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恋姫~如水伝~

作者:ツカ
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二十話

汜水関を発した反董卓連合は、洛陽防衛の最後の砦、虎牢関に進軍した。

しかし、諸侯は功を焦り、我先に先陣を進んでいる為、行軍は安定しなかった。

曹操軍は後続に配置され、その様を見て一様に呆れた。
「酷い有様ですね、これではどちらに大儀があるのか分かりませんね。なにせ、獲物を見つけた盗賊と大差無いですから」
如水の言葉に華琳と桂花も賛同した。
「袁紹が後先考えず恩賞を渡すからですね。そのせいでこの有様、それを抑えるには袁家の威光では収まりませんから」
「そうね、麗羽自身の器が試されている所だけど、見るまでもないわね」
華琳がそういうと、ある一団を指差した。
「袁紹、袁術自ら先陣を争っていますね。あれでは総大将としての示しがつかないでしょう」
秋蘭がそう語り他も賛同した。
「この戦いで、漢王朝の威光は地に堕ちるでしょうけど、それと同じく袁家の威光も堕ちるわね」
「そうですね、あのような振る舞いをする者に身を預けられる訳がありませんから。おそらく各地で紛争が続くでしょう」
「となれば、頼れるのは自身の力だけになるわ。こちらはその準備も出来ている、この戦いの終わりは私達の始まりと思いなさい」
華琳の言葉に一様に頷いた。

四日後 虎牢関

「あーら、全く人気が無いですわ。所詮は成り上がりの者、袁家に恐れをなして逃げたのでしょう。おーほっほっほ!」
「まったくじゃ、わらわに恐れをなした様じゃな」

袁紹、袁術は口々に董卓を貶し、他の諸侯は恩賞にありつけなかった事に落胆した。

曹操軍本陣

「まさか、事前に敵の内情を調べる事を怠っているのが殆どとは思いませんでした」
「ええ、私も驚いたわ。これだけ居れば半数は行っていると思ったのだけど、過大評価しすぎたかしら」
華琳は諸侯の実態に唖然とした。

そして桂花が朝廷の現状を説明し、如水が董卓軍の現状を報告した
「華琳様、都の現状ですが董卓は宦官の粛清と離反した禁軍の処断を行い、ようやく軍の建て直しが終わった様です」
「そう、では現在の数は」
「八万程でしょう、ですが都の住民の有志や涼州等では、飢饉の為餓える者が多く居ます。今は董卓の人柄で押さえていますがいずれ不満が爆発するかと」
「徳と器では袁紹よりも董卓の方が数段も上ですね」
「そうね、でもそれを倒してこそ私の名が挙がるわ。董卓軍の将は誰」
「呂布と張遼が両翼らしい、そしてその動きを纏めるのに賈駆や陳宮が後ろから支援している。この前の様にはいかんだろう」
「欲しいわね、その人材」
「華琳様、またその様に」
華琳の言葉に春蘭、秋蘭は呆れた
「呂布はやめておいた方がよさそうだな、各自の性格を調べたが君の下で働ける様な者では無い様だ。そして陳宮は呂布を敬愛している、この二人は無理だか張遼と賈駆なら条件次第では君の役に立つだろう」
「条件?」
「賈駆は董卓の古くからの友人らしい、今回の董卓の勢力拡大も賈駆の手腕だそうだ、董卓の命を助ければおそらく仲間に下る。張遼の方は簡単だ、君の器を見せれば良いだろう」
「わかった。その二人を私の配下に加えるわ、ついでに董卓の命を保障して使える様ならこちらの仲間に加えるわ」
「では、董卓と賈駆の二人は私が引き受けよう」
「なら、張遼の方だけど」
そこまで言うと、春蘭が名乗りを上げた
「華琳様、張遼は私が引き受けます。如水にばかりいい所盗られていられません」
「なら、春蘭が引き受けなさい。二人共、しっかりとやりなさい」
「はい!」
「了解した」

そして、他の者が去った後、如水は別の事も報告した。
「華琳もう一つ伝えておく、私の他にも内偵を送り込んだ所がある」
「どこ?」
「袁術の傘下の孫策だ」
「そう…。となればいずれ私の敵になるのは劉備か孫策の二人でしょうね」
「そうかもしれん、なにせ向こうの部下は多士済々と聞く、いずれ袁術の手に余るだろう」
「そうね、引き続き警戒しなさい」


虎牢関を無血で落とした反董卓連合は翌日に都に向けて進軍した。

行軍編成は袁紹が周囲の反対を押し切り先鋒を引き受けた、袁術がそれに続き、他の諸侯はそれに続いた。

行軍中曹操軍の幕僚が集まって話していた。
「袁家への諸侯の不満が凄いですね、洛陽一番乗りを独占する気だと憤慨しています」
「そうね、まあでも、連中の損害で董卓軍の実力がわかるわ」
「そうですね、董卓はもう後が無いですから必死でしょう」
「とりあえず袁紹、袁術の二人が大損害を受ければこちらとしては漁夫の利を得れますからしばらく大人していましょう。いずれ泣きついて来ます」
華琳らが話していると春蘭、季衣、流琉らが説明を求めた。
「一体、何を話しているのですか華琳様」
「そうです、私達にもわかり易く教えて下さい」

それに答える様に如水が説明した。

「袁紹、袁術が痛手を負ってその後で、私達が動くんです。そうなれば今回の戦い、曹操軍の活躍だけが残りますから。その事を話し合っていました」
如水の説明に春蘭らが食って掛かった
「それは卑怯では無いのか」
「そうです、如水さんの考え方は納得できません」
「季衣の言う通りです、まるで味方が倒れるのを待っているみたいです」
更に不満を漏らした三人だったが如水は穏やかに説明した
「この連合で味方は私達だけです、それに卑怯と言いますが。では逆に聞きますが正々堂々とは一体どういう事ですか。真正面から敵にぶつかる事ですか」
「そうだ!」
「いや、そこまででは無いですけど」
春蘭以外の二人は否定した
「御二人はまだ聞き訳がいいですね、では春蘭に聞きますが、その戦い方をして自分の部下が大勢死んでも構わないのですか」
「そんな事は言っていない」
「ですが、貴方の考え方だとそうなってもおかしくないです。戦いとは元来異常なのですその中での正々堂々と言う言葉は存在しません、裏をかき相手を騙す事で味方の損害を少なくする事が戦術です、それを卑怯と呼ぶのは愚者か敗者だけです」
「如水、私を愚弄する気か」
「していません、私は、味方の損害を少なくする事を考えて喋っているだけです」

「そこまでにしなさい、二人共、これ以上口論するなら相応の罰を与えるわ」
華琳の一言で二人は静まった。

それぞれが自分の軍に向かう途中春蘭は如水に話しかけた。
「如水、お前の言い方はわかった。だが、私は私の戦いがある。それをこの戦いで見せてやる」
「ええ、私も自分の戦い方で貴女に認めて貰います」

そして遂に、反董卓連合は洛陽を眼前に捉えた。
 
 

 
後書き
なんかフラグっぽい 
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