ソードアート・オンライン〜Another story〜
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SAO編
第14話 銀髪の勇者
リュウキは、攻略会議に参加していた皆が散っていくのを確認した。この場に留まる者は殆どおらず、皆ここから去っていっているようだ。恐らくは明日の為に備えたり、休息を取ったり、そしてエギルの宣言通り、攻略本を見せて貰いに行ったり等をするのだろう。
「………」
リュウキも、やや他のメンバー達より遅れて立ち上がった。自分もホームへと戻る為にだ。立ち上がったリュウキを見て。
「……ねぇ?」
レイナは声をかけた。
「……ん?」
レイナの声に反応し、リュウキは振り向いた。
「その、明日の事だけど……」
明日の事について、その詳細をレイナがリュウキに聞こうとするが、リュウキは頷きながら、簡単に返す。
「ああ……、AM10時にここに集合だな。……遅れるなよ。数の有利はどんなものでも一緒だ」
それだけ伝えると、リュウキはすぐにそこから立ち去ろうとした。つまり、システム的なパーティはそのままで、解散をしようと言う事。
「ちょっ! ちょっと待ってって!」
さっさとここから去ろうとしているリュウキを見てレイナは、慌ててリュウキを呼び止めていた。まだ、話は終わってないのに、一方的に切られてしまったからだ。……と言うより、本当に去っていくのが早すぎるだろう。
「……まだ、何かあるのか?」
「『……何かあるのか?』じゃないって! ……ねぇ 私達、パーティを組むんだからさ。少しは話をしましょうよ? そうじゃないと不安、だから。連携……少しでも上手くとりたいから」
レイナの言う事もごもっともだ。
パーティと言うよりたった2人しかいないコンビなのだから、連携は大切になってくるだろう。それがBOSS戦と言う重要な場面なら尚更だ。
「ああ、成る程。……わかった」
リュウキは理解すると、レイナの傍に座った。
「……私が言うのも何だけど……あなたは、どうしてフードをかぶっているの?」
「………姿 あまり晒したくないからだ。」
レイナの問いに、リュウキはそう答えた。
連携の話。つまり戦闘における話ををするんじゃなかったのか? とリュウキは思えたが、所謂これがコミュニケーションと言うヤツだろうと、何処か納得をしていた様だ。
「でも、その割には あの時はっきり物を言ってたと思うんだけど……」
レイナの頭には更に疑問が浮かび上がる。キバオウに正面から清々しいまでに論破しているのだから。
「……ああ言う手合いは嫌いだからだ。今も、そして昔も。……だからつい、言ってしまった。それだけの事だ」
そう言うリュウキは、何処か少し ムスっ としてた。
感情論であり、どうやら本当にあのキバオウと言うプレイヤーを嫌っているようだ。
それに レイナは思った。彼は、思った事ははっきり言わなきゃ気がすまない性格である事、勿論状況を選ぶと思える。今回は、本当に不快だったから、なのだろう。
そして、何よりあの発言からでも判る様に、レイナはキバオウよりも彼の方が正しいと思ったのだ。
「そう……そっか……」
レイナはほんとに少しだけだけど、この人、リュウキのことわかった気がしていた。それだけでも話をして良かったと思う。それがたった一度のパーティだったとしても。
これまでで、異性とパーティを組もう等とは思った事も無かった。
でも、どうしてだろうか、彼には何処か惹かれた自分もいたのだ。
「……次は私のこと……、話して良いかな……? 訊いて、くれる?」
「ああ。構わない」
そして、次にレイナ自身の話が始まった。コミュニケーションは大切だ、と言う事で。
「……私には。……凄く大好きで、ずっと一緒にいたかった、力になりたかった人がいたの。その人は凄く、近しい人……で」
レイナの声には、寂しさがあるのをリュウキは感じていた。
(……爺やに会いたい、そう思う自分と同じ感じか)
言葉にしなくても、レイナの雰囲気から伝わってくるんだ。
