転生者が歩む新たな人生
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第2話 惨劇の日
前書き
急展開(笑)です
はい、こんにちわ。
サギ・スプリングフィールド3歳だ。
………スプリングフィールドだってさ。
そう、オレは「ネギま!」の主人公、ネギの双子の弟として転生したのだ!
死亡フラグ満載の人生だ………。
一応今まではオレの存在以外原作知識の通り進んでいる。
後は如何にネギ兄さんと距離を取り、バタフライ効果を減らして原作通りに進めるかだ。
まぁ、一番良さげなのは麻帆良に行かないことなんだろうけどな。
ちなみにオレの両親「サウザンド・マスター」ナギ・スプリングフィールドと「災厄の女王」アリカ・アナルキア・エンテオフュシアとは1歳ちょいで別れた。
ライフメーカーを2人で封印するための旅に出る前に別れを告げられた。
2人はわかっていないと思っていただろうが、こちとら転生者、前世の経験から英語で話した内容ぐらいはなんとか理解できたのさ。ネギ兄さんとオレに向かって「すまねぇ」とか「元気で生きろ」とか何度も繰り返してたしな。
ちなみに2人の印象は赤毛のヤンキーと金髪委員長。
幸か不幸かまったく両親とは思えないことが印象的だった。
つーか、そんな危ない橋を渡るのなら子供を産むなよ、とか思わないでもない。
ネギ兄さんとは双子なのにそんなに似ていない。ネギ兄さんは父親似でオレは母親似かな。そのせいか、金髪で翠と蒼のオッドアイといういささか厨二っぽい顔だが、よく考えたら特典通りと言えばその通りだ。
ちなみに魔力量はネギ兄さんの7~8割くらいで魔法使いとしてはかなり多めの方だが、「英雄」の息子としてはいささか物足りないという感じだ。
村の人からの視線からそう感じる。
ちなみにこの村は魔法使いとその関係者のみが住んでおり、「英雄」ナギ教を信仰していると言っても過言ではなく、かなりうっとうしい。
ネギ兄さんは嬉しそうだが。
スタンじいさんや幼なじみのアーニャ姉の両親はましの方だが、こうなんというか、魔法使いと一般人の精神性の違いというか、あるいは英国人と日本人の違いかも知れないが、なんというか、ところどころ引っかかるところがあり、かなりストレスが溜まり、精神的にちょっとキツイ。
せめて日本式のお風呂があれば一日の終わりにまったりリフレッシュできるんだが、英国式のバスしかない。もっとも原作通りネギ兄さんはお風呂が嫌いなんで全然気にしてないようだが。
3歳の誕生日に初心者用の魔法の杖をもらい、魔法を習い始めた。魔法を習い始めてより影響が顕著になり、「英雄」ナギ・スプリングフィールドの話しからネギ兄さんが暴走しだし、最終的にネギ兄さんが湖で溺れて一月程経っただろうか。
サギ・スプリングフィールド最大の死亡フラグが訪れる。
そう元老院強行派による悪魔の襲撃だ。
ぶっちゃけなんとか逃げようと色々画策したが、世界に修正力があるかのように無理だった。
まず第一に村から出ることがかなわなかった。
散々理由を考えて、メルディアナの魔法学校の校長をやっているらしい祖父に会ってみたいと言っても、わざわざ向こうが村に来る始末で、決してオレ達2人を村から出そうとしない。
所詮は3歳児、しかも育ててもらっている負い目がある分、村の大人には逆らえない。
あるいは、「村が襲われる」と危険性を訴えようとしても具体的に理由を説明できないので、ほのめかすのが精一杯だ。
そうなるとどう話しても「この村なら大丈夫じゃ」と、昔からいる人も「英雄」を慕ってきた若い人も、「大丈夫、心配ない」の一点張りだ。
その日はイースター---春分の日の次の満月が出た週の日曜日---のお休みを利用してネカネ従姉さんが帰って来る日だった。いつもは一緒に帰って来るアーニャ姉は学校の友達とイースターのイベントがあるらしくて、今回は帰って来ないらしい。
その日の朝、ネギ兄さんと2人、湖に釣りに来ていた。
で、お昼も過ぎて、そろそろネカネ従姉さんが乗るバスが来る時間なので、ネギ兄さんを促して村のバス停まで走り出す。
そして、遠くに見えたのは火に包まれる村だった………。
遠目で見てもわかる。轟々と家が燃え、遠くから聞こえる村の大人達の怒声と悲鳴に交じって、物を破壊する音まで聞こえて来る。
静かで空気が綺麗な素朴な村は姿を変え、まるで地獄のようだ。
て、いかにも落ち着いた感じで語っているが、単に目の前の光景にまったく現実味が無く、ただただ呆然とするばかりだ。
「行かなきゃ」
後ろから追いついて来て、同じように呆然としていたネギ兄さんは、オレを置いて走り出す。
「待ってよ、ネギ兄さん。どこ行くんだよ?」
とっさに声が出る。だがそれは聞こえなかったらしい。
「ネカネお姉ちゃーん、おじさーん、おばちゃーん」
そう声を出して、振り向かずネギ兄さんは村へ駆けて行く。
「えっ? ちょっ。 待ってよ」
ダメだ。まったく頭が回らない。
備えていたつもりだったのに、前世でも経験したこともない大災害を前に何も考えれない。
………そうか、これが恐怖なんだ。
一度わかるともう止まらない。
足は震え、両腕で自分をしっかりと抱きしめる。
どれくらい時間が経ったのだろう。5分か10分か、はたまた1時間か。
ようやく少し落ち着き、次にどうするかをやっと考え始めれる。
ネギ兄さんを追う?
