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俺様はフリードリヒ大帝

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第二話 「フェザーン制圧」

『』はナレーションです。


第二話 「フェザーン制圧」
 
ノイエ・サンスーシ宮殿 フリードリヒ4世

 シュトライトに命じてフレーゲル男爵を皇帝侍従武官に推薦させた。フレーゲル男爵が侍従武官を罷免されればブラウンシュバイクにとっては打撃になる。そうなったらリッテンハイムは喜ぶだろう。リッテンハイム一門からも侍従武官が来た。リッテンハイム家にもシュトライトの様に懐柔したスパイを置いた。席次はグリンメルスハウゼンが主席。次席がフレーゲル男爵とリッテンハイム一門の将校。同列にする。ケーフェンヒラーは裏方をやらせる。怖いのはリヒテンラーデ侯とブラウンシュバイク・リッテンハイムの三者が手を組むことだ。分裂させておかないとね。
 あと、リヒテンラーデ侯は帝国宰相にした。いままでは帝国宰相は置かれなかった。皇族が帝国宰相を勤めたから臣下が皇族と同じ職に付くのを防ぐためだったらしい。リヒテンラーデを帝国宰相にすることでリッテンハイムとブラウンシュバイクがリヒテンラーデを嫉妬するように仕向けたんだ。
 「ケーフェンヒラーよ。予の戦略はブラウンシュバイクとリッテンハイムを対立させておきリヒテンラーデとも対立させることだ。三者が合同で予に歯向かうことがないようにする。侍従武官もブラウンシュバイクとリッテンハイム家の者は対等にしてある。席次を争うように仕向けよ。両家が対立する原因を作るのだ。」

「かしこまりました。陛下。」

「グリンメルスハウゼンと協力して情報戦を戦える体制を整えたい。何か案はあるか?」

「公式に情報機関を設置すれば門閥貴族に即座に潰されます。現状で良いかと存じます。それにいまはフェザーン制圧戦に集中すべきかと。」

クリストフ・フォン・ケーフェンヒラー大佐

 エコニア捕虜収容所に骨を埋めるつもりでいたが新帝陛下御即位の恩赦で帰国が許された。まさか自分が陛下の侍従武官補になるとは思わなかった。フリードリヒ4世陛下は御即位前は無能・怠惰・放蕩の限りを尽くす勘当寸前の身だったらしいがおそばでお仕えする限りでは間違った評価だ。恐らく皇位継承争いに巻き込まれないように御自分を偽っておられたのだろう。現在の帝国は門閥貴族があまりに肥大化し過ぎている。門閥貴族は強大な財力と権力を持ち私兵艦隊をも有している。その門閥貴族は私利私欲の為にその強大な力を行使している。フリードリヒ陛下はその帝国を変えようとなさっている。妻に逃げられた事ももうどうでもよくなった。帰国できて良かった。

 『帝国歴487年、フェザーンの莫大な資本と地球教の力を削ぐためにウィリバリト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ大将指揮する皇帝直属艦隊が地球に殺到した。またフェザーン星系には宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥指揮する2個艦隊が派遣された。フェザーンに悟られないために訓練と偽り通常航路からは大きく離れて地球およびフェザーン星系に派遣されたのである。この作戦では訓練と偽る必要があった為にロイエンタール、ミッターマイヤー、ワーレン等のちに名将となる士官達が多く参加していた。これもフリードリヒ4世の目論見である。後に名将として名を残す士官たちに手柄を建てさせる機会を与えたのである。』

フェザーン回廊 ミュッケンベルガー元帥
 陛下から最初にこの作戦計画を立案された時は驚きを隠せなかった。今から思えば皇太子就任前までのフリードリヒ4世陛下は明らかに御自分を隠しておられた。 帝位にはまるで御興味がない態度を貫かれ放蕩の限りを尽くしていた。謀略の人か。
 フェザーン回廊に突入して1時間が立つ。通信妨害をしているからフェザーンは孤立している。フェザーンから帝国領に向けた船舶はそれなりの数がある。この艦隊だけで全ての船舶を拿捕できない。フェザーン回廊の帝国側出口の宙域を一個艦隊を使って厳重な哨戒網を敷いて封鎖してある。何重にも及ぶ封鎖網だ。突破は難しいだろう。
 今回の作戦では一気に制圧して同盟領侵攻の意志なしと宣言せねばならない。ここで同盟軍と交戦はできない。通信妨害をすると敵は通信できなくなるがこちらも一切の情報を絶たれる。ひたすら耐えて時間がすぎるのを待つしか無い。

「閣下、前方より船団が接近中です。民間の輸送船団のようですが拿捕致しますか?」

「かまうな。無線封鎖中であるからフェザーンに報告される心配はない。フェザーン回廊の帝国側出口に待機している艦隊が拿捕する。」

「は。」

フェザーン星系 宇宙港管制局
「主任。出発した全ての船舶と連絡がとれません。どうも宙間ノイズが多すぎるようにみえますが」

「太陽活動の影響だろう。気にするな。フェザーンを帝国艦隊を制圧するなんてことが.................念のため自治領主府に報告しておけ。」

フェザーン 自治領主府 アドリアン・ルビンスキー
 管制局から船舶と連絡が取れないという報告を受けた。いやな予感がする。恐らく帝国軍による無線封鎖だ。皇帝がフェザーンを直接占領するとは全く予想していなかった。フェザーンも地球教も独自の武力は持たない。だから帝国なり同盟が軍事行動を起こすまえに阻止しなければならない。帝国軍が襲来した以上は何をしても無理だな。同盟に亡命するか。それしかない。

