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神葬世界×ゴスペル・デイ

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第一物語・後半-日来独立編-
  第四十章 戦場で踊る者達《3》

 
前書き
 砲撃発射、よおーい……、
 って―――――!!
 ドゴーン……。
 ただそれだけです。
 では、スタート。 

 
 入直は火炎ノ緋翼が握った長銃、炎熱火砲のトリガーを引くように火炎ノ緋翼に意思を飛ばした。
 了解し、火炎ノ緋翼はそれを行った。
 トリガーを引き、そのことで起こった爆発のような一線を行く砲撃。
 片手による砲撃は位置を維持することは出来無いが、彼方は確実に回避を行うことは解っている。
 その上での片腕砲撃で、位置を維持することが出来無いということは位置が変わることである。
 そう、片腕砲撃による不規則に動く右腕により彼方の回避パターンを複雑化させたのだ。
 それによって生まれる大きな隙。無駄な回避が多過ぎる上で起こってしまった穴だ。
 右手だけだったのを左手を砲に添え、ぶれないように今度はきちんと持つ。
 回避する騎神を追い、両の腕で砲口を動かす。
 振り抜くように、右から左への砲撃を行う。
 が、それによって微かだが相手を捕らえた。
『くっ、なんて熱量だ。掠っただけでも装甲が溶けやがった』
 脚型加速機|《レッグスラスター》の装甲が、砲撃によって溶けて形を変えていた。
 熱は温度感覚機器から伝わり、焼けるを越えて溶けてしまいそうだった。
 あれは危険だ。
 直撃で食らえばさすがの戦竜であっても、たちまち装甲は溶けて貫かれるに違いない。
 強力な武器だ。
 弾かれた二本の流魔刀を操り、そのまま腰装着型加速機|《ウエストスラスター》にしまう。
 近接戦闘は危険と判断、遠距離による射撃に専念する。
 短機関銃を握り締め、脇を閉めて狙いを定める。
 相手との距離は約五十メートル。
 あれ程の威力を持つ砲撃を再び行うには、射てるまでのタイムラグがある筈だ。
 確か先程の会話で、彼方の騎神は後五分しか起動出来無いと言っていた。
 なら、こちらは五分になるまで耐え抜けば勝ちとなる。
 こちらが時間稼ぎをしてくることは、考えなくても彼方は分かっているだろう。
 だから、彼方は攻めて来た。



 腰装着型加速機|《ウエストスラスター》を噴かし、相手との距離を縮める火炎ノ緋翼。
 操縦者と意識を共有していないため動きに若干のブレはあるが、運のいいことにそれによって相手が標準を定めるのに手間を掛けさせた。
 火炎ノ緋翼の肩に乗る入直はまだ身体に残る痛みを感じながら、集中を切らさないようにしていた。
「炎熱火砲は放射型の砲撃だが、ぶっというえに砲撃で出る光で視界が眩しくなるからね。命中率が心配だが、まあ、遠距離攻撃だけじゃないからどうにかなるさ」
 言い、距離を縮める火炎ノ緋翼が握る炎熱火砲が変形した。
 握るグリップ部分が円弧を描きながら縦になり、銃身は装甲によって覆い守られる。
 すると、砲の背から緋の刃が現れた。
 始めは揺れる煙のように、後から確かな刃の形となる。
 剣形態へと、形を変えたのだ。
『変形武器か、近接戦闘も考慮済みってわけだな』
「攻め切れればこっちの勝ち、守り抜くかこっちを攻撃してダウンさせればそっちの勝ちさ」
『いい意気込みだ。ならその意気込みを褒めて、辰ノ大花の者の礼儀として手合わせ願おうじゃないか』
「だったらあの掛け声が必要だね?」
 一人と一機は間を置いて、
「いざ、正々堂々尋常に勝負――!」
『いざ、正々堂々と尋常に勝負――!』
 短機関銃を武器装着部へとしまい、即座に振り抜いた流魔刀と、降り下ろした炎熱火剣はぶつかった。



