問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING ②
『ふん。この空も飛べない猿が。』
一輝たちが二翼のリーダー、グリフィスに話しかけると、こんな返事が返ってきた。
「おい、テメエ今なんていった?」
通訳の言葉を聴いた十六夜は、グリフィスをにらみつける。
『ふん、爪も牙もないみすぼらしい小僧どもが。私に話しかけるな。』
「御チビ、こいつ殺したらダメか?」
「ダメです!何を言われたのかは知りませんが、抑えてください!」
「なら、これぐらいにするか。」
一輝はこんなことで奥義を使い、是害坊を憑依させることで爪と翼を得る。
「これで話を聞くのか?」
『ほう・・・猿が翼を得るか。よいだろう、話くらいは聞いてやる。』
《獅子王で斬ってやろうか、コイツ・・・》
一輝は何とか耐え、話をする。
「いや、ちょっと挨拶しようと思ったのと、リーダーの名前でも売ろうかとな。」
『そうか。だが、私は猿のコミュニティに興味がない。』
「・・・そうか。ならもういい。二度と会わないことを祈らせてもらう。」
一輝は憑依を解き、二人の元に戻る。
「よくわかった。あれは俺が苦手なタイプだ。」
「だな。あの先天的な増長をするやつがリーダーのコミュニティ、こう・・・」
「ああ。」
二人は一瞬間を置き、
「「全力で叩き潰したい。」」
声をそろえてそういった。
「やめてください!コミュニティをつぶす時点でアウトですし、“龍角を持つ鷲獅子”連盟の一角ですよ!」
「大丈夫だ、御チビ。なあ?」
「ああ。二割冗談だ。」
「ほとんど本気じゃないですか!」
苛立っているため、二人そろってジンで遊んでいる。
「さて、グリーももういるみたいだし、俺は作戦の確認でもしとく。」
「おう、俺はグリーに挨拶してくるが・・・アイツもさっきみたいなやつだったら俺はどうしたらいい?」
「考える必要もない。グリーはあれとは真逆だ。」
一輝はそこで話しを切り、メイドたちのほうへと向かう。
「ただいま。グリフィスは思わず殺したくなるようなやつだった。」
「何があったのかは解りませんが、我慢してくださいね?」
「ちなみに、何を言われたの?」
「空も飛べない猿とか、爪も翼もないみずぼらしい小僧とか。」
「マスターに対し、そのような罵倒・・・!マスター!今すぐ切り殺しに」
「行ったらだめだから、お兄さんはここにいるんだよ、スレイブちゃん?」
スレイブは最近、一輝に関することで怒りやすくなってきている。
「さて、あれを切り殺すかはまた今度にして、」
「切り殺さないでください!」
「えー・・・まあ、我慢できる限りは我慢しよう。
今回の作戦だけど、俺とスレイブは城に乗り込んで大暴れ。ヤシロちゃんは百詩編で巨人の殲滅のために残る。音央と鳴央はその手伝い。OK?」
「ええ。」
「大丈夫です。」
「問題ないよ!」
「了解です。」
一輝は四人の返事を聞くと、手持ちの武器の確認を始め、水を補充しに向かった。
==============
“アンダーウッド”上空1000メートル地点。
一輝は人の姿のスレイブとともに水に乗り、グリーのすぐ横を飛んでいた。
「いや~、ホント、いい眺めだな。」
「ですね。閉ざされた空間でありながら、地平線が見える、なんとも不思議な光景です。」
一輝はそうやって箱庭を眺めながら、倉庫から取り出したサンドウィッチを食べる。
いつでも呑気なやつだ。
「スレイブも食べるか?」
「今食事を取るというのはどうかと思いますが、いただきます。」
スレイブも小腹が減っていたようで、素直に受け取る。
「十六夜もどうだ!?うまいぞ!」
「なら俺とサラとグリーの分、三つくれ!」
一輝は十六夜に三つのサンドウィッチを渡す。
「サンキュー!ついでに、グリーが編隊を崩せばこの五倍は出せるって言ってるんだが、どう思う!?」
「俺も出すから、行こうぜ!」
「だから、先ほどから行くなといっているだろうが!」
サラは二人の問題児に振り回される。
そうやって楽しんでいた集団だが、だから気づけなかった。
編隊の真正面に黒い円盤のようなものが現れていることに。
それは、突如として形を変え、蠢くように戦慄き始める。
そして・・・
「ぜ・・・全員、逃げろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
それは、魔王レティシア=ドラグレアの姿になり、サラの胸元にめがけて、長槍を放った。
「サラ!」
その槍は尋常外の速度でサラに向かうが、十六夜がそれを左肩に受け、庇う。
一輝はその姿を見て、少し安心すると後陣に向けて、声を荒げる。
「十六夜の言葉が聞こえなかったのか!死にたくなければさっさと逃げろ!!」
その声で固まっていた後陣は蜘蛛の巣を散らす勢いで逃げ出すが、それがレティシアの気を引いてしまい、龍の影を変幻させた無数の槍で狙いを定める。
「スレイブ!」
「はい、マスター!」
一輝はすぐさま剣の常態のスレイブを持ち、鞘を腰につるすと、同時に水の剣、弾を作り、影の槍を撃墜していく。
「これはッ・・・!」
「はい、一撃一撃が途轍もなく重いです!」
一輝は押し負けそうになりながらも、スレイブの助力によって持ちこたえる。
そうして全てを打ち落とし、レティシアの観察に入る。
「あれは・・・レティシア本人ではないな。」
「なぜそう言い切れるのですか?」
「一つ目に、今は休戦期間中だから本人が襲ってくることは出来ない。
二つ目に、何か、見ててぜんぜん違うように感じる。」
「では、あれはゲームとは無関係にあるものだと?」
「それで間違いないだろう。ん?」
《なんか、変な感じがするな・・・》
根拠があるわけではなく、ただ感じがしただけ。
だが、それを感じ取れたのは、一輝だけだろう。
一輝はその感覚を信じて眼下の“アンダーウッド”を見ると・・・
「「「―――ウオオオオオオオッォォォォォォォォォォォォ―――!!!」」」
急に巨人が現れ、アンダーウッドを強襲し始めた。
「十六夜!あいつらはどうやって・・・」
「さあな。だが、何かしらの策があったってことだろ。ただし、これで下は大混乱が確実だ。誰かが指揮を執らないとまずいんじゃないか?」
「・・・解った。私が行く.お前たちも無茶はするな。」
サラはそう言うとアンダーウッドに向かう。
そして、十六夜は学ランの袖を引きちぎり、止血のために左肩に巻き始めるので、
「有っても効果があるかわからんが、モルヒネ使うか?」
一輝はそれを手伝いながら、十六夜にたずねる。
「いや、今はこの痛みで意識がはっきりとしてるほうがいい。」
「そうか。でも、念のためにオマエ用とグリー用を渡しとく。」
一輝は学ランのポケットに注射を二本入れる。
「大きさで解るから、それを使ってくれ。」
「オマエはどうするんだ?」
「一つ、気になることがあるし、これが当たりなら俺以外が対処するのは難しいだろうから、俺も下に行く。」
「お前の実力なら、突撃を手伝って欲しかったんだが、それなら仕方ないか。」
「悪いな。それと、こっちは任せた!」
「ああ、任された!」
一輝はその声を背に、アンダーウッドへと向かった。
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