぁ許してくれ。

「さて、ぺトラ。戻るぞ。」

とりあえずここから移動して………。

……あ、馬。

「「……………。」」

おそらくルイビン達も一定の距離を保ちながらこちらに向かってきてくれているだろう。しかし、俺達が戦ってる間に随分離れてしまったようだ。

巨人の足に対抗できるのは、馬しかない。倒すということの関しては立体起動装置が役に立つが、
移動の場合は使えない。(森や家があれば出来る。)それに唯一の対抗手段のガスを移動なんぞのために使うべきではない。

…………やばい。

「ぺトラ。闘っている途中で思ったより離れすぎた。
急いで戻――「右方向、巨人ですっ!」」

さえぎられた。さえぎられた程度でおこるほど器は小さくないが、あれだなぁ・・・何か、悲しい。
俺の豆腐メンタルがボロボロと音を立てて崩れた気がする。

とりあえず泣く泣く彼女が言う方向を見たら、およそ6m級の巨人がいた。陣からわりかし近いが、動きは非情にゆったりだ。

「……あの距離なら問題ない。」
「了解!」

あれが陣営に入ったら大変だが、あれだけ遠いならまず追いつかれないだろう。俺は背を向け、ルイビンたちの下へ行こうとする。

「た、たた隊長!!」

その後ろをぺトラが物凄く慌てて、追ってきた。
……この子、実力は十二分にあるんだから、もう少し余裕を持ってもいい気がする。テンパリ具合が半端ない。正直引くほどだ。…ま、油断した瞬間巨人にぱくりなのは目に見えているから、むしろそれは正しいのだが。

「た、大変です!」
「なんだ。」
「あの巨人!急激に勢いをつけて走ってきてます!なんですかあれは!!」

彼女の指を指す方向へ目を向ける。

――――――――――――――なっ!!

「奇行種か。」

でっぷりとした腹を揺らしながら、女走りで‘走ってくる’巨人の奇行種。今までで、数回見かけたことがあるが、あのタイプは始めてみるな……。ハンジが見たら喜びそうだ。
しかしまぁ、奇行種とは運が無い。不幸中の幸い、仲間に強い(ぺトラ)がいるから、問題は無いだろうが……。

「……あの速さじゃ陣を乱しかねない。連戦で悪いが、俺達がやるぞ!」
「了解!私はまだ大丈夫ですので、お気遣い無く。」
「そうか。では、行く―――――――「隊長!ぺトラ!!」」
「ルイビンさん!ライ君!!」

何でお前らは俺の声にかぶせるの?流行り?流行りなの?

「あ、馬…。助かりました!」

ん、あぁ。馬を持ってきてくれたのか。流石はルイビン。ありがたい。
とりあえずこんな所でボサッとしてる訳には行かないな。一応隊長として無難な指示でも出さねば、色々立場的にやばい。

「ルイビン、ライ。俺と共々、奇行種の駆逐しろ。」
「「了解!」」
「ぺトラは配置へ戻れ。陣を崩すな。」
「了解!」

正直俺も陣の中でゆったりしてたいが、流石に隊長としてそれは無いだろう。ぺトラはさっきの戦いで疲弊しているから、むしろ足手まといになりかねない。もしルイビンたちが来ていなかったら頼ったが、今は陣の体勢を崩さないためにも戻ってもらったほうが良い。

《ヴ……ヴァァァアア!!》

あぁ……巨人が近づいてくる。






――――人が巨人に食われていく……。

あの腐敗臭のする口の中で殺されるのは、さぞかし気持ち悪かろう。

――――人が巨人に食われて………。

食べられる人間、それを見ている人間。幸せなのはどちらだろうか。

――――人が巨人に………。

俺が判断を間違ったか。それとも正解なんて無かったか。


―――人が………………。





「ルイビンさん、隊ちょ―――う゛ァァア゛ぁぁああぁあqhwjf!!!!」
「ライ―――アァァア゛アアアア゛ア゛!!!?」

「ルイビン!?ライ!?あぁぁぁぁああああああああああああ!?
死ねぇぇえええ!!化け物ぉぉおおお!!」

《う……?あぁ………ああアアアアアアアアアアアアああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!》

うなじを目掛けて、切る、斬る、斬る!!……俺の服を紅に染め、巨人は倒れた。


―――そして、その下には二人の死体が。


……あぁ、誰か。頼むから不甲斐ない俺に教えてくれ。


俺はいつ、





人生を間違った……………?
 
 

 
後書き
( ̄▽ ̄m)m"_/| カタカタ 
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