 一方は青の刃による連続攻撃を、もう一方は緋の刃による重量攻撃を仕掛けている。
 双方加速機を休みなく噴かせ、空に多数の打撃音を響かせた。
 ぶつかった衝撃により刃は欠け、散るが即座に流魔によって再生される。
 だから火花に似た塵が毎度見られ、それが空に飾りを施した。
 鍔迫り合いに入ったため、休憩を取るように話し始めた。
「アンタらは長が死ぬってのにこうして戦ってる。これに何の意味があんのさ」
『意味なんてものは無い。俺達は俺達なりの事情ってもんがある。日来のお前には分からんだろうがな』
「なら黙って見てればいいさ。ウチらの長は今からアンタらの長に告りに行くからさ」
『無駄だと思うがな』
「馬鹿な長ならやり遂げるさ」
『そうかい――!』
 と、こちらを突き飛ばすように彼方は力を入れ、刀を振り抜いた。
 開いた距離を俊敏に距離を縮め、流魔刀による斬撃を放った。
 炎熱火剣は剣であると同時に砲であるため、重い動作になるため炎熱火剣による防御は不可能。
 加速機を一噴かしし、攻撃範囲から逃れた。
 反撃はここからだ。
 火炎ノ緋翼が握る炎熱火剣を変形、今度は炎熱火砲による砲撃を放つ。
 トリガーに手を添え、
「再び吠えろ、炎熱火砲――!」
『しまった! この距離は――』
 言葉を紡ぐ前に砲撃が放たれ、目の前が眩しく熱い光に包まれた。
 直撃は何としても避けなければならない。
 イグニッションによる緊急回避!
 即座に判断し、大気を押す圧を一点に集中させるように加速機を閉じ、圧がこじ開けるように蓋を一気に開き、開き逃げ場を見つけた圧による爆発を起こした。
 だが、回避を行う予備動作が長過ぎたために背中が焼け、溶けた。
 これによって武器装着部に納めていた短機関銃と長銃を失ってしまい、遠距離攻撃が不可能となってしまった。
 犠牲はあったが、武器装着部とそれに納めていた武器の焼失だけに止められたのは運が良かったと言うしかない。
 あんな武器相手に実戦装備でないのはかなり不利で、あの砲による砲撃は確実に戦闘艦を撃沈させるために造られたものに違いない。
 監視され、武装チェックが行われていた筈だがそんなものを何処にどうやって隠していたのか。
 そして、それを造れる日来の技術力。
 空に見えるあの連結式の航空船は、一体どのようにしてそんな技術を得て、造られたのだろうか。
 疑問に思うと同時に、日来は必ず成し遂げると思った。
 必ず成し遂げる。そう、必ず。
 だからこちらは辰ノ大花を守るため、ただそのためだけに戦うだけだ。
 まだ正常に動く加速機を噴かせ、反撃を試みようとした時だ。
 聴覚機器から聴こえた。
 仲間の声だ。
『……こちら、A2。敵による砲撃で……頭部をやられました……』
 ザザ、
『それにより、各機器に……影響、有り……。……安全機器の発動により……一時意識による、操作が出来ません』
 ザ、サザザ。
 ノイズ混じりの仲間の声が聴こえ、彼方の事態を確認する。
『こちらA1。どうした、負傷か』
『日来の、魔法術師……との戦闘で、どじ踏んでしまいました……。気を付けて、下さい……彼方は、日来は……』
『こちらA3! おい平気かよ! なんかノイズ混じってるしよお、援護に付くぞ!』
『……いえ、結構です。これくらい……一人でどうにかして、みせますよ……』
『おいおい、そんなこと言ってねえで。こっちはあらかたけり付いたし――』
 おい、さっきなんて言った。
 “こっちはあらかたけり付いた”。確かそう言った筈だ。
