森羅と創世のエターナル真祖
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江戸の街
紗代
私達が龍神村を出て早数日。ようやく、江戸の町が見えてきました。
「ようやくか、長かったぞ」
そういいながら、手押し車の上で足をぷらぷらさせています。これで私より数百歳も年上とは思えません。
「ん? どうした?」
「いえ、なんでもありません」
あぶない、あぶない。子ども扱いするとエヴァさんはかなり機嫌が悪くなります。たまに、年上と感じる事もありますが、どちらかというと妹とかそんな感じです。
「まあ、歩きだと、仕方無いだろ」
「馬でも買え、馬でも」
「そんな金は無い」
「おい、待て! なんでだ!」
「決まっている。今までの茶屋代でだ」
茶屋をみかけるといつもよって、お団子を包んだりしてもらってましたからね。
「くっ、どうするんだ?」
「働くしかないだろう。江戸で稼いでいくぞ」
「…………刀作って…………売ればいい…………」
「レンの言う通りだ!」
「材料が無いな。あと、まじめにここで稼いでいくからな。ちゃんと手伝えよ」
「わかった」
「でも、宿はどうしますか?」
「あ〜長屋でも借りるか。結構な日数は居るだろうしな」
長屋ですか。住んだことはありませんね。ちょっと楽しみです。そんな感じに話しながら歩いていると、江戸の町に入りました。
江戸の町は綺麗で活気があります。シオンさんについていくと、広くなっている大通りで止まり、手押し車の旗を変えました。どうするんでしょうか?
「さて、この子に勝てたら1両さしあげます。参加費は一人10文です!」
と大きな声を出しながら私を指差してきます。
「ええええ!」
「がんばれ。あと、刀は禁止だからな。皆さんは武器ありですよ」
制限が厳しすぎます。
「おいおい、こんな嬢ちゃんを倒すだけで一両ももらえるのか?」
「無茶だろ…………」
「馬鹿だな〜」
という、野次馬さん達の声が聞こえてきます。
「ああ、そうだ。紗代、勝てそうで勝てないようにやれよ」
無茶いいますね…………流石は師匠です。
「がんばったら、ご褒美やるからな」
ご褒美…………なんでしょうか?
どちらにしてもこれは、がんばるしかありません。
「よし、俺がやる!」
浪人風の人が挑戦してきます。
「よろしくお願いしますね」
お辞儀をして、構えを取る。
「右からいくぞ!」
わざわざ教えてくれます。嘘かとも思いましたがどうやら油断してるようで、本当みたいです。
「はい…………明鏡止水…………」
身体の力を抜き、相手の動きに合わせて避けたり弾いたり…………演舞の感じで5分間続けた後、相手を倒しました。それから、私は周りを見回します。
「次の方どうぞ」
「次は俺だ!」
それからは、繰り返し同じ感じでした。相手の動きがかなり遅く見えるのであわせるのは楽でしたね。
四時間後、私の周りには疲れきった人たちと結構な数の野次馬がいました。
「次の方」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
皆さん、静まり返ってどうしたんでしょうか?
「兄貴! こいつらです!」
なにか素行が悪い人達が6人ほど来ました。ちょっと怖いので、シオン様の後ろに隠れます。
「お前ら、よくもうちの連中を可愛がってくれたな」
「契約の問題だ。そっちは金を払って、試合をしただけだ」
「ほう、なら俺たちも参加さしてもらおうか」
「なら、全員で60文だな。全員で同時なら100文でいいぞ?」
「舐めやがってっ!! いいだろう。後悔させてやる!!」
ええっと、次は一気に6人もお相手ですか!
「ああ。ただし俺が相手だ」
あ、シオン様がお相手するんですね。よかった。
「いいだろう。殺っちまえ!」
掛け声と同時に6人が一斉にシオン様に襲い掛かります。
「ああ、演っちまおう」
それは、違うかと思いますが…………一分後、誰一人として立ち上がれないほど痛めつけられていました。やっぱり、すごいです。刀を抜いた相手6人に無手で圧勝するなんて。
「さて、ここまででいいか。エヴァ守備は?」
「うむ、こっちだ」
今度はエヴァさんの先導で移動します。あの人たち放って置いていいのかな?
