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俺様はフリードリヒ大帝

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第一話「皇帝万歳!! 新皇帝フリードリヒ4世」

銀河帝国 帝都オーディン ノイエ・サンスーシ宮殿

 俺はフリードリヒ・フォン・ゴールデンバウム。目を覚ましたら赤ん坊の体に憑依していたんだ。しかも後のフリードリヒ4世だ。アンネローゼを寵姫に迎えてラインハルトに恨まれ病死だったな原作では。ラインハルトなんてチート野郎に恨まれるなんてごめんだ。死にかない。しかも兄2人がいて皇位継承争いで暗殺されかねないんだよね。だから即位するまでは凡庸・無能・皇位継承には無関心という評価を定着させる必要があったんだ。だから遊びまくったね。放蕩の限りを尽くした。連日宴会をやったりお忍びでオーディンの高級娼館に出入りしたり。元同盟軍の女性兵士という娼婦がいてその人が俺のお気に入りだった。ええ女だったわ。このまま放蕩してれば原作同様に自動的に俺に皇位が巡ってくるはず。皇帝に即位したら広大な皇帝直轄領から上がってくる税や近衛艦隊を指揮できるようになる。かなり行動に自由度が増えるんだ。アンネローゼを寵姫にしないように気をつけて門閥貴族を弱体化させて、フェザーンからの暗殺に気をつけなきゃな。あとはお決まりのハーレム作り。
 でだ、昨日おれの皇太子就任が決まった。兄2人が皇位継承を巡って殺しあってくれたから漁夫の利を得られたわけだ。父オトフリートは何時死んでもおかしくない健康状態なんだよね。だから今日から摂政として政務をすることになった。さて摂政府に行くか。
 宰相代理にはリヒテンラーデ侯。あとの文官の人事はリヒテンラーデの爺様に任せる。武官は帝国軍が勝手に推薦してくるからその人事案を承認するだけだな。門閥貴族を弱体化させるためにはラインハルトの真似をする。帝国軍を味方に付けて反乱を起こさせ武力討伐する。そうすれば皇帝親政だ!でもちょっとおかしいことがあるんだよ。リヒテンラーデが爺様なんだよね。原作通りならまだ50代くらいのはずなんだけど。同盟軍の人事を見てみるとヤンがエル・ファシルの英雄として存在してるんだよ。もしやと思って調べてみたらラインハルトいましたよ。アンネローゼも(涙)。どうなってんだ。最悪やないか。
 
翌日
 昨日は摂政府でリヒテンラーデを帝国宰相代理に任命して人事を一任した。帝国軍からは三長官の人事案の報告された。全員門閥貴族派の将校でした。承認したけどね。まずは皇帝への即位が最優先だ。門閥貴族の人事案を突っぱねたら暗殺されかねん。まだ皇帝じゃなくて皇太子だからね。オヤジ(オトフリート)の寿命はまだ半年くらいあるらしい。さすがに半年も人事を先送りにできん。
 昨日はそれだけじゃなかった。放蕩の限りを尽くすと決めて行動していたから街の酒場に借金があるんだよ。俺。しかも複数件。額はこの時代の平民の平均年収くらいあります。リヒテンラーデの爺様に怒られましたよ。もの凄く。「皇族としてあるまじき行為」だとか「借金を即位前に返せ」とか。1時間くらい小言をくらった。あんなに怒らなくてもいいじゃんか。だから皇太子になった時に与えられた領地から上がってくる税収でなんとかしようと思ったんだけどリヒテンラーデに止められた。自分で何とかしろって事らしい。どうするかな。
 「リヒテンラーデ侯。街の酒場への返済であるが皇太子御用達の看板を掲げさせることで返済としたい。御用達の看板で宣伝をすれば酒場の店主も収入の増加を見込めるであろう。」

「恐れながら皇太子殿下。御用達の看板を出せば殿下の借金のこともまことしやかに囁かれましょう。帝室の名に気づか付きまする」 

でも借金については暗黙の噂なんだよね。もうみんな知ってるんだけどタブーのようになっていてあまり表に出てこないだけなんだよ。

「もう暗黙の噂になっている事。市井の者達は知っていよう。御用達の看板をだしても最早、私の名誉も帝室の名声も新しく傷はつくまいよ。それに私が通った酒場はさほど高級というわけではない。市井の者でも利用できる価格帯の酒場だ。庶民に親しい皇太子という宣伝にもなろう。良いではないか。それでも酒場の店主から反論があるなら酒場の娘を私のメイドとして召し上げる。メイドになれば支度金を下賜できる。娘の将来にも良いではないか。」

