WvsA‘s ジ・ビギンズナイト
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Wの誕生・はじまりの夜 後篇
「ファング~!!どこいったの~!!」
翔子は突如、逃げ出したファングを探し夜道を走っていたのだ…。
(このままじゃフィリップに怒られちゃう…。)
彼の大事なペット(?)であるファングを借り、逃がしてしまったとなると自分の責任は重大である…。
(どうしよう…)
途方に暮れていてもどうしようも無い。再び歩こうとした翔子の目の前に…
「なにこれ?」
銀色のトランクが置いてあった。留め金も壊れているようで半分開いている状態である。
『トランクを見なかったかい?』
「あーそういえば…」
フィリップが言っていた言葉を思い出す翔子。恐らく、これで間違いないだろうが…
(何入ってんだろ?)
つい、好奇心に刈られてしまう。
(誰も見てないから大丈夫だよね…?)
辺りをキョロキョロと見渡すとトランクに手を掛ける…。
ゴク…
息を飲む翔子…何故かこのトランクを開けてしまったら後には引けない…そんな気持ちにが胸の中で膨らんでいく…。
(どうしたのよ、私!たかがトランクよ!)
そう思い切ってトランクを開ける。そして、中に入っていたのは…
「何これ?」
入っていたのは何やら赤い物体と四本の大きめのUSBメモリだった…。メモリの収まっている所には二本分空いているスペースがある。
チャキ・・
「動くな・・」
「!」
突然、後ろから警告され固まる翔子。後頭部には何かを押し当てられている感覚がある。このタイミングから考えると…
(拳銃…?)
そんな考えを浮かべながら自分の行動を激しく後悔する。何故、夜道を一人で歩いていたのか…。何故、トランクに気をとられて後ろの人物に気づかなかったのか…。
(凄く情けないけど…震えが止まらない…だけど…)
(こんな所で…)
身を低く構えて…
(死にたくない!!)
回し蹴りの体制を取る。
彼女の右足が後ろの人物の腕に当た…
「おっと…」
「なっ…!?」
らずに腕を上げられ簡単に避けられてしまう…。しかも、盛大に空振ってしまったため隙だらけだ。
チャキ…
目の前に拳銃を構える腕が見える…。
(嘘…)
彼女は一瞬で悟った…。撃たれると…。
「く!?」
思わず目をつむってしまった…
「バーン…」
「あれ?」
だが、彼女が撃たれることはなかった…。
「私…生きてる?」
今の自分の状況を飲み込めない翔子。
「辺り前だろ…」
拳銃の主が呆れたような声を出す…。翔子は恐る恐る顔を見てみると…
白いソフト帽にどこか一昔前の匂いを感じさせる男…。紳士を思わせるその立ち姿はまさにハードボイルド…。翔子はこの人物を知っていた…。
「宗吉おじさん!?」
彼の名は鳴海宗吉、翔子の名付け親であり、憧れの人であったりする。
「それはただの玩具じゃない…。」
宗吉は低い声で警告をする。
「おじさん、これが何か…」
『ぐぅ!?』
「!!」
突然、宗吉に話しかけようとした翔子の頭に声が響く…。
(何…今の…それに、フィリップの声?)
