めだかボックス 〜From despair to hope 〜
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第1箱 「犬や猫じゃないんだからさ………」
あれ………?
ここは?
「さっきの人は……? いない………な。」
辺りを見渡しても、いなかった。
それにさっきの場所と違って、なんだか現実味があるところに来たって感じだ。
体もちゃんとある。
「転生?そっか…転生したんだ… 僕… ほんとあっという間だったな……。」
そう理解し、改めて周りを確認する。
そこは… なにやら狭い箱の中…
触ってみると…
「………これってダンボール箱……かな。」
そうダンボール箱の中だ。
たしかに【めだかボックス】って名前だったけど。
ダンボールかぁ…
っと考えていたら。
一枚の紙が置かれていたことに気付いた。
《名前は劉一です。 可愛がってあげてください……》
の一言…
「僕は………犬や猫じゃないんだから……。 それに…あれ?僕…スッゴい小さくなってる」
あきれてしまっていた。
その次は驚く。
…まさかこんなに若返るとは… まあまだ10代だったけどね…
体が小さいといろいろと不憫な事がありそうだなぁ…
でも、
「もっと大きな不幸を背負っていたし。 何とも思わないや、これくらいじゃね……。」
ショックな事などまるでない。
―――……うん。十分に普通だ。
まあ それがこの世界で言う《異常》とも取れるのだろうけど。
そして。
記憶を懸命に辿ってみると、
記憶が段々と脳裏に浮かび上がってきた。
ちゃんと、この世界の住人として転生できているようだ。
どうやら生みの親は、僕の異常さに気付いて恐ろしくなり捨てたと言う事だろう。
人は理解できない者に恐怖する。
それは、親とて例外ではなかった。
生まれてきて。
教えてもいない事を知っている。
身体能力が異常に高い。
初めは天才や神童と喜んでいたが、それが徐々に恐怖に変わって行ったのだろう。
冷静に分析できる。
「これが僕の異常性……なのかな? 瞬時に全て理解できる事………? 記憶力とか……? ん……わかんないな……。」
こちらではあるのか分からないが。
サヴァン症候群に類するものなのかな?と思った。
「まあ、いいや。 考えていても分からないしね。」
そう言うと考えるのをやめた。
幸いな事に気温は低い気がするが、雨は降っていない。
そのため、
暫くその【ボックス】の中でじっと座っていた。
そして。
数十分後
人が声を掛けてきた。
「あれ!!何これ!!! ええ!!子供が・・・ 男のコが・・・!!」
………女のコ?
女のコが僕と同じくらいのコと手を繋いでいた。
……兄弟かな?
「ちょっとっっ!!! 僕!どうしたの?」
慌てたように聞いてきた。
「僕は、捨てられたみたいなんです。」
涙を流すわけでもなく、淡々とした表情で答えた。
その事に少なからず動揺したみたいだ。
捨てられた事をしっかりと理解しているのにこの表情。
2〜3歳のコが……
これは放っておけないわね。
「そ……そっか……。 よっし! 君!私たちと一緒に来なさい! こんなとこにいると風邪を引いちゃうしね。」
そう言うと手を差し出された。
差し出された手に少し戸惑ったが
手を握った。
“ギュッ…………”
とても……とても……暖かい手だ。
ずっと……ずっと……この温もりを忘れていたような気がする。
【人の温もり】を。
すると、自然と涙が零れ落ちていた。
表情はそのままなのだが。
握ってくれた女のコはちょっと驚いていたが、
直ぐに笑顔に戻った。
「………よし!すぐそこが私が勤めている病院よ。もうちょっとでつくからね。」
そして軽く涙を拭ってもらった。
「後このコは善吉って言うんだ。仲良くしてあげてね。」
ぜん……きち………?
そうか……このコが、
「うん。よろしくね。善吉くん 僕の名前は劉一だよ。」
そう言って手を差し出す。
「うん!!よろしくね!りゅうくん!」
迷いなく握ってくれた。
満面の笑顔で。
そして、この世界に入って彼が
最初の僕の友達になったんだ。
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