「はぁ.....」

リヒテンラーデはあまりいい顔をしなかったが反論はないらしい。早速皇太子御用達の看板を作らせよう。器量良しの娘もいたから皇太子付きのメイドにするって手もあるしね。

「それよりもその他の省庁の人事案であるがリヒテンラーデ侯、そちに一任する。ただし門閥貴族のパワーバランスを維持するように人事を決定せよ。門閥貴族同士の謀略合戦なぞごめんだ。」

「そのように」

 あと皇帝に即位したらグリンメルスハウゼンを侍従武官にすることと同盟のエコニア収容所に収監されているケーフェンヒラーを側に置きたい。捕虜交換するか。貴族の捕虜を返還させれば自動的にケーフェンヒラーも帰ってくるだろ。

「それと私が即位した暁には捕虜交換をいたすように。叛徒共に囚われておる我が軍の将兵と我が方が持つ捕虜を交換せよ。」

「捕虜交換で御座いますか。恐れながら殿下。戦にて囚われしは陛下への不忠故にで御座います。そのような者達にお慈悲をかけなさいますな。」

「そうかもしれんが捕虜の中には貴族の子弟もおるだろう。私の即位記念ということで慈
悲を与えたい。フォンの称号を持つ貴族の捕虜は一人残らず帰国させよ。それと帰国した捕虜達は肩身が狭かろう。家族ともども皇帝直轄に移住させよ。皇帝直轄の星系は人口が右肩下がりなのでな。」

「はは。」

帝国宰相代理 クラウス・フォン・リヒテンラーデ公爵

 市井の酒場に借金がある皇太子など前代未聞じゃ。だが御用達看板の一件はともかく門閥貴族のパワーバランスに配慮するだけの見識はおありらしい。波風建てずという事か。それで良い。問題は捕虜交換じゃな。それにしても今日のフリードリヒ皇太子殿を見ていると無能・怠惰という評判は疑問じゃな。御自分を隠されこられたのか。ふーむ。


 その後、捕虜交換の話はトントン拍子に進んだ。貴族出身の士官は後方支援に回ることが多いがそれでも結構な数が捕虜になっていた。貴族達も表立って皇帝に頼むわけにもいかず諦めていたがここに来て次期皇帝が捕虜交換を提案したために多くの門閥貴族が賛成にまわったのである。
 半年後、皇帝オトフリートが崩御し皇太子フリードリヒが父帝の葬儀の後即位した。半年前に皇太子に指名されてからフリードリヒ4世による事実上の施政が始まっていたためにたいした混乱は見られなかった。そして即位後初の勅許として捕虜交換の勅許が下される。

「予、フリードリヒ4世は叛徒共に囚われし臣民を予の膝下に帰順させる事を命じる。」


オットー・フォン・ブラウンシュバイク公爵、ヴィルヘルム・フォン・リッテンハイム侯爵

「どうかなリッテンハイム侯。新帝陛下は?借金を抱えた皇太子殿下なんぞ前代未聞ではないか。」
「あまり言い過ぎると不敬だぞ。捕虜交換は下級貴族達から度々要求されて来たことだが中々実行に移せなんだ。良いのではないかな。リヒテンラーデ侯によればフリードリヒ4世陛下は凡庸な陛下であらせられるそうだ。ブラウンシュバイク公」

「そうであればよいがな。」

自由惑星同盟 首都星 ハイネセン 統合作戦本部ビル シドニー・シトレ元帥

 皇帝オトフリートが崩御したという発表があった。病に伏してから皇太子フリードリヒによる施政が始まっていたからお決まりの混乱はないだろう。それにしても驚いたのは帝国側からの捕虜交換の提案だ。以前にも捕虜交換はあったがせいぜい数千人単位だった。今回は100万人だ。こちらは経済的な負担もあった上に兵を補充できる。これから帝国は若い皇帝による統治が始まる。どうなることやら。
 

帝都オーディン ノイエ・サンスーシ宮殿 フリードリヒ4世

 グリンメルスハウゼンのおっさんと密談中です。さて即位まではうまくいった。次は肥大化した門閥貴族の弱体化だな。取り敢えず情報戦に長けた(と勝手に思ってる)グリンメルスハウゼン子爵を筆頭侍従武官にした。捕虜交換でケーフェンヒラーが帰ってくれば軍師役にしよう。国内は情報戦で征するのが基本だよね。武力を使ったら内戦になる。内戦が長期間すると同盟軍が介入するからね。皇帝vs貴族連合の内戦は最期のトドメだよ。一気に決着をつける。その前までは情報戦が基本。あと暗殺を防ぐのも重要。だから逆亡命したヘルマン・フォン・リューネブルクを護衛にしよう。リューネブルクは同盟軍じゃ肩身が狭い生活をしていたに違いない。自分を認めて欲しいと思っているはず。オフレッサーも外せないね。