謎の現象に戸惑う翔子。
「どうやら、あいつの声が聞こえたようだな…。なら…」
そう言って宗吉は自分の銃に手を掛ける。
「ジゲン!」
『オーライ、マスター。』
すると、銃が喋り立体映像が浮かび上がる…。これだけでも驚くことだが翔子はその映っているモノに驚愕した…。
「フィリップ…?」
そう、そこには瓦礫だらけの病院でハンマーを持った赤いゴスロリの格好の少女に追い詰められ窮地にたっているフィリップが映っていたのだ…。
「今、お前とフィリップは人生の分かれ道に来ている…。」
宗吉はゆっくりと語りだす…。
「これがお前の入れる世界の入口だ。強制はしないさ…。また普通の生活に戻るというのなら俺はその選択を受け入れる…。」
宗吉は翔子の前で片方の足をつき、彼女と目線を合わせる…。
「もし、こちら側に来るのならすぐに覚悟しろとは言わないが…。しかし、これだけは言っておく…。選んだら後には戻れない。後悔しない選択をしろ…。」
翔子は悩んだ…。確かにヒーローや正義の味方に憧れたこともあった…。だけど、これは今の自分にはとても大きすぎる…そう思った…。
『ぐあ!!』
そうして悩んでいる間にも追い詰められていくフィリップ。
(私はフィリップを助けたい…でも、助けたら元には戻れない。きっと後悔する。でも、見てみない振りをしても後悔する。結局、後悔しない選択なんて私には…)
思い詰め、泣き出しそうになる翔子。そんな彼女を見兼ね優しく頭を撫でる宗吉。
「後悔するなというほうが無理だったか…。じゃあ、言い方を変えよう。後悔することを後悔しない選択をしてみろ…。」
翔子は考える。宗吉のいう後悔する後悔しない選択とは自分にとっては何なのか…。
(私の…)
(後悔しても…)
(後悔しない選択…)
(それは…)
翔子は宗吉を真っ直ぐ見る。
「おじさん、私はフィリップを助ける!これが私の選択よ!」
そして、決意を真っ直ぐに伝えた。
「!!」
同時に翔子の懐が紫に光だす。その光の元は…
(ジョーカー…メモリ…)
宗吉は心の中で驚く。これであることに彼は確信を持った。
(まさか…お前が切り札の子だったとは…)
「ちょっと何これ?」
「翔子、Wドライバーをつけろ!」
「えっ?」
「そのトランクに入っている機械だ。」
「こ、これ?」
戸惑う翔子だったが宗吉の指示でおもむろにトランクに入っていた機械を取り出す…。
「それを腹にあてろ。」
「こ、こう?」
ガチャ
すると、機械はベルト状になり翔子の腹に巻き付く。
「うぇ!?」
「そして、メモリのスイッチを一回押して左側の挿入口に入れろ。」
「わかった…。」
『ジョーカー』!!
そして、メモリを入れた翔子だった。
ヒュン
「あれ?消え…」
何故かジョーカーメモリは消え、そのまま翔子は倒れていき、宗吉が間一髪で抱き抱える。
「翔子、これがお前の選んだ選択だ。後はお前次第だ。そして、覚悟は早く持て…でなければ大切なモノを失うぞ。」
宗吉は翔子を抱え、呟くと夜空を見上げる…。
「ふん…客か…」
すると、図体がデカイ青い獣耳を着けた男が現れる…。
「仕方ねぇ…これを使うか…」
そう言うと懐からロストドライバーとメモリを取り出す…。
『スカル』!!
「変身…」
そして、ドライバーを身に付けメモリをセットする。
『スカル』!!
そのまま、右側に挿入口を弾くと宗吉の体が骸骨を思わせる異形、『仮面ライダースカル』に変わる…。
「さあ、お前の罪を数えろ…。」
宗吉は決めセリフをいうと翔子の体を脇の電柱に立て掛け、戦いに向かっていった…。
ここはどこだろう…。
翔子はそう思った…。一瞬意識が飛んだと思ったらよく解らない光景が広がっている…。
『ここどこよ…てか、どうなってんの!?』
混乱する翔子だったが…
「やれやれ、よりにもよって君かい?」
『うぇい!?』
突然、隣からフィリップの声がし、驚く翔子。
「落ち着きたまえ。いいかい、君と僕は意識レベルで一つになっている…。」
『一つに…?』
フィリップが今の状況を説明しようとするが…
『一つ…』
しかし、翔子は完全にNG(R-18)な妄想をしてしまい…
『嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』
パニックになった。
「落ち着きたまえ。要は僕の体の中に君の意識が乗り移っている訳で…」
『嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!私の純潔があぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
「少し、頭冷やそうか…」
『ごめんなさい…。』
しばらくして、フィリップのドスの効いた一言で、落ち着きを取り戻し反省する翔子。
『で?どうすんの?』
翔子はフィリップに訪ねてみる…。
「まず、僕の質問を聞いてくれ…」
悪魔と相乗りしてみるかい?
