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保安官

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第三章

「おい、嘘吐いてるとこの娘がどうなっても知らねえぞ」
「この頭柘榴みてえにしてやるぞ」
「それでもいいのかよ」
「そうしてもな」
 こう言って村人達を脅すのだった、そしてそのうえで彼等に対してさらに言うのだった。
「わかったら早く眉間のビルを連れて来い」
「いいな」
「今すぐにだ」
「あの、どうしてなんですか?」
 村長が怪訝な顔になりならず者達に尋ねる。
「眉間のビルを探してるんですか?」
「あいつをか」
「はい、それはどうしてなんですか?」
「あいつにな、弟分のジミーをやられたんだ」
 だからだとだ、リーダー格と思われる濃い髭の男が言って来た。彼が娘を人質に取っている。
「眉間を一撃でな、俺達の目の前でな」
「だからですか」
「銀行を狙った時にそこで用心棒をしていたあいつにな」
 これも西部ではよくあった話だ、その時にだというのだ。
「ジミーをやられた、俺達は慌てて逃げたがな」
「それで眉間のビルを」
「その時は焦って逃げたが今は違うんだよ」
 拳銃を片手に言う、娘は今も左手で抱き寄せている。
「逃げてからあいつの居場所を探していた、そしてな」
「この村に眉間のビルがいる」
「そう仰るんですか」
「あいつは間違いなくここにいる」
 この村にだというのだ。
「もうわかっているんだ、じゃあな」
「あの、眉間のビルって言われましても」
「あんな凄い人間は」
「嘘吐くんじゃねえ」
 ならず者は村人達の言葉に怒った目で返した。
「もうわかってるんだ、じゃあな」
「あの、ですから」
「そうした人は」
「出さねえのなら本当に撃つぞ」
 リーダーの男がその銃を娘のこめかみに再び突きつける。
「俺達はやるからな」
「これまでも何人も撃ち殺してるんだぞ」
「女子供も撃ってきたんだ」
「殺す相手は選ばないからな」
「わかったら早く連れて来い」
「ジミーの仇を取ってやる」
 彼等は銃を振りかざしながら村人達に言う、その前に。
 保安官であるオコーネルが来た、そしてこう言うのだった。
「騒がしいな、おい」
「あっ、オコーネルさん」
「こいつ等さっきからうるさいんですよ」
 救世主が来たという顔でだ、村人達は彼にその顔を向けて言う。
「眉間のビルを出せとか言って」
「それでミミーを捕まえて撃つぞって」
「何とかして下さい」
「このままじゃミミーが」
「全く、静かに生きたかったんだがな」 
 オコーネルは村人達の言葉を聞きながらやれやれといった顔で述べた。
「もうな」
「出て来やがったな」
「遂にな」
 そしてならず者達はだった、オコーネルを見てその目をいよいよと怒らせてそのうえで言うのだった。
「手前、遂に」
「遂に出て来たってのかよ」
「眉間のビル、忘れてねえぞ」
「えっ!?」
 ならず者達の言葉と視線がオコーネルに向いている、それを見てだった。 
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