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保安官

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第二章

 しかしようやく落ち着いてきた、それでオコーネルも言うのだ。
「今は手入れをするのも忘れそうだよ」
「それは忘れないでくれよ」
「わかってるさ、それでさ」
「それで?」
「もう一杯貰おうか」
 ブリキのコップの中のバーボンはなくなっていた、それで言うのだ。
「バーボンな」
「わかったよ、それじゃあな」
「このまま何もなかったらいいな」
 オコーネルはバーボンのおかわりを頼んでからこうも言った、そうして今は一人で昼から酒を楽しむのだった。
 その中でだ、このガンマンのことも話に出た。この時はオコーネルは村人達の中にはいなかったが。
「そういえば最近眉間のビルの噂を聞かないな」
「ああ、ビル=スタンカか」
「あのどんな相手も眉間を撃ち抜いて即座に倒すっていう」
「あいつか」
「何でも一瞬で六人の悪者の額を撃ち抜いたらしいじゃないか」
 このガンマンの噂が話されるのだった。
「相手に銃を抜く余裕も与えずに」
「アパッチ族の猛者のトマホークをかわしてそこから一撃で額を撃ち抜いたんだろ?」
「正面から突進してくるバッファローの額を見事だったらしいな」
「それこそワイアット=アープ並に凄い奴だったな」
「今どうしてるんだ?」
 その彼の所在についての話だった。
「噂じゃカルフォルニアに入ったらしいけれどな」
「ロスで酒屋やってるって聞いたぜ」
「いや、騎兵隊に入隊したんだろ」
「牧場の用心棒やってるんじゃないのか?」
「病気で死んだって噂もあるな」
 その所在は全くの不明だった、今彼がどうしているのか誰も知らなかった。
 それでだ、一人がこんなことを言った。
「ひょっとしたらこの辺りにいるかもな」
「流れ者でかい?」
「それで来ているってのかい?」
「そうかもな、カルフォルニアに来てるっていうしな」
 だからだというのだ。
「だったら一度会ってみたいよな」
「数多くのならず者を地獄に送ってきたらしいしな」
「流れ者でも間違ったことはしなかったっていうしな」
「そうしたヒーローならな」
「会ってみたいよな」
 こう話す彼等だった、これも西部ではよくあることだがヒーローの様なガンマンの噂話の結末は不明なのだ、それがかえって彼等の好奇心を引き出させていたが。平穏になろうとしている中で話の種として為されていた。
 そうした日々が続いていた、しかし平穏は急に破られるものでもある。
 ある日村に大柄で人相の悪い男が五人来た、彼等は村に堂々と入り村人達を睨みつけながらこう言ったのだった。
「おい、ここに眉間のビルがいるだろ」
「あいつがいるだろ」
「えっ、眉間のビル!?」
「あの人がいるって!?」108
 村人達は彼等の言葉を聞いて逆にこう言った。
「まさか、そんな」
「有り得ないだろ」
「そうだよな、あの眉間のビルがって」
「幾ら何でも」
「おい、匿ってるんじゃねえだろうな」 
 ならず者の一人がそれぞれ顔を見合わせて驚いている彼等に言った。
「もうここにいるのはわかってるんだよ」
「そう言われてもな」
「あんな有名人がこんな村にいるなんて」
「ちょっとないだろ」
「こんな辺鄙な村に」
「シラ切るっていうのか?」
 だがならず者達はこう言うのだった、そして。
 村の娘の一人、彼等の姿を見て怯えていた彼女を捕まえてそのこめかみに銃口を当ててこう言ったのだった。 
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