あの火事の中を?
ネカネ従姉さんや村の人がいるんだぞ!
でも、オレみたいな子供が行ってどうなる?
邪魔になるだけじゃないか?
ぐるぐるぐるぐる否定と肯定が頭の中を駆け回る。
そうしてやっと思い出す。火事や地震等の災害の時に村のみんなが集まることが決まっている丘があることを。
きっとみんなそこにいる………。
根拠もなくその答えに縋りオレは走り出す。
村のはずれのその丘に。
「ハア、ハア」
やっと辿り着いた丘で息を整える。
村を見やると火災がより酷くなっている。
ボカッ。
「ひどいなぁ。1人で逃げるなんて。おかげで手間がかかったよ」
いきなり殴られ、吹き飛び、木に当たって止まる。
何が何だかわからないうちに全身を襲う疲労ばかりが高まっていく。
ガスッ。
蹲っていた体を力任せに蹴り上げられる。
「やっとだ。ここでお前らを消せば、やっと俺のストーリーが始まる」
ペラペラやや興奮した感じで話すコイツの話しをまとめるとつまりコイツは「転生者」で、「オリ主」なんだそうだ。
で、この事件を隠れ蓑にナギに助けられたネギを殺し、イレギュラーであるオレを殺して、7年後の原作スタート前に麻帆良に渡り、超をオトして魔法が広まった世界に2人で君臨するんだそうだ。
あー、狙いは悪くない? のか。
ナギ・スプリングフィールドがネギ兄さんに形見の杖を渡した後なら確かにどうとでもできる。ネギ兄さんが死のうが死ぬまいが、超は多分来るわけだから。原作の流れはどうなるかわからないが、こんなことをするんだから、麻帆良で成功する心算はあるワケだろう。
………つーか、なんで他の転生者がいるんだ?
特典が1つ無効になったのか?
だが、とりあえず、気を抜きすぎだ。
グシャッ。
言わんこっちゃない。オレ達が二手に別れたのにあせって出て来て、首尾良く行って安堵したんだろうが、悪魔が闊歩するこの地で気を抜くなんて自殺行為だ。
あー、自殺じゃないか。後ろから来た悪魔に潰されただけなんだから。
なんて冷静な振りをしているが、転生者が悪魔に潰される瞬間からずっと、げぇげぇ吐いている。グロすぎるわ!
というか、転生者から殴られ、蹴られ、怖気が収まらん。
………これ、もう、詰んでね?
短い人生だった。
だがしかし、そこに「英雄」が舞い降りる。
「来れ、虚空の雷、薙ぎ払え【雷の斧】」
そのまま唱えた1つの魔法。それだけで目の前の悪魔とそれに続く悪魔がなぎ払われる。
うわぁ、1体だけじゃなくたくさんいたのね。
じゃなくて。
まさか………。まさか………。
「ナギ父さん………?」
「ネギか」
「………サギだ!」
「ワリィ! サギの方か………」
をいっ。ここで息子を間違えるか?
最低でも髪の色で見分けがつくだろうに!
しかも、悪いの一言で済ませましたよ! バカ親父が。
それまでの恐怖もどこへやら。
文句をいってやろうとするが、なんだか体に力が入らない。
「おい、どうした! サギ! しっかりしろ!」
………。
ごめん、とにかく静かにしてくれ。体に力も入らないし、頭もガンガン痛いわ。
あー、もしかしてこれまずくないか?
「サギ………。ワリィ。回復呪文は苦手なんだ。ホント、すまねぇ。時間がねぇんだ。ネギも探さねぇとまずいからな。あれだ、とりあえず、詠春のところへ送るから、そこで治してもらえ。奴なら大丈夫だ!」
と言うと、ふところからアンチョコを取り出し、呪文の詠唱を始める。
「ネギ兄さんだけじゃなくて、ネカネ従姉さんもいるんだ!」
なんとか、声に出して頼んでおく。
これだけで力が尽きそうなんて、殴られたときに毒でも盛られたか?
詠唱が完了したのか、バカ親父がオレの頭にぽんと手を置くと転移魔法が発動する。
オレが最後に見たのは、イイ顔で右手の親指をあげてサムズアップするバカ親父だった。
「サギ、幸せになれ! あっ?」
それがバカ親父の残した最後の言葉だった。
………とりあえず、今度会ったとき殴ろう。そう心に誓った。
あっ? ってなんだよ!
後書き
いないはずの転生者。
もちろん理由はあります。
サギ・スプリングフィールド
19○○年5月2日双子の弟として産まれる
1歳を迎えて後、両親が封印の旅に出る
3歳の誕生日 魔法の杖をもらい、魔法を習い始める
3歳の冬 村を悪魔に襲撃される 転生者に襲われる 父ナギ・スプリングフィールドに助けられる
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