 戦闘開始から十分近くは経っているだろう。しかし、彼がそんな短期間で敵を仕留めることが出来るだろうか。
 いや、無理だ。
 彼の本分は誘導戦。目標を目的の場所へ導く戦いを得意としている彼が、戦闘戦を本分にしている自分よりも先に敵を倒せるだろうか。
 もし彼の相手が余程弱かったら別だろうが、彼の相手は半獣人族だった筈で、地上戦ならば空中戦装備のこちらは不利だ。
 逆に言えば彼方は有利になるが、果たしてその状態で容易く彼方が負けるとも思えない。
 ので、ここで一つ疑問を投げ掛けてみた。
『おい、A3。お前まさか……言ったのか……?』
『なんだよ、そんな低い声だして。こええって』
『質問に答えろ……言ったのか?』
 笑い、誤魔化そうとしたが無言のこちらの様子で諦めたのだろう。
 すまん! と、一番に謝罪の言葉が来た。
『だって相手が女子なんだもん! オレにか弱い女子と戦えってか? 無理言うなよ、オレは女子とイチャイチャするのは進んでやるが、女子と戦うのは紳士的に遠慮するぜ。だって相手が女子だから! どうせなら日来と共闘した方がこちらとしても得じゃねえ? てことで口からぽろって出ちまったんだよ、こう……ぽろっとな? ぽろってのは仕方無いだろ、うん、仕方無い。だから怒っんなって、バレてねえからさっ! ほらほら、仲間がやられてんだからオレ、助けに行かねえと。究極的に助けに行かねえと! だから行っていいよな? な? な? な!』
『あ……いや、今言われましても……』
『後で覚悟してろ』
『……はい』
 全く、どうしようもない奴を親友にしてしまったと自分に怒りを感じる。
 だが、今怒っても仕方が無い。
 まずは黄森の方にバレていなければそれでいいが、当初の予定とはがわりと変わってしまった。
 しかし、やることは変わらない。
 このまま戦闘を続行する。
『A2、聞こえるか』
『……なんとか……』
 ザ、ザ、
『魔法術師は手強いだろうが、やれるな?』
『おい、やらせるのかよ。騎神を負傷させたんだろ? だったら今すぐ撤退させた方が……』
『あいつは“どじを踏んだ”と言っていた。それは相手を見くびっていたからで、これからはそれは無い。なら、再戦の場を与えてやってもいい』
『無茶苦茶だなあ。幾らオレがバラしたからってそう焦んなくても』
『こうなったのは誰のせいだ……、なあ?』
『……ごめんなさい』
 二人の会話を聞き、終えた頃に、
『行けます、行かせてください。……もう少しで、この痛みにも慣れますし、動かせます』
『よし、なら任せるぞ』
『オレは何すればいい?』
『お前の相手にこちらの考えでも伝えてろ』
『なんか冷たい』
『後で体術の訓練で温めてやろうか?』
『……遠慮しておきます』
 会話はこれで終わり、内線による会話を終了。
 今度は外線による会話へと移る。
 律儀にこちらの会話を終えるのを待っていた敵の方を向き、礼はせずに言葉でお礼の意を示す。
『悪かった、今度はこっちの会話をお前が待つ形になったな』
「お互い様だって。にしても内線での会話なんて、こちらに聞かれちゃ不味いことなのかい?」
『ふん、どうだろうな』
「まあ、いいさ。こっちは省エネモードで極力燃料は減らないようにしてあったから、まだ三分は行けるさ」
『省エネとか何時の時代の言葉だよ。なら、さっそく行こうか――!』
 静かな空に今再び、刃と刃のぶつかる音が響いた。
 冷たく響いたその音はすぐに、後から発せられた加速機の音によって掻き消される。
 空に二機の騎神がぶつかり合い、三分間の戦闘が始まった。



