神葬世界×ゴスペル・デイ
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第一物語・後半-日来独立編-
第三十一章 辰の地、戦火は走る《2》
前書き
さあ、バトル開始だ!
ドゥエルディスク、セット!
ドゥーゲイザー、セット!
ドゥエル!
俺のターン、ドゥロー!
俺はスタートをコールする!
※決して馬鹿にしているわけではありません。
解放場があるとされる西貿易区域に向かい、日来の群れは行く。
結界を自壊させるための多方面一斉攻撃を行うため北側には社交員が向かい、さすが大人と言ったところか既に戦闘を開始していた。
負けじと同じく結界の自壊を担当する組と、長を解放場へと向かわせる組とが南側、正面に見える西貿易区域に向かい走る。
「陣取りは完了しているようですわね」
学勢を先導するかのように、先頭を行くネフィアは見える光景を口にした。
黄森と辰ノ大花の学勢、社交院が並び、日来を迎え撃たんと立っている。
見ながら、後方からレヴォルフが付いて来て、
「長は別行動を取るようだが、付き添いがいなくて平気なのか」
「逃げ足は早いから気にしなくてもいい、とレヴァーシンクが言ってましたし平気でしょう。長には長、わたくし達にはわたくし達のやるべきことがありますわ」
自分達のやるべきこと。それは結界を解き、宇天の長の元へセーランを向かわせること。
二人は屋根を飛ぶように行き、敵との距離を徐々に詰めていく。
敵がこちらの姿を捕らえ、身構える頃には半獣人族と獣人族が力強く一踏みして先手を打った。
●
薄青く見える半球状の結界に護られている西貿易区域周辺で、数々の戦闘が繰り広げられていた。
空にいる戦闘艦は地上にいる日来の者達を無視し、上空に停滞している日来を襲う。
一方の日来は防御壁により機体を守り、作業用騎神や魔法術師達で応戦している。
加速機を中心に狙い、推進力を奪い落下させる。それによってワイバーン級、ドラゴン級戦闘艦を数艦落としたが、それだけでは戦況は覆らない。
地上にいる日来の者達は突撃を、対する黄森と辰ノ大花の者達は陣形を組んで応戦した。
陣形は接近戦装備の者が前方に、遠距離戦装備の者は後方に、大きく二組に分かれたものだ。
「黄森と辰ノ大花がすぐに合わせて出来る陣形と言えばこれだろうな」
「長銃を構え後方にいるのは黄森、接近戦を任された辰ノ大花は前方にいますわね。得意とする戦法を一点に任せることで仲間同士の争いを抑えるのが目的でしょう」
「仲間、か。長を殺される側と殺す側が共に戦うとは、なんとも皮肉なものだな」
「黄森な逆らえば何をされるか分からない。ゆえに従うしか無い、と言ったところですが。気に食わないですわね」
灰色の戦闘服に身を包むネフィアは背後をルヴォルフに任せ、前に見える敵に正拳を放つ。
後ろに立つルヴォルフも体術で応戦する。
獣人族の二人にとって自身の身体こそが真の武器であり、身体の動きによって放たれる攻撃が最大の攻撃でもある。
度々、銃弾が飛んで来るが発砲音である程度の軌道は分かるため回避は簡単だ。
それに味方が多い彼方は無闇に発砲はせず、銃口をこちらに向けたままでいることが多い。
そうするように、こちらが立ち回っているため当然だ。
「目の前に結界があると言うのに届きませんわ。全く、面倒ですわね」
「敵も馬鹿ではないからな。結界の自壊を恐れ周辺の警備は固くしてあるようだな」
「なら崩すだけヨ」
小柄な身体を精一杯動かし、敵の群れに飛び込む空子によって一つの陣形は内部から崩壊した。
後方宙返りを入れて、後退して来て敵からの反撃を阻止する。
誰もがその身のこなしには関心を抱き、その一人としてネフィアがそれを言葉にする。
「獣人族ではないのに、よくそんなに動けるものですわね」
「小さい頃、よく鍛えられたからナ」
「空子は中西武国の出だからな。世界の軍力で一、二を争う国だけあって実力はなかなかのものだな」
