神々の黄昏
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第二幕その六
第二幕その六
「グンター様と奥方をだ」
「その方にもお仕えする為に」
「是非共だ」
「その方に災いが生じたならばだ」
これはハーゲンの策略だった。誰も気付いてはいないが。
「復讐を躊躇うな!」
「無論だ!」
「我等全員今それを誓おう!」
「ここでだ!」
彼等は勇ましく口々に誓う。その手の武器を高々に掲げて。
「グンター様万歳!」
「ギービヒ家に繁栄と栄光あれ!」
その言葉と共に今グンターが戻って来た。その後ろにはブリュンヒルテがいる。彼の顔は朗らかだが花嫁の顔は蒼ざめている。しかし今はハーゲン以外はそのことに気付いてはいない。ハーゲンもまたそれを言うつもりは今は全くないのであった。
そしてである。グンターは晴れやかに自分の家臣達に告げるのだった。
「愛する者達よ」
「はい、グンター様」
「ようこそ戻られました」
「今日は妻を連れてきた」
自分でもこのことを話すのだった。
「ブリュンヒルテという。これだけ気高い女は今までいなかった」
「それだけの方を」
「妻に迎えられるのですね」
「神々は我が一族に恵みを下された」
ブリュンヒルテを見ながらの言葉である。
「それを祝ってもらいたい」
「無論です、それは」
そして誰もが笑顔で応えた。
「我等が主グンター様の為に」
「喜んで」
「そしてだ」
さらに言う彼だった。
「私だけではなく妹もまた」
「グートルーネ様もですか」
「結婚されるのですか」
「そうだ」
それもその通りだというのだった。
「あれもまただ」
「どなたと結婚されるのですか?」
「それで」
「ジークフリートという」
グンターは周りの家臣達にその名を告げた。
「彼が妹の夫となるのだ」
「二組の夫婦が今誕生する」
「このギービヒの家に」
ハーゲン以外の全ての者が素直に喜んでいる。
「何という喜びか」
「まさに神の恩恵に他ならない」
「これ以上の恵みはないぞ」
「しかしだ」
ここでようやく家臣の中の一人が気付いたのだった。
「花嫁の方は」
「そういえば」
「確かに」
そして一人が気付くと次々にであった。
「夢見心地というのか」
「心はここにはないのか」
「そう見えるな」
「何故だ?」
そしてであった。家臣達の前に出て来ていたジークフリートも言うのだった。その顔は怪訝な顔をしての言葉だった。
「ブリュンヒルテは私を見ているのは何故だ?」
「何故」
ブリュンヒルテは唖然とした顔でジークフリートを見て言っていた。
「何故ジークフリートがここに」
「私はグンターの優しい妹と結ばれる」
ジークフリートは知っていることを言うだけだった。今の彼をだ。
「貴女がグンターと結ばれるように」
「私がグンターと!?」
ブリュンヒルテはそれを聞いてさらに狼狽を見せた。
「まさか。そんな」
「いや、それはもう御存知の筈」
「ジークフリート」
そして切羽詰った顔で彼の名を呼んできた。
「私を知らないのですか?」
「何を言っているのかわからない」
今のジークフリートにはであった。
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