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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第五十八話 みんなにサプライズだ!

 宮殿に帰ると、まずはミラニに報告しに行く。
 依頼やギルドのことを教えてくれた礼をするためだ。
 だが、ミラニは練技場(れんぎじょう)にはいなかった。
 近くにいた者に聞くと、どうやらクィルと一緒に庭の方にいるとのことだった。


 庭に到着すると、そこには王女三人衆とミラニ、そしてクィルの専属メイドであるカニルがいた。
 皆で机を囲いお茶をしているみたいだった。
 ちょうどいいと闘悟は思った。
 一番先に闘悟の存在に気づいたのは、第三王女のハロだった。
 まだ五歳の活発な少女である。
 チャームポイントはパイナップル頭だろう。
 そのハロが闘悟に飛びついてくる。闘悟はそれをふんわり受け止める。


「なあなあトーゴ! どこいってたんだぁ?」


 少し不機嫌そうに口を尖らせていた。
 もしかしたら、いきなりいなくなった闘悟のことを怒っているのかもしれない。


「ちょっとな」
「ん? ちょっとってなんだぁ?」


 可愛く首を傾げてくる。
 闘悟が頭を撫でると「にししし」と嬉しそうに笑う。
 どうやら機嫌は直ったみたいだ。
 ハロは単純で良かった。


「依頼は受けてこなかったのか?」


 ミラニが尋ねてくる。


「いんや、終わったから帰って来たんだよ」
「も、もう終わったのか? あの依頼はそれなりのランクのはずだが……?」


 闘悟はその証拠に換金してきた金を見せる。


「白金貨っ!?」


 ミラニが愕然とする。
 ミラニは説明を求めるように闘悟を見つめる。
 闘悟はどんな魔物を倒したのか皆に説明をする。
 皆は楽しそうに闘悟の話を聞き入っていた。


「はぁ、相変わらずの規格外だな貴様は」


 ミラニは呆れて溜め息を漏らす。


「あ、そうだ!」


 闘悟は思いついたように袋を取り出す。
 その中には、大量のガルーダの羽毛があった。


「こ、これがガルーダ亜種の羽毛か……」


 声を出したミラニだけでなく、その場にいた皆が興味深そうに見つめる。
 滅多にお目にかかれないAランクの魔物の素材なのだ。
 目を奪われても仕方が無い。


「というか、これは換金してこなかったのか? これだけの量、かなりの高額になるはずだが?」
「いやな、これはみんなにプレゼントしようと思って取ってきたんだよ」
「プレゼント……ですか?」


 クィルが首を傾げる。


「ああ、ちょっと見ててくれ」


 闘悟はそう言うと、大量の羽毛を魔力で覆いだした。
 眩い光が放たれ、皆が目を閉じる。
 そして、しばらくして光が収まる。
 目をゆっくり開けてクィルが声を上げる。


「こ、これは!?」


 そこにあったのは、羽毛で作られた数々の品だった。
 手袋、タオル、リストバンド、帽子(麦わら帽子の形)、髪紐(かみひも)、エプロン、ぬいぐるみ(熊)が作られてあった。
 もちろん、これは闘悟が改変魔法で作った物である。
 ん~便利なんだけど、ここまでくると錬金術だなこれ……。


「す、すっげえ~っ!」


 ハロがキラキラと瞳を輝かせる。


「まあ、驚きましたね」


 第一王女であるリアも同様だ。


「さあ、お好きな物をどうぞ?」
「あたしこれがいいっ!」


 一番に決めたのはやはりハロだった。
 他の者は素直なハロとは違い、遠慮がちなようで手を出しにくそうだ。
 ちなみにハロが選んだのはぬいぐるみだ。
 闘悟も狙って作った。
 ハロは嬉しそうにギュッとしている。


「ほら、みんなも!」
「えと……ですが……」


 クィルの言葉に闘悟は肩を落とす。


「そっかぁ……せっかくみんなが喜んでくれるかなと思ったんだけど……」


 他の者は、わざとらしく落ち込む闘悟を見つめる。
 闘悟はチラッとクィルを見て、また視線を地に落とす。


「わ、分かりましたです! ミ、ミラニもいいですね!」
「は、はい!」


 闘悟はしてやったりと心の中で笑う。
 クィルは手袋を、ミラニはリストバンドを、リアは帽子をそれぞれ手にした。
 お互いが、手に取った物を嬉しそうに触っている。
 それを見て闘悟は、プレゼントして良かったと心から思えた。


「このタオルと髪紐は、ギルバニア様とニア様に渡してあげて」
「分かりましたです。きっとお喜びになりますです!」


 するとミラニが、何かに目を奪われたように視線を固定させる。


「ん? このエプロンは何だ?」
「ああ、それは……」


 闘悟はエプロンを手に取り、ある人物の前まで歩く。


「ほらよ」
「え……わ、私ですか?」


 心底驚いた声を上げたのは、カニルだった。


「料理が得意なカニルにピッタリだろ?」


 闘悟はニカッと微笑む。


「で、ですが……」


 普段無表情のカニルには珍しく、焦燥感が顔に出ていた。
 差し出されたエプロンを手にしていいものか迷っている様子だ。
 闘悟もその様子を感じ取り、どうしたものかと思っていると、クィルが手助けしてくれた。


「良かったですねカニル。これで増々お料理に精が出ますです!」


 クィルが嬉しそうに両手を合わす。
 ナイスクィルと、心の中で感謝する。
 クィルの喜ぶ姿を見ると、今度は闘悟の目を見る。
 闘悟は笑顔を崩さないように見返す。
 それを見たカニルは、恥ずかしそうに顔を俯かせてエプロンを手に取る。


「あ、ありがとうございますトーゴ様」


 大事そうに胸の中に納めて礼を言う。


「ははは、いいっていいって!」


 こうして、闘悟のサプライズプレゼント計画は終わりを告げた。
 だがその後、クィルに黙って依頼に出掛けたことを追及されて、こってり絞られた。
 これからは反対されても、一応一言は言っておこうと決心した闘悟だった。
 その時にちょうど良かったから、借りていた金を返しておいた。
 初めは受け取りを拒否していた彼女だったが、白金貨まで手に入れた闘悟なので、金に困っていないことをしっかり話して納得して受け取ってもらった。


 そしてその夜、いきなり部屋に入って来たニア様に抱きつかれてお礼を言われたのだが、息ができないくらい、たっぷりハグされたことから、その後ぐったりしたのは別の話だ。

 
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