「真ノ自由独逸|《エヒトフライハイト・ドイツ》出身の二人とウチ合わせたら最強ダ」
今度はルヴォルフが別の陣形へと突っ込み、一撃を与え即座に退く。
長居すれば辰ノ大花の者達に包囲されお仕舞い、更に後方にいる長銃のいい的になるからだ。
この陣形の対処法は前方に射撃を防ぐ防御盾を置き、機会を伺い防御盾から出て攻撃し退く。それを繰り返しながら、結界へ近付くのが今のところ確実だ。
「後方に敵を確認。回り込まれてますよお」
味方の群れから小柄なロロアが隙間を縫うように、身体をくねらせながら前線へ来た。
戦闘だというのにぶかぶかの制服は相変わらずで、地に付く制服が味方に踏まれコケそうになったり、前に進めなかったりしている。
「なんですか! その呆れたような視線は!」
「その格好でよく来たものだな」
「だって皆さんも制服じゃないですか」
「わたくしや他数名は戦闘服を着てますけど。ルヴォルフは制服を戦闘服として作っていますし、それに皆様、ロロアのようにぶかぶかではありませんし」
「大丈夫ダ。ロロアは防御専門だからナ、動くこと少ないかラ」
「どうですか、それを分かって制服のまま来たんですよっ!」
「はあ、そういうことにしておこう」
戦闘経験の無いロロアにこれ以上言っても無駄だと感じ、無い胸を張る彼女にルヴォルフは根負けした。
後ろを見ればロロア言っていたように敵が回り込んでいたが、正面と比べれば数はそれ程多くはない。的確に対処しておけば痛手を貰うことはないだろう。
「二年生は後ろの敵を頼むぞ」
「「了解!」」
先輩の指示に後輩は背後にいる敵と交戦し、囲まれないように負けじと攻める。
一年しか違わないが、彼らもなかなか腕が立つ。
日来は武装禁止だったため、こちらには戦闘道具は無い。が、武器ならある。
機械部から配給された鉄パイプだ。
長さや重さ、太さが一つ一つ違うため自分の手に馴染むものを皆、持っている。
分類上、打撃武器となり軽くスイングしただけでも武装した敵に以外と渡り合える。
身近にあるものだが、まともな戦場ではまずお目にかかれない光景だ。
「鉄パイプを敵に打ち付けるこちらは、部外者から見たら何処ぞの不良かと思うな」
「まともな武器が無いのなら仕方ありませんわ。――ロロ犬シールド!」
「のわ!? いきなり何するんですか。てか、目の間に弾丸の群れが! 死にたくないので防御盾――!」
敵の後方から来た無数の弾の群れ。
前方にいた辰ノ大花の列が二つ分かれるように割け、間から一斉に撃ってきた。
制服の襟を掴まれ、宙に浮くロロアはとっさの判断で長方形の防御盾を横一列に展開させ皆を守る。
「喋っていてよく間に合いましたわね」
彼女の防御センスに、時々関心を覚える。
弾は防御盾に当たるが貫くことはなく、弾かれもせずに失速し、勢いを無くした弾は地面に落ちる。
防御盾は弾の当たったところが衝撃で波紋が広がっているが、無傷のまま持ち堪えていた。
「この防御盾を普通の防御盾と思わないでください。緩和系加護が施され、大砲の弾だって防げてしまうんですから」
「さすがはロロ犬シールド。他とは訳が違いましわね」
「もっと褒めてください、久しぶりに褒められましたからね!」
「ロロ犬シールドに敵うものはいない、と言ったところか」
「向かうところ敵無しですかね」
「自分の名前入ってる技、格好いいナ。必殺! ロロ犬シールドッ!」
「てか、さっきから言ってるロロ犬シールドってなんですか!? 勝手に人の系術に名前付けないでくださいよっ!」
ツッコんだ声に反応するように、敵側に動きがあった。
「奴らを図に乗らせるな! 行けえ、行けえ――!」
「「おお――!!」」
黄森、辰ノ大花は声を合わせ、日来の進行を食い止める。
それは何処も同じで、若干日来勢が押しつつも物量の違いですぐに黄森、辰ノ大花勢が押して返してくる。
