| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ファルスタッフ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第三幕その八


第三幕その八

「そうですぞ」
「確かに。そうですな」
「いや、流石は旦那様」
「そう仰るとは」 
 今まで裏切っていた従者達も彼をヨイショしだした。実に調子がいい。
「やはり我々には旦那様こそが」
「理想の主」
「わかったら明日は派手に騒ぐぞ」
「はい」
「わかりました」
「いやいや」
 しかしここで気を取り直したカイウスが出て来た。
「今からでどうでしょうか」
「今からとな」
「あら、いいですわね」
 それを聞いたメグが乗って来た。
「皆さん集まっていますし」
「子供達も」
 メグも言う。
「丁度好都合でしてよ」
「ふむ。それではだ」
「ええ」
「ここは皆でですね」
 ナンネッタとフェントンも言う。
「楽しく皆で」
「宴を」
「ではでは皆さん」
 アリーチェが真ん中に出てその皆に告げる。
「ファルスタッフさんと楽しく」
「賛成!」
「是非共!」
 フォード達だけでなく今宵の騒ぎに参加した全ての者がそれに賛成する。それを見てファルスタッフは誇らしげに鷹揚に頷いている。そうして一節言うのだった。
「ではその楽しい宴の前にお一つ」
「歌ですか」
「左様。世の中全て冗談」
 まず歌いだした。
「人は誰もが生まれつき道化師で頭の中では理屈をごねている」
「頭の中では理屈をごねている」
 皆それに続いて歌う。
「誰も彼もが道化師でお互い笑い合う。しかし」
「しかし?」
「最後に笑う者こそ本当に笑っているものさ」
「確かに」
「そしてその最後に笑っているのは?」
「このわしだ!!」
 最後の最後までファルスタッフはファルスタッフだった。しかし皆その彼を囲んで笑顔で大声で笑うのだった。陽気な女房達の喜劇はこれで終わったのだった。主役の最後の言葉で。


ファルスタッフ   完


                 2008・5・12
 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