その後、私達は長屋につきました。
「ここの奥を一個借りたぞ」
いつの間に借りたんでしょうか?
「ああ、ありがとう。さっそく中に入るか」
「ああ」
「待ってください」
あわてて、私も中に入りました。中はこじんまりしていて、三人で住むにはきつそうです。それに小部屋が居間と寝室の二個しかありません。
「狭いな」
「ああ」
「ですね」
「まあ、いいだろ。それ以前に…………」
そうですね。掃除しないといけません。しばらく使ってなかったのか、埃だらけでとても住めません。
「安くは借りられたんだがな」
「しかたない。森羅…………埃を一箇所に集めてくれ」
「“嫌です。何が悲しくてこの永遠神剣第一位が埃なんて集めなくてはいけないんですか!”」
すごく、その心はわかります。
「仕方ない、シルフ」
シルフが召喚陣から出てきました。
「あるじ〜なに〜?」
「埃を「やだ〜」・・・・・・・。」
ですよね。こちらも風を司る大精霊様ですから。
「後で和菓子を作ってやるから「わかった〜」手伝・・・・・・・・」
変わり身が凄く早かったです。
その後、シルフさんが風を使って部屋中の埃を一箇所に集めて捨てました。その後、創世さんを使って部屋の修理や改築などを行って行きました。長屋に防音などの結界も当然のように張りました。
「ご褒美に今日の料理は奮発したぞ」
食卓に並んでいるのは、松茸ご飯に松茸などの煮物やお刺身、お味噌汁に白玉餡蜜などでした。
「普通の料理と変わらなくないか?」
エヴァさんがそういうのも分かります。いつもシオン様の別荘でとれる不思議な物を食べてますから。このような普通の食事は久しぶりです。(紗代も結構いいものを食べて育っています)
「食べてみろよ」
私とエヴァさんはお味噌汁を飲み、松茸ご飯を食べると驚いたことに、口の中の松茸が噛めば噛むほど味が変わって行きます。どの味も非常に美味しいです。
「なんだこの松茸は…………」
「別荘でとれた七色に輝く松茸だが?」
「相変わらずでたらめだな、おい」
「一色毎に味が変わるから調整が難しいのと、魔眼を使って調べたら数十年から数百年単位でしか出ないから味わって食えよ」
それは確かにご馳走です。
「あるじ〜おかわりは?」
「頼ムゼ?」
「お前ら、いつの間に出てきた…………」
「ズット手押シ車ノ中ニイタンダゼ? 出レルナラ出ルゼ、ゴ主人」
たしかに、可愛そうですね…………あれ?
別荘にいればいいだけじゃ…………。
「まあ、たくさんあるからよく味わって食べろ」
「は〜い」
その後、シルフさんは別荘に戻りお人形さんは居間で寝ています。私達も寝室に入り、真ん中にシオン様を挟んで眠りました。
次の日。他の長屋の方々に挨拶をして、お昼ご飯を取りました。お昼ご飯を終えた時、シオン様から巻物が渡されました。
「これは?」
「うん、前にも話したが、紗代には道場破りをしてもらう」
「本気なんですね…………」
「ああ。それで勝ったらそこに流派と師範の名前、血判をもらってこい」
「普通は看板を貰うんじゃないですか?」
「邪魔になるだろ。それに、道場を潰すわけじゃないしな。単なる力試しだしな」
確かに納得する理由です。
「分かりました」
巻物を懐にしまいます。
「あと、紗代には呪いをかける」
「えっ!」
わ、私は悪いことしましたか!
それとも嫌われるようなこと…………昨日の夜伽がダメだったのでしょうか?