しかし、負けていられないと日来勢が更なる力で押し戻す。
この状況が続き、学勢や社交員の数などで上回っている黄森、辰ノ大花が守り切れていない。
これを見かねた辰ノ大花の宇天学勢院覇王会戦術師、棚部・御茶丸が動き出した。
●
西貿易区域を離れた町から見る御茶丸は眼鏡越しに目を凝らしながら、戦況を遠目に伺っていた。
彼がいる町は今、戦闘をしている西貿易区域周辺に住んでいた住民の避難先であり、遠くから戦場の音が風に乗って聞こえてくる。
戦場となった町に設置してある監視用映画面|《モニター》が撮す映像を、自身が表示した映画面に映しそこから情報を得て戦術を練る。
「黄森と辰ノ大花との陣形が上手くいってませんね。そのため、あいつら最悪だよ、と感じてしまっており仲間割れの逆効果です」
「立て直せるの?」
彼の後ろに立つ束・明子は問う。
「無理ですね。まず辰ノ大花と黄森とでは相容れぬ立場のため、一度崩れたものを再び立て直すことは不可能です。そう、長を殺す側と殺される側が手を組んでしまった前からね」
「皆、本当は日来と一緒に奏鳴様を救いに行きたい。だけど、そうしたら、奏鳴様の最後の約束を破ることになってしまう」
彼女は自身の解放が確定的になってしまった時、辰ノ大花の皆にこう言ったのだ。
“私が死ぬということは、お前達が自由になることだ。別れは寂しいが、お前達は私が生きて得られなかった幸せを、その分得て、語り笑ってくれ。”
弱くも強くあろうとした少女の言葉は皆の胸に刺さり、誰もが自身の無力を痛感した。
戦場となった前方に見える遠い町を、視界に入れたまま思い出す。
「最後の約束とはよく言ったものです。……全く、泣いて言われたんじゃ、誰も破ることなんて出来ませんよ」
抗いなど自分からすれば容易いことだ。ただ相手に逆らい、従わなければいいだけのことだからだ。
しかし、長は泣いて言った。
“幸せを得て、語り笑ってくれ”と。自分の分まで。
家族を殺してしまい、黄森の者達までも殺してしまい辰ノ大花に迷惑を掛けてしまった彼女にとって、今までの生涯は何の価値の無いものだったのだろう。
そんな彼女と交わした最後の約束。
せめて、少しは生きていて良かったと、そう思っていてほしい。
「まだ生きていてもいいんだと、そう言ってあげたかったものです。ですが、僕達にそんな言葉を言う資格は無い。今まで苦しませ続けてきた僕達に出来ることは、彼女を早く楽にさせてあげることだけなのかもしれませんね」
「私、悔しいです。黄森が怖いからって理由で、奏鳴ちゃ……奏鳴様を死なせることが。……うう、わ、わだぢ……悔ぢい」
何も出来ない自分が悔しくて、瞳から溢れ落ちるものを必死に拭う。
拭い、拭い、また拭っても頬を流れるそれは止まらなかった。
「泣いては駄目ですよ。皆、泣かないように必死に堪えてるんです。堪えて、堪えて、堪え抜いて。もう彼女のような人を出さないようにするんです。この苦しみは、自分達が知っていればそれでいい」
「ずるいですよ、御茶丸君は。何時もふざけてるのに、ここぞとなったら格好いいんだから」
「自分的にはかなりイケメンだと思うんですよ」
言うと後ろから殴られた。
丁度、背骨周りの筋肉を殴られかなり痛む。
「やっぱり格好悪い」
「ははは、それは残念です。まあ、長が救われるのなら日来に奪われた方がいいんですね。そうなってもいいように、こちらも立場を示さねば」
口にしてはならない言葉を口にし、右手を素早く右へ振り払い映画面を表示する。
映るのはスーツを着た、騎神を操縦する者達だ。
男子三人。同じ宇天学勢院高等部三年生であり、時々話す程度の学勢仲間だ。
今はどうやら待機中で、何時でも騎神が出せる準備は済ましているようだ。
三人の容態は悪くなさそうだ。確認し、御茶丸は彼らと会話をする。
「ご機嫌如何ですかあ? 皆の衆」
『消えろ』
一言だけ言って、映画面に彼らが映らなくなった。
