英雄伝説 零の軌跡 壁に挑む者たち
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20話
手配魔獣退治で荒らしてしまったジオフロントの片付けは意外にも連絡一本で終わってしまった。
施設管理課や施設清掃課が掃除ロボを派遣しているので、掃除をしなくても良いということが確認出来たからだ。
二度ほど出入りしたジオフロントが工事中とはいえ魔獣がいるのに意外と清潔に保たれていると思っていたが、そういう理由があったのだ。
エプスタイン財団製の試作品から何から広大なジオフロント清掃に必要なので大量納入していたことがわかり、エリィは巨大な施設には相応の施設管理費用が掛かり、拡張を続けるジオフロントは際限なく費用が拡大していく事実を認識して溜め息をついた。
それでもジオフロントの工事を継続するためにも邪魔な大型魔獣を退治してくれたことを担当者が一言感謝してくれたことは支援課を喜ばせ達成感を与えてくれた。
任務も終了したので支援課はとりあえず吹き飛んできた廃材やらを片付けてからジオフロントを出ることに。
「ランディさんの最後の技、あの火の闘気を叩き込むところなんか凄かったです」
雑談交じりに地上に向かう通路を歩いていたのだが、ティオがランディを褒めていた話題で、闘気の話が出てきた。
エリィは聞きなれない言葉に質問した。
「一口に言うのは難しいです。私は闘気って言いましたけど、生き物には力とかエネルギーとかそういう言葉でしか言い表せないものがあるんです。それをランディさんは上手く扱えるのですけど、えっと」
「戦術導力器で例えたほうが簡単じゃねえか?」
ランディのアドバイスに頷くと導力器を取り出した。
「本当はちょっと違うんですけど、属性の力がエネルギーだと理解するとわかりやすいです。私の限定属性は水になってます」
差し出されたみぃしぃのストラップのついた導力器は青いクオーツが光っておりそこには水属性しか嵌め込めない仕様になっている。
「これは解除することも出来ますけど、個人的には凄く合っているんです。それは人それぞれに七耀石のような属性があって自分の属性を入れておくと動かしやすい、使いやすいという事情です。アーツが使えるのもその体内エネルギーを使って駆動させてるからなんです。導力器にクオーツを嵌めると体が軽くなったり丈夫になったりを感じませんか?それは体内の属性エネルギーがクオーツで強化されてるからなんです」
エリィが感心の声を上げる。導力器などの科学技術については一通り習ったつもりだったが、戦術導力器の講習でも習ったが、使い方や身体能力強化の話程度で属性エネルギーを使うから限定属性クオーツがある、得手不得手まで初めて知ったことで感心しきりだった。
「俺は火の属性が強いから闘気の色も赤いし火が出るわけよ。まあ導力と合わせないと本当に火が出るわけじゃないがな。それを上手く出せるように修行したからああいうのができるわけで、それでもああいう風に出すには溜めなくちゃならんし出したら出したで滅茶苦茶疲れるけどな」
「導力器はその力の増幅や制御装置でもあるんだ。そして武器についてる導力器がエネルギーで増幅されて威力も上がる。でもランディみたいに技に反映させられるまで行ってるのは本当に凄いよ」
「ようは気合を撃ち出してるだけだぜ?褒めんなって」
ランディとロイドが話を引き継ぎ、ランディの凄さを称えたのだが、警備隊にはあれぐらい出来るのがゴロゴロいるぜと謙遜したが、実際は警備隊の隊員は導力兵装で補う部分が多いため、戦術導力器の補助を得つつも教官や部隊に数人いるエースクラスの隊員しか出来ない芸当である。
「達人になると導力器の補助なしでエネルギーを操ってアーツのようなことも出来る人がいるみたいですけど、私は体内エネルギーより安定してる導力器のEPの方が使いやすいですから」
「みんなの武器も導力化しているのはエネルギーの変換とその補助を受けてるからなのね」
トンファーやハルバートまで導力化しているのは体内エネルギーと導力を威力に変換するためである。導力銃も導力弾の故障さえしなければ弾切れが起こらない。非常に使いやすく既存の兵器の延長線上にあった。
これらに比べると魔導杖は中距離装備だが導力波による面攻撃が出来たり、導力器の補助も行えるという導力器の支援装備の側面が強い。
これらの武器でもっとも普及率が高いのはやはり銃である。
それは近代化、導力化の流れで誰もが簡単な訓練で使えるようになるという世界の当然の流れであった。
しかし豊富な戦闘経験を持つ者は白兵戦に長け、遊撃士や各国の特殊部隊などは体内エネルギーを戦術導力器の補助でよく使いこなしている。
鍛錬の結果でなければ行えなった能力強化を限定的にでも使用できることは個人能力を大幅に引き上げる。
そして自分のエネルギー自体が武器に使えると。
政治や歴史などを学んできているので戦略などの大規模な視点を得ているが、こういう身近な戦闘的、技術的なことには疎いエリィは、元々競技用で始めた銃以外の武器をほとんど意識していなかったこともあり非常に勉強になった。
実地というのはやはり新しい視点で学ぶべきことはたくさんある。
「まあ俺は闘気で殴りつけたけど、ティオすけみたいにアーツ主体でも良いんだし、ちょっとずつスタイルを作ってけば慣れてくって」