「あ〜違う。単に修行の一環だ」
「そうですか、よかったです」
「という訳で永遠神剣を使わない限り、身体能力は普通の女性と同じになる。といっても身体に負荷をかけてるので普通の修行としても問題ない」
今も重力魔法掛けっ放しですからそんなに代わりませんが…………となると。
「剣術の技術だけで勝てと言う事ですか?」
「そうだ。いい修行になるだろ。体力の配分もしっかりしろよ」
「わかりました、がんばってみます」
「よし、いい子だ」
「〜♪」
頭を撫でてくれました。エヴァさんを見てて思ったんですが、私も撫でられるのは好きみたいです。
「今日は玄武館にいってきなさい」
「玄武館って結構有名なところじゃないですか?」
結構どころでは無いかもしれませんが…………龍神村にはあんまりそういう情報は来ませんでしたから。
「大丈夫だいってこい」
「分かりました。勝ってきます!」
「そうだ、勝って帰ってこい」
「はい!」
私は、巫女服を改造した動きやすい服装で、長屋を出て玄武館へ向かいます。この服はシオン様が作ってくださったので、お気に入りです。
シオン
さてと、紗代を送り出して、しばらくするとエヴァが帰ってきた。
「ただいま。いい物件があったぞ」
「おお、それはよかった」
エヴァは午前中から、商売の出来る店の物件を探してもらっていたんだ。
「うむ。もう契約も済ませてきた。さっそく、行くぞ」
それから、エヴァと共にその物件を見に出かけた。
エヴァに連れらて行った場所は、大通りの一角だった。
「どうだここは?」
どうといわれればいいに決まっているが…………。
「よくこんなとこ買えたな?」
「うむ。ちょっと賭博にいって来てな。巻き上げてきた」
何やってんだか。
「今度は俺も連れてけ」
「わかった。まあ、それで手に入れた金を使って、売ろうとしていた連中から買い取った訳だ」
ふ〜ん。元は米屋か…………という事は蔵もあるな。
「わかった、ありがとう。営業許可は?」
「鍛冶屋と服、飲食関係の許可はとってある。くくく」
いろいろ悪どい事したな…………普通はこんな早くとれないしな。
「さて、中に入るか……………………」
中に入ると元の店の店主のような人がいた。
「この人が売ってくれた人だ」
「あの、あなた方は?」
ん、ああ、そうか。エヴァは幻術使って交渉してたのか。
「ここを買い取ったものだ、これが契約書」
「確かに確認しました。こちらが権利書などになります。従業員たちは言われた通りに退職金を払い、解雇しましたのでいません」
ぶっちゃけ、俺達に従業員とかいらないしな。しかし、店の間取りも悪くないし、改造したらすぐにでも使えるな。
「あんた達はこれからどうすんだ?」
「私達は…………娘達と相談してみます」
ん〜なんか変だな…………よし、ここは未来視の魔眼でも使って、対象の未来を見るか。
「ちょっといい?」
「はい。なんでしょうか?」
相手の瞳を覗き込み未来を見る。なるほど、妨害も有って娘を売るしか生き残る手段も無くなるんだな。
「どうせ、娘さん達売るしかないんだろ?」
「う、それは…………」
「なら、俺が買ってやるからここで住み込みで働け」
「いいのですか?」
「裏切らない従業員が手に入るわけだし別にいいよ。ただし、あくまで娘さん達は買う形だぞ。逃げられてもかなわんしな」
さっき、映像で見たけど可愛かったし看板娘にはなるだろ。それに、実験もしたい。
「分かりました。それで、お願いします」
「じゃ、そういうことで」
「では、娘達を説得してきます」
「行ってらっしゃい。明日にでもまた来てくれたらいいからね」
「わかりました」
元店主さんは店を出て行った…………あ、名前聞いてねえ。
「良かったのか?」
なんですか、エヴァさん。ちょっと機嫌悪いですよ?
「ま、いいんじゃない? それにちょっと気になるのも見えたし…………っ!」
「大丈夫か!」
心配そうな顔して…………これは、単なる未来眼の副作用だし問題無いな。長いこと使ったりしなければだが。
「ああ。それより結界を頼む。今から店内を弄るから」
「分かった。人払いの結界を張る」
エヴァが結界を張って準備ができたので、レンから創世を借りて店内を改造する。店の右部分は飲食店に、左部分は米や衣類関係の場所を作り、倉を武器屋にした。
「こんなもんでどうっすか?」
「ああ、後は保存庫(冷蔵庫みたいなの)も作るか…………もうひとつの倉に魔法を施して温度を一定にすれば良いだろう」
「了解しやした!」
「色々と無茶してるな。あとで店主たちにも魔法かけねばならんぞ」
「だな」
そんな感じでその日一日は作業をしておりましたとさ。
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