環の理
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鋼の錬金術師
傷の男
前書き
日刊ランキング(6月17日)で一位でした。あれ?目がおかしくなったのかな……?
少年――『鋼の錬金術師』――と会ってから約二年が経った。大きな戦が発生しない所為か昇進のチャンスがない。いや、別に戦う事だけに長けている訳じゃないんだけど。
「シルバーバーグ大佐ー」
「うぃー?」
「『綴命の錬金術師』の護送任務に大佐も連れてけだってよ」
「えー?ヒューズ中佐とアームストロング少佐だけでいいじゃんよ」
「最近何かと物騒ですからな。グラン准将も何者かにやられてしまいましたし」
「……はぁ、仕方がない。行ってやりますか」
仕事も一段落終えたし、イーストシティまで付き合ってやりますか!
~~~~~~
「……と思っていた時期が私にもありました」
イーストシティに付き添いで来た私だが、何だか変な事態になってるみたい。
「おいおいマスタング大佐よ。俺ぁ生きてるタッカー氏を引き取りに来たんだが……死体連れて帰って裁判にかけろってか?」
「どーゆー事だよ!?Do you Know!?」
「静かにしてくださいシルバーバーグ大佐」
「うぃー」
「たくよー俺達は検死する為に態々中央から出向いた訳じゃねえっつーの」
「こっちの落ち度は分かってるよヒューズ中佐。とにかく見てくれ」
「ふん……自分の娘を実験に使うような奴だ。神罰が下ったんだろうよ」
死体に掛けられた布をヒューズ中佐がめくる。全身血だらけでぼろぼろになった死体がそこに会った。イシュヴァールでもなかなかお目にかかれなかった死体だな。
「うええ……案の定だ」
「何か内側から破壊された跡がある……(錬金術か?)」
「憲兵も同じ死に方をしていたそうだ」
「どうだアームストロング少佐?」
「ええ、間違いありませんな。“奴”です」
~~~~~~
“奴”、とは傷の男の事だ。素性不明、武器不明、目的不明で神出鬼没。トーレドマークの額のバッテン傷しか分かってない闇に紛れし暗殺者。
「―――ま、ここらで有名所と言ったらタッカーと後はお前さんだけだろ?」
「…………」
「タッカーがあんなになった以上、お前さんが気を付けてさえいれば……」
「不味いな……」
「?おい!」
「エルリック兄弟がまだ宿にいるか確認しろ。至急だ!」
「あ、大佐。私が司令部を出る時に会いました。そのまま大通りの方へ歩いて行ったのまでは覚えています」
「こんな時に……車を出せ!手の空いてる者は全員大通り方面だ!!」
「行ってらー」
「……メイ?」
「……はいはーい」
笑顔のリザが怖い。
~~~~~~
「そこまでだ」
大通りでは既に戦闘が行われていたようだ。『鋼の錬金術師』の右腕―――機械鎧―――が破壊されてるのがいい証拠か。
「危ない所だったな鋼の」
「大佐!こいつは……」
「その男は一連の国家錬金術師殺しの容疑者……だったが、この状況から見て確実になったな」
褐色の肌……何故かあの人種を思い出す。サングラスが外れれば確実に分かるのに。
「タッカー邸の殺害事件も貴様の犯行だな?」
「!」
「……錬金術師とは元来あるべき姿の物を異形の物へと変成する者……それすなわち万物の創造主たる神への冒涜。我は神の代行者として裁きを下す者なり!」
「それが分からない。世の中に錬金術師は数多いるが国家資格を持つ者ばかり狙うというのはどういう事だ?」
「……どうあっても邪魔をすると言うのならば貴様も排除するのみだ」
「……面白い!」
「マスタング大佐!」
「お前達は手を出すな」
「マスタング……国家錬金術師の?」
「いかにも!『焔の錬金術師』ロイ・マスタングだ!」
……そういえば焔の錬金術って雨の日は使えないんじゃなかったっけ?
「(ねえリザ)」
「(何?)」
「(雨降ってるけど……焔出るの?)」
「あ……大佐!」
「おうっ!?」
ガガガガガンガンガン!
「いきなり何をするんだ君は!?」
「雨の日は無能なんですから下がっててください大佐!」
「あ、そうか。こう湿ってちゃ火花出せないよな」
「!」
「無能って……(ぷるぷる)」
仮にもイシュヴァールの英雄だってのにね。
「……って少佐!市街破壊するなよな!」
「何を言うか!!破壊の裏に創造あり!創造の裏に破壊あり!破壊と創造は表裏一体!壊して創る!これすなわち大宇宙の法則なり!」
「何故脱ぐ?」
「ていうか何て無茶な錬金術……」
「選手交代ー。アームストロング少佐に変わりましてシルバーバーグ大佐」
「なぬっ!?」
「修繕費誰が出すと思ってるのよ?」
「むむ……」
錬金術使えば簡単に直せるけどコンクリ薄くなるよね。
「シルバーバーグ……国家錬金術師か?」
「一応ね。『変熱の錬金術師』メイザース・シルバーバーグ……顔見て分からないって事は虱潰しって訳か」
「…………」
「同じ錬金術師同士、殺り合おうか」
「……ふん!」
「うおっ!」
いきなり間合い詰めてきやがった!帯刀してないし、拳でやるしかないか!
「おらおらおらおらおらおらおらおらおら!!!」
「むっ……(ザッ)」
拳の連打に一旦後退する傷の男。私はその間合いを敢えて詰めず、逆に距離を取って錬成する!
「な!」
「あれは……氷柱?」
「ちっ」
「リザ!」
「了解しました」
「(な……この氷柱は目眩ましか!?)」
ドンドンドンドンドン!
「やったか!?」
「(大佐それフラグ!)」
「速いですね。一発掠っただけです」
サングラスが地面に落ち、銃弾が掠った額から血が出る。顔を上げた男の目は赤く染まっていた。
「褐色の肌に赤目の……!」
「やっぱり……イシュヴァール人か……!」
「……やはりこの人数を相手では分が悪い」
「おっと!この包囲から逃れられると思っているのかね?」
「……ふん!」
ド!ゴバァ!
「うわああああ!!」
ドガラガラガラドドドドドドド!
「あ……野郎地下水道に!」
「追うなよ」
「追いませんよあんな危ない奴」
「すまんな時間稼ぎに徹してもらって」
「……元々拳で殺り合えるとは思ってなかったからね」
「その割には様になっていたな」
「グラン准将に仕込まれたからね。傷の男じゃなければ組み伏せる事ぐらいは出来るよ」
「しっかしまあ……厄介な奴に狙われたもんだ」
あ、ヒューズ中佐いたんだ?
「今までどこに?」
「物陰に隠れてた!」
「おまえなあ……」
「……イシュヴァール人、か」
「まだまだ荒れそうですな」
ホント、この世界は問題が山済みだ。
後書き
余談ですが今モバマスにはまっています。
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