通信不良ではない。彼方が映画面を割ったためだ。
「ええ!? 酷すぎませんかね、その態度……」
「さっきのだったら、これが普通の態度だと思うよ」
拭い、笑みを無理につくる明子の言葉に、頷いて納得する。
「なるほど、これはツンデレと言うものですか。仕方ありません、付き合ってあげましょう」
「違うと思うよなあ……」
無視し、映画面を表示する。
当然、先程の三人組だ。
「ツンデレに構うこっちの身にも――」
再び映画面が割られた。
しかし同じ手は食わない。すぐに新たな映画面を表示する。
「話が一向に進まないんですが」
『無駄口を叩くからだ』
突き返すような口調が聞こえ、彼方の雰囲気を理解する。
三人の内、二人は黙ってはいるが表情が固い。
張り積めた雰囲気を出しているもう一人によるものだろうと、すぐに解った。
そんな彼に言葉を向ける。
「ご機嫌斜めのようですね」
『当たり前だろ。なんで黄森の奴らなんかと一緒に戦わねえといけないんだ』
「それが今後の辰ノ大花のためですから」
『俺はお前が気に食わねえ、小等部の時から何考えてんだか分からねえお前がな。俺達の長が殺される場所を殺す側の黄森と一緒に守るだと? ざけんなよ、そんなに織田瓜に憑いた天魔が――』
「幾ら黄森だからと言って、その発言は織田瓜を汚すことになりますよ」
『あいつらのことなんか知るか! 俺は俺達の長が救われればそれでいい。生きていたいと思えればそれでいい。そんな意志すら持たせねえ黄森なんかクズ以下だろうが!』
三人の中央に立つ金髪の少年が、怒鳴るように声を上げる。
そんな彼を止めようと二人の内、緑髪のチャラそうな男子が肩に手を置き止めようとするが、その手は乱暴に払われた。
止められないと解り、仲間の二人はこちらに頷く。
彼を冷静にさせてくれ、そんな意味が込もったものだ。
一息入れ、声のトーンを落として冷静になるように促す。
「いいですか? 国を存続させること、地域を守ることはそう単純な話ではないんですよ。
確かに長は神人族であり、竜神の血が流れ、竜神を宿せる唯一の存在であるため私達より価値のある存在でしょう。そんな長が今頃、生きたいと言っても黄森は許してくれません」
『仲間を殺されたからだろ』
「それもありますが、その前に黄森は神州瑞穂の代表です。黄森が存在するお陰で他国との無駄な争いが起こらないのも事実。しかし、そんな神州瑞穂の代表である黄森はそれなりの“立場”と言うものを他国に示さねばならない」
『俺達の長を殺してでもか』
「はい、そうです。黄森と言うたった一地域、それだけで他国と渡り合える戦力を持っている。恐怖と言う誰もが脅える存在となることで、他国が戦争を仕掛けて来ないための抑止力となっているのです。
僕達の長を殺せば、例え神人族であろうとも容赦はしないぞ、と偵察に来ている二印加奈亜米|《トゥーエン・カナリカ》経由で世界に広まり、神州瑞穂の平和がまた続くのです」
この言葉に彼は拳を握り締め、思いを必死に抑えているのが拳の震えで解った。
今の彼は怒りで頭が熱くなっているに違いない。そのため冷静に物事を見れないのだ。
そう言うことなら、冷静にさせるには一度沸騰させた方がいい。
『……何なんだよお前はさあ』
聞こえた。
怒りで声に力が込もっている。それでいい。
『結局、お前が立てた戦術は長を殺すためのシナリオじゃねえかっ!』
溜め込んでいた思いを噴き出すように、大声で声を御茶丸に向かって飛ばした。
『お前は長を救おうとは思わねえのか! 長は死んで当たり前だって思ってんのか! ああ!? 俺は嫌だね。長であっても後輩だ、その後輩が自分の命を犠牲にするのが当然だって思ってる』
彼の声は止まらない。
『なんでだ! なんであんな弱い奴が、そんな重たい責任背負わねえといけねえんだよ! 俺達でいいだろ! 俺達でいいじゃねえか。なんで、なんでだよ……ふざけんなよ!』