「でも…… 離れてしまったの。私も一緒に行くっていったんだけど……。駄目だって。1人で行くって……。私は邪魔……なのかなって思っちゃって……。そう思ってしまったから、私、思わず飛び出しちゃったの」
レイナは今日初めて会った人に、それにいくらパーティを組んだからって、レイナはこんな事まで話すなんて思ってもいなかった。
最初に惹かれた時と同様に、直感した。……この人だったら、教えてくれるって思った。自分の知りたい答えを教えてくれるって思ったんだ。とても、とても真っ直ぐな人だと感じたから。
「…………」
リュウキはレイナの話しを聞いて少し考える。そして、口をゆっくりと開きながらレイナの方を見る。
「大好き……なんだろう? その人の事が。……なら、信じられるな?」
「え……? し、しん……じる?」
レイナは、リュウキの言葉を聞いて、真っ直ぐ向きなおした。彼の言葉をしっかりと聞き取りたかったから。
「そうだろう……? お前に、レイナにそこまで言わせる相手なんだろう? ……なら、その人の真意もわかるだろう? その人がレイナに何故一緒に来るなと言ったのかが。……判る筈だ。それとも……お前の信じる人って言うのは、ただ意味もなくついてくる事を拒む。ただ、突き放すだけ。その程度関係の人なのか?」
「そ……それは……」
レイナは、リュウキの逆の問いかけに言葉に詰まっていた。
心の底ではリュウキの言うとおり、そう思っていた。でも、不安感が全てを塗りつぶしていたんだ。他の可能性を考えられないほどに。
リュウキは、自身の経験を元にそう言っていた。親愛な人の姿を思い浮かべて、これまで接してくれた人を思い浮かべながら。
その時だった。
「おい」
話している最中に、リュウキとレイナの後ろに、誰かが立っていた。誰か、と言うか この声から誰が話しかけてきたのかはすぐにリュウキは判った。
「…………」
リュウキは、とりあえず答えずにすぐに黙った。だが、この相手は十中八九、思っている相手で間違いない。リュウキは ちらっと横目でその全体の姿を見た。
自分の様に素顔を隠している訳ではない。特徴的な色合いの装備、そして見知った顔。
間違いなく。100%。……キリトだった。
「………やっぱり、お前、リュウキか?」
キリトはそう聞いていた。
雰囲気や仕草、そして、フードから僅かだが見える素顔を見て キリトも核心がいったようだ。
「……そうだ。ふぅ……。久しぶり、だな?キリト」
リュウキは観念した様に 肩を狭めつつキリトの方を向いた。フードは目元までかかっていて、表情は完全には見えないが、認めたし、何より正面から見たらもう間違いなく判る。
「でもお前なぁ、 つれない奴だな……別に知らない間柄でもないのに。危うくあぶれそうになったんだぞ」
キリトは、嫌にむくれていた。確かにレイドを組む、パーティを組む時は大変だった。……でも、その程度で怒る様な、機嫌が悪くなる様な奴だったか? と思える程キリトは機嫌が悪そうだ。
だが、勿論リュウキにもこれには訳がある。
「………その事に関しての文句はアルゴに言ってくれ。オレもこんな事態になってなきゃ、ここまでこんな真似はしない」
リュウキは 少しげんなりしながらそう答えた。
それは、その発端はアルゴにある。
情報屋《鼠のアルゴ》の話だ。
リュウキが、素顔を隠す切っ掛けになったあの大きな大きな事件(リュウキにとって)の概要をここで説明しようと思う。
町の道具屋に置かれていたのはアルゴの攻略本だけじゃない。
□ □ □ □ □
アルゴの今週の超有力情報。≪わぁ〜〜パフパフパフッ♪♪≫
それは、【銀髪の勇者】のお話です!
その可愛らしい姿形からは考えられない程の戦闘能力があって〜……。
且つ!!頭もとんでもなく切れる!! 攻略する速度もありえな〜いんだよ〜!?
その勇者様を仲間に出来たら、レベリングは勿論。
クエストこなすのも超楽勝かも!?
そんなアナタの永遠のラッキーカラーは【銀色】になるかもよ?
