神々の黄昏
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第二幕その五
第二幕その五
「何故我等はここに集う」
「ここで何をするのだ」
「何をすればいいのだ」
「まずは強い雄牛を屠る」
最初にそれをせよというのだ。
「ヴォータンの為にだ」
「我等の神の為に」
「その為に」
「そしてその血をヴォータンの聖なる石に注ぐのだ」
全てはヴォータンへの祝福の為であった。
「そしてだ」
「そして」
「次は」
「ドンナーの為にたくましい雄山羊を屠る」
彼の神獣である。
「そしてフローの為にはだ」
「猪だな」
「それをだな」
「そうだ」
家臣達の問いに答える。
「そしてフリッカには羊をだ」
「フライアには林檎を」
「ワルキューレには鳥を」
彼等は既にそこまでわかっていた。全ては婚礼に祝われ食べられるものだ。
そしてである。彼等はさらに言った。
「そして火を灯そう」
「ローゲの為に」
「角の杯を手に取り」
ハーゲンの言葉は続く。
「女達から酒を受けるのだ」
「酒を」
「祝いの酒をだな」
「蜜酒も葡萄酒もだ」
どちらもだという。そしてである。
「麦酒も出すのだ」
「全ての酒をだな」
「それを」
「そう、出すのだ」
まさにそうせよという。
「そしてすっかり酔いの回るまで飲むのだ」
「おお、それならだ」
「望むところだ」
誰もがハーゲンの今の言葉には応える。
「どれだけでも飲んでみせよう」
「そしてグンター様を祝おう」
「是非共だ」
「そうしてみせよう」
「飲み歌うのだ」
ハーゲンの言葉はさらに続く。
「幸福な結婚であるように」
「その為に」
「我等が」
「そうだ。神々を祭るのだ」
ここではハーゲンの言葉は空虚になったが気付く者はいなかった。
「そうするのだ。いいな」
「わかった」
「我等の祝いの声を響かせてみせよう」
「このライン全体にだ」
彼等もハーゲンの言葉に応え高らかに言う。
「我等の声を響かせよう」
「しかしだ」
「そうだな」
そしてここでこうもう言うのであった。
「あの気難しいハーゲンがここまではしゃぐとは」
「それだけ嬉しいのか」
「ハーゲルドンも刺すことはないな」
さんざしのことである。それを刺すこともないのだという。
「もうな」
「それもないな」
「婚礼の披露役か」
「あのハーゲンが」
「では強き者達よ」
ハーゲンはまた彼等に告げた。
「彼等を出迎えよう」
「そうだな」
「今ここでだ」
彼等も満面の笑顔で応えてそれぞれ言う。
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