映画面の向こうからこちらに反抗する表情、態度を向けている。
心配になった明子が近寄って来るが、手で来るなと指示を出す。
大きく一息。
こちらに向けられた彼の言葉を、もう一度思い返し深々と受け止める。
そして閉じた目を開き、彼に向かって、
「てめえに長の何が分かるってんだっ!!」
●
突如の大声に、彼の身体は反射的に強張った。
この声は明子にも、遠いが彼の周りにいた避難して来た住民にも届いた。
先程のような笑みに似た表情は消え、叱るような、怒鳴るにも似た感情が感じられる。
「なんで長が救いの手を差し伸べても死ぬことを選ぶのか、分かってんのか!」
『…………』
「長はな、守ろうとしてんだよ俺達を。自分が犠牲になれば黄森は辰ノ大花を支配下に置くが、条件として俺達の人生狂わせないでくれって頼み込んだんだよ。聞いただろ? 最後の約束を」
口からは声が出なかった。だから彼は黙って聞くしかなかった。
あんなに声を出した彼の、何時もふざけているイメージしかなかった覇王会戦術師の言葉を。
「泣いてただろ? 何でか分かるか?」
『分からない』
「自分がこんなにも愛されていたって、初めて気付いたからだよ! 竜神の血が流れてるから、唯一宿せる存在だからなんざ関係無く、単純に自分の死を悲しんでくれる人が大勢いたからだよ! その時ぐらいは長だって生きたいと思った筈だ。だけどさあ、自分が生きていたら辰ノ大花が何されるか分かれねえから死ぬことを選んだんだよ」
理解出来るか?
「自分がしてしまったことが、地域全体の未来を左右することに繋がってしまった苦しみが。自分の命を犠牲にして死ななければ、大勢の者が苦しんでいまう。だけど死ぬことに恐怖する胸の締め付けが」
自分は何を言っているのだろう。
元を正せば、自分も長のことを理解出来ていなかったのに。
だが見てしまったのだ。長が苦しんでいる姿を。
自分がふざけてれば長が楽しめると思い、顔を出しに行った時。
この世から消えてしまう恐怖に震え、実之芽に抱かれて子どものように泣いていた長の姿を。
他人の苦しみは理解出来ない。
理解出来ないから他人を馬鹿に出来るし、貶すことも出来る。
しかし他人の苦しみに遭遇してしまったり、理解出来てしまった時。自分が如何に甘く生きていたことが分かる。
その内の一人が自分だ。
自分もそれなりの苦しみを得て、生きてきたつもりだった。が、それは結局“それなり”の苦しみでしかない。
地域の名を背負う長に比べたら、如何に自分がちっぽけな存在だか理解出来た。
きっと他人を馬鹿にする者、貶す者は相手のことを理解しようとしない。他人の苦しみを知ることを恐れ、自分は弱くないと思い込んでいる弱虫だろう。
荒れる戦場で、短くも長く感じる沈黙が流れた。
後書き
ぶつかり合いの始まりです。
ざっくり戦場はこんな感じです。
日来社交員
┌───────┐
│ │
日│ │日
来│ │来 北
学│ 西貿易区域 │社
勢│ │交 西 ↑ 東
│ │員
│ │ 南
│ │
└───────┘
日来学勢●
●:三年一組のいるところ
とてもざっくりしてます。
間には敵がいるわけで、
───敵さん後方───
───敵さん前方───
↑↑↑↑↑
───我ら日来勢───
のような正面対戦です。
後ろから敵さん回り込んでいたりしますが、戦場は生き物と言いますし気にしない方向で。
戦場説明はこんな感じでいいとして、後半は辰ノ大花サイドとなりましたね。
好きで黄森の奴らと一緒に戦っているんじゃないことを知っていれば、感じ方も違ってくるのではないでしょうか。
会社では何故か上司に逆らえないのと同じなように、辰ノ大花も黄森には逆らえないんです。
世界はこんなにも広いのに。
不思議なものですね。
次回は辰ノ大花サイドから始まります。
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