でもね……、探すのが難しいんだ……。
物凄くシャイだから?
某伝説のRPGのメ○ルス○イムなんて目じゃないくらいの確立だ!!たいっへん!!
でもね…… それだけ苦労する価値はあるんだよ!
な・ぜ・な・ら!! ※↓ココから! 女の子プレイヤー重要な話です!!
その素顔はとっても、とーーーっても 可愛いのだっ!
すっごい美少年♪
見方を間違えたら女の子にも見えちゃうかもね??
まぁだから、皆! 気合をいれて頑張ってね♪
彼と出会えたら、本当に凄くラッキーな事だよ〜〜♪
アルゴの今週の、特別公開、超×10 有力情報でした〜〜!!
以上
□ □ □ □ □
「……………………」
話はキリトと合流した場面に戻る。
上記の様な、正直訳が判らない特別情報? をアルゴの発信でバラ撒かれた。その拡散はあまりにも早すぎる。見かけた時、回収・ストップをかけようとしたのだが、既に遅し。
アルゴからの情報と言う事もあり、かなり信憑性は高い事は既に周知済みの事なんだ。と言うより、これは情報というより何らかのクエストのような謳い文句だった。
それに……銀髪のプレイヤー自体とても少ないし、何より! 誰の事か? と言う詳細について……そして、疑問は直ぐに解決される。
そう……それもアルゴ自身への《追加料金》でだ。
課金制にしている部分を見れば、アルゴの情報商売法だけは見事と言う他は無い。
次に何故、こんな情報を公開したのか? だが、大体は判った。
リュウキは、以前にアルゴに誘われたのを断った腹いせ、だと思われる。恐らく……、と言うか絶対に間違いないだろう。嫌な笑顔を覚えているからだ。
帰っていく時ずっと、その嫌な笑顔だったから。。
「情報のおかげで、オレは酷い目にあったんだぞ? 判るか? キリト。フィールドから寝座に帰る時、町探索。全プレイヤーが第1層にいるんだ。遭遇率は抜群だ。……そして、そんな時に合ったのがあの攻略会議だ。あんな情報が公開された今、こんな大勢の聴衆の中に素顔を晒したくない」
「ははは………そういえば、確かにそんな情報出回っていたな。ネタって思ってたけど、アルゴの情報だから、拡散具合がハンパなかったんだろう。……でも、それにしては目立ってたぞ? 大丈夫だったのか?」
キリトもレイナと同じような事を言っていた。だが、その疑問は良く考えればごもっともだ。これだけ、気にしているんだから。
だから、リュウキは面倒くさいがもう一度、レイナに言った説明をそのままキリトする事にした。
「……オレはあの手のは嫌いだ。それ以上でも以下でもない。素顔公開の可能性のリスクを踏まえてでも、言いたいことがあった。それだけの事だ」
リュウキはそう言うと、立ち上がった。キリトに聞きたい事があったのだ。
「そう言えば、キリトはパーティを組めたのか? 横に誰かいた様だが」
その事だ。確かにあの場でキリトの傍にはプレイヤーがいた。でも、無事に申請できたかどうかは判らなかったのだ。
……が、正直その心配も杞憂に終わると予想出来た。何故なら、キリトとばかり話していたから、見逃してしまったが、今改めて見てみると どうやらキリトの直ぐ後ろに、プレイヤーが待機しているようだった。
「まぁな、暫定的だが オレも何とかアブレなくてすんだよ。……それにしても同じような姿だなお前達は……オレのパートナーももだけどな。……って言うより、リュウキと合流出来たし、これからが本題だ。オレ達とリュウキ達。2:2のパーティ構成なら、4人纏まったパーティにでも……」
キリトは、2人のパーティが2つ。それを1つに合わせないか? と提案をしようとしたのだ。数が多い方が、メリットが高く、少ない方のデメリットが大きすぎるから。
そう言いつつ、後ろのプレイヤーを紹介しようとしたその時だ。
「ッッ!!」
リュウキの後ろで話を訊いていたレイナは、この時キリトの後ろにプレイヤーがいる事に気づいた。タイミング的にはリュウキと全く同じだ。