ランディやロイドなど接近戦が主体になれば武器への体内エネルギー供給量の強化、闘気を錬ることが身体能力も含めて殴りつける武器の威力の上昇に繋がる。
ティオやエリィは武器の関係上、体内エネルギーよりもその後の導力エネルギーの制御が武器の威力上昇に繋がり、導力器への安定した導力エネルギーの供給こそが複雑なアーツの使用に繋がる。
同じエネルギーをランディとロイドは直接ぶつけ、肉体が主で武器自体が補助になっているのに対して、ティオとエリィは一度導力器に移すことで多様なアーツを使いこなす、武器のほうが主になっているのだ。
そうやって雑談を続けているとようやく地上へ続く扉を出た。
ジオフロントは換気されていたが、やはり地下の薄暗い空間とひんやりとした空気が続いていたため、地下から出てきたばかりの4人には地上の陽射しや空気は格別だった。
「まだ昼前だけど、休憩もしたいし次の支援要請に行くのは昼食を食べてからにするかな」
「そうね。ちょっと疲れたわ」
じゃあ支援課ビルに戻って昼食にするかなと決まった時だった。
ロイドの懐からエニグマの呼び出し音が鳴った。
「あ、はい。特務支援課、ロイド・バニングスです」
「おー、俺だ。調子どうだ?」
通信の相手はセルゲイ課長だった。
「ちょうど手配魔獣を退治したところです」
「順調で結構。なら、今、どこだ?」
「ジオフロントを出たところですが」
「まあ遠くはないな。お前たちに緊急捜査任務を与える。支援要請は後回しでいいから最優先で対応してくれ」
セルゲイ課長はいつも通りとぼけた声だったが、最優先任務という言葉にロイドはこれは何か事件でも起きたのかと緊張し、与えられる任務の内容を待った。
「南東エリアにある旧市街、急いでそっちへ向かえ。住民から警察に通報があった。厄介な二組の不良集団が喧嘩を始めようとしているから止めてくれって。だからお前らが後腐れないように止めてこい。以上だ」
そう言うとセルゲイ課長は通信切った。
「ま、待ってください!喧嘩の仲裁ってそれは捜査じゃな、ーってもう切れてるし!」
「課長から何だったの?」
「ロクでもなさそうだな」
「同感です」
言いっ放しで通信を切った課長に苛立ちながらロイドはエニグマをしまうと3人に課長からの指令を説明した。
「不良同士の喧嘩ねえ」
「データベースによるとサーベルバイパーとテスタメンツという2チームが旧市街で徒党を組んでいて、喧嘩は日常茶飯事だそうです」
ティオが個人用端末から情報を読み上げる。
「俺が街を離れてる間にそんな連中が。ほかに情報は?」
「人数は両組織共に十人前後。変動があるようで正確な数字はわかりません。活動は3年ほど前からサーベルバイパーが、テスタメンツは2年前から確認されてます。リーダーはヴァルド・ヴァレスとワジ・へミスフィア」
不良集団の情報なのでこのほかには根城にしている廃墟になった建物の不法占拠が記載されているのみ。
まだ事件が起きてないからこれは捜査任務じゃないんだけどなとロイドはぼやきつつとりあえず指令も下ったし通報があったのなら現場に急行しないといけない。
「人数も多いようだし、本格的な抗争になる前に現場に向かう。なんとか止めないと」
「昼飯は後だな」
後書き
なんとなく軌跡世界の超人戦闘能力についてでっちあげてみた。
なんで主人公たちが強いかは単に激しい戦闘での成長とか功夫を錬ってるで良いと思ったんだけど、それなりに考えてみるとエネルギーを接近戦型と魔法型で使い分けているってことにした。
体内エネルギーでも気でも良いけど、強くなるとそれが上昇し、弱くても戦術導力器で補助する。
それをそのまま殴りつけてるのが接近戦型で闘気。導力器で導力エネルギーに変換してアーツを撃つのが魔法型。
アーツが使えるのも限定属性があるのも体内に属性があってそれをエネルギーの基点していて、戦術オーブメントでの能力強化はクオーツでその属性値を上昇させてステータスアップしたから。
使い方が上手い人は属性強化だけで身体能力もかなり強化する。
ランディは導力器がついてる威力増幅のハルバートを使ってるので威力は闘気と導力エネルギー補正で普通の人より1割から2割増しぐらいになってます。溜まった闘気をぶちかますSクラフトは5割増しぐらいかな。ゲームだと2倍という破格の威力だけど。
魔導杖は戦術オーブメントとセットでさらに相互支援出来る装備にしちゃったけど、銃が一番難しい。導力エネルギーで威力をアップさせるべきか、それとも誰でも同じ威力で純粋に射程勝負にするか。体内エネルギーを放出すればある程度で防御できるから疲れてるところを撃ったりなければ危険だけど実弾よりはマシぐらいかな。
達人はオーブメントなしで術が使える、体内には属性エネルギーがありオーブメントはその補助でしかないぐらいの設定にしないと幻術に符術とか、幻と空の合成技ということなら分け身とかも含めて設定的に出来そうな雰囲気だからさ。ほかにも法術に方術とか、格闘術も気功で壁ぶち抜くとかさ。これぐらいの設定にしないと。
気合で闘気が漲るとかも熱いテンションでなんとなくありそうで。意思のバトルだし。
あと、いよいよ不良抗争編開始。今後空気になるけど結構好きよ。
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