『はあ?』
「文字通りだ。この悪魔と相乗りする勇気があるかと聞いているんだ。」
フィリップは自分を指して言う。要は自分を悪魔と言っているのだ。翔子はしばらく沈黙すると…
『HA!HA!HA!HA!HA!HA!HA!HA!HA!HA!』
大声で笑う。
『あんた自分のことを悪魔って言ってんの!?バッカじゃないの!?あんたが悪魔なら私は魔王よ!それに、とっくに相乗りしてるわよ!!』
予想外のリアクションに驚くフィリップだったが…
「フッ…心強いよ。」
半ば呆れたように…しかし、半分希望の光を見出だしたように呟くフィリップ。
「さて、いくよ!力に身を任せろ!」
『え?どゆこ…』
すると、目の前の土煙が動き出すのが見えた一瞬、赤いゴスロリの格好の少女をみた翔子…。しかし、彼女の意識は内から沸き出る力の奔流により、遠退いていった…。
「!」
来る!ヴィータは直感的にそう思った。
(不味い…明らかにこないだのとは違う…。ここは一気に…)
「アイゼン!!カートリッ…」
『ショルダーファング』!!
ガキン!!
「な!?」
白い刃のブーメランが放たれ、ヴィータの武器『グラーフ・アイゼン』に直撃。怯んでしまうヴィータ…。
(くそ…先手を打たれ…)
「「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
『アームドファング!!』
「何!?」
しかし、Wファングジョーカーは跳躍し、すぐさまヴィータの背後に着地。無防備な背後に追撃を容赦せず加える。
「ぐ!!」
何とかバリアを貼って持ちこたえるもそのままはね飛ばされ片膝をついてしまう…。
「「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
それでもWは容赦はしない。再び、跳躍し右の手首から生えた刃で勢いをのせて斬りかかる!!
「ちぃ…」
しかし、ヴィータは紙一重でかわしてみせるも、右の頬に切り傷が一閃走る…。
「「があぁぁ!!」」
「ぐあ!!」
だが、Wは反撃の隙を与えず左足の回し蹴りをお見舞いする。そして、彼女はガードが間に合わず病院の壁に叩きつけられ壁にめり込んでしまった。
「何なんだよコイツ…。闘い方が戦士というよりまるで野獣じゃねえか…。」
ヴィータは朦朧とする意識と痛みの中でそう思った…。
死刑宣告の電子音声が鳴り響く…。すると、Wファングジョーカーの右足首からエネルギーを纏った刃が現れる…。
(こんな…所で…)
ヴィータは死を覚悟した…。
「「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」
Wの必殺技『ファング・ストライザー』がヴィータに迫る…。
(ごめん…はやて…)
回転した飛び蹴りの刃がヴィータに当たろうとした時…
「飛竜・一閃!!」
ガアン!!
「「!?」」
突如、割って入った炎の刃がWファングジョーカーを蹴散らす。
「シグナム…」
ヴィータはほっとした言葉を絞り出す…。そして、彼女の目の前に一人の女性が降り立つ…。ポニーテールのピンクの髪に金色の髪止め。剣を持つ姿は侍を連想させる…。彼女こそヴィータと同じく烈火の騎士、シグナムであった…。
「どうした、ヴィータ?お前がそこまで苦戦しているとは…」
「…」
シグナムが話し掛けるが余程悔しいのか顔を背けてしまうヴィータ…。しかし、微かな声で喋り出す…。
「気をつけろ。コイツ、昨日のと似ているが全く別物だぜ…。」
「?それはどういう事だ?」
ドゴオォォォォン
「「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」」
「戦士じゃなくて化け物って事だ!」
シグナムに吹き飛ばされたWファングジョーカーが瓦礫の中から這い出てくる…。
「確かにこれは猛獣も良いところだな…」
頷くシグナム…。そして、Wファングジョーカーの姿をまじまじと見つめる…。
(コイツ、力に振り回されているな…。構えが最早、獣のソレだ。)
そして、シグナムは決断する。
「ヴィータ!ここで奴を仕留めるぞ!」
「え?でもコイツ…」
「コイツを野放しにすればタダでは済まないぞ!後々、収集のつかない事態になる!!」
ヴィータは少し考えると再びグラーフ・アイゼンを構える。しかし…
「「ぁぁ…」」
突如、Wファングジョーカーは倒れ込んでしまう…。
「アイツ…どうしたんだ?」
戸惑うヴィータ。
「解らないが、とにかくチャンスだ。ここで一気に仕留め…」
『スカル・マキシマムドライブ!!』
ズガン!!
「!?」
止めを刺そうと踏み出そうとしたシグナムの元に電子音声と共に黒いエネルギー弾がかすめる…。
「動くな…」
その弾の主は銃を構えた宗吉こと、仮面ライダースカルだった…。
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