その素顔を見た訳ではない。……でも雰囲気で判ったのだ。
明らかに慌てた様な気配がして、気づいたリュウキが、レイナに 『どうかしたのか?』と聞こうとしたがそれよりも早くに、レイナが行動を始めた。
驚くべき速度で、リュウキ手をぎゅっと掴むと。
「……ん? な……なにっ……?」
リュウキが返事をするまなく、一目散にレイナは走り出した。リュウキを引きずる様にしながら。
「ちょっ! 何して――……ッ!」
「いいからっ! 来てっ!」
レイナの筋力値はリュウキのそれを上回っていると言うのだろうか? 無造作に引かれたその力は思いのほか強く、なすがままになってしまった。
時間にして、1、2秒程でこの場から離れていってしまった2人。取り残されたのはキリトとそのフードを被ったパートナーだけだ。呆気に取られてしまった為、キリトは暫く、と言っても一瞬だけ放心したが。
「……なんだったんだ? 今の……」
そう呟いていた。提案を邪魔された……と言うより、今のがなんだったのか? と言う疑問が生まれた。そして、リュウキが誰かとパーティを組むのも珍しいと言う事もそう。似たような状況であり 仕方がないとも思えていたが、それでも、あれ程活発な相手とパーティを? とも思えていたのだ。
そして、キリト後ろに控えていた彼女も不信感を抱いた。その不信感は、1つの予感につながった。
「………今、……の……って……。えっ? まさ……か………?」
彼女は胸騒ぎが止まらないようだった。明らかに動揺した様子で、彼らが去って言った方をずっと見ていたのだった。
そして、リュウキたちが攻略会議が開催された噴水広場からから逃げ去った数分後の事。
「………おい。もう良いいだろう? そろそろ止まったらどうだ?」
まだ、思い切り手を引っ張られながらも、リュウキは冷静にそう返していた。あの広場から相当に離れて、トールバーナの最南端付近。この勢いなら、大方フィールドに出かねないほどの距離まで来ていたのだ。生憎、コチラ側にはゲートは無いが……。それでも飛び越えそうな勢いだ。
「あッ……、そ、そうだね。その……ゴメン、ゴメンなさい」
レイナは、慌てていた頭を思いっきり振って、軽く頬を叩く。……正気に戻った様で、脚を止め、リュウキの方に向きなおした。
「……別に追求はしないと決めていたんだが、な。一応訊くが、お前はキリトと何かあるのか?」
キリトと話をしていた時に、思い切り引っ張られた。だから そう思ったのだ。『……自分とアルゴの様なトラブルでもあったのだろうか?』 とリュウキは少し思った。
「いえ……あの人とはあの場所で初めてあったから……面識は……」
レイナは、そう返した。キリトじゃない、とすれば、もう結論は1つしかない。
「成る程、なら1つだな。……あのお前と同様に、フードをかぶったのレイピア使いと何かあるんだな?」
「ッッ!」
リュウキの言葉を訊いてレイナは、雷に打たれたのか、と思える程に震えていた。
その仕草だけで十分正解だとわかった。
「……ふむ、図星だな。 だが、あそこにいた以上は、明日はパーティが違うとは言え、レイド。共にBOSS攻略戦を行うんだ。……一瞬の油断が命取りになるんだぞ」
リュウキは、やや口調を強めにしながらそう言っていた。
蟠り等の邪心をもっていて無事に済むとは思えない。一瞬の気の迷い、そして躊躇が生死を別つ修羅場なのだから。
初めてのBOSS戦であれば尚更だ。
「……わかってるの。わかってる、……んだけど…………」
レイナは、身体を震わせていた。
『出会うのが怖い。また、顔を合わすのが……怖い。話をするのが………怖い』
(……と言った所か。)
リュウキはレイナの大体の心情を察したようだ。そして口を開く。
「……明日のAM10:00だ。それまでには、心を決めておいた方がいい。後悔、しない様にな」
リュウキは見透かした上でそう言う。その言葉にレイナはゆっくりと頷いた。