「オフレッサーをご配下に加えなさるのですか。理由を伺えますかな陛下。」

「グリンメルスハウゼンよ。オフレッサーはもう40歳。戦いたくとも体がうまく動くまい。だから3年前に現場を離れ装甲擲弾兵総監の職を引き受けた。だが軍役を退くにはまだ若い。これからは予を守る剣になってもらう。」

「さようでございますか。良きことかと存じます。」

「予の侍従武官には卿を筆頭にクリストフ・フォン・ケーフェンヒラー、後数人を門閥貴族から迎え入れる。門閥貴族が騒ぐのは目に見えている。門閥貴族の侍従武官がいないのは皇帝の不信ゆえにだと邪推されるのを恐れておるからな。」

「ではブラウンシュバイク・リッテンハイム両家から侍従武官を? しかし妙な連中が侍従武官に入るのはいささか.........」

「分かっておる。ブラウンシュバイク家にはシュトライトという軍人が使えておる。こやつを懐柔してシュトライトから適当な人材を推薦させる。リッテンハイム家も同じ手を使おう」

「そのように致します。陛下。」

 その翌日、皇帝の名でオフレッサー上級大将の装甲擲弾兵総監職退任と皇帝警護を任務としする近衛師団 師団長への就任が発表された。オフレッサーが我が世の春を謳歌している一方でブラウンシュバイク公爵に仕えるシュトライト准将は深夜の帰り道でグリンメルスハウゼン子爵の部下に拉致され広大なノイエ・サンスーシ宮殿の一角にある地下施設に監禁されていた。

アルツール・フォン・シュトライト准将

 夜道を歩いていたら突然クロロホルムをかがされ意識が途絶えたのを覚えている。次に目が覚めたらこの有り様だった。コンクリート打ちっぱなしの小部屋で窓一つない。反門閥貴族のしわざだろうか。
 扉が開いたと思ったら2mを越える偉丈夫が入ってきたオフレッサー上級大将だ。昨日に下級貴族初の近衛師団長に抜擢された男だ。後ろの人物はグリンメルスハウゼン子爵だ。オフレッサー師団長がいるということは黒幕は陛下か。
 「すまぬな。シュトライト准将。陛下がお召なのだ。止むに止まれぬ事情があってあおのような盗賊まがいの事をした。許せ。」

しばらくすると予想通りフリードリヒ4世陛下が入ってきた。緊張のあまりアタマが真っ白になってしまった。

「すまぬな。シュトライト。手荒な真似を許せ。ブラウンシュバイクに気づかれずに卿と接触するにはこの手しかなかった。卿を予の直属に加えようと思ってな。いまはブラウンシュバイクにつかえているそうだがこれからは予の為に働け。」

今のフリードリヒ陛下はまるでルドルフ大帝が降臨したかのような恐ろしい形相だ。緊張のあまり喉がカラカラになってアタマが真っ白になったが何とか言葉を絞り出した。

「恐れながら陛下。小官は陛下の臣下でございます。」

「ブラウンシュバイクを裏切ることになってもか?卿は中々の忠義者と聞く。ブラウンシュバイクを裏切り予のスパイとなれるか。」

「小官は陛下の臣下でございます。ご命令とあらば」

「帝国は滅びへの道をたどっている。門閥貴族は肥大化し私利私欲のために権力をもてあそぶようになった。開祖ルドルフ大帝も悲しんでおられよう。予はこの国を変える。卿も予と共にこい。」


緊張と恐怖のあまり私はそれだけしか言えなかったが私の答えを聞いた陛下はそれまでの恐ろしい形相を一転させて笑顔になられた。これがフリードリヒ4世陛下か!!。お仕えのしがいがありそうだ。

 その後私はグリンメルスハウゼン子爵の手の者に自宅に連れていってもらった。その夜は興奮で眠れなかった。今まで信じて仕えてきたブラウンシュバイク公爵を裏切ることになるがこの帝国を変えようとされる陛下の麾下に迎えて下さったことに興奮している。陛下のご命令は侍従武官の推薦を私にさせる事だった。門閥貴族の有能な人材が皇帝侍従武官になるのは困るこいうことらしい。防諜と情報収集が目的か。
 
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