地球圏 ウィリバリト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ大将

皇帝陛下の勅命で地球討伐を命じられた。この任務は簡単だ。地球圏を封鎖しておいてあとはゆるりと攻め立てればよい。少し時間が掛かるのが難点だがやむをえんだろう。宗教の影響は銀河連邦時代にすでに廃れている。完全にではないが。宗教の目的は良い人間を作ることだから必要かもしれん。どうも陛下もこの点にお気付きのようだ。
 
地球教 本部 総大主教
 まさか帝国艦隊が襲来するとは予想外の事態だ。フリードリヒ4世を甘く見すぎていた。腐ってもルドルフの子孫か。だが地球教の支部は全宇宙にある。帝国側の支部は潰されるだろうが同盟側は違う。
「だれかおるか。」

「総大主教猊下。」

「おぉ。ド・ヴィリエ大主教。ワシの死後お前を総大主教とする。帝国艦隊の地球教徒刈りを逃れ同盟領へ赴くのだ。帝国側の地球教施設は全て壊滅するだろうが同盟側ならばまだ再起の余地がある。ワシはもうこの歳。体がもつまい。任せたぞド・ヴィリエ総大主教」

「はは。」

『突然の帝国艦隊の襲来に地球教と言えども為す術もなく地球教関係者はそのほぼ全員が逮捕あるいは殺害された。メルカッツは地球教本部を有するヒマラヤ山脈一体を爆撃で焼き払い装甲擲弾兵による制圧を試みたものの地球教徒の捨て身の抵抗にあい当初予定していた地球教の重要文書押収を断念せざるを得なかった。地球教徒は地下教団施設を自爆させ信徒全員が死亡した。』

フェザーン星系 宇宙港管制局
「レーダー船影を確認。数は.....極めて多数。ドンドン増えます!」
「もっと正確に報告せんか!」
「数、約1万5000!帝国艦隊です!」
「なんでいままでわからなかったんだ!オーディンの事務所の連中は何をやっていたんだ!」

『フェザーンはその設立以来、事実上の独立国として生き延びてきたが地球教と共にその命脈が絶たれるときがきた。皇帝フリードリヒ4世のフェザーン占領宣言、”ノイエ・サンスーシの11月勅令”が全銀河に向けて発せられる。』

「予、銀河帝国皇帝 フリードリヒ4世はここに宣言する。帝国標準時で現時刻をもってフェザーンより自治権を剥奪し皇帝直轄領といたす。なお自由惑星同盟を僭称する叛徒のフェザーン弁務官事務所はその存在を皇帝の名において許可するものである。此度の制圧戦においても戦火が及ばぬよう配慮する。またフェザーンに居住する臣民諸君にはこれまでと同じ生活を送ることを許可する。フェザーン星との全取引はこれまでと同じようになるよう取り計らうものである。」

フェザーン星系 ミュッケンベルガー元帥
ようやくフェザーンに到着し陛下の勅令が全銀河に発信された。これでフェザーンは終わりだ。さて、迅速に制圧せねばならない。
「フェザーン星系を包囲し全ての船舶を拿捕せよ。停船命令に従わぬ場合は撃沈を許可する。航路局、放送局、警察本部、証券取引所、そして自治領主府を再優先で制圧せよ。叛徒共の弁務官事務所につなげ」

「こちらは銀河帝国 宇宙艦隊司令長官 グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥である。」

「自由惑星同盟 ヘンスロー弁務官です。」

「皇帝陛下の勅令はご覧いただけましたな。フェザーンは自治権を剥奪されますがそちらの弁務官事務所には手を出してはならぬという勅令である。弁務官事務所の敷地ないには帝国軍は入らぬと誓約しよう。但し無断で敷地外に出た場合は例外である。」

「は、はい。き、肝にめいじます。」

「よろしい。」

フェザーン ヘンスロー弁務官
まずい、まずいことになった。まさかフェザーンを制圧するなんて荒業にでるとは全く思わなかった。本国に連絡せねば。

「ハイネセンにつなげ。はやく!」

フェザーン星系 ミュッケンベルガー元帥

「閣下、ミッターマイヤー大佐なるものから通信が入っております。進言があるとのことです。」

「つなげ。進言があるそうだなミッターマイヤー大佐」

「は!フェザーン商人がこの混乱に乗じて商品の値を釣り上げるものと予想されます。フェザーン経済に影響が出る前に 不必要な値上げを禁じられるべきかと愚考いたします。」

ふむ。確かにそうかもしれん。経済の事まで思案が周りにくい。

「そうかもしれん。進言を受け入れよう」

そう言うと通信を切らせた。ミッターマイヤーか覚えておくか。

「閣下、制圧部隊指揮官。リューネブルク少将閣下より通信です。」

「リューネブルク少将であります。ご支持どうり航路局、放送局、警察本部、証券取引所、そして自治領主府の制圧が完了いたしました。しかしルビンスキーを取り逃がしました。現在捜索の手を伸ばしております。申し訳御座いません。」

ルビンスキーを逃したか。カンの良い黒狐め。艦隊を同盟側出口まで哨戒させても無駄だろう。フェザーン回廊全域を網羅する哨戒網を作るには艦艇数が足りぬ。だが当初の目的は完了した。

 
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