レイナは 1度、2度、3度と深く深呼吸をして、心を落ち着かせていた。
「うん………わかった」
身体の震えは止まった様だが、今度は肩を落としていた。
「はぁ……、ゆっくりと落ち着いて考えたいんだけど……。また、あのボロ宿か……」
レイナを悩ませている種はまだある様だ。……それは宿について。かなりの不満があるようだ。
「む~……。あれじゃ、休まるものも休まらないよ……。 ゆっくりと落ち着く事も……難しいし。はぁ……せめて眠るときくらいは、きちっとして貰いたいんだけど……」
話を、と言うより独り言を訊いて、リュウキは『そのくらいの事で……』と思ったが、レイナは割と本気で悩んでるようだったから、安易に口には出さなかった。その代わりに。
「……? なぜだ。あれ程の部屋で満足できない……と言う事は、お前は現実世界ではかなり裕福なのか?」
そう訊いていた。確かに豪邸で暮らしている、となれば価値観の違いから、不満点は出るだろう。まだ第1層。富裕層が暮らす様な宿は無いから。
リュウキのその問いにレイナは両手を振って否定し、答えた。
「えっ……? そんなわけないよ。割とフツウ……だとと思うよ。……でも、この街の宿屋の個室って……六畳もない一間にベッドとテーブルだし……。ちょっと広めの2人で部屋なんてものもあったけれど、1人部屋だと50コル。……2人だと120コル。……値段は倍以上なのに……その癖に、広さは倍じゃないし……余計窮屈になって快適ってわけでもない。……いつも愚痴ってたよ」
レイナの言葉を聞いてリュウキは、やはり判らず再び首を傾げた。
「……? やはりわからないな。探せば条件の良いところは他にもあるだろう?確かに、その50コルより値は少しは張るが、先ほど言っていた120コルのその2人部屋ほど値は張らないぞ?」
リュウキはそう答えていた。
今度はレイナがわからないと言った様子で首を傾げていた。まるで、遅れて映る鏡写しのようだ。
「えっ……? でもこの街って、宿3件しか無かったよ? 3つとも一応全部見てみたけど……同じような部屋だったし……。これまでの村や町の宿も、殆ど違いはなかったし」
「……ああ、成る程」
リュウキはレイナのその言葉を聞いて、漸く合点がいっていた。
よくよく考えたら、レイナはパーティ申請の仕方もわからない初心者なのだ。だから、知らないのも無理はないだろう。
「そう言う事だったら、仕方ないか。知らないのも無理はない」
そう言うと、リュウキは頷いた。
「??」
「お前は、《INN》の看板が出ている店しか確認してないみたいだな?」
リュウキはレイナにそう聞く、するとレイナは、目を丸くしていた。
「……え? 違うの? だって、宿屋と《INN》って同じ意味でしょう?」
確かにそのレイナの認識で間違いはない。だが、この世界では少し違うのだ。そもそも、単純に言ってしまえば、別に宿屋に泊まらなくても泊まる手段は幾らでもある。普通のゲームなら宿屋以外無理だが、これはVR世界。そう、その気になれば野宿でだって、睡眠することはできる。
「まぁ……意味は間違ってない。だが この世界。アインクラッドの低層フロアじゃ、最安値でとりあえず寝泊りは安全に出来る場所……それが《INN》の表記がある宿屋だ。それなりにコルを払って、寝泊りできる部屋は宿屋以外にかなりあったと思うが? 全てを確認した訳ではないが、この街では5,6つ程はあったと思うが」
「………………」
レイナの姿はフードで表情は見えないが。多分放心しているような気がしていた。
そして、リュウキがレイナに大丈夫か? と訊こうとしたその瞬間。
「ええええええええッ!!! それ本当ぉぉぉぉぉぉッ!!」
“おー……おー……ぉー……ぉー………。”
レイナの叫びが辺りに木霊していたのだった。
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