 空を落ちる騎神が一機。
 地上に頭を向けながら、落下していく。
 辰ノ大花の騎神・戦竜の量産型実戦訓練機だ。
 頭部は熱で溶けたように酷い有り様だが、それ以外の箇所は無傷だった。
 騎神から見た真上の方。
 金の翼を広げ、黒の衣に身を包む魔法術師の少女がいる。
 おかしな高笑いをして、こちらを見下しているように思えた。
『……まだ、だ。まだ行ける……』
 頭部を損傷したことにより痛みが意識に伝わり、こちらの頭と意識している箇所が激痛に襲われている。
 損傷した最初の方はあまりの痛さに意識が途切れそうになったが、緊急に発動した安全機器により全機器との繋がりを断たれ、同時に痛みも和らいだ。
 安全機器がなかったら当分の間、意識が途切れたままだっただろう。
 今は安全機器が他の機器との繋がりを断っているため操縦出来無いが、操縦者が安全と分かれば時間は掛かるが解除される。
 自分からやると決めた。なら、やってやる。
『操縦者の安全確認』
『安全機器解除』
『安全機器を除く、全機器との繋がり完了』
『操縦・可』
 正面に映し出される文字の列。
 現れ、古いものから消えていった。
 最後の文字の列が消えた途端、頭に強い痛みを感じると共に機体の操縦が可能となった。
 落ちる機体を持ち上げるように、加速機を噴かして立ち上がる。
『くそ、そう簡単に痛みは癒えないかあ』
 手で損傷した頭部を押さえ、上を向く。
 魔女に匹敵するであろう日来の魔法術師が、高く自分よりも上にいる。
 気付けば両の手は空で、何も握ってはいなかった。
 操縦が出来無い時にでも、両手に持っていた短機関銃と流魔刀が手から離れたのだろう。
 今はもう、地上に激突している確率は高い。
 だから武器は左右の脚型加速機|《レッグスラスター》に納めている三本の流魔刀と、武器装着部にしまっている長銃のみである。
 自分でやると言ったからには、やって見せると意気込む。
『どうやら復起したようだな』
『なんだ、じいさんですか……』
『なんじゃ! そのがっかりしたような言葉は! 心配だからと言葉を掛けようと思うたのに、全く、損したわい』
 内線で倉庫にいるであろう、じいさんが話し掛けてきた。
 映画面|《モニター》ではないため彼方の様子は分からないが、腹を立てているのは間違い無い。
 上を向いたまま、
『頭部の損傷は表面だけだと思います』
『内部が損傷したら機体の動作に不具合が生じるからな。それがないってことはそう言うことなんだろう』
『武器は流魔刀と長銃のみと……』
『いけるか? 無理なら武器を送るぞ』
『いえ、大丈夫です。騎神三機出しただけでも辰ノ大花の戦力は落ちてますし、更に騎神用の武器まで余計に使うとなれば後に困ります』
『ならいいが、無理はするなよ』
『了解』
 会話を終了した。
 それから少しの間を入れて、青の騎神は加速機を噴かし上へ飛んだ。 
 

 
後書き
 今回登場しました騎神用武器・炎熱火砲。
 変形武器であり、通常は銃形態の炎熱火砲。そして近接戦で活躍する剣形態の炎熱火剣。
 砲と剣と違いですね、分かり易くて結構結構。
 火砲は言っちゃえば、熱線を射ってるようなものです。
 グラ○――ムッ!!
 え? モン○ンの?
 何をおっしゃっているのですか。
 これは“狩り猫モンスターズニャンター(第十七章 ざわめく空の下、参考)”で出てくるグラビックモスの技名ですよ。
 真っ直ぐに行くものと、凪ぎ払いの二種類がありまして、グラ○ーム言ってるわりには突進攻撃です。
 凪ぎ払いの突進てなんですか……。
 ちなみに、グラビックモスは豚のような猪なようなモンスターですよ。
 話しは逸れましたが、後半ではマギトちゃんにやられた騎神が復活しましたね。
 A2の方です。
 用紙のサイズじゃありませんよ。
 反撃するわけですが、野郎に興味の無い方にとってはそのまま撃沈してろよって感じですが。暖かい目で見守っていてくださいな。
 と言うことで、次回に続きます。 
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